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2019年12月19日

「いろいろ」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2011年03月16日投稿。











私にとって下らないものは貴方にとって宝物で
私にとって宝物は貴方にとって下らないもので
もちろん私は私の心を優先したいけど
でもどっちを選ぶこともできないから
結局、そのまま何もかも置き去りにする

「選択肢」




鳶が烏を追い掛けて
烏は逃げながら平和を貪る
でもどちらが上とも言えないから
結局ただの、追いかけっこ

「追いかけっこ」




最初に明かしてしまうと楽しくないの
だって中味がないんだもの
飾りたてて詰め込めば
案外、立派なものに見えるでしょ?

「うた」




朝早く、ご苦労様
心の中で声掛けて
ふと
いつもならもっと早くに動きだす自分を思い出す
労ってほしいわけじゃないんだけどなぁ
それとも、
本当は誰かに言ってもらいたいのかもよ
ご苦労様、頑張ってね、とかってさ

「早朝」




君の優を示すため
彼女の描写を少なくして
君の描写を多くする
それで
本当に君が優だと言えるの?

「優劣争い」






「DollsMaker 邂逅ナンテ」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2011年03月15日投稿。
※投稿時より過去の作品です
※大学時代初期に運営していたサイト「ゆづきあかつき」に載せていた作品です




『邂逅ナンテ大層ナモノジャナイ』

少年は手にナイフを持っていた。
それが見えたわけでもない。この瞳は、さして意味をなさない。
ぼやけすぎた世界さえも、たいして意味はない。
だから、気にもしなかった。
ただ、作り続けていた。
失って、しまった、幻影、を。
「何を、作ってるの?」
「誰か、いるのか?」
「眼が、見えないの」
「……」
お前は誰だ。聞けばよかったのかもしれない。けれど、そんなことは、どうでもよかった。
ただ、作り続けたかった。
失ってしまった、その、肉体を……。
「そんなの無理だよ」
「!」
顔を上げた。見えるはずもないのに、少年を、見つめて。
「とてもキレイな指をしているね」
「……」
「いいな。何を作っているかは、まだ分からないけど」
「……」
手が、止まる。
どうしてこんなに関心を示すのか解らない。
そして、何故答えてしまったのかも、判らない。
「失ってしまったものだ。もう、遠い昔に」
「あぁ、そう、僕が、もとから持っていないものだね」
その時、かしゃん、音がして、何かが落ちたのが分かった。
ナイフ。何かを傷つけるための。
「失えもしない」
「……」
何故か、悲しくなった。その想いを知らない、ということに対して、何故か、とても、とても悲しくなった。
そして、どうして、そんな言葉が口を吐いたのか、
それが一番分からない。
「俺が、お前に与えてやろうか」
紛い物しか、与えられないが。
すると少年は、悲しそうに、だが、確かに笑ったのが、見えた。






「DollsMaker 欠陥品ノ、人間」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2011年03月15日投稿。
※投稿時より過去の作品です
※大学時代初期に運営していたサイト「ゆづきあかつき」に載せていた作品です




『欠陥品ノ、人間』

気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い、とっても、気持ち悪い。
気持ち悪くて仕方ないから、熱くなったはずの下半身も熱を失った。
何が気持ち悪いのかも分からない。
ただ、気持ち悪くて堪らない。
まただ……。
怖くなった。自分という人間が、人間として、異質な存在であろうことが。
嫌だ。認めたくない。
ばっとその場を逃げ出して、洗面所で出せるだけ全てのものを出してきた。生温い黄味がかった液体に、微かに赤が混じっている。
そこまで吐いて尚、その、言いようのない気持ち悪さは拭えない。
そんなだから、ずっと、独りぼっちのままなんだ……。
苦しくなる。
だくだくと打つ自分の鼓動は、決して興奮の所為じゃない。怖くて堪らない。怖くて、とても怖くて堪らないからだ。
怖くて怖くて堪らない。その行為が、気持ち悪くて堪らない……。
いや、違うな。
そこまで考えて、ずるり、崩れるように壁に凭れかかった。
その、行為が、じゃない。
ははっ、
笑いがこみ上げてくる。
自分という、欠陥品の、人間に。
ははっ、はははっ、
笑い出したら止まらない。先ほどまでの気持ち悪さを何とか打ち消そうとするかのように、勝手に出てきて止まらない。
ははっ、はははっ、
はははははっ、
違う、違う、違う違う違う違う。
あぁ、そうだ。自分は、人間として、異質で、異物で、欠陥品で。
あはははははっ!
涙が、零れ落ちた。
熱が恐ろしい。他人の熱の上昇が、触れて、傍にあって、とても、気持ち悪い。
求めていないわけじゃないのに、
その温もりが、
気持ち悪くて、堪らない。
あぁ、ねぇ、神様。残酷なのは、分かっていたけど、こんな、こんな欠陥品を生み出したりしてさ、

