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2016年03月21日
アガサ・クリスティから (11) (そして誰もいなくなった#その4=エピローグ)
(そして誰もいなくなった)
U・N・オーエンなる人物から招待状を受け取り、孤島に集められた10人。
過去の罪を録音機器の声で全員めいめい告発された直後、生意気な遊び人の青年が毒殺される。
翌朝には召使の女性も亡くなる。
テーブルにあった10体のインディアン人形が8体になっていた。
残された人達は、童謡「10人のインディアン」を暗示しているような殺され方をしていると気づく。
また迎えの船が来ない為、残った8人は島から出ることが出来ず、孤島に閉じ込められた状態となる。
次に退役老将軍が撲殺されていて、インディアン人形も7体に減っていることを知る。
この招待は自分たち皆を殺す為であり、犯人は残った7人の中にいるに違いないと考えるようになる。
残ったお互いは疑心暗鬼の恐怖の中。召使、老婦人、元判事、医師が童謡を暗示するかのよう殺され、インディアン人形も減っていく。
そして残された3人のうち2人も殺される。
取り残された1人は犯人も分からないまま、恐怖に追い詰められて自殺し、そして誰もいなくなる。
それから後日、救難信号を発見した島近くの村人が、島に行く。
そこで、10人の死体を発見し、初めて事件が発覚する。
事件はロンドン警視庁が担当することになる。
孤島に残された被害者達の日記やメモ、事件現場の状況などから、事件の経緯をつかむ。
そこから推理すると、死体で発見された10人の中に犯人がいると考えると、無理が生じ道理が引っ込むので 不可能
と判断。
11人目の犯人が居たと推理する。
ただ11人目がどこに潜み、どこにどうやって逃げたのかは分からないままであった。
この事件は迷宮入りで終わろうとしていた。
しかしある漁師がボトルに入った手紙を発見。
そこには真犯人の告白文があり、事件の真相と全ての謎が解明されていく。
ネタバレしないブログとしては、ここまでが、ギリギリのあらすじである。
しかし”なぞなぞ”のようなヒントは、描くことが出来るので ギリギリまで書いてみようと思う。
真犯人が海に流したボトルに入った手紙は、犯人が偶然に掛けた証しである。
見つからなければ、謎のまま迷宮入りであり、見つかれば自分が犯人であるとばれるが、真相は解明される。
この犯人が持つアンビバランスを象徴していると思われる。
正義と相反する殺人について 告白文の中にも記載されている。
誰にも解けない完全犯罪にしたかった一面、犯人の完璧な犯罪をも知って欲しかったのではないか?そういう意味でも かなり重度のアンビバランスさを持っていたと思われる。
犯人自身が告白文の中で、いくつかのヒントを挙げているので ピックアップしてみよう。
”ニシンの燻製”である。
ABC殺人でもとりあげた”ニシンの燻製”=偽物、すり替え、目をそらすものを意味する英語の慣用句である。
”10人のインディアン”のマザーグースにもニシンの歌詞があるのだが、注目である。
別のヒントは、「カインの刻印」である。
英語圏なら誰しもがよく知っている聖書の中のお話である。
旧約聖書にある(カインとアベル)のカインが、誰からも殺されぬよう神からつけられた印である。
ぜひ推理にトライしてもらいたい。
それこそが推理小説の醍醐味である。
とにもかくにもアガサ・クリスティの代表作であり、推理小説界の中でも特筆すべき作品なのだ。
この作品からインスピレーションを得た他作家が、別の作品作りに生かしていたりする位、推理小説界でも かなり凄い作品なのだ。
またある意味、心理合戦のような各人のこころ模様や内面も描いている。
10人のインディアンの唄のごとく、1人づつ殺されていき、残された人達がどんどん精神的に追い込まれて行く様子が分かるのである。
この(そして誰もいなくなった)は沢山の劇や映画にもなっている。
結末や事件の舞台は、その都度、原作から変えられていることが多い。
実は、マザーグースの10人のインディアンの唄の最後の結末は二つあるそうで、一般的にはもう一つの結末の方が有名らしい。
原作では不気味で残酷なラストをモチーフに事件を展開していたが、もう一つの結末はハッピーエンド:最後の1人は結婚して、誰もいなくなった。になるらしい。
この結婚していなくなる=ハッピーエンドを用いた戯曲や映画の結末も多いと聞く。
いずれにせよ、アガサ・クリスティの凄さがより良く分かる作品である。
(アガサ・クリスティ12に続く)
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アガサ・クリスティからI (そして誰もいなくなった#その3)
(そして誰もいなくなった)
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ある孤島に招待された10人。
