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2023年08月17日

特捜最前線 登場人物コラム「特命課・叶刑事」

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今週は、ドラマ解説ではなく、ちょっとした小話を書きます。題して「登場人物コラム」。
登場するのは、特命課の叶刑事です。

叶刑事は、殉職によって降板した津上刑事(荒木しげる)の後を継いでドラマに登場しました。ただ、津上の後任というわけではなかったのです。

ある事件をきっかけに、神代課長(二谷英明)がムリヤリ配属させてしまいました。その時は問題行動が多い、ひと癖ありそうな刑事でした。

階級は警部補で、先輩の吉野刑事(誠直也)よりも上になります。エリートではなく、猛勉強でたたき上げてきた秀才肌という感じです。ドラマでは、冷静沈着で理詰めな捜査ぶりと激情を露わにする姿との両面を見せてくれます。

叶刑事には孤児という生い立ち設定もあって、デビュー編の「警視庁番外刑事!」と、実の父親が登場する「掌紋300202!」の2本が代表作ということになるでしょう。

とくに「掌紋」は、叶刑事の揺れ動く心の葛藤と橘刑事(本郷功次郎)が見抜く父親の愛が見事に演出され、特捜最前線のなかでも最高傑作の一つとまで言われています。
→私だけの特捜最前線→90「掌紋300202!〜叶刑事の出生の秘密と父子の物語」

叶刑事役の夏夕介さんは、ヒーローものや青春ドラマで活躍していたスター俳優で、レギュラーになる前にも何回かゲスト出演しています。

印象深いのは、司法修習生(犯人役)を演じ、吉野刑事と対決した「六法全書を抱えた狼!」です。完全無欠のエリートが吉野の気迫に押され、次第に追い込まれていく姿を見事に演じました。これがレギュラーへのテスト出演だったそうです。
→私だけの特捜最前線→20「六法全書を抱えた狼!〜吉野刑事の気力が容疑者を追いつめる」

長い間、最も年下の刑事でしたが、後期には犬養刑事(三ツ木清隆)ら後輩ができ、先輩刑事として彼らを引っ張っていくという役柄も演じていました。そして特捜の最終回までレギュラーとして登場し続けたのです。

夏夕介さんは、2010年に59歳という若さでお亡くなりになりました。特捜最前線のレギュラーのなかでは、誰よりも早い訃報となってしまったわけです。

今回のコラムはここまでといたします

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2023年08月10日

私だけの特捜最前線→93「老刑事・対決の72時間!〜大滝秀治VS蟹江敬三、名優が奏でる人間ドラマ」

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※このコラムはネタバレがあります。

今回は、おやっさんこと船村刑事(大滝秀治)が主役の「老刑事・対決の72時間!」を紹介します。おやっさんとダブルキャストとも言える容疑者の男(蟹江敬三)との取調室でのやり取りがメインのドラマです。

誘拐事件は男の犯行なのか?

東北のある町で1年前に起きた少女誘拐事件。容疑者の男に指名された船村ですが、船村は男に見覚えがありません。地元警察は、取り調べにのらりくらりと応じる男にてこずっていました。

男は船村に「俺はやっていない」と無実を訴えますが、アリバイを聞かれても供述を拒みます。「何か隠していることがある」とにらむ船村ですが、地元警察は男を自供に追い込もうと躍起になります。

船村は、男が事件前夜に女と夜行列車に乗ったことを突き止めますが、女が誰であるかも頑として口を割りません。管轄外の地元警察なので取り調べも進まず、署長(藤岡重慶)も船村を煙たそうにしています。

ようやく女の正体を船村が突き止めかけた時、男は船村の取り調べすら拒否し、地元警察に誘拐を自白してしまいます。しかも、供述した場所から白骨化した子供の遺体が発見されたのです。

ところが、船村が探し当てた女の自白によって、男がなぜ口を割らなかったのかという真実が明らかになります。遺体は女の娘で、男は娘殺しの犯罪を隠すため、無実である誘拐の罪をかぶろうとしたのです。

自首してきた女の姿を見て、男は船村に向かって「こいつらが、よってたかって俺たちをダメにした。俺がそんなこと頼んだのか。俺がやったんだ。俺が殺したんだよ」と泣き崩れたのでした。

蟹江敬三さんの名演技

この作品は、大滝秀治さんと蟹江敬三さんの演技をじっくりと見ることに尽きると言っていいほど、二人がそれぞれに迫真の名演ぶりを発揮し、塙五郎氏の脚本も冴えた熱い人間ドラマです。

この頃の蟹江さんというと、ウルトラマンレオでの宇宙人や猟奇的な殺人犯といった強烈な印象の役柄が多い俳優でした。このドラマでも、最初の頃は眼光の鋭い、いかにも凶悪犯っぽい雰囲気を見せています。

ところが、自分がひたすら隠し通していた女の真実に迫る後半になると、そこに憂いの表情が現れ始めます。そして、真実が明らかになった時の絶望ぶり。その演技に思わず引き込まれてしまいました。

塙脚本の妙といえば、取り調べの最中に窓の外から聞こえてくる演歌。行商の魚屋が毎日午後4時に警察署の近くで移動販売をする際に流すテープの音で、「田舎っぽさ」を演出する効果音のようにも思われます。

ところが、男にとってはとても大切な「合図」でした。魚屋の女房こそが、男が隠したかった女だったのです。女は毎日欠かさずやって来て、男が好きだった演歌を流し、無事を知らせていたのでした。

コラムでは触れませんが、男と女との出会いなどサイドストーリーも巧みに作られいる一方で、誘拐事件そのものは「真犯人が自首し、子供も無事保護された」とラストでサラリと語られるだけとなっています。

おやっさんVS地元警察の構図も?

