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2023年01月19日

私だけの特捜最前線→69「死刑執行0秒前!〜おやっさんの真骨頂と言うべき人間ドラマ」

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※このコラムはネタバレがあります。

今回紹介する「死刑執行0秒前!」は、フィクション性の高い現実離れしたストーリーなのですが、特捜最前線の真骨頂でもある「人間ドラマ」の最高傑作の一つに挙げてもいい作品だと思います。

その主役となるのはおやっさんこと船村刑事(大滝秀治)。死刑の確定判決が出た死刑囚の無実を証明するために、真犯人と思われる同年代の男性に真実を語らせようと全精力を尽くすというのがドラマの肝となります。

死刑執行目前の男を救えるか?

死刑囚の罪状は、高利貸しをしていた家族4人を殺害した尊属殺人。事件から14年後、当時高利貸し一家が雇っていた用心棒の白骨死体が発見されたことから、船村は「無実を証明する新証拠だ」と行動を開始します。

ところが、死刑執行まで1日しかなく、それまでに真犯人を突き止めなければならなくなります。特命課は半ば強引に男性を容疑者として連行しますが、当然のことながら男性は潔白を訴えるのです。

さらに、死刑囚を有罪にした検事(菅貫太郎)が特命課に立ちはだかり、有罪の決め手となった証拠をタテに「不当逮捕した男性を釈放しろ」と迫ります。神代課長は、男性を別の場所に移し取り調べ続行を命じます。

男性は、妻と死別後に別の女性と結婚し、娘のうちの一人は弁護士を目指して勉強中でした。妻は幼い我が子と無理心中したのですが、その原因は高利貸しから借金をしたことだったため、動機は十分あったのです。

ドラマの結論から書きますが、船村の執念の説諭によって男性は自供し、新しい物的証拠となる用心棒の死体を埋めた場所を指し示します。時あたかも死刑執行の直前で、死刑囚は無実が証明されたのでした。

大滝秀治さん演じる人間ドラマ

この作品には、特捜最前線らしい人間ドラマあふれるエッセンスがたくさんあります。その多くの部分を名優・大滝秀治さんが演じることで、非常に印象的なシーンとなっているのです。

夜中にかけて長時間にわたる取り調べの途中、船村は「これが唯一の趣味」という煎茶を点てます。そのお茶は、船村自身も盆と正月しか飲まない貴重品で、それを男性に飲ませるのです。

このシーンの素晴らしいところは、船村自身がお茶を差し出すのではなく、若い津上刑事に代弁させていることです。船村が席を外していることもあり、恩着せがましさを感じさせない演出といえます。

ドラマのハイライトは、弁護士志望の娘が法律を盾に「不当監禁しているあなた方を逮捕できるんだ」といきり立つ前で、船村が「あなたと法律を論じているわけではない。心です」と語り始めるシーンです。

船村は「弁護とは、真実に目をつぶってごまかすことじゃない」と諭し、男性が葛藤する姿に「真実を語らせることが、お父さんを助けることになる」と訴えます。大滝さんの長ゼリフが見事な場面です。

死刑執行というタイムリミットに・・・

そして、単なる人間ドラマに終わらせないのが、長坂秀佳脚本の醍醐味です。死刑執行という取り返しのつかないタイムリミットを設定し、船村はじめ特命課に緊張感を生み出しているのです。

男性がついに自白するシーン。並のドラマではここで一件落着にしてしまいがちですが、神代課長(二谷英明)は「自白だけでは死刑執行は止められない」と、視聴者の希望をバッサリ断ち切る言葉を吐くのです。

神代は「客観的な物的証拠によって、新事実を示す必要がある」と言い切ります。そこで、用心棒が発見された現場に男性を連れていき、男性に埋めた場所を自供させるというプロセスを踏んでいくことになります。

当時山林だった場所が宅地造成ですっかり変わってしまった現場。すでに死体が発見されているため、それを知っている吉野刑事や津上刑事は、タイムリミットに間に合わないと焦り、男性に示唆するよう求めます。

しかし船村は「あの人は一生懸命思い出そうとしている。それを信じて待つ」と語ります。本当は一番焦っていたのかもしれませんが、まるで自分に言い聞かせるかのように静かに見守ったのでした。



死刑執行をタイムリミットにするという脚本の性格上、現実離れした部分が多々見受けられます。ただ、それはフィクションとしてとらえ、あまり重箱の隅をつつくようなことはしないほうがいいでしょう(苦笑)

それにしても、結果論として死刑囚は無実だったわけで、ストーリーとは別に重大な問題を突きつけたとも言えます。死刑執行された後で男性が真犯人と分かった時、いったいどうするつもりだったのでしょう?

起訴して死刑を求刑した検事、検察側の主張を認めて死刑判決を出した裁判所、そして死刑執行を命じた法務大臣・・・っと、これ以上書くと、死刑制度の根幹にかかわることになるので、深入りはやめておきます。

フィクションとして見れば、この作品は特捜の名作なのですから!

