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2019年12月19日

「DollsMaker 灰の雪」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2011年03月15日投稿。
※投稿時より過去の作品です
※大学時代初期に運営していたサイト「ゆづきあかつき」に載せていた作品です




ただ、灰色の中にいた。
其処が楽園だと思い込んで、ただ、灰色の中でうずくまっていた―――




灰の雪 ‐ハイノユキ−




サクッ、サクッ、足が踏みしめているのは、たぶん、雪だと思う。うずくまって何かを待つのも飽いたし、ただ足を動かしてみる。
ねぇ、どこに行ってるの?
小さな声が、後ろから聞こえた。
誰だ?
僕じゃないよ。
第三の声の主に、見えないながらも一瞥をくれてやる。たぶん、この先に奴はいる。
この子を拾ってきたんだよ。
そう私、拾われてきたの。
透き通るようなか細い声で彼女は喋る。姿形は確認できない。今、手元にアレがないから。
困ったよ、小さい子供がこの子の価値も分からず見つけてしまったから。
くすくすと笑いながら、奴は楽しそうに子供の腕が落ちる様子を語りだす。
吐き気がする。奴の嗜好は理解しがたい。したくもない、それが本音だが。
そういえば、この辺りもすっかり焼けてしまったよね。
どこかに壊れた人形でもあるかもしれない、そういう声が辺りを動きまわり、多方向から耳障りなノイズを鼓膜に届ける。
等身大の人形はないのかな?
あら、私がいるのに?
二つの声が、不協和音が、重なり合わないノイズが、
イライラする。
そっと腰に提げていた短刀に手をかけ、抜き、奴の声を頼りに前へと突き出した。
ひゅっ
カシャン
刃先が確かに硬質のモノに当たる。目指していたモノではないが、当たらずとも遠からずで、再び、カシャンと地面にそれが落下する音を聞いた。
雪が、積もっているのに?
見えもしないのに、すぐ傍にいるであろう人物に目を向けた。すると、くすくす気味悪く笑うのが耳に入り、一瞬、全身に寒気が広がったのを感じた。
残念、それじゃ僕は殺せない。
「君は、僕から逃れられないからね」
使いものにならない眼球では、降り積もる灰が冷たい雪に感ぜられて、見えもしないのに、焼けた大地に転がる日本人形が脳内を支配していた……。






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