大滝さん演じる船村刑事の取り調べは、特捜最前線で数々のドラマを生んできました。ただ今回は、特命課に対抗意識をむき出しにする地元警察が舞台・・・極論すれば「敵地」での取り調べです。

地元警察は、男が犯人だと決めつけた捜査を続けてきました。前半で船村が無実の可能性を指摘したことで、余計に反発を招いてしまい、男の取り調べも思うにまかせないような状態が続いていきます。

それでも二転三転した挙句、誘拐事件に関しては男の無実が証明されました。ただ、ラストシーンでおやっさんは「あの男を助けたんじゃなく、苦しめただけかもしれない」と自戒するのでした。

特命課のメンバーは、随行した紅林刑事(横光克彦)以外、ほとんど出番がありません。その分、船村刑事と容疑者の男がクローズアップされた異色作と言えるでしょう。

もう一人、注目すべきキャスティングは、署長役の藤岡重慶さんです。たたき上げの署長らしく、エリート集団の特命課からきた船村らへの対抗心と縄張り意識を露骨に出す好演ぶりを見せてくれます。

重慶さんといえば、西部警察の谷刑事ことおやっさんが思い浮かぶでしょう。くしくも大滝さんとの「おやっさん」共演が実現したわけですが、キャラの違いを見比べるのも楽しいでしょうね。

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2023年08月03日

私だけの特捜最前線→92「東京犯罪ガイド!〜吉野刑事と父親、頑固者同士の再会」

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※このコラムはネタバレがあります。

このコラムでは、これまでにも刑事たちの家族関係、とくに親子のドラマについて書いてきました。今回の「東京犯罪ガイド!」は、吉野刑事(誠直也)と父親(高松英雄)の話です。

上京した吉野の父親

殺人容疑の参考人である若者(新井康弘)を取り調べる吉野。若者は「女と会っていた」とアリバイを主張したため、裏付けを取るために街中へ同行しましたが、スキをついて逃げられてしまいます。

その頃、吉野の父親は団体旅行で佐賀県から上京していました。ひょんなことからバスガイド(友里千賀子)の悩み相談を受けることになり、バスガイドのアパートに来ていたのです。

そこにやって来たのが吉野。若者が言っていた女とは、バスガイドのことでした。警察を装う下着泥棒だと心配したバスガイドに代わり、父親が一喝しながらドアを開けると・・・吉野が立っていたのです。

バスガイドは、若者の素性を知ってすっかり怯えてしまいました。彼女から信頼されている父親は、特命課の捜査に協力し、バスガイドを勇気づけながら若者を誘い出すことに成功します。

待ち合わせ場所に若者がやって来ました。父親はバスガイドとの間に割って入ろうとし、若者から足蹴にされてしまったのです。一斉に追いかける刑事たち。吉野だけは立ち止まり、父親を心配するのですが・・・

父親に「バカモン、なんばしちょる」と怒鳴りつけられ、我に返って若者を追いかける吉野。無事逮捕後、「余計なことをするな」と捨て台詞を吐きながら立ち去る吉野を複雑な思いで見つめる父親でした。

吉野と父親の愛憎

捜査を口実に上京した父親に会いに行こうともせず、特命課で対面しても口喧嘩をしてしまう・・・吉野と父親が、なぜ真正面から向き合おうとしなかったのか。そこには複雑な家庭環境が背景にあったのです。

吉野は母親の子ではなく、父親が外につくった女の子供だったのです。母親には実の子同然に愛されましたが、父親には反発するばかり。ついに高校卒業と同時に家を飛び出してしまったのです。

特命課での対面の際、そのことを持ち出した吉野に対し、父親は「バカな女だ」と母親を侮辱します。その言葉が許せない吉野は、涙を流しながら父親に反発しますが、父親は憮然とした表情のまま。

団体旅行に参加した理由も「母さんが病気になったから代わりに来ただけだ」と言い張る父親。吉野は吉野で、新たな事件が発生すると、父親をほったらかしにして現場にすっ飛んでいってしまいます。

吉野と父親のわだかまりが解けないまま、故郷に帰る日がやってきました。母親から就職祝いでもらった腕時計が、実は父親からのプレゼントだったことが分かり、吉野は東京駅に向かって駆け出します。

発車したばかりの新幹線の車中に父親の姿を見つけ、腕時計を突きだす吉野。それを見て、大きくうなづく父親。ほんのわずかかもしれませんが、父親と息子の気持ちが通じた瞬間でした。

父親とはどんな存在なのか

脚本は塙五郎氏が手がけました。ドラマの中では、親子の関係について、父親に年代が近い刑事たちが、吉野や父親に向かってそれぞれ諭したり、語ったりするシーンがあります。

おやっさん(大滝秀治)は「親子はどこまでも親子だ。憎む心も、愛する心も、結局は同じなんだよ」とつぶやきます。神代課長(二谷英明)は「私も子供の気持ちなんか、考えてやれなかった」と語りました。

おやっさんは、娘の香子が反対を押し切って妻子ある男性と結婚し、家出をされたことがあります。神代課長も、娘の夏子の気持ちを理解できず、結局恋人を死なせてしまったという苦い過去を持っています。

橘刑事(本郷功次郎)は、父親が捜査協力を申し出たことを説明しながら「吉野、お父さんを許してやれよ。帰るまでに、一度でいいからオヤジって呼んでやれよ」と諭しました。