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2023年01月12日

私だけの特捜最前線→68「初指令・北北東へ急行せよ!〜これぞ特捜と言える地味ながら深みのあるストーリー」

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※このコラムはネタバレがあります。

2023年の「私だけの特捜最前線」コラムのスタートは、初期の作品「初指令・北北東へ急行せよ!」を紹介します。他の刑事ドラマでは見られない、これぞ特捜というエッセンスが詰まった作品です。

一家心中目前の夫婦は見つかるか?

正月の放送ということで、神代課長(二谷英明)宅で「かるた会」を催すというほのぼのとした場面が登場します。船村刑事(大滝秀治)も、留守番の桜井刑事(藤岡弘、)に浮かれ気分で定時連絡しています。

課長宅を訪問する前、妻と娘と食事をした船村は、隣席で食事をした子連れの若い夫婦の忘れ物に気づき、届けるため自宅を訪れます。そこで、一家心中をほのめかす遺書を発見したのです。

忙しさにかまけ、所轄署のやる気のなさに怒りをぶつける船村を見ながら、神代は「ほかがやらないことをやる。でなければ、特命課を設けた意味がない」と言い切り、早速部下たちに夫婦探しを命じるのです。

忘れ物を探しに来た夫婦の子供を見つけるなど、地道な捜査で夫婦の足取りを追いかける刑事たち。心中の動機も、経営していた会社の清算のため、暴利のサラ金に手を出したからだと分かります。

あたりが暗くなる中で、船村は水門から川に飛び込もうとした夫婦を発見。生きることに絶望する夫婦に「意気地がないことも時には罪になる」などと熱弁を振るい、思いとどまらせる船村でした。

神代課長と高杉刑事の印象的なシーン

このドラマは「一家心中を企てる夫婦を探す」という、事件ではない非常に地味なテーマを丹念に描いています。ドラマの中で、とくに印象に残ったシーンを二つ拾ってみたいと思います。

足取りを追う捜査で、夫婦が難民募金に全財産を寄付したことが判明します。どう思うか問われた玉井婦警(日夏紗斗子)は「人の善意が光ったみたいで感動した」と話しますが、神代の見方は違っていました。

「警察官は状況分析をすることが先だ」と言い、「人は金銭に執着があるうちは死なないが、それを捨てたということは、いよいよ死ぬ気になった」と語ります。神代の洞察力を示すエピソードです。

夫婦から取り残される形になってしまった幼い兄と妹が、死ぬことを悟って泣いてしまうシーンがあります。そんな二人を見て、声を掛けずにはいられなくなったのが高杉刑事(西田敏行)です。

子供たちに優しく寄り添い、一緒になって涙を流す高杉。西田さんだからこそ、この場面が生きてくるのです。人間ドラマの色彩が濃い作品に、ちょっとしたエッセンスを加えるのはさすがですね。

正月なので、ラストは「希望」に

特命課によって命長らえた夫婦は、待っていた子供たちを抱きしめます。その姿を見ながら船村は「これから、あの親子はどうなるのだろう。何もできない我々は無力だ」と複雑な表情を見せます。

そこに、かつて経営者の元で働いていた従業員が駆け付け、「今度は私たちが恩返しをする番。みんなで助け合いましょう」と励まします。船村も表情が緩み、妻と娘に朗報を知らせるのでした。

このドラマは1987年の正月に放送されました。社会派の特捜らしい重苦しいテーマを描いてきたわけですが、ラストに「希望」をつなぐシーンを持ってきたところは見事でしたね。

ところで、夫婦役を演じたのは上村香子さんと横光克彦さんです。横光さんは、のちに紅林刑事として、特命課のレギュラーとして登場します。もしかすると、テスト的な出演だったのかもしれません。

本年も特捜最前線コラム、よろしくお願いいたします。

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2022年12月29日

私だけの特捜最前線→67「痴漢・女子大生被害レポート!〜西田敏行さん演じる高杉刑事が活躍する数少ないドラマ」

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※このコラムはネタバレがあります。

今回は特捜最前線の初期、高杉刑事(西田敏行)が在籍していた時のドラマより「痴漢・女子大生被害レポート!」を紹介します。高杉刑事が主役という数少ない作品の一つです。

音大生をめぐる男が次々に殺されて

連続女性暴行事件の捜査をしていた高杉刑事は、暴行犯に襲われていた音大生を助け、男を現行犯逮捕します。音大生は高校時代の友人である男子大学生が待つ公園に向かっていた途中だったのです。

事情聴取の後、待ち合わせから1時間半遅れで高杉と音大生が公園に行ったところ、大学生は何者かに石で殴られて死んでいました。状況から怨恨の可能性があるとして、特命課は捜査に乗り出します。

その結果、音大生を指導するピアノ教師の女性と、密かに音大生と付き合っていた男性助教授が捜査線上に浮上します。ただ、ピアノ教師にはアリバイがあり、助教授への容疑が深まっていったのです。

