2017年11月07日
“90年代の新宿”を描いた映画が残酷すぎて中国で上映中止に! どれくらいヤバイか徹底解説!
――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男・天野ミチヒロが、ツッコミどころ満載の封印映画をメッタ斬り!
時折舞い込む「何々が中国で上映中止」といったニュース。それらは当局の検閲にかかった国外の映画ばかりなのだが、中国映画界の巨匠イー・トンシンが撮ったジャッキー・チェン主演『新宿シンシデント』が、中国で上映中止になっていた。その理由は何だったのだろう。まず、ここ数年の中国における主な上映中止作品を挙げてみよう。
『SAYURI』(05年・米)……アメリカ人の感性で芸者(チャン・ツィイー)の人生を描いたが、芸者を娼婦と曲解した広播電影電視総局が「中国人女優が芸者を演じている事が、従軍慰安婦問題を思い起こさせる」として公開を中止した。
『ブローバック・マウンテン』(05年・米)……『グリーン・ディスティニー』のアン・リー監督作品。保守的なアメリカ西部を舞台に20年以上にもわたる男性同士の愛を描いた人間ドラマ。同性愛が中止の理由か。
『アバター』(10年・米)……3D版とアイマックス版は中国史上最高の初日売上を樹立したが、2010年1月22日から公開予定の通常版が中止に。メディアを統制する国家新聞出版広電総局は国の指示ではないと否定したが、資源を狙う地球人が先住民を追い払うシーンが、当時中国各地で起きていた強制立ち退き騒動を想起させるからというのが、中国人民の共通認識。
香港を除く中国では、日本の映倫やMPAA(アメリカ映画協会)などによるレイティング(年齢制限)システムが存在しない。中国での映画公開の審査基準は、国内の経済的利益や映画産業の発展に重点を置いているので、上記例のような政府が禁止する要素さえなければ、小学生でもスプラッターやセックスシーンを観ることができた。そこで最近の中国映画業界は、子供の教育上よろしくないもので利益を追求することはやめようと、劇場が各自で内容に照らし合わせて年齢制限を設け始めているのだ。
ちなみに香港に限りレイティングが導入されているが、『新宿インシデント』は最も厳しいIII(18歳未満お断り)に指定された。これは「残酷もエッチもあり」ということだ。そして中国政府は香港以外での上映は許可しなかった。その理由は過激なバイオレンス描写にあるといわれている。
日本でも、ジャッキー・チェン主演映画史上初のR-15(15歳未満お断り)という事態になった。あのジャッキーが詐欺を働くわ、人を惨殺するわ、娼婦を買うわ、おまけにカンフーを一切使わないというイメージを根底から引っくり返した意欲作。どこがそんなにヤバイのか、該当箇所を示すためネタバレ注意でストーリーを紹介しよう。
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■あらすじ
1990年代初頭、大勢の中国人密入国者が若狭湾に漂着し、その中にいた鉄頭(ジャッキー・チェン)は、日本に稼ぎに出たまま消息を絶った幼馴染みの恋人シュシュを探して東京にたどり着く。鉄頭は大久保で弟分のアージェと再会し、不法滞在中国人たちが身を寄せ合って暮らす貸家に潜伏し、廃棄物処理や下水道清掃などの低賃金労働で生計を立てる。
ある日、新宿歌舞伎町のクラブで皿洗いをしていると、縄張りを仕切る暴力団・三和会の幹部・江口(加藤雅也)の極妻になっていたシュシュと哀しい再会を果たす。失意の鉄頭は仲間らと偽造テレカを手売りし、偽造カードで購入した物品の転売、パチンコのイカサマなどをして歌舞伎町で悪事を重ねていく。やがて人情味のある北野刑事(竹中直人)と知り合い、リリーという恋人ができる。そして臆病者で悪事が苦手なアージェのために、鉄頭は仲間たちと金を出し合い、彼が夢見ていた天津甘栗の屋台をプレゼントする。
だが、それはつかの間の平和だった。アージェに連続して災難が襲う。まず仲良くしていた中国人女子高生のパパ(クラブのオーナー)の逆鱗に触れ、店に連れ込まれてボコボコにされる。殴る蹴るしている従業員は、原田眞人監督の最新作『関ケ原』で西軍の前野兵庫、平成版『ウルトラセブン』でセブンのスーツアクターを演じた北岡龍貴!
次が悲惨。屋台を引いていたアージェだが、仲間から「トイレ行くからちょっと代わって」とイカサマ中のパチンコ台に座ってくれと頼まれる。そこへ運悪く仕切りの台湾ヤクザが登場。アージェはションベン漏らしながら路地裏へ連れ込まれ、刃物で顔面の中央を鼻ごと真横に切り裂かれ、右手を焼けた甘栗の釜の中へ突っ込まれた上、切断される。
鉄頭はアージェの仇を討つため、台湾ヤクザがいるクラブに潜伏して機をうかがうが、事態は意外な方向へ。店内に三和会の身内が来て、台湾ヤクザの幹部に江口暗殺を依頼して帰る。そこへ江口が来店し、台湾ヤクザたちに斬りかかられる。床に倒れ込み、テーブルの陰に潜んでいた鉄頭と目が合い驚く江口。幹部が肉斬り包丁を振り上げ、それを下した瞬間、鉄頭がカウンターで刃物をスイング。「スパッ!」と、気持ちイイほど鮮やかな切断面を見せる幹部の前腕がすっ飛んでいく。
江口は鉄頭を気に入り、女房の元カレと知りながら懐刀に置く。鉄頭は自分と仲間の長期滞在証明書の発行を交換条件に、江口の政敵を次々に殺していく。カンフーではなく銃や刃物で。鉄頭が顔役となったことで仲間たちは大手を振って歌舞伎町で商売できるようになるが、一方アージェは義手をはめ、白塗り顔という奇抜な格好をし始め、麻薬の売人となって荒んでいく。アージェの顔の傷を見て「それ、イカシテルな」と言ってブン殴られる斎藤工(笑)も一瞬出たりして、ここから先は各自が軌道を外し、鉄頭も仲間たちから孤立する。
ラストは登場人物らが入り乱れて大乱闘。ジャッキーも戦うが、アクションとはいえず泥臭いリアルなケンカ。死闘の果てに「俺は臆病者のままだ」といって、鉄頭の目の前で息を引き取るアージェ。腹の傷口からドロリとはみ出てる内臓。鉄頭も縄張りを取られて恨みを持つ反中国人派の中島(澤田拳也)たちに斬り刻まれ、ボロボロになって下水道に逃げ込むが、北野の目前で力尽き、汚水にまみれて流されていく。
この映画は日本では5月1日に封切られたが、とてもゴールデン・ウィークに観る映画じゃない(笑)。しかし、さすがトンシン監督が10年かけてリサーチして練っただけあって、外国人の描く変な日本観はない。私は未成年時から歌舞伎町に出入りし、1990年代は無修正AVが入手できるビデオ・DVD店、ルーズソックスをはいたJKに蹴られてダウンする酔っ払いのリーマンオヤジ、改造テレカの売買、激増する中国人などを見てきたが、映画で描写される街にリアリティーを感じた。そして、この映画はとても切ない。ジャッキーの新境地を、あなたならどう感じるだろうか。
タグ:ジャッキーチェン
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posted by T.O.P..Class at 19:53| ネタ・おもしろ系