職業も年齢も全て異なる老若男女。
この島の主であるU・N・オーエンからの招待状を手にしていた。
夫ユリック・ノーマン・オーエン、妻ユナ・ナンシー・オーエンの夫妻に雇われている召使夫婦含め、島に招待された10人は、彼らに会ったことがなかった。
結局、姿を現さないまま、招待状も虚偽であると判明する。
因みにこのU・N・オーエン(Owen)とは、何ものとも分からぬもの=UNKNOWNと、引っ掛けられている。
不安の中、招待主不在のまま、最初の
晩餐会が開かれる。
一堂会した際、蓄音機から、それぞれの過去の罪状が告発される。
いずれも事故か事件か判明しがたいようなものであったが、蓄音機から響き渡る声は、はっきり人殺しであると断言していた。
●ヴェラ・エリザベス・クレイソン
秘書兼家庭教師。
身体の弱い子供の家庭教師だったが、泳げるはずのない距離を分かった上で泳ぐ許可をして溺死させた。と蓄音機からの声は殺人を告発していた。
●フィリップ・ロンバート
元陸軍大尉。
東アフリカで先住民族を見捨てた上、食糧を奪い21人を殺した。と蓄音機からの声は殺人を告発していた。
●ウィリアム・ヘンリー・ブロア
元警部。
無実の人間に偽証で銀行強盗の罪を被せて殺した。と蓄音機からの声は殺人を告発していた。
●ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ
有名な元判事。
陪審員を誘導して無実の人間を冤罪で有罪にし、死刑判決を出した。と蓄音機からの声は殺人を告発していた。
●エミリー・キャロライン・ブレント
信仰深い老婦人。
使用人の娘に厳しい扱いをして、その結果自殺にさせた。と蓄音機からの声は殺人を告発していた。
●ジョン・ゴードン・マカーサー
退役将軍。老人である。
妻の愛人であった部下を嫉妬のあまり、故意に死にゆく戦地に追いやった。と蓄音機からの声は殺人を告発していた。
●エドワード・ジョージ・アームストロング
医師。
手術中、酔ったままで患者を死なせてしまった。と蓄音機からの声は殺人を告発していた。
●アンソニー・ジェームズ・マートン
生意気な遊び人の青年。
自動車事故で2人の子供を死なせてしまった。と蓄音機からの声は殺人を告発していた。
●トマス・ロジャース
U・N・オーエンに雇われた召使。
以前の雇い主老女が発作を起こした時に与えるべき薬をわざと与えず死なせた。と蓄音機からの声は殺人を告発していた。
●エセル・ロジャース
U・N・オーエンに雇われた召使、料理人。
トマス・ロジャース夫人。
夫と同じく発作を起こした雇い主の老婦人に投与すべき薬を投与せず、死なせた。と蓄音機からの声は殺人を告発していた。
以上が、謎のU・N・オーエンから孤島に招待された10人である。
この10人が孤島に閉じ込められた状態
いわゆるクローズド・サークルの中で
10人のインディアンの歌詞通りに1人づつ殺されて行くのだった。
他の登場人物は以下である。
●アイザック・モリス
数えきれない位の悪事を尻尾を出さずこなしてきた悪党。
オーエン夫妻に雇われて、代理人として孤島の売買や管理をする。
10人が孤島に集められた日、別の場所で死亡。それゆえにオーエン夫妻に関して詳細が分からず、ロンドン警視庁は、オーエン夫妻の正体を割り出すことが出来なかった。犯人の用意周到さで、事件は真相からは程遠く、闇の中である。
●フレッド・ナラカット
孤島への舟を運転した人物である。
食糧も彼が運ぶ予定であったが、結局は現れなかった。
●トマス・レッグ卿
ロンドン警視庁副警視総監。
この事件の担当者。
エピローグで事件をまとめる。
(アガサ・クリスティから11に続く)
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2016年03月19日
アガサ・クリスティからH (そして誰もいなくなった#その2=マザーグース*10人のインディアン)
(そして誰もいなくなった)
この作品の全編は、マザーグースが事件の重要なモチーフとして貫かれている。
以下、そのマザーグースである10人のインディアンの歌詞である。
♫#10人のインディアン#♫
(マザーグース)
Ten little Indian
10人のインディアンの男の子
食事に出かけた。
1人が喉を詰まらせて
9人が残った。
9人のインディアンの男の子
夜更かしをした。
1人が朝寝坊して
8人が残った。
8人のインディアンの男の子
デヴォンに旅をした。
1人がそこに留まり
7人が残った。
7人のインディアンの男の子
薪を割った。
1人が真っ二つになって
6人が残った。
6人のインディアンの男の子
蜂の巣で遊んだ。
1人が蜂に刺されて
5人が残った。
5人のインディアンの男の子
訴訟を起こした。
1人が裁判所に行って
4人が残った。
4人のインディアンの男の子
海に出かけた。
1人がニシンに飲まれ
3人が残った。
3人のインディアンの男の子
動物園に行った。
1人が熊にだきつかれ