ところが助教授も、大学生と同じく石で殴られて殺されていました。同一犯の可能性が取りざたされ、音大生が関係する第三者の存在も疑われる中で、神代課長は「犯行が似すぎている」と疑問を抱きます。

助教授殺しの犯人はピアノ教師でした。教師は、音大生を愛するあまり、音大生の恋人だった助教授に憎しみを抱いていました。そして、大学生殺しを模倣し、同じ手口で助教授を殺害したのです。

大学生殺しの意外な真犯人

大学生殺しに関しては振り出しに戻ってしまいました。音大生は「彼は真面目でいい人だが、最近自分に言い寄るようになってきたので、自分はその気持ちに応えられないことを言うために待ち合わせた」と話します。

高杉は、音大生を助ける直前、別の女子高生から痴漢に間違われていたことを思い出します。女子高生を探すため、駅で張り込みを続ける高杉。音大生に対し「俺のカンが当たっていないことを祈る」とだけ告げていました。

女子高生を見つけた高杉は、彼女を連れて現場の公園に連れていき、事情を説明するように促します。すると女子高生は泣き出し、公園で大学生に襲われて、無我夢中で石で殴って逃げたのだと白状しました。

「真面目でいい人なのに・・・」と愕然とする音大生。高杉は「彼は欲求不満が高まっていたのだろう。そこに運悪くこの人(女子高生)が通りかかってしまった」と、大学生の心底を代弁したのです。

一連の事件で音大生は、恋人、恩師、友人を一気に失いました。その姿を見ながら「俺のすることは、あなたの夢をぶっ壊しているようだ。疫病神は俺の方だ」と自戒を込めて語りかける高杉でした。

西田敏行さん主演だからこそ

この作品のストーリーは極めて激辛で、特捜らしい後味の悪いドラマです。そして、男女関係や性的マイノリティなど、視聴者にいろいろと考えさせられるような内容となっています。

その部分を書いていくと重苦しいコラムになってしまいますので、やめておきます(苦笑) それよりも、このドラマでの心憎い演出について触れてみます。西田敏行さんが主演だったことにも関係してきます。

ドラマの序盤で、高杉刑事は女子高生から痴漢に間違われ、通りがかった警察官に詰問されます。後々重要なシーンになるわけですが、この後ドラマが一気に展開したことで、すっかり忘れてしまいました。

しかも、高杉と警察官のコミカルなやり取りがあったので、てっきり「事件に関係ない笑わせ場面の一つ」と思い込んでいたのです。他の刑事だったら、おそらく「事件のカギになる場面」と素直に思ったでしょう。

特捜だけではありませんが、西田さんのシリアスとコミカルの使い分けは天下一品です。主演作品はごく限られていますが、どれも印象的なドラマばかりで、さすがは第一線を走り続ける名優だなと唸るばかりです。



2023年も引き続き、特捜最前線のドラマ解説コラムを書いていきたいと思っています。次回は1月12日の予定です。

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2022年12月22日

私だけの特捜最前線→66「サンタクロース殺人事件!〜1つの事件から複数の人間ドラマを描く」

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※このコラムはネタバレがあります。

特捜最前線のなかで、クリスマスにちなんだ作品のひとつに「サンタクロース殺人事件!」というドラマがあります。人間模様を描かせたら右に出る者はいない塙五郎さんが脚本を手掛けています。

このドラマの最大の特徴は、特命課の刑事たちそれぞれに見せ場を作っていることです。ストーリー解説の中で触れていきますが、そのなかで主役に据えているのは吉野刑事(誠直也)です。

殺人犯はサンタクロース!

芸能プロを装ったやくざが何者かに殺されます。通報したのは、家出人と思われる少年で、同じころ、橘刑事(本郷功次郎)の息子が家出したとの連絡があり、橘は息子かもしれないと胸騒ぎがするのです。

見つかった少年が息子ではなく、ひとまず安堵する橘。少年の証言で、通報を促したのが浮浪者と分かり、紅林刑事(横光克彦)が消息を追います。その結果、浮浪者は広域指名手配の男だったことが判明したのです。

一方、吉野刑事は行きつけのケーキ屋の女店員が万引きするところを目撃し、一緒に品物を返却して謝罪に歩きます。女店員は警官の兄と二人暮らしで、芸能界へのデビューを目指していました。

やくざが殺される数日前に手帳を紛失していたと知り、遺失物係を訪ねた吉野の前に表れたのは、左遷されてきた蒲生警視(長門裕之)。蒲生の協力で、やくざが落とした手帳が発見されたのです。

手帳のメモから、女店員の兄が容疑者として浮かび上がります。警官は、慰問のためサンタクロースの衣装を借りており、「サンタクロースが殺人犯だ」という浮浪者の目撃証言とも一致しました。

女店員に新宿駅での待ち合わせ時間を電話で指示してきた警官。吉野からの連絡を受けて、特命課の刑事たちが張り込みをします。そこに、サンタクロース姿の男がやって来たのです・・・

