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2022年12月08日

私だけの特捜最前線→64「虫になった刑事!〜真相究明にとことん尽くす橘刑事のプロ意識」

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※このコラムはネタバレがあります。

第256回「虫になった刑事!」は、殺人容疑をかけられた青年の無実を証明するため、橘刑事(本郷功次郎)が奔走するというドラマですが、よくある「情にほだされて」捜査するというストーリーではありません。

後段で詳しく書きますが、橘が真相究明に全力投球したのは、青年を救いたい一心ではなく、あくまでも「疑問点はとことん追及する」という刑事としてのプロ意識からだったのです。

容疑者の青年は犯人なのか?

金貸しの老婆がナイフを突き刺されたまま殺されます。同居していた孫娘の証言で犯行時刻が割り出され、その時刻にアリバイがない予備校生の青年(山本茂)が容疑者として逮捕されます。

青年は、しつけの厳しい家庭に育ったためか、手が付けられない暴れ者でした。殺人について「俺はやっていない」と喚き散らし、時には特命課の刑事たちに罵声を浴びせるような若者だったのです。

事件前、青年は老婆宅を訪ねていました。捨て台詞を吐いて出ていった後、浴びるように酒を飲み、泥酔した彼の記憶は途切れてしまいます。ただ、青年がナイフを持っていたという証言は得られていました。

橘の疑念は「なぜ、所持していないはずのナイフを青年が持っていたのか」という1点にありました。乱暴な口を叩く青年から記憶を引き出そうと、橘は彼の言葉に耳を傾けようとしたのです。

青年の行動が徐々に判明しますが、アリバイを証明する決め手にはなりません。橘は証拠探しのためにドブさらいまでします。ついに執念の捜査によって、犯行に使った凶器とは別のナイフの発見に至ったのです。

刑事のプロ意識を行動で見せつける

このドラマの見どころは、特命課の若手刑事たちが状況証拠から「あいつはクロに決まっている」と見ていたのに対し、橘刑事があくまでも真相究明のため、捜査を尽くしているところにあります。

夜中に証拠探しをする橘を苦々しい目で見る若手刑事たち。橘が「あんな奴大嫌いだし、くだらない男だ。奴の言うことなど信じていない」と言うと、吉野刑事は「だったらなぜ」と問いかけます。

橘は「お前、嫌いな容疑者だったら手を抜くのかよ。あんな奴のために苦労はしたくない。でも、仕事じゃねえか。だからやっているんだよ」と、こともなげに言い切ったのです。

それを聞いた紅林刑事は「善人だから救う、ワルだから切り捨てる。俺たちの仕事はそんなふうに割り切れるものではない。それを橘さんは言っているんだ」と、橘の胸の内を代弁しました。

橘は若手刑事に「刑事の仕事とは何か」を伝えていたのです。冤罪の可能性がある限り、疑問点は確実につぶしていき、真実を追い求めるというプロ意識を、自分の行動を通して見せつけていたのです。

刑事だけでなく、どんな仕事にも嫌なこと、つらいこと、面白くないことはたくさんあります。でも、それが仕事であるならば、嫌でもつらくてもやらなければなりません。とても味のあるシーンでした。

ドラマにエッセンスを加える長坂脚本

このドラマは、青年の行動をパズルのように見立て、橘の証拠探しを通してピースを組み立てていくというところに面白さがあり、視聴者も橘と一緒に捜査をしているかのような感覚に陥るほどです。

この作品の脚本は長坂秀佳氏で、橘の粘り強い捜査を描くだけでなく、ところどころにちょっとしたエッセンスを加えています。それは、青年が火のついたたばこを投げ捨てる場面に表れます。

ふてぶてしい青年に対し、橘は「拾え」と命じます。二度あるシーンの一度目は青年を殴りつけ、もう一度は地面に組み伏します。橘にとって、たばこのポイ捨ては絶対に許せない行為だったのでしょう。

青年が釈放されたラスト・・・青年は「わびはねえのかよ」と毒づき、たばこを落として踏みつけますが、思い直したように拾い、橘の方に見せつけます。なかなか、味わい深いラストシーンです。

もう一つ、エッセンスがあります。橘の捜査を神代課長も支持し、桜井刑事らに凶器の線からの捜査を命じていました。部下を信頼できる上司の存在も、橘にはありがたかったのかもしれませんね。

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マイケルオズ@フリーランスライター
「特捜最前線」がマイブームになっているオヤジです。リアルタイムの頃は津上刑事より若かったのに、今はおやっさんよりも年長者になりました(苦笑)
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