2人が残った。
2人のインディアンの男の子
日光浴をした。
1人が熱で焦げて
1人が残った。
1人のインディアンの男の子
1人ぽっちになった。
そして自分で首をくくって
誰もいなくなった。
マザーグース特有の不思議かつ独特の不気味さと残酷さが漂う歌詞なのだが、この10人のインディアンの歌詞をもじって(そして誰もいなくなった)は、順番に殺人事件が行われていくことになる。
(アガサ・クリスティIに続く)
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アガサ・クリスティからG (そして誰もいなくなった#その1=プロローグ)
アガサ・クリスティを書こうと思ってから、私は まずオープ二ングを飾る作品とラストを飾る作品を考えた。
その際に思いついたオープ二ングを飾るのは、私の中では迷いもなく(ABC殺人事件)であった。
そしてその通り、私は、(ABC殺人事件)の作品から初回を書いていった。
ラストに浮かんだのは、アガサ・クリスティの作品として有名過ぎるほどに有名な(そして誰もいなくなった)、もしくは、アガサ・クリスティ自身がラスト用にと長年温めていた(カーテン)であった。
甲乙付けがたいラストの候補だったが、アガサ・クリスティの作品を少しづつ書き始めてから、やはりラストは
作者自身がラストと決めていた(カーテン)なのだろう。と思い至った。
今回は、ラスト用にと保存していた(そして誰もいなくなった)に着手しようと思う。
アガサ・クリスティの作品群の中でも かなり有名かつ斬新なトリックのある作品=アガサ・クリスティらしさを追い求めて、(ABC殺人事件)(アクロイド殺害事件)(オリエント急行殺人事件)と書いて来た。
次にどこに行こうかと思った時に勝るとも劣らない作品(そして誰もいなくなった)に行き当たったのだ。
実はアガサ・クリスティは、随分魅力のある作家なので、推理小説の中でもトリックやアリバイ以外の切り口も沢山引き出しが見つかる程である。
例えば最初にも少し書いたが、彼女の作品には当時の文化が織り込まれていたので、衣食住始め身分や階級や職種に見受けられる事柄などの引き出しもある。
また考古学者と再婚した彼女らしい異国情緒溢れる当時の外国の状況や風景。
戦時中、アガサ・クリスティも働いていた戦時下の仕事を通じて感じたことがヒントとなったようなスパイ小説の系列。
人間を描くのが、上手だったアガサ・クリスティの推理小説の中の恋愛、結婚模様。などなど数え挙げたらキリがない位の魅力が作品の中にいっぱい詰まっているのだ。
次にどこに着地点を見出し書いて行こうかと考えていた時に 迷う程に多岐多様な道がアガサ・クリスティの作品の中にはいっぱいあるのだが、それは おいおい着手することとした。
やはり、まだまだ推理小説の王道であるトリックやアリバイなどに関するところに焦点を当てるべきであろうと考えた。
もちろん推理小説の醍醐味を阻害しないよう、ネタバレしないこのブログでは ”なぞなぞ”のヒントのようにしかならないが、それも楽しんで頂けたら幸いである。
前置きが長くなったが、(そして誰もいなくなった)である。
まず前述3冊の単行本と見比べると、(そして誰もいなくなった)の方は本が薄い。
つまりページ数は少ないのだ。
しかし内容は、この3冊をある意味軽く超えるかも?知れない。
アガサ・クリスティの国内外の人気作品投票では、常に1位から3位以内に推移している程の作品である。
また人気作品の順位のみならず、1995年のアメリカ探偵作家クラブ「史上最高のミステリー小説100冊」の本格推理もののジャンル中、堂々の第1位を誇る作品でもある。
上述で、アガサ・クリスティの推理小説には色々な引き出しが見受けられると書いたが、内容は上述以外にも まだまだあった。
そのひとつは、マザー・グースをモチーフにしていることである。
また改めてこの点での切り口でも、作品について書いてみたいと思うが、(そして誰もいなくなった)にも有名なマザー・グースが事件の中で大きな意味を持っていた。
因みにマザー・グースとは、イギリスやアメリカ中心の英語圏に伝承されている童謡のようなもの。
日本のカゴメカゴメに見受けられるような不思議な少し不気味な残酷さも感じられる童謡の世界なのだ。
(そして誰もいなくなった)に流れているマザー・グースは「10人のインディアン」。
歌詞の内容は、10人いたインディアンが様々な理由で1人づつ減っていき、最後の1人もいなくなり、最後は誰もいなくなるというものだった。
因みに初期はニガーという黒人差別用語が原題の一部だったが、後に差別表現を避け、その部分をインディアンにしたといわれている。
(アガサ・クリスティからHに続く)
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2016年03月18日
アガサ・クリスティからF (オリエント急行殺人事件#その3=映画)