吉野とは逆の立場になりますが、橘も息子から憎まれていました。だからこそ、父親の気持ちが痛いほどわかるのでしょう。橘は「父親は吉野に会いたくて上京したんだ」と信じていたのです。

頑固で一本気な吉野刑事の性格は、くしくも父親が神代課長に対して「あれはわしに似とるんです。わしのせがれですから」と語った言葉通り、親子だからこそ引き継がれた血脈だったのですね。


父親役の高松英雄さんは、説明するまでもない名優です。男気のある九州男児を見事に演じられ、高松さんだからこそ、吉野の父親にふさわしいという強烈な印象を作ってくれました。

新井康弘さんは、アイドルグループから俳優への道を進み始めた頃で、ふてぶてしくも陰のある不良役が似合っていましたし、バスガイド役の友里千賀子さんは、健康的で明るい好感の持てる役柄でした。

それから不良の雇っていたスナックのママ役でひし美ゆり子さんが出演しています。ウルトラセブンのアンヌ隊員からは時が経ち、あけすけな水商売女性ぶりを見せてくれましたね(笑)

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2023年07月27日

私だけの特捜最前線→91「父と子のブルートレイン!〜橘刑事の親子関係を軸に複数のストーリーを織り交ぜた傑作」

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※このコラムはネタバレがあります。

今回紹介する「父と子のブルートレイン!」は、橘刑事(本郷功次郎)と息子(鹿股裕司)のドラマが軸になった話ですが、複数のストーリーを織り交ぜながら様々な「親子」の形を描いています。

瀕死の運転手が守ろうとしたもの

大学受験に失敗し、予備校に通うために長崎から上京する息子・信一を東京駅で待つ橘刑事。ブルートレイン「さくら」号が到着しますが、信一は手前の横浜駅で降りてしまっていたのです。

同じころ、河川敷でタクシー運転手の他殺体が発見されます。運転手は瀕死の状態で人家と反対側にある河原に向かっていたのです。その理由は何か。橘は疑問に思いつつ、捜査を開始していきます。

タクシーの乗降客を捜査する中で、容疑者と思われる青年が捜査線上に浮かんできました。青年は運転手の息子で、7年前に運転手が家を飛び出して以来、青年は父親を憎んでいたようです。

その境遇を橘は自分と重ね合わせていました。信一も父親である自分を憎んでいるに違いない・・・でも父親である自分は子供のことを忘れたことはない。運転手もきっとそうだったのだろうと・・・

運転手が河原に向かった理由、それは刺された時に夢中でむしり取ったペンダントの主が息子だとわかり、自分を殺した犯人が息子だと知られないよう、川に投げ捨てるためだったのです。

青年にペンダントを突きつけながら「その時のオヤジの気持ちが、お前にわかるか」と語気を強める橘。父親が自分や母親を忘れたのではなかったと分かり、青年は嗚咽を漏らしたのでした。

橘の息子・信一が出会った人たち

事件に関するストーリーを紹介してきましたが、このドラマではもう一つ、信一の側に立ったストーリーも描かれていました。ちなみにこの作品の脚本は塙五郎氏が手掛けています。

信一が横浜駅で降りたのは、父親に会いたくなかったからでした。不良少女グループにカツアゲされ、キャッチセールスに騙されかけ、父親の橘宅では見知らぬ女が「妻」だと言っている・・・信一は散々な目に遭います。

キャッチセールスが実は運転手殺しの青年だというのは、いささか予定調和っぽくも感じましたが、クライマックスで橘が青年を説諭し、逮捕する瞬間を信一に見せるための演出だったのでしょう。

「不良少女も父親である有名歌手との確執を抱えている」という話も盛り込まれています。詳しいストーリーには触れませんが、少女も信一と同じような気持ちで父親を見ていたことを示唆しています。

不良少女は暴行され、瀕死の重傷を負います。娘が危篤だというのに、すぐに駆け付けて来なかった父親に対し、信一が「遅いじゃないか」と、思わず怒鳴りつけてしまうという場面もありました。

そして「妻」だと名乗った女ですが、彼女は悪い男に騙されそうになり、橘が面倒をみてやった女性でした。橘からスペアキーをもらい、「現金を持っていけ」と言われ、橘宅に居たのです。

作文を大事に持っていた橘の気持ち

事件解決後、信一は長崎へ帰るため再びブルートレインに乗ります。そこに女性が現れたのです。女性は橘が大切にしていた作文を持ち出していました。その作文は、信一が小学生時代に書いたものでした。

女性は、信一が橘の息子だとは知らずに作文を読み上げます。そして「きっと、毎日読んでいたんだろうね」とつぶやきます。それを聞いた信一の目からは涙がこぼれました。

運転手が息子の犯罪を隠し、かばおうとした思い・・・橘も父親としての同じ思いを秘めていたことを、信一は知ったのです。父親への憎しみが氷解しはじめる瞬間だったのでしょう。

橘が自宅に戻ってみると、一室でグラスを空けてうたた寝する信一の姿がありました。彼は東京で父親と一緒に暮らす決意をしていたのです。その傍らには、とっておきのブランデーが・・・

橘は信一を起こさないようにしてブランデーを手にします。心の中で「一人前になりやがって。お前と飲むために買っておいたんだぞ」と語りながら、ブランデーをラッパ飲みしたのでした。

橘に同行していた吉野刑事

さて、この作品でどうしても書いておきたいシーンがあります。それはドラマ冒頭の橘が息子を迎えるために来ていた東京駅の場面。ここに同行していたのが吉野刑事(誠直也)だったのです。

複雑な思いで息子を待つ橘に、吉野は「自分を捨てた父親を許したわけではない」と無遠慮に言い放ちます。が、続けて、それでも息子は父親に会いたがっているはずだとも付け加えました。

