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2020年05月09日

「空は紅かった。」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2015年04月10日投稿。




過去メモ。
二年前の一月半ば。
何をしてて書いたか分からないプロローグ。
物語は動かない。
永遠に。ね。











空は紅かった。
空気は濁っていたように思うし、それを肯定するかのように息苦しかったのを覚えてる。 あんなに綺麗な空なのに、鳥は一羽もいなかった。
星は既に消えかけていて、だけど、目を凝らすとまだそこにあって。
僕は深く息を吸う。
上手く酸素が肺に取り込めない。苦しくて苦しくて、自然、息も浅くなる。
何処かで鐘が鳴った。
時計塔の鐘だ。
ごーん、ごーん、ごーん、
規則的に何度か鳴ったそれは、もう朝が近いことを告げていた。
かえろう?
僕は頬を緩める。
君に向かって。
ねぇ、かえろう?
君の声は返ってこない。
それに僕の鼓動は速くなって、ねぇ、ねぇ、ねぇってば、何度も何度も繰り返した。
本当はずっと前から分かっていたのに。
息が苦しい。
空は紅い。
君は目の前にあるはずなのに、何も返しはしなくって。
息は苦しい。
鼓動は走る。
僕は泣きそうになる。苦しくて、苦しくて、苦しくて堪らない。
ねぇ、ねぇ、ねぇってば。
僕は何度も何度も繰り返す。
そうすれば、君が答えてくれるんじゃないかって。そうすれば、君が笑ってくれるんじゃないか、って。
どんっ、 どこかで鐘が鳴る。
そして僕の後ろから、ふんわりとした声が聞こえる。
次の瞬間、鈍い痛みに僕は呼吸を忘れた。
満たされることのない肺が悲鳴を上げて軋む。 ぎしっ、ぎしぃっ、
そうして僕は、僕を失った。
空が紅い。
あぁ、もう、朝だ……。
タグ:2015
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