2015年06月23日
本紹介 No. 023『ブッダの生涯』
『ブッダの生涯』』
前回、前々回の本紹介に引き続き釈尊の生涯を追っています。
これまでの二冊は創作された「仏伝」を極力排除し、歴史的人物としての釈尊に光を当てることを目的としていましたが、仏教や密教の理解のためには釈尊の伝説的側面も重要と思います。
また、前二冊は図がなく、釈尊の生涯を理解するためのヴィジュアル面での補助がなかった。今回はその意味でもカラー図の多い本を選びました。
ジャン・ボワスリエ 著 木村清孝 監修
『ブッダの生涯』(創元社 1995)
創元社の知の再発見叢書シリーズはカラー図版が楽しい。
構成
B6変形判、カラー132ページ、モノクロ78ページ
構成は以下の通り。
第1章 ブッダの時代
第2章 菩薩 ー ブッダの前身 ー
第3章 悟りとはじめての説法
第4章 布教と遍歴
第5章 入滅
第6章 ブッダ入滅後の布教
資料篇 ブッダ・その過去と現在
1 仏典の基礎知識
2 「尊い真理」ー ブッダのことばから
3 経典に見るブッダ像
4 中国からの巡礼たち
5 ブッダの顔だちと姿
6 原始仏教からマハーヤーナ(大乗)へ
7 アジアにおける仏教の広がり
8 仏教と西洋
9 ダライ・ラマへのインタビュー
用語解説
略年表
INDEX
出典(図版)
参考文献
第1章〜第6章がカラー、資料篇以下がモノクロページ。
内容
本書は南方所伝の仏伝文学と西洋近代仏教研究の成果に基づいて、釈尊の生涯を多数の美しく貴重な資料とともに短くまとめたものです。
ただし、日本を含む東アジア仏教圏の北伝大乗仏教の資料は活用されていません。
筆者は「ブッダの歴史的生涯は、伝説と切り離すことができず、奇跡と史実、聖と俗、天上界と地上界とが渾然としている。」としており、本書は前二冊と異なり伝説的仏伝よりの釈尊伝ということになります。
ジャータカはもとより、釈尊の誕生、最初の7歩、四門出遊、降魔成道、竜王ムチリンダの守護、シラーヴァスティーの大いなる魔法、33神の天からの降下など様々な奇跡が題材に挙げられています。
伝説的仏伝を排した前二冊の『釈尊の生涯』と比べると、本書の壮麗な仏伝文学は釈尊の教えの本質を見えにくくしているように思う。
そう思うと、シンプルな原始仏教に慣れてから徐々に発展した仏教の教義へと進んだ方が理解しやすいかもしれない。
また、本書は仏伝のダイジェスト版であり、仏伝的表現の全体を簡便に理解するには適しているが、その詳細に不明な点が多く、さらなる理解が必要となる。
経典の多さもそうだが、本書にみられる多数の仏教美術によってもひとびとの仏教に対する強い思いを感じずにはいられない。
曼荼羅作画とのかかわり
釈尊の生涯を理解しようと思った理由の一つである密教像の印契の意味と由来については、「資料篇5 ブッダの顔だちと姿」のなかに、種々の伝統的な印相として禅定印、与願印、施無畏印、転法輪印などについての説明を見出すことができた。
本書は釈尊の仏伝文学的理解の入り口として良書であるが、それ以上に多数の美しい仏教美術に惹かれる。
その中でも、p63の「マーラの来襲」(敦煌, 10世紀)の絵画やp96の「神々を教え導くブッダ」(バールフト, 紀元前2世紀)の彫刻などは曼荼羅的表現を彷彿とさせる。
本書により両界曼荼羅に限らず世界の仏教美術全体への理解を深めたいと感じました。
では、また〜ヾ(。・ω・。)ノ
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