サイドストーリーとエンディング

ここまで書いたストーリーとは別に、桜井刑事(藤岡弘、)のエピソードも挿入されていました。それは、当初やくざを殺した容疑者として逮捕された対立組織のチンピラ(磯村健治)の存在です。

チンピラもやくざを殺そうと狙っていましたが、何者かに先にやられてしまいました。メンツなのか、自暴自棄なのか、殺人を「自分がやった」と主張していたのです。

桜井は、死産になってしまった妻のためにも、チンピラに足を洗うよう促します。チンピラは、組織の連中にボコボコにされながらも脱退し、人生をやり直すために新宿駅へと向かったのです。

新宿駅・・・特命課が張り込み、サンタクロースの格好をした警官が現れた場所でした。警官は刑事たちの姿を見て逃げ出し、刑事たちは追いかけます。チンピラの目の前に逃走犯と刑事の姿が見えたのです。

桜井に恩返しをするため、警官の前に立ちふさがろうとしたチンピラ。しかし、刃物を持った警官に刺されてしまいます。さらに警官は逃げまどい、通行人の女性に刃物を突き立てる暴挙に出たのです。

そこに居合わせた蒲生警視。警官を組み伏せて逮捕しようとしますが、手錠を持っていないことに気づきます。吉野らに取り押さえられた警官。その姿を見て「お兄ちゃんのバカ」とつぶやき、女店員は立ち去ったのでした。

複数のドラマが作れるほどのシナリオ

ストーリーの流れを書いてきましたが、かなり強引にラストシーンへドラマを終結させたという印象はありますが、一つ一つの人間模様は単独でもドラマが作れるほどの中身で、塙脚本の真骨頂とも言えます。

橘刑事と少年とのやり取りでは、同じ長崎出身ということで、長崎弁で会話をする二人。少年に息子の面影を感じながら、できるだけ少年の気持ちに寄り添おうとする橘の父性愛を感じずにはいられません。

橘が新宿駅での張り込み中、高杉府警(関谷ますみ)に連れられた少年に対し、売店で買ったケーキを「お母さんのクリスマスプレゼントに持っていけ」と渡すシーンは、なかなか味のある演出だと思いました。

蒲生警視の場面も、別のドラマにしたいほどでした。冒頭で神代課長(二谷英明)に「俺は辞める」と言っておきながら、前言撤回して「警視総監じきじきの栄転」と強がる姿は、蒲生の面目躍如といったところ。

同じ「たたき上げ」として蒲生を尊敬している吉野にとって、蒲生の左遷は我がことのように悔しかったでしょう。遺失物を探しながら、その気持ちをぶつけても平然とする蒲生。二人の関係性を物語る名場面でした。

一つだけ個人的に残念だったのは、チンピラが警官に刺されるシーンをなぜ入れたのか。あれではまるっきりの犬死ですし、後味の悪いドラマをより一層激辛にしてしまいましたね(苦笑)

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2022年12月15日

私だけの特捜最前線→65「通り魔・あの日に帰りたい!〜孤独な少年は、なぜ嬉々として自供するのか?」

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※このコラムはネタバレがあります。

今回は第228話「通り魔・あの日に帰りたい!」をご紹介します。主役は叶刑事(夏夕介)ですが、通り魔の容疑者として特命課が取り調べる少年(中村雄一)のインパクトが大きい回でもあります。

通り魔の犯人になりきっている少年

通りがかりの人にガソリンを浴びせ、火をつけて焼死させるという連続通り魔事件を追う特命課に、殺人未遂に終わった2件の容疑者として少年が逮捕され、取調室に連行されます。

少年は「すべて自分の犯行だ」と自供しますが、取り調べられることが楽しいかのように嬉々としています。その態度に叶は違和感を覚え、おやっさん(船村刑事)は「まるで犯人を演じているようだ」とみるのです。

叶は、自らが少年と同じ生活をすることで、少年の心理を探ろうとしました。少年は夜間警備員で、無人のビルを一晩中定期巡回し、朝方帰宅して床に就くという「昼夜逆転の孤独で退屈な日々」をおくっていたのです。

やがて、少年が真犯人から「通り魔の犯人役」を買っていた疑いが強まります。取調室で独りぼっちにするという神代課長の荒療治で、少年はついに真実を自供します。真犯人も少年と同じ孤独な若者だったのです。

少年は殺人未遂の罪で少年院に送られます。収容先で叶が見たのは、仲間と楽し気にコミュニケーションをとる少年の姿。ここでも少年は「陽気な若者の役」を演じているのでしょうか・・・

「孤独」にスポットを当てたドラマ

このドラマでは、事件の動機を「孤独」というところに置いています。そして、真相解明する役として、孤児院育ちで自らも孤独をイヤというほど味わってきた叶刑事を充てているのが出色です。

「通り魔の犯人役」を買うという心理は、ちょっと想像がつきませんが、犯人役を譲り受けた少年は自らも模倣犯となりました。孤独という強烈なストレスが、少年を「自分こそが真の通り魔だ」と思い込ませたのでしょう。

