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2016年03月21日

アガサ・クリスティから (11) (そして誰もいなくなった#その4=エピローグ)


(そして誰もいなくなった)

U・N・オーエンなる人物から招待状を受け取り、孤島に集められた10人。

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過去の罪を録音機器の声で全員めいめい告発された直後、生意気な遊び人の青年が毒殺される。

翌朝には召使の女性も亡くなる。
テーブルにあった10体のインディアン人形が8体になっていた。

残された人達は、童謡「10人のインディアン」を暗示しているような殺され方をしていると気づく。
また迎えの船が来ない為、残った8人は島から出ることが出来ず、孤島に閉じ込められた状態となる。

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次に退役老将軍が撲殺されていて、インディアン人形も7体に減っていることを知る。

この招待は自分たち皆を殺す為であり、犯人は残った7人の中にいるに違いないと考えるようになる。

残ったお互いは疑心暗鬼の恐怖の中。召使、老婦人、元判事、医師が童謡を暗示するかのよう殺され、インディアン人形も減っていく。

そして残された3人のうち2人も殺される。

取り残された1人は犯人も分からないまま、恐怖に追い詰められて自殺し、そして誰もいなくなる。

それから後日、救難信号を発見した島近くの村人が、島に行く。
そこで、10人の死体を発見し、初めて事件が発覚する。

事件はロンドン警視庁が担当することになる。

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孤島に残された被害者達の日記やメモ、事件現場の状況などから、事件の経緯をつかむ。
そこから推理すると、死体で発見された10人の中に犯人がいると考えると、無理が生じ道理が引っ込むので 不可能
と判断。
11人目の犯人が居たと推理する。
ただ11人目がどこに潜み、どこにどうやって逃げたのかは分からないままであった。

この事件は迷宮入りで終わろうとしていた。

しかしある漁師がボトルに入った手紙を発見。

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そこには真犯人の告白文があり、事件の真相と全ての謎が解明されていく。

ネタバレしないブログとしては、ここまでが、ギリギリのあらすじである。

しかし”なぞなぞ”のようなヒントは、描くことが出来るので ギリギリまで書いてみようと思う。

真犯人が海に流したボトルに入った手紙は、犯人が偶然に掛けた証しである。
見つからなければ、謎のまま迷宮入りであり、見つかれば自分が犯人であるとばれるが、真相は解明される。
この犯人が持つアンビバランスを象徴していると思われる。
正義と相反する殺人について 告白文の中にも記載されている。
誰にも解けない完全犯罪にしたかった一面、犯人の完璧な犯罪をも知って欲しかったのではないか?そういう意味でも かなり重度のアンビバランスさを持っていたと思われる。

犯人自身が告白文の中で、いくつかのヒントを挙げているので ピックアップしてみよう。

”ニシンの燻製”である。
ABC殺人でもとりあげた”ニシンの燻製”=偽物、すり替え、目をそらすものを意味する英語の慣用句である。

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”10人のインディアン”のマザーグースにもニシンの歌詞があるのだが、注目である。

別のヒントは、「カインの刻印」である。
英語圏なら誰しもがよく知っている聖書の中のお話である。

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旧約聖書にある(カインとアベル)のカインが、誰からも殺されぬよう神からつけられた印である。

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ぜひ推理にトライしてもらいたい。
それこそが推理小説の醍醐味である。

とにもかくにもアガサ・クリスティの代表作であり、推理小説界の中でも特筆すべき作品なのだ。

この作品からインスピレーションを得た他作家が、別の作品作りに生かしていたりする位、推理小説界でも かなり凄い作品なのだ。

またある意味、心理合戦のような各人のこころ模様や内面も描いている。
10人のインディアンの唄のごとく、1人づつ殺されていき、残された人達がどんどん精神的に追い込まれて行く様子が分かるのである。

この(そして誰もいなくなった)は沢山の劇や映画にもなっている。
結末や事件の舞台は、その都度、原作から変えられていることが多い。

実は、マザーグースの10人のインディアンの唄の最後の結末は二つあるそうで、一般的にはもう一つの結末の方が有名らしい。
原作では不気味で残酷なラストをモチーフに事件を展開していたが、もう一つの結末はハッピーエンド:最後の1人は結婚して、誰もいなくなった。になるらしい。

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この結婚していなくなる=ハッピーエンドを用いた戯曲や映画の結末も多いと聞く。

いずれにせよ、アガサ・クリスティの凄さがより良く分かる作品である。

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(アガサ・クリスティ12に続く)





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