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2015年03月22日
本紹介 No. 004 『曼荼羅のみかた パターン認識』
『曼荼羅のみかた パターン認識』
今回紹介する本は
石田尚豊 著 『曼荼羅のみかた パターン認識』(岩波書店 1984)
本紹介 No. 002でとりあげた『曼荼羅の世界とデザイン』でほぼ唯一上げられていた参考文献なのですが、ちょっと気になったので読んでみました。
『曼荼羅の世界とデザイン』は縦書き右開きソフトカバー本でカラー写真は口絵の8枚のみ、一方、本書は横書き左開きのハードカバーで117点のカラー写真を使用して解説を行っています。
『曼荼羅の世界とデザイン』では主に丸、四角といった基本図形に着目し解説していましたが、本書では特徴的な図像からパターンを抽出し、それぞれの曼荼羅の意味を解き明かしています。
と、しかし、これは・・・大当たり!!!隠れた名著と思います!
単に僕が知らなかっただけの可能性が高いですが・・・こういう僥倖があるから本探しはやめられません。ここまで素晴らしい本がAmazonでの評価も付いていない(2015年03月22日現在)というのは、どこか間違っているんでしょうか?
まあ、僕にとっての良本というだけで、他の方にとってはそれほどでもないのかもしれませんが・・・
構成
構成は、以下の通りです。
(1)曼荼羅のパターン認識
(2)叙景曼荼羅
(3)胎蔵界曼荼羅
(4)金剛界曼荼羅
(5)合成型
(6)その他のパターン
(7)絵系図系
(8)曼荼羅の諸形態
(9)曼荼羅の歴史
内容
まず、図版が美しい。両界曼荼羅のところで主に作例に挙げられているのは大好きな『西院本曼荼羅』です。
そして、すごい情報量。内容が濃く、すこしは基礎知識がないと理解しにくいかもしれませんが、図を参照しながら話しかけるような語り口で詳細に書かれています。
一見複雑な曼荼羅をパターン認識をきっかけにして図の意味と図相互の関係性を示し、その意味に目を向けさせ理解を促すように書かれています。
例えば目の前に内容不明の曼荼羅があったとします。その図様から曼荼羅の性格を読み解こうという流れです。解説をよみ目から鱗が落ちまくりました。いくつかの知識がゆっくりと開いていく感じです。素晴らしい。
と、褒めまくりですが、あえて改善希望点をあげると、
(1)図版はもっと大きい方が良かった。ぶっちゃけもっと大きな図鑑タイプの本にして欲しかった。
(2)各曼荼羅は基本データとして所蔵だけではなく、サイズや基底材(絹本か紙本かなど)、制作年代、できれば作者名などのリストがあると嬉しかったです。
(3)ほとんどの用語は本文中で説明されておりますが、用語解説が付いているとさらによかったかと思います。
(4)背景に歴史的な流れを意識して構成されておりますが、もうすこしパターン認識による分類と歴史的背景を明示的にリンクさせる構成にしていただけると助かります。
(5)パターンA,B,C・・といった分類名の必然性が不明で、そのまま、叙景系、蓮華系といったパターン認識名で良いと思うのですが・・・
と、幾つか改善希望をあげましたが、ともかくも内容がすばらしく買ってよかったな〜と素直に思える本です。
曼荼羅作画との関わり
さて、曼荼羅作画における本書の功績としては様々な疑問に答えていただき、また、気がついていなかった重要なポイントに目を向けさせていただきました。
さらに研鑽が必要であるとも痛感いたしました。もっと見識を広げてそれぞれの尊像や図像の意味を掴み描く必要があるのだなと感じました。
いや、ほんとにすばらしい!ありがとうございます。
では、また〜ヾ(。・ω・。)ノ