取調室で叶は「自分から心を開かなきゃ、手を伸ばさなきゃ、誰も振り向いてはくれない」と少年を叱責します。この言葉は、もしかすると叶自身の体験から導き出された教訓だったのかもしれません。

昭和の時代には、こうした「孤独」をテーマにした刑事ドラマがいくつもありました。他人とのコミュニケーションの手段が限られていた時代ならではの話だとも言えるでしょう。

今は誰もがスマホを持ち、SNSを通じて誰とでもコンタクトができる時代になりました。それでも、コミュニケーションが苦手な人は少なくないのです。「孤独」は永遠のテーマなのかもしれませんね。

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2022年12月08日

私だけの特捜最前線→64「虫になった刑事!〜真相究明にとことん尽くす橘刑事のプロ意識」

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※このコラムはネタバレがあります。

第256回「虫になった刑事!」は、殺人容疑をかけられた青年の無実を証明するため、橘刑事(本郷功次郎)が奔走するというドラマですが、よくある「情にほだされて」捜査するというストーリーではありません。

後段で詳しく書きますが、橘が真相究明に全力投球したのは、青年を救いたい一心ではなく、あくまでも「疑問点はとことん追及する」という刑事としてのプロ意識からだったのです。

容疑者の青年は犯人なのか?

金貸しの老婆がナイフを突き刺されたまま殺されます。同居していた孫娘の証言で犯行時刻が割り出され、その時刻にアリバイがない予備校生の青年(山本茂)が容疑者として逮捕されます。

青年は、しつけの厳しい家庭に育ったためか、手が付けられない暴れ者でした。殺人について「俺はやっていない」と喚き散らし、時には特命課の刑事たちに罵声を浴びせるような若者だったのです。

事件前、青年は老婆宅を訪ねていました。捨て台詞を吐いて出ていった後、浴びるように酒を飲み、泥酔した彼の記憶は途切れてしまいます。ただ、青年がナイフを持っていたという証言は得られていました。

橘の疑念は「なぜ、所持していないはずのナイフを青年が持っていたのか」という1点にありました。乱暴な口を叩く青年から記憶を引き出そうと、橘は彼の言葉に耳を傾けようとしたのです。

青年の行動が徐々に判明しますが、アリバイを証明する決め手にはなりません。橘は証拠探しのためにドブさらいまでします。ついに執念の捜査によって、犯行に使った凶器とは別のナイフの発見に至ったのです。

刑事のプロ意識を行動で見せつける

このドラマの見どころは、特命課の若手刑事たちが状況証拠から「あいつはクロに決まっている」と見ていたのに対し、橘刑事があくまでも真相究明のため、捜査を尽くしているところにあります。

夜中に証拠探しをする橘を苦々しい目で見る若手刑事たち。橘が「あんな奴大嫌いだし、くだらない男だ。奴の言うことなど信じていない」と言うと、吉野刑事は「だったらなぜ」と問いかけます。

橘は「お前、嫌いな容疑者だったら手を抜くのかよ。あんな奴のために苦労はしたくない。でも、仕事じゃねえか。だからやっているんだよ」と、こともなげに言い切ったのです。

それを聞いた紅林刑事は「善人だから救う、ワルだから切り捨てる。俺たちの仕事はそんなふうに割り切れるものではない。それを橘さんは言っているんだ」と、橘の胸の内を代弁しました。

橘は若手刑事に「刑事の仕事とは何か」を伝えていたのです。冤罪の可能性がある限り、疑問点は確実につぶしていき、真実を追い求めるというプロ意識を、自分の行動を通して見せつけていたのです。

刑事だけでなく、どんな仕事にも嫌なこと、つらいこと、面白くないことはたくさんあります。でも、それが仕事であるならば、嫌でもつらくてもやらなければなりません。とても味のあるシーンでした。

ドラマにエッセンスを加える長坂脚本

このドラマは、青年の行動をパズルのように見立て、橘の証拠探しを通してピースを組み立てていくというところに面白さがあり、視聴者も橘と一緒に捜査をしているかのような感覚に陥るほどです。

この作品の脚本は長坂秀佳氏で、橘の粘り強い捜査を描くだけでなく、ところどころにちょっとしたエッセンスを加えています。それは、青年が火のついたたばこを投げ捨てる場面に表れます。

ふてぶてしい青年に対し、橘は「拾え」と命じます。二度あるシーンの一度目は青年を殴りつけ、もう一度は地面に組み伏します。橘にとって、たばこのポイ捨ては絶対に許せない行為だったのでしょう。

青年が釈放されたラスト・・・青年は「わびはねえのかよ」と毒づき、たばこを落として踏みつけますが、思い直したように拾い、橘の方に見せつけます。なかなか、味わい深いラストシーンです。

もう一つ、エッセンスがあります。橘の捜査を神代課長も支持し、桜井刑事らに凶器の線からの捜査を命じていました。部下を信頼できる上司の存在も、橘にはありがたかったのかもしれませんね。

