アフィリエイト広告を利用しています

2019年12月19日

「DollsMaker 黒の瞳」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2011年03月15日投稿。
※投稿時より過去の作品です
※大学時代初期に運営していたサイト「ゆづきあかつき」に載せていた作品です




ビクンッ、ビクンッ、痙攣する眼球を独り見つめていた。
僕は今、漆黒の瞳に捕らわれている―――




黒の瞳 ‐クロノメ−




そこらに打ち捨てられているのは人間じゃない。うちの自慢の人形師が作った人形達の残骸だ。
少し眠るといい。
ギョロリ、光を宿す精巧な義眼が向けられる。宿る光の種類は、まさしく怒り……。
何を怒っているんだい?
お前が……、
ダンッ、大きな音を拳で立てる。叩きつけたのは、人形達の残骸の眠る仕事机。
お前が人の事を考えずに人形作りばかり受けるからだろう!
自分が作れないくせにと悪態を吐きながら、ギロリと光る偽物の視線を向けてくる。その偽物の視線が、背筋をあわだてる。
地面に転がる人形達を拾い上げて、にやりと笑って尋ねてみる。
繋ぎ合わせて歪なカタマリを作ってみない?
なんだと?
ばきっ
手に力を込め、残骸の腕を更に砕き千切る。破片は、虚しく床に散らばって、積もる。
こきっ
首を、脚を、胴体を、様々な出来損ないの、様々な部位を分解して目の前に飾ってみせる。
馬鹿なことを。
床に散らばった様々な出来損ないの破片を踏みつけながら、新しい粘土に手を伸ばす。瞳は、光を映してないかのように虚ろだ。
それでいい。
そうやってただ見えぬ世界を表現し続ければいい。それこそが、それこそが求め続けた芸術なのだから。
眼を、入れ替えよっか?
あぁ?
本物の、鮮明に像を結べぬ網膜の、裏に映し出される偶像を思うと、何とも言えなくなる。それを見事に再現するその腕が、堪らなく愛おしい。そう、
「引きちぎりたくなるほどね」
あぁ?
あの美しい漆黒の瞳がなければ、君が偶像を追い求めることなどなかったのだろう。そう思えば、何故かしら背筋があわだつ。
悦びに似ている。
その腕が作り出した人形と戯れ遊ぶ時の、悦びに似ている。
仕事なんか、もういいよ。
微笑む。光を宿す偽物には、声だけではごまかせない想いがあるからだ。
代わりにお前のためのオモチャを作れ、と?
嗤え。嗤うがいいさ。生物を抱けない哀れな人間に、命を吹き込まれた冷たい玩具を渡すことしかできない人形師よ。
目を細め、自分のあてがった義眼を見つめる。
どんなに似せて造っても、あの漆黒の、澄んだ瞳を再現できない。見えぬ代わりにあの瞳があるなら、いっそ、一生光を宿させずに生かそうか。
「何を考えてる」
「別に」
イラついた声を聞きながら、心の中でただ、出会った日の瞳を思い出していた……。






この記事へのコメント
コメントを書く

お名前:

メールアドレス:


ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/9502621
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
プロフィール
最新記事
最新コメント
写真ギャラリー
タグクラウド
<< 2024年10月 >>
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
検索
カテゴリーアーカイブ