2015年05月06日
本紹介 No. 011『伝真言院曼荼羅 世界文明の縮図』
『伝真言院曼荼羅 世界文明の縮図』
本のタイトル『伝真言院曼荼羅』とは僕の大好きな東寺『西院本両界曼荼羅』のことです。
小久保和夫 著
『伝真言院曼荼羅 世界文明の縮図』(サンブライト出版 1978)
古本をあさってて偶然みつけたので読んでみました。
『西院本曼荼羅』関連本となるととりあえず読んでみたくなります。
表紙に「写真=石元泰博」とありますので、石元泰博氏のまだ見ていない写真なども見ることができるかもしれません。・・・というより石元氏以外に東寺『西院本両界曼荼羅』を撮影した写真ってないのかも。
これまで紹介した『西院本曼荼羅』の本はどちらかというと図がメインの本でしたが、この本は文章がメインですし、「世界文明の縮図」という副題にも心惹かれるものがあります。
構成
B6変形(縦x横:200 mm x 130 mm)、右開き縦書き142ページ、巻頭写真のほかにページ中三箇所にカラー写真各16ページが挿入されています。鮮やかで綺麗な『伝真言院曼荼羅』の写真の数々。すばらしい。
構成は以下の通り。
序 ー 光るオリジナリティー 石田尚豊
序章
一章 生と死の思想 ー 胎蔵界最外院
二章 光の造形
三章 器物の思想 ー 金剛界曼荼羅
あとがき
序には以前紹介した良本『曼荼羅のみかた パターン認識』の著者である石田尚豊氏が寄稿しています。本書への期待が高まります。
構成だけみてもなにがなんだかという章題ですが、ある意味トリッキーでいいかもしれません。
内容
内容ですが写真がとっても綺麗です。
で、本文は・・・う〜んと・・・まあ、研究書以外の宗教関連本によくあるパターンですが、自分の思いというか熱意が先に立ってしまって論理の飛躍や論理そのものの欠如が多分に見られます。
序章の1ページ目で空海請来の一丈六尺の両界曼荼羅を紹介する写真に『伝真言院曼荼羅』を参照とするあたりに厳密性について不安が募ります。全体を読むとそうではないことがわかりますが、誤解を招くもとになるやもしれません。
一方、著者は東寺勤務とのことで、真言宗の内側からみた両界曼荼羅の役割についての大変示唆にとむ言説が発見できます。例えば、截金が燈明に照らされて浮かび上がる立体感や奥行き感などはその場にいないとわからない貴重な発見です。
「あとがき」によると東寺文化財担当の著者は石元泰博氏が『伝真言院曼荼羅』の撮影を行うのに立ち会ったことから『伝真言院曼荼羅』に魅せられこの本を著すにいたったようです。
『伝真言院曼荼羅』の構成や描かれた図像とインドや中国の文明はもとよりギリシャ文明やエジプト文明、ヴァイキングやオリエント文明などとの関わりの中で思いつきというか気づきがもととなって話が展開します。
著者は新約聖書学を専攻していたとのことで、西洋文明に対する知識や興味が『伝真言院曼荼羅』の理解に多大な影響を及ぼしていることと思います。
特に『伝真言院曼荼羅』の中にみられる生と死と光のイメージを世界文明との関わりの中で捉えようとしているようです。それがこの本の副題の「世界文明の縮図」につながっているのでしょう。
長い時間『伝真言院曼荼羅』とともに過ごし、その時間の中で様々に考え、思い浮かんだことを一つづつエセーのように書き綴り一つにまとめたのが本書であろうかと思われます。
全くの余談ですが、126-127ページに載せてある舎利塔や密教法具が実に美しい。非常に美しい。なにか限りなく完璧さに近いものを感じます。すばらしい。
曼荼羅作画とのかかわり
『西院本曼荼羅(伝真言院曼荼羅)』に対する強い思いを感じるとともに、やはりこの曼荼羅はすばらしいと再確認しました。
また、本書で『西院本曼荼羅』の一部分を拡大した写真をたくさん見ることができ目の僥倖です。
「あとがき」に石元泰博氏が約一万枚ものフィルムに『西院本曼荼羅』を撮影したと書いてあり・・・見たい・・・とうか欲しい・・・デジタルライブラリーになってたりしないかな・・・なさそう
上記「内容」のところでも書きましたが截金の効果というか重要性をあらためて認識しました。下絵が煩雑になるとおもい截金の下絵を描いていませんが、本絵では截金について十分に考慮する必要があるかと思います。
でも、どれくらいの技術というか訓練がひつようになるのか全く想像もできません。どうしよう・・・
では、また〜ヾ(。・ω・。)ノ
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