父と子が対面した時、「憎くて、懐かしくて、悲しくて、嬉しくて」と息子の気持ちを代弁し、「父親の顔をジッと見るんですよ」と言います。せっかくの熱弁も、橘はそっけなく聞き流すのですが(苦笑)

実は、このドラマが放送された半年後、今度は吉野と父親との親子確執のドラマ「東京犯罪ガイド!」が放送されたのです。これは次回のコラムで取り上げようかなと思っています。

吉野自身が、父親に対して複雑な感情を持っているからこそ、能弁なまでに父と子の情愛について語ったのかもしれません。脚本も同じ塙五郎氏が書いていますので、余計にそう思いたくなります。


なおドラマでは、中森明菜さんの「少女A」が効果音のように流れていましたし、橘も口ずさんでいます。懐かしさを感じると同時に、昭和のあの頃、自分は平凡な学生だったなと笑ってしまいました。

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2023年07月20日

私だけの特捜最前線→90「掌紋300202!〜叶刑事の出生の秘密と父子の物語」

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※このコラムはネタバレがあります。

今回は「掌紋300202!」を紹介します。このドラマは、500回を超える特捜最前線のなかでも屈指の名作と言われ、脚本の長坂秀佳氏による直球勝負のストーリーがとても印象的なドラマです。

主演は叶刑事(夏夕介)で、父も母も知らない孤児という設定だった叶の出生の秘密が明らかになり、それに伴った代議士の父親(山内明)との愛憎劇が繰り広げられていきます。

代議士が持つノートをめぐって

政界の贈収賄を記録したノートが代議士の手に渡り、代議士は特殊な金庫に保管していました。特命課はノートの提出を求めますが、代議士は頑としてはねつけます。

代議士は4年前から密かに「手形の主」を探していました。その手形は昭和30年2月2日に生まれた我が子のものでした。そして、手形の主が叶刑事であることが判明したのです。

代議士が父親だとわかり、動揺する叶。父親への敬慕の裏返しからか、強引な捜査に出ます。代議士がノートを使って、政界工作を働くのではないかとみたのです。

その様子を見ていた秘書(東啓子)は、叶を呼び出し、代議士が私利私欲ではなく、政界浄化のために必死に取り組んでいることを告げ、息子として父親に相対してほしいと懇願します。

代議士の事務所を訪れた叶と秘書でしたが、何者かに雇われた殺し屋(天本英世)が潜入し、代議士を脅していました。叶が撃たれる寸前、代議士が急な動きをしたため、殺し屋は代議士を射殺したのです。

殺し屋は叶ともみあいになって窓から転落死しますが、叶たちが訪れる前に時限爆弾を金庫の中に放り込んでいました。駆け付けた神代課長(二谷英明)らは、金庫を開けなければならなくなったのでした。

金庫の暗証番号の秘密

ここからがドラマのハイライトになります。金庫は6ケタの暗証番号を入力し、午前と午後の8時ちょうどに、その番号が合っていれば開くというダブルセキュリティーの構造になっていました。

暗証番号を知っているのは代議士だけ。時限爆弾は8時2分にセットしてあり、金庫を開きさえすれば、爆弾を止めることができます。神代課長は叶、橘刑事(本郷功次郎)、桜井刑事(藤岡弘、)に推理するよう命じます。

叶は「自己中心的な男なので、自分の生年月日を使っている」と断言し、桜井は「最後は金しか信じないので、メインバンクの口座番号ではないか」と推理します。

一方、代議士が撃たれる瞬間の隠しカメラの映像を何度も見ていた橘は「一番大事に思っている日を番号にした。すなわち300202」と言って、叶の顔を見ます。つまり息子の誕生日だと考えたのです。

その根拠を求められた橘は「人の親としての私の直感だ」と答え、さらに代議士には父としての情愛があったとし、その証拠がビデオに写っていた「叶を助けるために自分が撃たれた」という行動だったと言い切ります。

桜井も「考えを撤回し、橘さんを支持する」と言い、神代課長も「(私の意見も)橘と同じだ」と断言します。激しく動揺する叶。ですが、その番号を入力すると、金庫は解錠したのでした。

最初から最後まで「父と子」が基軸

ストーリーは非常に単純で分かりやすく、最初から最後まで一本道で突き進んでいきます。そんなドラマの基軸になっていたのが「父と子」。つまり息子である叶と父親である代議士の関係だったのです。

政治家という極めて権限の強い立場にある代議士が、一介の刑事の任意同行に応じ、弁護士もつけずに一人で聴取を受けた・・・橘が「叶の誕生日」だと推理した根拠となるできごとでした。

伏線となるセリフを神代課長が叶に告げています。それは「父親は腹を痛めていない分、いつまでも父親になろうと努力する」。代議士も、探していた息子が叶だと分かり、父親になろうとしたのでしょう。

解錠した金庫にはノートだけでなく、「息子の手形」が大事にしまわれていました。それを手にし、父親の真意が理解できた叶は「これで、自分の過去を切ることができます」とつぶやきます。

すると橘は「そんなお芝居のようなセリフしか吐けんのか」と戒め、「死んだオヤジに腹を割ってやれ」と言葉をかけます。橘自身、自分の息子との確執を抱えているので、代議士の思いが痛いほどわかっていたのでしょう。

天才肌の桜井が探り当てるようなトリックではなく、「父と子」という基軸に沿った金庫の番号のカラクリは、余計にこのドラマを印象深いものにしてくれました。長坂脚本おそるべしです!