オリエント急行殺人事件の1974年の映画の時点でさえ、イングリッド・バーグマンもローレン・バコールも既に伝説的大女優であった。
しかしオールスターキャストの映画である。まだまだ山程の大物アクターたちが続く。
当時、私は中学生であったと思う。
既にアガサ・クリスティの原作も読む本好きだったが、同時に映画ファンでもあった。
映画ファンの友人達と[ロードショー][スクリーン]と言う洋画専門雑誌を回し読みしていた時期でもあった。
●そんな洋画専門雑誌のグラビアに必ず当時の美人女優として写真が載っていたのが、ジャクリーン・ビセットであった。
この映画の女優は取り上げた人以外も含め百花繚乱だが、男優達も凄い。
●アンソニー・パーキンス。
ヒチコックの(サイコ)
誰もが忘れようがないサイコパスの恐怖を表した作品であった。
もちろん(サイコII)もアンソニーである。
●ショーン・コネリー
何と言っても007。
史上最大の作戦。
インディ・ジョーンズにJr.=ジュニアと呼び掛けるパパジョーンズ。
●今回限りのポアロのアルバート・フィニー。アルバート・フィニーも幅広い演技派の名優である。
75歳になった頃、007にも出演。
上記の写真アルバート・フィニーが、下記の写真エルキュール・ポアロに扮したのだが、かなり凝っていて 本人の面影も見当たらない位に入念な扮装スタイルである。
*各キャストの他の出演作品も観てみると面白いかも知れない。
もちろん大物アクター達のこと。名作から話題作まで、ずらりと揃っている。
まだまだ盛りだくさんながら、一人でも伝説的俳優達が、オールスターキャストでオリエント急行殺人事件をやっているのだから、本当、びっくりした次第であった。
原作が、商業的な映画にすり変わることを嫌っていたアガサ・クリスティを説得したのが、イギリス女王の従兄弟でもあるジョン・ブラボン卿であり、
制作プロデューサーを担当した。
アガサ・クリスティの他の原作映画もまたその原作の後に取り上げてみたいと思う。ナイル殺人事件や鏡は横にひび割れてなど。もちろん大物俳優達が出演する作品である。
(アガサ・クリスティからGに続く)
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しかしオールスターキャストの映画である。まだまだ山程の大物アクターたちが続く。
当時、私は中学生であったと思う。
既にアガサ・クリスティの原作も読む本好きだったが、同時に映画ファンでもあった。
映画ファンの友人達と[ロードショー][スクリーン]と言う洋画専門雑誌を回し読みしていた時期でもあった。
●そんな洋画専門雑誌のグラビアに必ず当時の美人女優として写真が載っていたのが、ジャクリーン・ビセットであった。
この映画の女優は取り上げた人以外も含め百花繚乱だが、男優達も凄い。
●アンソニー・パーキンス。
ヒチコックの(サイコ)
誰もが忘れようがないサイコパスの恐怖を表した作品であった。
もちろん(サイコII)もアンソニーである。
●ショーン・コネリー
何と言っても007。
史上最大の作戦。
インディ・ジョーンズにJr.=ジュニアと呼び掛けるパパジョーンズ。
●今回限りのポアロのアルバート・フィニー。アルバート・フィニーも幅広い演技派の名優である。
75歳になった頃、007にも出演。
上記の写真アルバート・フィニーが、下記の写真エルキュール・ポアロに扮したのだが、かなり凝っていて 本人の面影も見当たらない位に入念な扮装スタイルである。
*各キャストの他の出演作品も観てみると面白いかも知れない。
もちろん大物アクター達のこと。名作から話題作まで、ずらりと揃っている。
まだまだ盛りだくさんながら、一人でも伝説的俳優達が、オールスターキャストでオリエント急行殺人事件をやっているのだから、本当、びっくりした次第であった。
原作が、商業的な映画にすり変わることを嫌っていたアガサ・クリスティを説得したのが、イギリス女王の従兄弟でもあるジョン・ブラボン卿であり、
制作プロデューサーを担当した。
アガサ・クリスティの他の原作映画もまたその原作の後に取り上げてみたいと思う。ナイル殺人事件や鏡は横にひび割れてなど。もちろん大物俳優達が出演する作品である。
(アガサ・クリスティからGに続く)
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アガサ・クリスティからE (オリエント急行殺人事件#その2+映画)
オリエント急行殺人事件は、アガサ・クリスティらしいアリバイのトリックであった。(あらすじや登場人物などの詳細は前述アガサ・クリスティからDのブログへ)
このブログはネタバレしないように
アガサ・クリスティの本を取り上げるつもりなので(←推理小説の醍醐味を味わって頂く為)いささか、苦しい時もあるのだが、最大のヒントも最初からあるとだけ、伝えておきたい。
いつか推理小説の醍醐味を味わった読後ブログみたいなものを、このブログとは別枠に作ることがあるならば、もっと具体的に言えることは山程あるのだが・・・。