「そこで、この異物を嗤ってるんでしょ?」

空に向かって吐き出した言葉は、決して誰にも届かない。
あぁ、そうだね。
届けたい人も、見つからない、ね……。






「DollsMaker 人ノ温モリ」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2011年03月15日投稿。
※投稿時より過去の作品です
※大学時代初期に運営していたサイト「ゆづきあかつき」に載せていた作品です




目の前に誰もいなくなった後、するっ、トンッ、ぱちゃり、音を立てて鎌が落ちた。無意識のうちに力は抜け、ただ視界には、黒光りする紅がある。
あれは誰だっただろう。
昔、視界に入れた気がする。それだけの、もの。
それは誰だっただろう。
昔、触れ合った記憶がある。もう確かに覚えていない、あの肌の感触。
これは、誰だっただろう。
昔、抱きしめた覚えがある。柔らかくて、ふんわりしていて、確かな熱が、そこに、そこに存在して……、
吐き気がする。
嫌悪で身体の髄が砕けるかとすら思った。柔らかな感触に、背筋が粟立った。女の異常な体温が、自分という人間の異常を告げていた。
僕は、狂っている――。
それでも肉体を抱きしめたくて、
硬質の人形など所詮玩具に過ぎない。そう思いながら、体温の異常な上昇から逃れるためにそれを抱いた。
逃げた。
逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて、逃げきれなくて、ゆっくり得物を振りかざす。
それなら、彼女の温もりを奪えばいい。
突き出したのは、二人を繋ぐナイフ。溢れ出したのは、二人を裂く温もり。
嗚呼、熱い……。
逃れたかった熱を全身に浴びながら、冷たくなってゆく肉体に手を添える。
柔らかい、まだ……。
今なら、触れられる気がした。そう、硬くなってしまうまえに。触れられる、気がした。
そう思った瞬間、一気に全身の熱が上がったのを感じた。
欲しい。躰が、欲しい。
がっ、と肉体を仰向けにし、脚を開くところまで開いてしまう。途中、ぼきりっ、音がしたけど気にはしない。
はやく、はやく欲しい。
熱を失ってきた孔の中へ、その穴をこじ開けるように中へと突き上げた。
どくんっ、
鼓動が、弾けた。
吐き気は、なかった。
これが、求めているものだと、気付いてしまった。
嗚呼、僕は、狂っている――。
でも、そうすることが、一番の悦びだと、気付いてしまった。気付いてしまったから……。

ねぇ、誰か、僕に正常な感覚をおくれよ……。

嘆きに似た声は、もう、誰にも届かない。
だって、もう、
君は死んでしまったんだからね……。






「DollsMaker 黒の瞳」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2011年03月15日投稿。
※投稿時より過去の作品です
※大学時代初期に運営していたサイト「ゆづきあかつき」に載せていた作品です