このドラマのゲストは、山内明さん、東啓子さん、天本英世さんの3人だけしかキャスティングされていません。特命課もカンコが出番なし、船村、紅林、吉野も出演場面わずかと徹底しています。

殺し屋役の天本英世さんは、まさにはまり役という感じでした。「太陽にほえろ」でもクールな殺し屋を演じていたほか、仮面ライダーの死神博士としてもおなじみですね。

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2023年07月13日

私だけの特捜最前線→89「誘拐 ホームビデオ挑戦状!〜ビデオテープに映し出されたトリックとは」

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※このコラムはネタバレがあります。

今回も5周年記念作品として放送された「誘拐 ホームビデオ挑戦状!」を紹介します。放送されたのは1982年9月で、ホームビデオがようやく一般に普及し始めたころでした。

当時とすれば最新機器でしたので、ドラマの中ではビデオの特性に着目したトリックなどもふんだんに盛り込まれています。そんな懐かしさとともにドラマを見ていくことにしましょう。

ビデオテープを使って要求する犯人

誕生日に幼女が行方不明になりました。その数時間後、母親宅に1本のビデオテープが投函されます。映像には縛られた幼女の姿、そして売れっ子評論家の後妻となった母親の姉が写っていたのです。

犯人は評論家が後妻にプレゼントした宝石を要求します。特命課は「必ず取り戻しますから」と頼み込み、後妻は宝石を持って犯人の指定した場所に立つことを志願したのです。

犯人が現れないまま時が過ぎていきます。その時、近くで交通事故が起き、そちらに関心が向けられていた瞬間、宝石は訓練されたシェパート(犬)によって奪い去られてしまったのです。

宝石を手にしたはずの犯人でしたが、幼女を返そうとはしません。実は、宝石はイミテーションだったのです。評論家には「すぐに取り返すと言っていた特命課に責任がある」と言い放たれてしまいます。

犯人から送られてきた4本のビデオテープを丹念に見直しながら、幼女を監禁している場所を少しずつ特定していく特命課。また、犯人が大衆の面前で評論家に罵声を浴びせられた青年だったことも判明します。

シェパードを使って再び宝石を奪おうとした犯人でしたが、張り込んでいた叶刑事らに阻止されます。逃げたシェパードを追跡し、ついに幼女の監禁先を突き止めたのでした。

ビデオテープに映るトリック

ドラマの見どころは、ビデオテープのメッセージに隠されたトリックを見破っていくところでしょう。犯人がビデオ編集に詳しいマニアックな人物という設定だからこその見せ場とも言えます。

その一つが幼女の後ろに映っている窓の外の映像。東京タワーを目印に捜査員が場所を探しますが見つかりません。それもそのはず、窓枠と風景を別々に撮影したものを合成していたからです。

今ではソフトさえあれば誰でも簡単にできますが、あの頃は一般の人には考えもつかないような技術だったわけです。それを見破ったのはメカニックに詳しい桜井刑事(藤岡弘、)でした。

桜井はさらに、窓枠そのものが合成であり、実際の監禁場所には窓がないことを突き止めます。それを受け、橘刑事(本郷功次郎)は2本目のビデオにだけ壁のシミがあることを発見し、場所の特定につなげていったのです。

ビデオ以外のトリックでは、シェパードを犯行に使っていたという視点も面白いです。誘拐時に幼女を脅かす手段にしたり、手に持っていた宝石の袋を奪わせたりと、なかなか手が込んでいます。

そのシェパードを追い詰め、見事に手なずけたのが叶刑事(夏夕介)。特捜最前線では一貫した犬好きというキャラになっていますが、その設定を見事に生かしたシーンと言えるでしょう。

橘が示した「人の命の重さ」

このドラマはトリックの部分に目がいきがちですが、人間性の部分にもクローズアップしています。その顕著なシーンが、捜査に行き詰った特命課のなかで、橘刑事が起こした行動に見られます。

手にプレゼントの包みを持つ橘。その意図について「不吉なことを考え、つい弱気になってしまう。この誕生プレゼントを俺は渡してみせる。あの子を救い出してからな」と、若手刑事たちに語るのです。

橘は、母一人子一人の母親が娘を案じる気持ちをを誰よりも理解し、「人命より重いものは無い」と考えていました。だからこそ「絶対に救出する」という気持ちを奮い立たせたかったのでしょう。

高価な宝石が大事だからと、義理の妹の娘の命がかかっているにもかかわらず、あえてイミテーションを渡した評論家。それが人間の弱さであり、エゴでもあり、やみくもに非難すべきではありません。

評論家の行為があったからこそ、橘の信念、もっと言うならば脚本家や演出家の主眼である「人の命は地球よりも重い」というテーマを、より一層際立たせてくれたのだと思います。

ちなみにラストでは、橘にならった特命課全員がプレゼントを置いていくシーンを描いています。後味の悪いストーリーが多い特捜最前線のなかでも、すがすがしいエンディングと言えますね(笑)


ドラマで幼女役を演じているのは子役時代の岩崎ひろみさん。大人になってからもNHK連続テレビ小説や大河ドラマに出演するなど、本格派の女優として活躍するようになります。

恐怖におののいたり、泣き出したりするだけでなく、犯人の男をにらみつける演技は、なかなかの芸達者ぶり。岩崎さんの熱演あってのドラマだといっても決して過言ではありません。

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2023年07月06日

特捜最前線 登場人物コラム「特命課・吉野刑事」

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今週は、ドラマ解説ではなく、ちょっとした小話を書きます。題して「登場人物コラム」。
登場するのは、特命課の吉野竜次刑事です。