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2022年12月01日

私だけの特捜最前線→63「太鼓を打つ刑事!〜Gメン‘75の倉田保昭さんがゲスト出演したドラマ」

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第226話「太鼓を打つ刑事!」は、メインゲストに倉田保昭さんが出演したことが最大の見どころ。同時期の刑事ドラマとして人気があったGメン‘75の草野刑事が、特捜にやって来たのです(笑)

妻を殺された元刑事の執念

8年前のバス放火事件で、目の前で妻を焼き殺された刑事(倉田さん)は、たった一人で犯人を捜し、復讐を遂げようという執念で、警視庁音楽隊に自ら転属を願い出て配属されていました。

そのころ、ラブホテルで女性の絞殺死体が発見され、特命課はその女性と音楽隊員が直前に会っていたことをキャッチ。音楽隊員に事情を聞きますが、のらりくらりとかわされてしまうのです。

音楽隊員には妹がいますが、実は放火事件の重要容疑者の娘で、血のつながりはありません。女性は重要容疑者の愛人だったということも分かり、特命課の捜査は妹へと絞り込まれていきます。

やがて妹は、女性を殺害した容疑で逮捕され、犯行を自供します。その動機は、重要容疑者である父親の居所を音楽隊員に隠し通すためだったのです。そこには「音楽隊員に父親殺しをさせたくない」との思いがありました。

重要容疑者の行方を追っていた特命課の目の前で、男は子供を助けようとして列車にはねられてしまいます。瀕死の容体で病院に担ぎ込まれた男。そこに音楽隊員がやって来たのです。

復讐に燃える音楽隊員は、桜井刑事(藤岡弘、)から拳銃を奪い、男に銃口を向けます・・・が、撃つことはできません。そこには、「こんな男だったのか」と虚無感に包まれる音楽隊員の姿がありました。

倉田保昭さんVS藤岡弘、さん

この作品は、ストーリーをどうのこうの、と言うよりも、倉田保昭さんと特命課のメンバー、とくに桜井刑事役の藤岡弘、さんとの共演がとても見ごたえのあるドラマになっています。

Gメンでは、アクションシーンが倉田さんの見せ場でしたが、このドラマでは派手なアクションは全くありません。とくに前半部は、おっとりした人物像を演じており、ハードボイルドさは微塵も感じられないのです。

唯一のアクションシーンといえば、拳銃を狙って桜井刑事と格闘する場面。最終的に桜井は拳銃を奪われますが、無理やりというよりも、わざと音楽隊員に奪わせた、というようにも見えなくありません。

瀕死の重要容疑者を前にした音楽隊員の心の動揺が、うまく描写しきっていないのが残念ですが、そうした演出の甘さを補って余りある、倉田さんと藤岡さんの迫真のシーンでした。

ちなみに、ドラマ中盤ではひし美ゆり子さんも出演していますが、キュートなアンヌ隊員とは違った、色気ムンムンの大人の魅力を見せてくれていますので、これまた見どころの一つかもしれませんね(笑)

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2022年11月24日

私だけの特捜最前線→62「神代警視正の犯罪!〜20年の後悔を引きずり続けた妻への思い」

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※このコラムはネタバレがあります。

第239回「神代警視正の犯罪!」は、神代課長(二谷英明)の妻をクローズアップした作品で、神代の隠された過去と、それを引きずる男の寂しさが描かれた大人のドラマです。

死んだはずの神代の妻が生きている?

神代は、見知らぬ男性からの呼び出しを受けて鎌倉に向かいます。駅で出迎えた女性(小林かおり)を見て、神代は驚きました。女性は亡き妻とそっくりな顔をしていたからです。

男性は危篤状態にあり、神代に「女性はあなたの子だ」とだけ言い残します。神代には身に覚えがありません。妻は、女性が生まれる前に飛行機事故で死亡しているはずだからです。

特命課が疑惑事件と、それにまつわる連続殺人を捜査する中で、神代は女性の身元を探ります。その結果、20年ほど前に樹海をさまよう「神代怜子」と名乗る身重の女性を男性が保護していたことが分かりました。

怜子は女の子を生み、間もなく男性の前から姿を消してしまいます。その女の子こそが女性だったのです。では、父親は誰なのか。神代と妻・怜子との間のいきさつを知る蒲生警視(長門裕之)が代弁します・・・

当時、神代の部下だった刑事が、妻と関係を持ってしまいます。神代は自分の気持ちを押し殺し、二人を許したのです。だが、二人が乗った飛行機が墜落し、遺体は発見されませんでしたが死亡認定されました。

死んだはずの二人は生きていると確信し、妻を探す神代ですが、手がかりはつかめません。やがて、刑事が疑惑事件の重要容疑者と関係があり、殺人事件にも関与していることが分かったのです。