ビクンッ、ビクンッ、痙攣する眼球を独り見つめていた。
僕は今、漆黒の瞳に捕らわれている―――




黒の瞳 ‐クロノメ−




そこらに打ち捨てられているのは人間じゃない。うちの自慢の人形師が作った人形達の残骸だ。
少し眠るといい。
ギョロリ、光を宿す精巧な義眼が向けられる。宿る光の種類は、まさしく怒り……。
何を怒っているんだい?
お前が……、
ダンッ、大きな音を拳で立てる。叩きつけたのは、人形達の残骸の眠る仕事机。
お前が人の事を考えずに人形作りばかり受けるからだろう!
自分が作れないくせにと悪態を吐きながら、ギロリと光る偽物の視線を向けてくる。その偽物の視線が、背筋をあわだてる。
地面に転がる人形達を拾い上げて、にやりと笑って尋ねてみる。
繋ぎ合わせて歪なカタマリを作ってみない?
なんだと?
ばきっ
手に力を込め、残骸の腕を更に砕き千切る。破片は、虚しく床に散らばって、積もる。
こきっ
首を、脚を、胴体を、様々な出来損ないの、様々な部位を分解して目の前に飾ってみせる。
馬鹿なことを。
床に散らばった様々な出来損ないの破片を踏みつけながら、新しい粘土に手を伸ばす。瞳は、光を映してないかのように虚ろだ。
それでいい。
そうやってただ見えぬ世界を表現し続ければいい。それこそが、それこそが求め続けた芸術なのだから。
眼を、入れ替えよっか?
あぁ?
本物の、鮮明に像を結べぬ網膜の、裏に映し出される偶像を思うと、何とも言えなくなる。それを見事に再現するその腕が、堪らなく愛おしい。そう、
「引きちぎりたくなるほどね」
あぁ?
あの美しい漆黒の瞳がなければ、君が偶像を追い求めることなどなかったのだろう。そう思えば、何故かしら背筋があわだつ。
悦びに似ている。
その腕が作り出した人形と戯れ遊ぶ時の、悦びに似ている。
仕事なんか、もういいよ。
微笑む。光を宿す偽物には、声だけではごまかせない想いがあるからだ。
代わりにお前のためのオモチャを作れ、と?
嗤え。嗤うがいいさ。生物を抱けない哀れな人間に、命を吹き込まれた冷たい玩具を渡すことしかできない人形師よ。
目を細め、自分のあてがった義眼を見つめる。
どんなに似せて造っても、あの漆黒の、澄んだ瞳を再現できない。見えぬ代わりにあの瞳があるなら、いっそ、一生光を宿させずに生かそうか。
「何を考えてる」
「別に」
イラついた声を聞きながら、心の中でただ、出会った日の瞳を思い出していた……。






「DollsMaker 灰の雪」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2011年03月15日投稿。
※投稿時より過去の作品です
※大学時代初期に運営していたサイト「ゆづきあかつき」に載せていた作品です




ただ、灰色の中にいた。
其処が楽園だと思い込んで、ただ、灰色の中でうずくまっていた―――




灰の雪 ‐ハイノユキ−




サクッ、サクッ、足が踏みしめているのは、たぶん、雪だと思う。うずくまって何かを待つのも飽いたし、ただ足を動かしてみる。
ねぇ、どこに行ってるの?
小さな声が、後ろから聞こえた。
誰だ?
僕じゃないよ。
第三の声の主に、見えないながらも一瞥をくれてやる。たぶん、この先に奴はいる。
この子を拾ってきたんだよ。
そう私、拾われてきたの。
透き通るようなか細い声で彼女は喋る。姿形は確認できない。今、手元にアレがないから。
困ったよ、小さい子供がこの子の価値も分からず見つけてしまったから。
くすくすと笑いながら、奴は楽しそうに子供の腕が落ちる様子を語りだす。
吐き気がする。奴の嗜好は理解しがたい。したくもない、それが本音だが。
そういえば、この辺りもすっかり焼けてしまったよね。
どこかに壊れた人形でもあるかもしれない、そういう声が辺りを動きまわり、多方向から耳障りなノイズを鼓膜に届ける。
等身大の人形はないのかな?
あら、私がいるのに?
二つの声が、不協和音が、重なり合わないノイズが、
イライラする。
そっと腰に提げていた短刀に手をかけ、抜き、奴の声を頼りに前へと突き出した。
ひゅっ
カシャン
刃先が確かに硬質のモノに当たる。目指していたモノではないが、当たらずとも遠からずで、再び、カシャンと地面にそれが落下する音を聞いた。
雪が、積もっているのに?
見えもしないのに、すぐ傍にいるであろう人物に目を向けた。すると、くすくす気味悪く笑うのが耳に入り、一瞬、全身に寒気が広がったのを感じた。
残念、それじゃ僕は殺せない。
「君は、僕から逃れられないからね」
使いものにならない眼球では、降り積もる灰が冷たい雪に感ぜられて、見えもしないのに、焼けた大地に転がる日本人形が脳内を支配していた……。






「DollsMaker 朱の海」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2011年03月15日投稿。
※投稿時より過去の作品です
※大学時代初期に運営していたサイト「ゆづきあかつき」に載せていた作品です