吉野刑事は、特捜最前線の第1回放送から出演しており、第435回の「特命課・吉野刑事の殉職!」まで8年半もレギュラーを務めました。

演じる誠直也さんは、特撮ヒーローものに出演していたこともあり、走っている貨物列車に飛び移るというハードアクションもこなした俳優です。

その吉野刑事ですが、猪突猛進型タイプの正義感の強い好漢で、やらかしも目立ちますが、神代課長はじめ先輩刑事たちは大目に見てくれます。

紅林刑事や叶刑事のようなエリートタイプが多いなかで、たたき上げでキャリアを積んでいるのが吉野刑事。同じタイプの蒲生警視(長門裕之)にも一番かわいがられました。

再録発売されたDVDシリーズでは、吉野刑事主演作の収録はあまり多くありませんが、「パパの名は吉野竜次!」や「人妻を愛した刑事!」のような傑作もあります。
→私だけの特捜最前線→83「パパの名は吉野竜次!〜子役が人間味あふれる吉野をサポート」

何といっても「特命課・吉野刑事の殉職!」が最も印象に残るエピソードということになるでしょう。特捜最前線のなかで、殉職という形で降板したのは荒木しげるさんが演じた津上刑事と吉野刑事だけだからです。

この回は、殉職すら事件の伏線にしていた津上編とは異なり、クライマックスに吉野が射殺される場面をもってきました。多くの刑事ドラマで描かれている殉職編と同じパターンになっており、特捜では唯一無二のドラマと言えます。

誠さんは、吉野の人物設定に不満があったとされ、それが降板の理由だとも言われています。客観的にも「未熟な若手刑事」の域を脱しなかったという印象があります。

例えば、女性に対するデリカシーの無い紋切り型の口調、偏見や差別的とも思えるようなセリフなどです。昭和という時代背景を差し引いても「ちょっと言い過ぎでは」と苦笑するような場面も見受けられましたね。

今回のコラムはここまでといたします

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2023年06月29日

私だけの特捜最前線→88「橘警部逃亡!〜橘警部のハードボイルドかつスリリングなドラマ」

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※このコラムはネタバレがあります。

今回紹介するのは「橘警部逃亡!」というドラマ。もちろん主演は橘警部(本郷功次郎)で、ハードボイルドなドラマは橘主演作のなかでも指折りの傑作と言っていいでしょう。

情報を漏らしていたスパイは?

覚せい剤組織壊滅を目指す特命課と新宿中央署は、何度となく摘発に失敗していました。橘は「合同捜査本部に出席する中央署の3人の幹部のなかにスパイがいる」とみて、スパイのあぶり出しに乗り出します。

スパイを知っていると思われる売人を、あえて中央署に連れて行った橘ですが、売人はスパイを恐れて自殺を図ってしまいます。とっさに橘は「自分が殺した」と芝居を打ったのです。

橘は3人の幹部の直属部下の刑事(山田吾一)を密かに呼び出し、スパイが誰かを探ろうとします。しかし、橘を殺人犯として追う中央署によって阻止され、橘は逃亡しました。

組織に単身乗り込んだ橘は、組織の組長から「桜井を撃て」と命じられます。これもスパイの入れ知恵だったようで、橘は不本意ながらも桜井刑事(藤岡弘、)を狙撃し、組織の信用を得ることに成功します。

そこに現れたスパイ・・・実は部下の刑事だったのです。橘は機転を利かせて特命課にスパイの正体を知らせ、組織だけでなく、その上にいた陰の大物まで一網打尽にしたのでした。

4回の発信音の意味は?

このドラマのハイライトは二つあります。その一つが「スパイが誰かを知らせる方法」でした。橘は、3人の幹部と常に行動を共にしていた部下の刑事がスパイであることを特命課の秘密電話で知らせます。

もちろん、直接言葉で教えるわけにはいきません。そこで橘は、4回発信音を鳴らして切り、それを2回繰り返します。神代課長(二谷英明)らメンバーは、4回の発信音の意味を考えます。

4丁目・・・4番地・・・と推理する中で、カンコ(関谷ますみ)の「4番目のなんとか」との発言でひらめいた叶刑事(夏夕介)は「4番目の男ということでは」と叫び、スパイの正体を見破ったのです。

正直なところ、ドラマに登場する3人の幹部は脇役俳優が演じており、部下の刑事に山田吾一さんをキャスティングしていれば、スパイが刑事(山田さん)であることは一目瞭然です。

それでもドラマ後半までスパイの正体を明かさず、橘が正体を知ったうえで、どのように特命課に伝えようとするのか。そうした興味を引き付ける長坂秀佳脚本は見事の一言に尽きます。

絶対的な信頼関係の橘と桜井

もう一つのハイライトは「橘が桜井を狙撃する」というショッキングな展開です。同じ釜の飯を食った同僚を撃つ橘の心境、そしてワナと知りながら標的になる桜井・・・まさに息をのむシーンです。

橘は狙撃の名手ですが、一発で仕留めなければならない極限状態でも、急所を外して撃ち抜くというのは驚くべき腕と言えます。それを可能にしたのも、微動だにしなかった桜井の度胸あってのことでした。

撃たれた桜井は収容された車のなかで「橘さんを信じていたよ」とつぶやきます。出会った当時の確執を乗り越え、捜査活動を通じて培ってきた驚くべき信頼関係といっても過言ではありません。

一方の橘は組織を一網打尽にした直後、真っ先に桜井が入院している病院に駆けつけます。ベッドで寝ている桜井の手を握り、おそらく心の中で「すまない」「ありがとう」とつぶやいていたに違いありません。

