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木嶋被告死刑　証拠の精度を最高裁も認めた

　どの角度から証拠を検討しても、犯人は被告以外にあり得ない。最高裁は、そう結論付けた。

　２００９年に首都圏で発生した連続不審死事件で、最高裁が、無罪を主張する木嶋（現姓・土井）佳苗被告の上告を退けた。死刑が確定する。

　「結婚サイト」を通じて知り合った男性３人を、練炭自殺に見せかけるなどして殺害したとされる事件だ。最高裁は、真剣な交際を装って多額の金銭を受け取っていた被告が、 嘘 の発覚を免れるために犯行に及んだ、と認定した。

　「殺害の態様は周到に準備された計画的なもので、刑事責任は極めて重大だ」と指摘し、１、２審の死刑判決を支持した。

　被害者の数や犯行の悪質性を考えれば、極刑はやむを得まい。

　事件の特徴は、自白や目撃証言など、殺害を裏付ける直接証拠が存在せず、多数の状況証拠によって立証が図られた点にある。

　被害者の死亡直前、その場所に二人きりでいた。犯行に使われた練炭と同種のものを入手していた。殺害の動機があった。被害者に自殺や事故死の可能性がない。これらが３事件の共通点だ。

　最高裁が「合理的な疑いを差し挟む余地がない程度に証明されている」と判断したことは、うなずける。説得力のある状況証拠が、重層的に示されている点を評価したと言えよう。

　積み上げられた状況証拠の価値を認め、最高裁が死刑を選択した代表例が、和歌山毒物カレー事件だ。毒物の鑑定結果などを根拠に０９年、被告を犯人だと断じた。

　翌年の大阪母子殺害事件判決では、状況証拠だけで有罪認定する基準について、「被告が犯人でなければ合理的に説明できない事実関係が含まれていること」と判示した。その上で１審・無期懲役、２審・死刑の判決を破棄した。

　極めて厳格かつ 緻密 な証拠収集を求めたものにほかならない。大阪の事件は先月、差し戻し控訴審で無罪が確定した。今回の事件は、基準に照らしても立証が十分と判断されたことになる。

　毒物カレー事件と共に、状況証拠で事件を立証する場合のモデルケースとなるのではないか。

　初動捜査にミスがあった点は忘れてはならない。被害者の１人について、警察は当初、自殺と判断し、司法解剖しなかった。捜査が甘かったと言わざるを得ない。

　犯罪死の見落としは、死者の尊厳にかかわる。警察には、現場や遺体のわずかな異変も見逃さない捜査力が求められる。