2017年05月30日
アガサ・クリスティから (135) (ミス・マープルと十三の謎*動機 対 機会【1】) 余談の後編
(ミス・マープルと十三の謎*動機 対 機会【1】) 余談の後編
ひょんなことから、毎週順番に自分だけが知っている謎を各自持ち出し、残りのメンバーが解決を推理していくことになった火曜クラブ。
メンバーはそうそうたるものでした・・・元ロンドン警視庁の警視総監、教区の牧師である博士、弁護士、甥の作家、女流画家・・・そしてミス・マープル。
どの謎の場合にも、ひざの上で編み物をしながら、ずばりと真相を言い当て、皆を驚かせます。
その風貌は白髪の上品な老女に過ぎないのですが、まさかの推理力の高さに、論外視していたメンバーも認めざる負えなくなるほどでした。
後に数々のクリスティの長編にも彼女は登場するのですが、この短編集が彼女=ミス・マープルのデビュー作なのです。
(このブログでもミス・マープルの長編・予告殺人を取り上げています。【アガサ・クリスティから(12)〜(14)参照】)
実は作者のアガサ・クリスティは、彼女の祖母にミス・マープルがとても似ていると書いてもいます。
・・・・・ミス・マープルはわたし自身の祖母にどこかしら似ているのです。わたしの祖母もやはり桜色の頬をした、色白の、感じのいい老婦人でした。世の中からひきこもって、ヴィクトリア朝風の生活を送っていたくせに、このおばあさんは人間の邪悪を底の底まで知り抜いているかのように思われたものでした。
「でも、おまえ、あの人たちの言ったことを信じてしまったんでしょう。それがいけないんですよ。あたしなら信じませんとも。」と、こうとがめるように祖母に言われると、みんな、まるで、こちらがだまされやすい、世間知らずの愚か者のような気持ちがしたものです。・・・・・
きっと、ミス・マープルやアガサの祖母なら、昨今の(オレオレ詐欺)なんかには、深い知恵とするどい洞察力で、決して引っ掛からないのだろうなぁと思います。
年老いていくことをあまり美徳と思わないかも?知れない風潮も現代社会にありますが、熟成されたワインのような深い叡知は、間違いなく、年を重ねて行った側にあるような気がします。
実際、インディアンなどの原住民は年を重ねることを負とはみなさず、高い齢の深い知恵を尊ぶ文化を持つ民族もいます。
(もちろん、輝くような勢いは、若い側の特権かも?知れないですが。)
少し話が脱線してしまいましたが、このミス・マープルとポアロは、アガサ・クリスティの2大名探偵とも言えるかなぁと思います。
(他にもアガサ・クリスティの推理小説には、トミー&タペンス、バトル警視、パーカー・パイン氏などなどの多彩な探偵も登場するのですが・・・こちらも、おいおい紹介していきたいと思います。)
二人とも著名な探偵ではあるのですが、産みの親でもある作者のアガサ・クリスティ自身は、ポアロに悩まされ、このミス・マープルをこよなく愛していたと告白しています。
またミス・マープルは、きっと男性には書けなかったであろうとも思われます。(個人的な見解ですが・・・)
とてもありきたりな、しかしするどい洞察力を持つ老婦人のミス・マープル。
老女ならではの(女性ならではの)するどい洞察力・・・これは男性には分かりづらいような気がするのです。
この独創的な老女の探偵は、アガサ・クリスティの祖母がモデルだったり、彼女の一部が入り込んでいるような気がしています。
次回から、また短編の中の(動機 対 機会)に戻ります。
(次号に続く)
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