神代が語る「私の罪」とは

このドラマは、事件解明に向けて捜査にあたる特命課とは別に、妻の消息を追う神代の心情を丹念に描いています。神代は妻を探し出して、何をしようとしたのか、何を言おうとしたのか・・・

蒲生警視は「あんなに自分を抑えられる男を見たことがない」と振り返りました。刑事の仕事に命を懸けていた当時の神代は、妻の本当の気持ちを察することができない、いや、察しようとしなかったのです。

妻は、神代が不在がちだったことに寂しい思いをし、それが浮気へとつながってしまいます。でも、妻は神代を忘れることができず、乗るはずだった飛行機に乗らず、やがて部下の刑事の前からも姿を消しました。

事件解決後、おやっさんこと船村刑事に、妻を探し続ける決意を語る神代。おやっさんは「探してどうする?奥さんは十分苦しんだ、許してあげなさい」と諭します。

それに対し神代は「この20年間、ずっと後悔してきた。別れてみてはじめてそれが分かった。部下の刑事をあんな男にしてしまったのは私だ。罪は私なんだ」と自戒の言葉をつむぐのです。

神代の罪とは何だったのでしょうか。もし神代が妻と再会したら、彼は素直に謝ったのでしょうか。夫婦間のすれ違い・・・そこには犯罪者も被害者もいないはずです。いろいろと考えさせられるドラマでした。

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2022年11月17日

私だけの特捜最前線→61「白い手袋をした通り魔!〜叶刑事VS二世議員を描いた痛快なドラマ」

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※このコラムはネタバレがあります。

今回紹介する第264話「白い手袋をした通り魔!」は、叶刑事(夏夕介)と親の七光りで権力を鼓舞する都会議員(西田健)の対決を軸にしたドラマです。

連続通り魔事件の犯人は都会議員か?

叶刑事のモノローグでスタートするドラマ。都会議員が登場するや、BGMにベートーベンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」がジャーンと鳴り響き、絶妙の効果音として強く耳に残ります。

叶刑事が追っているのは連続通り魔事件。一人目は小さい子を持つ母親が背中を切り付けられ、二人目は喫茶店のウエートレスの女性が右太ももを切られます。特命課は現場の状況から怨恨の線で捜査を始めます。

三人目はすし店の店員で、左ひざ下を切り付けられ、犯人につかみかかったところ、首を切られて殺されてしまいます。現場に駆け付けた叶刑事たち。と、そこに都会議員が「ジャーン」の音楽とともに現れます。

都会議員の容疑が濃くなっていきますが、3人に対する動機は不明ですし、被害者同士の接点も無し。おまけに、大物代議士の父親の権威をかさに、都会議員は特命課に圧力をかけていくのです。

神代課長(二谷英明)は、都会議員宛に詫び状を書きます・・・が、「こんなものはただの紙っ切れ」と涼しい顔。しかも、当事者である叶刑事に詫び状を持たせて都会議員の元へと出向かせました。

意外な動機と劇的な逮捕劇

詫び状の持参を口実に、根掘り葉掘り事情を聞かれて不機嫌になる都会議員。さらに女性記者が、ペンのインクを飛ばして服を汚してしまいます。激怒した都会議員は二人を追っ払うのです。

叶刑事は、改めて被害者や関係者の事情聴取をします。すると、3人の被害者の接点が出てきたのです。3人は過失あるいは無意識のうちに、都会議員の服を汚していたのでした。

都会議員は病的な潔癖症で、自分が敬愛する母親を亡くしてから異常な言動が目立っていました。つまり、3人が切り付けられた個所は、自分が汚されたところだったのです。

女性記者の身が危ないと、叶刑事たちは特命課を飛び出します。そして、女性記者に切り付けようとした都会議員を見つけて取り押さえ、叶刑事はその腕に手錠をかけました。

取調室で神代課長と相対した都会議員は、服を汚されたことが「母親への冒涜」であり、そんな連中は母親が許さない、だから自分が天誅を下したと、淡々と語るのでした。

犯人役の西田健さんの名演技

このドラマの見どころは、なんといっても都会議員役の西田健さんの演技に尽きるでしょう。プライドが極めて高く、病的な潔癖症とマザコンという複雑な人物を見事の演じています。

ドラマの冒頭で「皇帝」のジャーンとともに登場した時点で、この人が犯人だというのはすぐわかります。ドラマは、犯人捜しではなく「動機は何か」ということにポイントを置いているところが秀逸です。

特捜最前線で見られる「人情派」っぽい部分は一切なく、「権力をかさにきる者への挑戦」という視点で描かれています。そして、最も権力を嫌うタイプである叶刑事を対決相手に据えています。

特命課にやって来た都会議員に対し、叶刑事が「逃げも隠れもせん」と言い切る姿は、かつて橘刑事(本郷功次郎)が大物政治家に対して啖呵を切った場面を思い起こさせました。

私だけの特捜最前線→25「完全犯罪・350ヤードの凶弾!〜大物政治家に敢然と立ち向かう橘刑事の執念」

西田健さんといえば、特捜最前線では何度も犯人役で出演しており、そのつど印象的な演技を見せてくれました。その中でも、この都会議員役はドラマ屈指の犯人像と言ってもいいかもしれません。

取調室で、まるで台本を読むかのように淡々と「・・・が許せませんでした」と動機を語るシーンは、とても印象的で、まさに西田さんの真骨頂ともいえる演技でしたね。

BGMの「皇帝」も抜群の効果音でした!