どうしても”なぞなぞ”の中のヒントのようになり、申し訳ないのだが、読書前なら この”なぞなぞ”の中のヒントをむしろ楽しんで頂きたい。
(全ては推理小説の醍醐味の為に。)
アガサ・クリスティは、この小説に二つの本当にあった事件を取り入れて作成したそうだ。
一つは、あの有名な飛行家リンドバーグの愛息が誘拐され殺された痛ましい事件をヒントにしている。
もう一つは、オリエント急行の立ち往生があった件を取り入れているとの事。
実在した事件をモチーフにアガサ・クリスティがオリエント急行殺人事件を作り出したのだ。
彼女のストーリーテーラーぶりは、いかんなく発揮されていて、奇妙な結末を迎えるのだった。
このオリエント急行殺人事件を映画界が見落とすはずもなく、アガサ・クリスティを説得して映画も作られた。
有名な1974年版では、かなり豪華なキャストで話題つくしでもあった。
実は2015年12月、去年の暮れには新作リメイク映画制作の発表もあったばかりである。
他にも製作物は多々あり、映画にする程、魅力的な作品なのだ。
1974年度版のオリエント急行殺人事件の映画
ポアロ●アルバート・フィニー
大富豪ラチェット●リチャード・ウィドマーク
秘書ヘクター・マックイーン●アンソニー・パーキンス
執事:エドワード・ベドウズ●ジョン・ギールグッド
アーバスノット大佐●ショーン・コネリー
家庭教師メアリー・デベナム●バネッサ・レッドグレイヴ
ナタリア・ドラゴミロフ公爵夫人●ウェンディ・ヒラー
メイドのヒルデガルド・シュミット●レイチェル・ロバーツ
おしゃべり好きなハッバード夫人●ローレン・バコール
スウェーデン人の宣教師グレタ・オレソン●イングリッド・バーグマン
ルドルフ・アンドレニイ伯爵●マイケル・ヨーク
エレナ・アンドレニイ伯爵夫人●ジャクリーン・ビセット
私立探偵サイラス・ハードマン●コリン・ブレイクリー
シカゴで車販売をしているイタリア人ジーノ・フォスカレッリ●デニス・クイリー
ピエール・ミシェル車掌●ジャン=ピエール・カッセル
コンスタンチン医師●ジョージ・クルーリス
国際寝台車会社の重役ビアンキ●マーティン・バルサム
ここまで書き連ねてみても 豪華過ぎるメンバーである。国際寝台車会社の重役など、一部、原作から名前が変わっている箇所もある。
オールスターキャストの一言である。
これだけの人達をどうやって集めることが出来たのか?と思う程である。
アガサ・クリスティのファンはもちろんのこと、映画ファンには、たまらないキャスト達であったはずである。
そう言えば、他のアガサ・クリスティ原作の映画もすごいスターが出演することが多い。
何人かをこのブログでも取り上げようと思うが、(いずれも凄い人達の)どの人を誰から書いて良いのか?迷う程である。
●代表的に幾人かにスポットを当ててみると、まずアカデミー助演女優賞のイングリッド・バーグマン。
映画オールドファンなら誰でも知っている大女優である。
皆の記憶に残る【カサブランカ】【誰が為に鐘はなる】など多数。
薔薇イングリッド・バーグマンがあるのもうなずける往年の正統派美人女優でもある。
●【カサブランカ】繋がり???のローレン・バコール。
実はローレン・バコールは【カサブランカ】には出てはいない。
【カサブランカ】は、あの有名過ぎるセリフ(君の瞳に乾杯!)と言ったダンディーな格好よさを持つハンフリー・ボガートと美人イングリッド・バーグマンの政情不安下での切ない恋物語である。
あのハードボイルド的な魅力を持つハンフリー・ボガートの夫人だったのである。一方で、彼女は恰好の良い女性であり、恰好の良い女優であった。妖艶なスタイルと魅力的な声で真摯な生き方を貫き通したローレン・バコール。
(アガサ・クリスティからFに続く)
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2016年03月17日
アガサ・クリスティからD (オリエント急行殺人事件#その1)
アガサ・クリスティのABC殺人事件、アクロイド殺害事件と来れば、次はオリエント急行殺人事件に行きたいと思う。
映画になったこともある、やはり有名な作品である。
そして”アクロイド殺害事件”の結末に驚かれた方には、まさるとも劣らないアガサ・クリスティらしいアリバイのトリックを読んで頂きたいと思う。
アガサ・クリスティらしいアリバイのトリック。これがネタバレしないこのブログでの最大のヒントです。
実際は、論より証拠、読んで分かるお話。百聞は一見にしかず。なのです。
急遽、仕事先の中東からオリエント急行でヨーロッパに戻らないと行けなくなったポアロ。季節はずれのオリエント急行は何故か満席で、困ったポアロは知人であるオリエンント急行を運営する親会社重役に頼み込んで、席を確保する。
なんとか乗り込めたオリエント急行の乗客は老若男女、多種多様な身分や職業、色々なお国柄であった。
つまり一貫性がない多種多様な人々に埋め尽くされていた。