その表情を見ながら、桜井は微笑みを見せながらうなづきます。ここでも二人の信頼関係の厚さが伝わってきます。看病していたカンコが涙する気持ちと同じように、感動で胸が熱くなるシーンでしたね。


ちなみに「橘警部逃亡!」は、前回紹介したおやっさん主演のハワイロケシリーズ同様、放送5周年記念作品として放送されました。

※前回のコラムもぜひご覧ください
私だけの特捜最前線→87「望郷、望郷U〜二つの事件と船村父娘のドラマを同時進行させた話」

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2023年06月22日

私だけの特捜最前線→87「望郷、望郷U〜二つの事件と船村父娘のドラマを同時進行させた話」

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※このコラムはネタバレがあります。

今回は、特捜最前線の放送5周年記念作品として前後編で放送された「望郷 凶悪のブルーハワイ!」と「望郷U 帰らざるワイキキビーチ!」を紹介します。

「望郷」前後編は、30年前の事件と現在進行形の事件に加え、おやっさんこと船村刑事(大滝秀治)と娘の香子(木村理恵)のドラマという「二本立てのストーリー」になっています。

ハワイを舞台に事件が展開

30年前に殺された若い女性の白骨死体と少年少女が写った古い写真が発見されます。当時女性の夫だった男は無期懲役の服役犯で、妻殺しの容疑がかけられますが、脱獄を図ってハワイへと逃亡してしまうのです。

男はハワイ移民の日系人二世で、幼なじみだった同じ日系人二世の女性(楠田薫)に会うために逃亡したことが分かりました。女性は夫を戦争で亡くした後、孤児を引き取って育てる慈善活動をしていたのです。

男は警察官から拳銃を奪い、スタジアムに立てこもりましたが、現地警察の一斉発砲によって負傷して逮捕されます。しかし、入院していた病院から再び逃走し、今度は何者かに殺された姿で発見されたのです。

神代課長(二谷英明)はじめ、特命課全員がハワイに集結し、男を殺した犯人を追うとともに、30年前の事件の真相究明に乗り出します。そして、女性が30年前の殺人を犯した疑いがあることを突き止めました。

男を殺した犯人(西田健)は女性に育てられた孤児で、女性の犯行が表ざたにならないように男を殺したのでした。特命課によって追い詰められた犯人は、バスジャックをした挙句、人質を取って立てこもったのです。

その人質が船村の娘・香子でした。飛び出そうとする船村を橘刑事(本郷功次郎)が必死で止め、女性は人質を離して出てくるよう呼びかけます。しかし、隙を突いた現地警察によって犯人は射殺されてしまったのでした。

日本を捨てられなかった女性

ドラマで一方のテーマになっているのが「ハワイの日本人移民」の歴史です。ドラマの中で、男や女性らが口ずさむ「ホレホレ節」のもの悲しい歌詞とメロディーが効果的に演出されています。

「ホレホレ節」は、移民一世の人たちが砂糖耕地での厳しい労働環境を歌った労働歌です。そんな重労働に耐えてきたハワイ移民ですが、太平洋戦争に巻き込まれ、人生を大きく狂わせた人も少なくありません。

男と女性は婚約者でしたが、戦争によって男は送還され、女性はハワイに取り残されます。終戦後間もなく、女性が男を頼って来日した時、男は別の女と結婚していました。女性は嫉妬から殺人を犯してしまったのです。

女性は国外逃亡したとして公訴時効(当時15年)停止の対象となっていました。ハワイでの永住権があったため、ハワイ(アメリカ)で裁判を受けることもできましたが、女性は日本への帰国を選択しました。

船村は「日本を捨てきれなかったんだろうなあ」と、女性の心情を図ります。そして、時効制度に対する皮肉を込めながら、神代課長に「罪を悔い、やり直そうとした・・・30年間ですよ」と語るのです。

航空機内で日本の領空に入った時、船村は逮捕状を読み上げながら女性に手錠をかけます。カンコ(関谷ますみ)がそっとハンカチで手錠を覆い隠し、船村は複雑な表情を浮かべるのでした。

船村から娘婿へのメッセージ

もう一つのテーマが「船村父娘のドラマ」です。香子は妻子ある男性と結婚する意志を船村に告げます。大反対する船村に「一生に一度だけ父さんの言うことを聞かない子供になる」と言い放ち、家を出てしまいます。

妻子と別れ、ハワイで香子と新生活をしようとした男性でしたが、起業するための全財産を詐欺で失ってしまいます。子供を宿していた香子にも中絶を促しますが、香子は産む決意をするのです。

捜査でハワイ入りしていた船村ですが、香子にも男性にも接触しません。しかし、香子が捨てた(あるいは落とした)「お守り」を拾い、ハワイにいる間、ずっと持ち歩いていたのです。

人質から解放されたものの、意識を失っていた香子を救急車内で男性とともに見守る船村。船村を父親と知らない男性は「俺のために父親と別れたことが、どんなにこいつを苦しめたのか・・・」と懺悔します。

船村は「しっかり頑張って、この地に根を張るんだよ」と励まします。ハワイ移民の苦難の歴史を知ったからこそ、出てきた言葉であり、同時に義理の父親としての厳しくも温かい励ましでもありました。

その時、香子が無意識につぶやいた言葉を聞き、思わず「お守り」を握らせた船村を見て、男性は香子の父親だと悟ったに違いありません。「お父さんと言ってるんですよ」と告げたのでした。

見どころの多かった「望郷」前後編

さて今回は前後編ということで、さまざまな見どころがありました。ストーリーには直接関係ありませんが、ちょっと紹介しておきます。

ハワイに逃亡した男を追うため、神代課長は船村とカンコを派遣します。船村は目をシロクロさせ、「自分が行きます」と真っ先に手を挙げた吉野刑事(誠直也)は、「なぜカンコが?」と不満をぶちまけます。

