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2020年11月29日
宴
ある友人のお宅へ招待された時のこと。
彼女は私より3つ年上の大人の女性だが、落ち着いたなかにも時折見せる茶目っ気が可愛らしいひとだ。
ある日、友人の何人かで彼女の家に招待されたのでお邪魔することにした。
彼女はワインが好きなようで、私たちに美味しいワインを振る舞いたいとのことだった。
まだおやつ時ということもあったので、手土産は少しだけ高価なチョコブラウニーと、こ洒落た感じのチーズにした。
実は彼女の家は歩いて10分くらいのごくごく近所にあるのだが、お邪魔するのはこの日が初めてだった。
外観は、少しだけ年代を感じさせる、一見普通の一軒家。ちょうど私の元実家のような風情である。
スライド式の和風の玄関ドアを開けると、質素だがきちんと掃除の行き届いた凛とした気配を感じさせた。
室内はとても広く、和の雰囲気。
広い和室の周りを、これまた広い廊下のような、こげ茶色の板張りの床がぐるりと囲んでいる。
天井は高く、広い和室には不釣り合いなほど暗い照明が一つあるだけだったが、幾つもの様々なデザインの年代物の和ダンスが置かれていて、さながら鎌倉辺りの人気の古民家カフェのようだった。
『古い家でしょ?』とはにかみながら彼女は言ったが、そんなことよりも、その部屋の落ち着いた和のたたずまいと、華美な物たちにはけして真似できないであろう凛とした美しさに、私は感心してしまった。
年代物の和ダンスのあちらこちらに置いてある、洋でありながら和に溶け込んでいる大小の観葉植物たちも、その部屋の雰囲気づくりに一役買っていた。
彼女は、これまた年代物の風合いを感じさせる、大きな和のテーブルの上に、なんのへんてつもない花柄のハンカチーフをふわりと広げて、その上にワインと、私たちが持ってきた手土産の菓子等を置いた。
こうして、そのシックな古民家カフェのような部屋で、ひとときの楽しい宴が始まったのであった。
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