●ベルギーが産んだ天才探偵エルキュール・ポアロ
●アメリカ人の富豪の老人:サミュエル・エドワード・ラチェット
●アメリカ人、ラチェットの秘書:ヘクター・マックイーン
●イギリス人、ラチェットの執事、中年男性:エドワード・ヘンリー・マスターマン
●インドから帰省したイギリス人:アーバスノット大佐:アーバスノット大佐
●イギリス人、バグダッドで家庭教師をしていたという30前後の女性:メアリー・デブナム
●アメリカ人のお喋りな中年女性:ハバード夫人
●スウェーデン人の穏やかな中年女性:グレタ・オルソン
●アメリカ人の派手な感じの男性、自称セールスマン実はラチェットに雇われている私立探偵で身辺警護に当たっている。:サイラス・ハードマン
●アメリカに帰化したイタリア人、車のセールスマンをしている大柄な男性:アントニオ・フォスカレリ
●フランスに帰化したロシア人、亡命貴族の大富豪の老婦人:ドラゴミロフ公爵夫人
●ドイツ人、ドラゴミロフ公爵夫人に15年使える女中:ヒルデ・ガードシュミット
●ハンガリー人の外交官夫妻、美男美女である。:アンドレニ伯爵夫妻
●フランス人、オリエント急行の車掌:
ピエール・ポール・ミシェル
●ベルギー人、国際寝台車会社の重役、ポアロとはベルギー警察時代からの知り合い:ブック
●ギリシャ人の医師:コンスタンチン博士
登場人物は国際色豊かである。
ざっと見渡しても アメリカ人、アメリカに帰化したイタリア人、イギリス人、インドから帰省したイギリス人、バグダッドにいたイギリス、スウェーデン人、フランスに帰化したロシア人、ドイツ人、ハンガリー人、フランス人、ベルギー人、ギリシャ人などである。
国籍が違い、身分や職業も異なる多種多様な老若男女やポアロが乗り合わせたオリエント急行が積雪の吹き溜まりに突っ込みで立ち往生している間、アメリカ人の大富豪老人ラチェットが滅多刺し(12カ所)にされて殺されてしまう。
雪や天候などの現場状況から密室殺人事件に変わらないと思われる。
ポアロはオリエント急行でラチェットと乗り合わせ際、脅迫状を受け取り、身の不安を感じているから護衛を依頼されていたが、何かしら気にくわないものを感じ、断わっていた。
犯行現場に残された燃えた紙の一部から 以前に起きた有名人の子女である幼女誘拐殺人事件の幼女の名前をみつける。
結局、ラチェットは、この幼女誘拐殺人事件の犯人であった。莫大な保釈金で保釈された後、名前を変えて外国に住んでいたのだ。
本名は犯人であるカセッティ。
正体を知ったポアロは捜査をし、鉄道会社の重役ブック、ギリシャ人医師コンスタンチン博士と共に事情聴取を始めた。
結局、列車に乗り込んでいた各自・皆のアリバイは、おのおの他の人の証言に裏打ちされていた。
全てを総合しても不備なところがなく、全員のアリバイが成立している以上、列車の中には犯人に該当するものがいなくなった。
混迷を極める現場の中で、ポアロは真相を見極める為、皆に推理を披露し、二つの解答を伝える。
(アガサ・クリスティからEに続く)
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2016年03月16日
アガサ・クリスティからC (アクロイド殺害事件#その2)
アガサ・クリスティ自身が、アクロイド殺害事件のトリックは一度しか使えないと言っていたという。
読後の読者の感想は様々に違いない。
あれほど高名な他の推理小説作家達が束になって、賛否両論を繰り広げた位なのだから。
私自身は、本当にクリスティならでは。のクリスティの作品であると思う。
登場人物には、
●何よりエルキュール・ポアロ。
そしてポアロが引退した際に隠居を決めた小さな田舎の村の人々。
●大富豪であるロジャー・アクロイド
●やはり裕福な未亡人であるフェラーズ夫人
●ロジャーの義子であり、人気はあるが放蕩的なところも併せ持つラルフ・ペイトン
●ロジャーの弟の未亡人であるセシル・アクロイド夫人
●セシルの娘フローラ・アクロイド
●ロジャーの秘書ジェフリー・レイモンド
●アクロイド家の家政婦エリザベス・ラッセル
●ロジャーの執事ジョン・パーカー
●アクロイド家の小間使いアーシュラ・ボーン
●ロジャーの旧友かつ有名な狩猟家ヘクター・プラント少佐
●ロジャーの友人の医師ジェイムズ・シェパード
●ジェイムズの姉キャロライン・シェパード
●キャロラインの友人で同じく噂好きの老女ガネット
●ロジャーの遺言を預かっていた弁護士ハモンド
後はご近所で老女達と一緒に麻雀をする仲間退役軍人やポアロの手腕に疑問符を持つラグラン警部やポアロを高く評価しているメルローズ州警察本部長など。
まず、題名通りにアクロイド殺害事件が起きる。
伏線も沢山あり、男女の仲の良さ=婚約か?結婚か?を暗示するイニシャル入り指輪が偶然見つかるが、その該当者でさえ錯綜し、動機や手口も分からぬまま、物証もなく推測を出ない状況下で話が進んで行く。
動機となり得るか?どうか?だが、もちろん男女にまつわる話も出てくる。