即座に神代課長は「高杉君は英語ができる」と答え、船村の通訳の任にあたるためだと示唆します。しかし本当は、船村を娘に会わせるための「特命」を受けての派遣でもあったのです。

部下たちの前ではあくまでも業務命令に徹しつつ、船村への温情あふれる配慮を忘れない神代課長。プライベートに関する調査を任されることが多いカンコへの信頼もかなり高いのでしょう。

そのカンコですが、ハワイでは背中のほとんどが見えるセクシーな服を着ていました。唯一の女性レギュラーである関谷ますみさんのサービスカットといったところでしょうか(笑)



もう一つ、昭和の時代を思わせるシーンがありました。男がスタジアムに立てこもった際、射殺も持さない姿勢を見せた現地警察の指揮官に対し、船村が「撃たないでください」と必死に懇願した場面です。

指揮官は承諾したものの、部下たちに対して「先に撃つな。だが、相手は日本人だ。真珠湾を忘れるな(リメンバー・パールハーバー)」と叫んだのです。その指揮官も日系人だったのにもかかわらず・・・

塙五郎氏の脚本通りだったのか、天野利彦監督の演出だったのか、定かではありませんが、終戦から40年に満たないという昭和の時代だったからこそ、あえて指揮官のセリフに加えられたのではないかと思います。

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2023年06月15日

私だけの特捜最前線→86「リミット1.5秒!〜かつてのライバル、桜井と元刑事の差は何だったのか」

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※このコラムはネタバレがあります。

今回紹介する「リミット1.5秒!」は、桜井刑事(藤岡弘、)主演の正統派刑事ドラマとも言えるようなハードボイルドな作品となっており、最後の最後まで手に汗握る展開のドラマです。

桜井を拉致する元刑事

路上で拉致された女性(音無真喜子)からと思われる電話を受けた桜井刑事は、指定された場所へと向かったまま消息を絶ちます。特命課の刑事たちが懸命に探していた頃、桜井と女性はある場所に監禁されていました。

桜井を監禁したのは、8年前まで同僚だった元刑事(川地民夫)。当時、彼は拉致監禁事件に巻き込まれ、極限状態に置かれたなかで侵入してきた警官を犯人と間違えて撃ってしまいます。

元刑事は警察の査問委員会で停職の懲戒処分となりました。その決定に対し、「直後に事件現場へ来た桜井が自分に不利な証言をしたためだ」と誤解したまま、元刑事は辞職して姿を消していたのです。

桜井の監禁はその復讐で、元刑事は「これは裁判なんだよ、桜井」と薄笑みを浮かべます。仲間である右足を引きずる男が、一緒に監禁されている女性を激しく痛めつけます。桜井にはそれが耐えられません。

別室に連れ込まれた女性の悲鳴が、桜井をどんどんと追い込んでいきます。桜井は、あの時の元刑事と同じように精神的なダメージを受け、極限状態に達しようとしていたのです。

桜井をワナにはめる元刑事

特命課の捜査によって元刑事の所在が明らかになります。一筋縄ではいかないと考えた神代課長(二谷英明)は、あの時の事件の調書を持参して元刑事のもとを訪ねました。

神代は「拳銃を持つ者は冷静で客観的な判断が求められる。君ほどの腕前だったなら、1秒あれば判断できたはずだ」と語ります。しかし元刑事の復讐心を覆すことはできません。

元刑事は、監禁中の桜井に対して「俺にわびろ」と命じます。しかし桜井もまた、「冷静で無い者は拳銃を持つべきではない」と言い切ります。そこで元刑事は、最後のワナを仕掛けるのです。

尾行中の吉野刑事(誠直也)の右足を狙撃し、病床の吉野の元に「監禁場所に一人で来い」という脅迫状を送り付けた元刑事。あの時と全く同じ状況をセッティングし、桜井を試そうとしたのでした。

仲間の男と同じように、右足を引きずりながら単身乗り込んできた吉野。女性に促され、拳銃を構える桜井刑事・・・だが彼は、元刑事とは違い1秒を待つことができ、ワナにはまらなかったのでした。

桜井と元刑事との差とは

このドラマは、拉致監禁という極限状態の姿を演じた藤岡弘、さんの熱演と、冷酷な復讐鬼ぶりを見せてくれた元刑事役の川地民夫さんの名演技に尽きると思います。

ともにエリート刑事として切磋琢磨したライバル。二人の差は、どんな極限状態であっても冷静な判断ができたか、できなかったか、だけでした。そのことを元刑事のラストのセリフが物語っています。

クライマックスで、踏み込んできた男(吉野)を冷静に見極め、引き金を引かなかった桜井。元刑事は「1秒の負けだ。だが、この1秒の差は大きい」と、ようやく自分の非を認めたのでした。

元刑事は犯罪を犯すようなダーティーな人物ではなく、あくまでも自分の正当性を証明したかった、それを桜井に認めさせたかっただけでした。実の妹を使って、痛めつけられる女性の演技をさせてまでも・・・

その女性役は、当時の人気女優だった音無真紀子さんが演じています。ドラマ終盤で真相が明らかにされるまでの痛めつけられぶりも、迫真の演技だったと言えるでしょうね。

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プロフィール
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マイケルオズ@フリーランスライター
「特捜最前線」がマイブームになっているオヤジです。リアルタイムの頃は津上刑事より若かったのに、今はおやっさんよりも年長者になりました(苦笑)
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