それが血液だと気づいたのは、ずっと後のことだった。
僕は今、朱の海にいる―――




朱の海 ‐アケノウミ‐




どうしたんだい?
にやりと笑って少女に尋ねた。
少女は何も応えない。おびえた瞳でただ見つめる。きっと、手に持つそれが目に入ったからだろう。
おびえないで。答えてくれたら、すぐ、いかせてあげるから。
本当?
少女は気を許したのか頬を緩ます。そして、そっと、手を持ち上げた。
これ、見つけたの。
それは何?
小さな人形だ。日本人形。真白いべべを羽織って、頬を薄く染めている。閉じられた瞳では永遠に空を見ることはない。
寂しいべべを着ているね。
日本人形を、左手でそっと愛撫した。指の触れたその頬は、ひどく冷たい色をしていた。
ねぇ、朱色の着物を着せてあげようか。
え?
お兄さんね、朱色の着物を持っているんだ。
本当?
少女は喜ぶように日本人形を持って跳ねた。
子供の心は分からない。別にいい。解るつもりもない。
ちょっと貸してごらん。
うん。
そうやって、少女が両腕を前に出した瞬間、
ザシュッ
ぽとり、地に落ちた日本人形から手首が離れる。流れ落ちる雫によって、装束が、どんどん朱に染まっていく。
きゃあぁぁ!!
少女があらん限りの声を上げ、叫んだ。
五月蠅い。
無情にも、僕はその首を斬り落としてしまった。
飛び散った塊がぶつからないように、そっと、腕の中に抱き上げて接吻した。
見れば、鎌の刃は人間だった塊の傍に落ちている。どうやらもう、寿命らしい。それをそっと拾い上げ、ポッケの中にあった袋に入れた。
あぁ、べべを替えてあげないとね。
そう言って、右前になっていた着物をすっと左に直した。
「君はもう生きているんだから」
見開いた眼は、空を見つめていた……。






「奸徒は黎明に彼が名を謳ふ」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2011年03月15日投稿。











其れは愛か
隣から知らぬ者が尋ねてくる
鬱陶しいから
知りやせん
言つて視線を逸する
と、
隣で嗤う声がする
何なんじゃ
睨むように見やつた先には誰も居らんで
嗚呼、そうじゃ、此処は、
本当は気付いとる
知りやせん
其の言葉は、鬱陶しいから出たので無い
事実、
其の問ひの答えを持つとらん
そんだけなんじゃ

「問ひ掛け」




君は、とても美しひ人だ
だかだらうか、君はとても悲しひ人だ
もう、
一人で居られない
でも、知っとるん
一人で居られないだけ、
君は、
独りなのだらうことを

「孤獨」




如何して愛してしまつたのだらう
此の感情のなんと不安定なことか!
それでも望んでしまふのだらう
嗚呼、
其処に君の心の臓が有れば良い
直ぐ、触れられる位置に
爪を立ててしまへるよに

「嗜虐」




愛していたのは、君の方だつたのかも知れない
追つていた偶像が如何ならうと関係は無いが
君の髪に手を触れていると考へると
憎らしゆうて堪らんのだよ
だからと言うて、
君を引き裂いてしまへるほど僕は強くなど無い

「愛憎」




御人形さん
髪を梳ひて簪刺して
真つ赤な真つ赤なべべ着せて
さあ、
嗤つておくれよ
温もりの無い塊しか抱けずに
それでも尚、
君の温もりを切望して止まない
止まない雨を頬に宿して
やまない
やまない、やまない
病まない、雨は、無い
解つているのだらう?

「四肢涙々」




言葉なぞ知りやせん
思想も何も有りやせん
語る術すら持たんのじやが
でも、
何も知らんし有りやせんのやつたら、
そなな術、要らんのじやなからうか
要らんのじやなからうか
言つて、
口を動かしちよる
何を、
騙りよんのか、
自分にも、
判らせんのに
だれか、
言葉を教へてはくれまいか

「かたりべ」




愛されたことが無いんだよ
そう言つて笑つた君を
抱き締めたひと思ふ
けれど、
それは本当に愛しさなのか

嗚呼、それは、
憐れみではなかつたか

「感情の境界」




引き裂ひてしまふことは簡単だらう
そのまま小さな箱にしまつて
僕だけに見える位置に、愛といふものを凝縮させる
其の手、足、胸、
君を形造つておる全ての曲線が愛ほしい
其の顔、耳、唇、
そして其の、零れ落ちた眼球に至るまで
箱の中にしまつて
愛ほしさだけを眺めて暮らしたひ
永遠に
独りの儘で