例えば、ラルフとフローラは叔父のロジャー・アクロイドの意向で婚約してはいるが、お互い、お金目当てである。
どちらもお金には困窮しており、どちらもお金持ちの叔父の意向に逆らえなかった政略結婚的婚約であった。
公な叔父の遺産目当てとも言える。
他にも指輪のイニシャルより、明るみには出ていない男女の仲が考えられている。→もちろん、最終的には誰と誰とが、本当に恋仲で婚約または結婚に関係があるのかは本の中で明白になる。
そういった伏線を元に一読者である私は真剣に謎解きを考え、読み進めていったのだが・・・。
登場人物の各人の性格や資質や好みや趣味やら癖などの個性というものが、”アクロイド殺害事件”を彩っているところも、とてもアガサ・クリスティらしい。と思うところだった。
他の推理小説にはあまり見受けられない点かも?知れない。
アガサ・クリスティの良さのひとつは、何と言っても推理小説のカテゴリーでなくとも読める素材であるということ。
人物描写が魅力的である。
読みやすさもある。
もちろん、そこに推理小説の良さも加味されるのだった。
いろんな意味で、”アクロイド殺害事件”は、クリスティの数ある作品の中でも忘れようにも忘れようがない作品であった。
(アガサ・クリスティからDに続く)
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2016年03月15日
アガサ・クリスティからB (アクロイド殺害事件#その1)
前述アガサ・クリスティからA後半に書いたよう”ヘラクレスの冒険”と行こうか?と迷ったのだが、短編集などは後日にスポットをあて、まずは アガサ・クリスティ推理小説の醍醐味である長編を味わってみたいと考えた。
今回扱う彼女の作品は、推理小説ファンの賛否両論を産みだしたあの”アクロイド殺害事件”である。
単なるアガサ・クリスティのファンのみならず、全推理小説ファンを巻き込んだ賛否両論の内容とは?!
まず主人公のポアロは、我が良き友ヘイスティングズと離れ、引退に田舎町を選んで暮らしている。
そこでの引退生活は、かぼちゃ作りなのだが、幾何学的シンメトリーを愛するポアロには有機的アシンメトリーなかぼちゃの形すら気にくわない。
この冒頭のヘイスティングスと離れたところで、引退生活をしているポアロ。
ここにも大きなキーワードが隠されている。
(*余談だが、一回目の?引退かも知れない。後に復活しているみたいなので。その際もかぼちゃ作りのことをポアロはさらりと語っていた。)
シャーロック・ホームズにおけるワトソンのようなあのヘイスティングスがいないことが、重要なのだ。と再読した際、つくづく思ったことがある。
つまり、あのヘイスティングスが居れば、成立し得ない何か→この何かが、とても重要な鍵を握るのだ。
以上が、推理小説ファンとして、ネタバレはしたくない私からの”アクロイド殺害事件”における最大のヒントである。
実際、アガサ・クリスティのファンの間でもベスト3あるいはワースト3に挙げられるかなり有名な作品でもある。
また1990年英国推理作家協会(史上最高の推理小説100冊)の中の5位を獲得、1995年アメリカ探偵作家クラブ(史上最高のミステリー小説100冊)の12位を獲得という高い評価も受けている。
各国の有名推理小説作家達もこの賛否両論に参加していた程で、大した話題作に間違いはない。
推理小説ファンには、この推理小説の賛否両論に参戦していた著名な推理小説作家の面々とその論点だけでも垂涎ものである。
興味のある人は、”アクロイド殺害事件”を読み終えた後、他の推理小説作家の面々とその論点含むこの本の余波も楽しんで頂きたい。
マニアックな方なら 【いわずもがな】であるに違いない。
つまり、内外とも啞然とすると思う。と、認める作品なのだ。
私自身は初めて読んだ当時、最後のページを読み終えた後、しばし啞然とし、その後、舞台を見終えたような拍手をしたくなった→そんな感じだった。
ただ当時からポアロのことが気に入っていて、この物語前から、かなりポアロの長編を読んでいた為、作中のポアロの様子から真犯人については、うすうす感づいてはいたのだが・・・。
それでも随分と驚いたものである。
あらすじは、次号のCの方に書き連ねようと思うのだが、とりあえず、一度はネタバレ前に読んで貰いたい。
最後まで読み込んで得た最初の衝撃から、しばらく時間を持ってから再読もして欲しい作品でもある。
最初の体験、感動、衝撃から 解き放たれて、再読時は美味しいワインや食事を味わうように初回では見落としていたような細部や深みに至るまで楽しみたい作品である。
小さな田舎村のお話ではあるが、退役軍人やオールドミスの老女たちが集い麻雀を行う場面もある。中国伝授の技だという退役軍人の見栄や語り手である医師が滅多と見られない役満であることなども一部、マニアで、その役満にまつわる伝説と出来事を結びつける人もいるくらいである。