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2022年11月10日

私だけの特捜最前線→60「面影列車!〜紅林刑事は母と再会できたのか?」

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※このコラムはネタバレがあります。

前回のコラム59で、紅林刑事(横光克彦)の母親探しのドラマについて紹介しました。結局、別人だったわけですが、その続編というか、完結編にあたるのが第315回「面影列車!」です。

私だけの特捜最前線→59「母・・・・・・・・・〜紅林刑事が語る母への思い、子への思い」

紅林の母の消息は?

紅林が昔逮捕し、更生した男性と妻が殺されて発見されました。男性は「紅林に恩返しができる」と話していたそうで、何かを知らせるために静岡県から上京してきたのだと、紅林は推測しす。

夫婦には子供がいました。紅林がちょうど、母親と生き別れになったのと同じ年代です。葬式でも無邪気にふるまっていたのですが、両親のお墓で泣きじゃくりながら土を掘り返す姿を紅林は目撃します。

すがりついて泣きじゃくる子供に対し、紅林は「明日泣くんだよ。今日はこらえて笑ってみせるんだよ」と言ってなぐさめます。どうしてこの言葉が出てきたのか、彼自身もわかりませんでした。

捜査をしていくうち、男性は紅林の母親の消息について手がかりをつかんだらしいことが分かります。紅林にとって男性の足取りを追うことは、同時に生き別れの母親に会える可能性も示唆していたのです。

ところが、母親はすでにこの世の人ではありませんでした。30年近く思い続けていた再会がかなわず、墓前で涙にくれ、あの子供と同じように墓の土を掘り返そうとする紅林。

その時、紅林の脳裏に「明日泣くんだよ。今日はこらえて笑ってみせるんだよ」という言葉が浮かんできます。なぜだか分かりません。ですが、この言葉に励まされ、悲しみをこらえて捜査を続行します。

母親が残してくれた「形見」

母親は、1年前に交通事故で亡くなっていました。母親は、身寄りのない子を養女に引き取って育てていたこともわかりました。つまり、紅林にとっては血のつながらない妹がいたのです。

兄と名乗る男とともに上京した妹のもとを紅林らは訪ねます。しかし、妹は紅林を兄とは信じず、追い返してしまいます。紅林には母親の形見が何一つなく、母親の子であることを証明できなかったのです。

にせものの男は、母親の保険金目当てで妹に接近したのではないかと判明。妹が男と落ち合うだろうと見越し、特命課は妹を尾行して大井川鉄道のSL列車を追跡します。

妹は保険金の通帳をだまし取られ、殺されかけましたが、すんでのところで逮捕されます。信じていた兄がにせものだったと知り、妹は泣き崩れてしまいます。紅林が妹に寄り添った時、あの言葉が浮かんできたのです。

「明日泣くんだよ。今日はこらえて笑ってみせるんだよ」。それを聞いた妹は「兄さん?」と驚き、その言葉が母親の口癖だったと話しました。幼い紅林の心に刻み込まれていた母親の形見だったのです。

母と子の深い絆を描いた名作

このドラマの肝は、なんといっても「明日泣くんだよ。今日はこらえて笑ってみせるんだよ」という言葉です。母親の言葉だということは想像がつきましたが、兄と妹を結びつけるキーワードにしたのは見事です。

ドラマのストーリーにひねりはなく、最初から「紅林の母親探し」が軸になっていたことは分かりました。秀逸なのは、紅林ら特命課がどうやってそこにたどり着くかという過程を丹念に追っている点だと思います。

紅林の母親への思いは、前回作「母・・・・・・・・・」の取調室のシーンで切々と語られ、容疑者への激しい言葉としてぶつけられていました。それだけに、紅林がお墓を見た時の無念さは想像に難くありません。

一方で、母親の方も、生き別れになった紅林への思いが、手掛かりとなった「絵馬」に託された願いから浮き彫りになりました。絵馬には「再会祈願」と記されていたのです。

紅林の母親は、どんな思いで絵馬を託していたのでしょうか。いつか必ず会えると信じていたに違いありません、それだけに、交通事故という不慮の死は無念だったことでしょう。

特捜最前線らしい激辛なストーリーなのですが、たとえ離れ離れであっても母と子の深い絆は決して切れるものではない・・・そんなメッセージを強烈に訴えかけた名作と言えるでしょう。

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マイケルオズ@フリーランスライター
「特捜最前線」がマイブームになっているオヤジです。リアルタイムの頃は津上刑事より若かったのに、今はおやっさんよりも年長者になりました(苦笑)
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