「祈り」




何にも無い此の身体に
朝が訪れる
そうじや、生きねばならん
思うんじやが、身体が動きやせん
それでも時は動き続け
何にも出来ん此の身体に
何度も朝が訪れる
生きねばならん
生きねばならん
そう思ふほど、
身体は動かんような気さえするんじやから
多分、
よつぽど強欲なのだらう
身体に反して、此の精神は

「夢」




此処は何処だらう
問ひ掛ける
声はせず
只、嗤ふを聞き
狂つた様な音が精神といふ洞穴を反響し
身体は空つぽになつてしまつた様に
響き渡る嗤ひにも似た音を鼓膜に伝へる
たつた一つの疑問さへ
僕は答へを持たず
今、独り
精神は空つぽであり
だから、嗤いが反響するように感じ
反して身体は重たく
此れが
現実だといふことを告げているようで
ならば、動き出さねばならん
何処か判らぬなら、探さねばならん
あるかも分からぬ答へと、
あるかも分からぬ、
自分の居場所を

今、旅に出る僕は
君にとつては

「奸徒」




愛する人を謳おう
もう、
手の届かない存在を謳おう
今しか歌えない気持ちを謳おう
偽りを綯い交ぜにしながら、
遠い昔から続いていくこの感情を
自分なりの精一杯の言葉にしよう
届かなくていい
いや、それは嘘だ
何とかして届けたいんだ、本当は
だから足掻くんだ
だから精一杯謳うんだ
愛する人を謳おう
いつか、
手を伸ばしてもらうため謳おう
この心の臓を握って離さない
どす黒い感情を届けよう
紫に染まる空が答えを連れてくるまで
自分にしか歌えない言葉を謳おう
愛する人を謳おう
きっと
世界を掴むための言葉だから
その存在なしでは、
今、この世界は存在し得ないから
だから、
愛する人を謳おう
否、
愛だけを、謳おう
愛される術を知らないこの身体が
夜明けを迎えた世界の中で
愛する貴方の名だけを謳えるように
僕は、
黎明に君の名を謳う

「世界」






「Be too short to say that good-bye」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2011年03月15日投稿。




『さよならと言うには短すぎて』

 軽く、背中を押した。
「え?」
 ふらり、簡単に傾いたその身体は、そのまま足を踏み外してどこかに消えた。
 視界から消えたそれは、たった数秒時を止めて、後に、ぐしゃああぁあぁあ、と、音を立てて潰れた。
 潰れた。
 簡単に、潰れてしまった。
「はは、ははっ、ははははは」
 見下ろした先には、どす黒いシャツと肉塊、肉片。真っ赤な水溜まりに浮かんで、もう、動くこともなく、そこにあった。
 ただ、そこにあった。
 ただ、それだけ。
 書いてしまえば、たった、それだけのこと。
 それなのに背筋がぞわわっ、と粟立って、何とも言えない感覚が、あぁ、とても快かった。
 その衝動に理由はない。特に理由なんてものはそこにはなくて、それでも、何となく、ただ、何となく、背中を押して。
 無機質に流れる時間が厭わしかったわけでもない。消えてしまうことを、望んでいたわけでもない。
 ただ、さよならと言うには短すぎて。
 だから、最期に、
「さようなら――」






タグ:2011

「no-title」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2011年03月15日投稿。
※投稿時より過去の作品です




 実家に帰る度、増えていた手作りのマスコット。ペアになったネコ、雪だるま、ネズミ。グループホームから持ち帰られた、マスコット達。雪だるま、ネズミ、フクロウ。何を作ると言う目的はなく、ボケ防止なんだと、親は言っていた。
 夏、実家に帰ると、やっぱりマスコットは増えている。手にして、何となく、違和感を覚えながら、ニワトリのマスコットを見ていると、親がポツリと呟いた。
「作ってたおばあちゃんがボケがきてね、もう、そんな上手くは作れないかもしれない」
 私はニワトリを見る。今までのマスコットと違って粗くなった縫い目に、左右違う目の位置。何故だかぼやけたニワトリは、最後のマスコットになるのかもしれなかった。
 何となく、悲しくなって、私はニワトリをぼんやり見つめていた。
 どうして、こんなに、終わりが近いんだ、と……。






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