私は、チョップ・ド・ラムなる医師の姉・老女の作るお昼ご飯やマングースと蛇と言った表現などが思い浮かんでくる。
それらは、あらすじの主体とはなんら関係ない細部の話ではあるが、何故か心に刻まれていたりする。
実際、この医師の姉・オールドミスの老女は、かなり魅力的な人間らしい人物で、ポアロに並ぶクリスティの名探偵ミス・マープルの分身とも一部では言われている。
この老女に限らず、他の作品にも生き生きと老女を描いたものがある。
おいおい作中の人物像も一部紹介していこうと思うが、よく言われているようにクリスティ自身も愛情を注いで描いていたに違いない。
現在は、Wi-Fiだの、GPSだの、携帯にパソコンは当たり前の時代。
このアクロイド殺害事件の時代設定とはかけ離れていて、現在、現実的にはこの話が成立しがたい時代でもある。
ただアクロイドにも当時の最先端技術が登場する。
この最先端技術も話の筋からすると、キーのひとつでもある。
最大の驚きは、もちろん、この最先端技術などではない。
他の著名な推理小説作家も論争するくらいであるトリック。
いろんな意味で、騙されたという人もいる。
もちろん、アガサ・クリスティは堂々とフェアであると公言。
このアクロイド殺害事件は、一言で言うと、アガサ・クリスティゆえのアガサ・クリスティなのだ。
(アガサ・クリスティからCに続く)
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アガサ・クリスティからA (ABC殺人事件)
アガサ・クリスティのABC殺人事件は、一言で例えるならば、”ニシンの燻製”である。
(もちろん、真犯人をバラすほど 野暮ではないと明記しておきたい。)
”ニシンの燻製”=red herringなる英語的慣用表現であるが、この言葉を知ったのもアガサ・クリスティの小説の中である。
ウィリアム・コベットなるジャーナリストが設立した新聞記事で用いたことから慣用表現になったらしい。
イギリスの新聞社がナポレオンの敗北を誤報した。
それを彼はニシンの燻製を使って批判したのが、その経緯らしい。
以前にウサギを追う犬の気を逸らそうと匂いが強い燻製ニシンを使った話を持ち出した後、政治的な燻製ニシンの効果はほんの一瞬しかないと綴ったそうだ。
私がアガサ・クリスティーの本の中で覚えた慣用表現”ニシンの燻製”なるものは前後の文章より、偽物、すり替えと言った意味合いに読みとっていた。
キナ臭い意味合いには、違いない。
ABC殺人事件のあらましは、こうだ。
ある時、警告の手紙が送られて来て、そこから奇妙な連続殺人事件が起こる。
まずAの頭文字のある土地でA・Aのイニシャルの人物(老女)が殺される。そしてその周りの人達。
次にBの頭文字のある土地でB・B(若い娘)という人物が殺される。その周りの人達。
その次はCという頭文字のある土地でC・C(紳士)という人物が殺される。その周り人達。
常にABC鉄道案内が各事件現場に置かれていて。
互いの事件や関係者に相互関係はなく、単なる愉快犯の犠牲者かと思われた矢先、Dという頭文字の土地でEという人物が殺されるが、近くにいたDとの人違いで殺されたらしい。
ある立場的に弱い人物が、記憶を喪失した間、自分が犯行を犯したのだと自白するのだが、エルキュール・ポアロは彼ではない真犯人を突き止めて行く。
動機とその手口とは。糸口はどこにあるのか?
私自身はABC殺人事件の成立自体が”ニシンの燻製”なのだと思う。
結末が分かれば、犯人像も比較的クリスティがよく手掛けて来た人物像に近いようにも思える。
ただ最初は、ABCというのが、ひどく散文的で全く分からなかったのも事実である。
クリスティー18作目、ポアロ長編ものとしては11作目である。
シャーロック・ホームズの助手ワトソンにあたるポアロの親友ヘイスティングズの持ち味が事件をポアロを伝えてくれる。
またほんの少しの隙間に顔を出す大柄のジャップ警部はポアロやヘイスティングズとも顔見知りの常連である。あちらこちらの作品にもまたお目に掛かれる人物である。
ベルギーの優秀な元警察官であり、イギリスに渡って名探偵となったエルキュール・ポアロのクリスチャンネーム=エルキュールはギリシャ神話のヘラクレスの意味らしい。
そこから”ヘラクレスの冒険”に行くのも楽しいかも?知れない。
もちろん、アガサ・クリスティのポアロもの”ヘラクレスの冒険”そして、その素となる”ギリシャ神話のヘラクレスの12の難業物語”を両方読んでみるとより味わい深くなると思う。
読書は、いつも次の読書の道しるべに連れて行ってくれるものである。
時に幾重にも渡る道が広がっている場合は、どれを選ぶのか?全て選ぶのか?1つ1つ丁寧に?同時進行でザクッと?或いは行きつ戻りつ?或いは他の読み方で?
どう読み進めて行っても本人の自由なのである。
読書は、全く本人の自由であるべきなのだ。
(アガサ・クリスティBに続く)
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