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2019年12月19日

「DollsMaker 朱の海」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2011年03月15日投稿。
※投稿時より過去の作品です
※大学時代初期に運営していたサイト「ゆづきあかつき」に載せていた作品です




それが血液だと気づいたのは、ずっと後のことだった。
僕は今、朱の海にいる―――




朱の海 ‐アケノウミ‐




どうしたんだい?
にやりと笑って少女に尋ねた。
少女は何も応えない。おびえた瞳でただ見つめる。きっと、手に持つそれが目に入ったからだろう。
おびえないで。答えてくれたら、すぐ、いかせてあげるから。
本当?
少女は気を許したのか頬を緩ます。そして、そっと、手を持ち上げた。
これ、見つけたの。
それは何?
小さな人形だ。日本人形。真白いべべを羽織って、頬を薄く染めている。閉じられた瞳では永遠に空を見ることはない。
寂しいべべを着ているね。
日本人形を、左手でそっと愛撫した。指の触れたその頬は、ひどく冷たい色をしていた。
ねぇ、朱色の着物を着せてあげようか。
え?
お兄さんね、朱色の着物を持っているんだ。
本当?
少女は喜ぶように日本人形を持って跳ねた。
子供の心は分からない。別にいい。解るつもりもない。
ちょっと貸してごらん。
うん。
そうやって、少女が両腕を前に出した瞬間、
ザシュッ
ぽとり、地に落ちた日本人形から手首が離れる。流れ落ちる雫によって、装束が、どんどん朱に染まっていく。
きゃあぁぁ!!
少女があらん限りの声を上げ、叫んだ。
五月蠅い。
無情にも、僕はその首を斬り落としてしまった。
飛び散った塊がぶつからないように、そっと、腕の中に抱き上げて接吻した。
見れば、鎌の刃は人間だった塊の傍に落ちている。どうやらもう、寿命らしい。それをそっと拾い上げ、ポッケの中にあった袋に入れた。
あぁ、べべを替えてあげないとね。
そう言って、右前になっていた着物をすっと左に直した。
「君はもう生きているんだから」
見開いた眼は、空を見つめていた……。






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