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2018年03月17日

中村吉右衛門主演「鬼平犯科帳」第5シリーズ第5話「消えた男」







 3月17日の午前8時から、CS放送の時代劇専門チャンネルで、中村吉右衛門主演「鬼平犯科帳」の第5シリーズの第5話「消えた男」が放送されました。
 火付盗賊改方長官・長谷川平蔵(中村吉右衛門さん演じる)が信頼を置く筆頭与力の佐嶋忠介(高橋悦史)は、ある日、以前に火付盗賊改方の同心で今は行方知れずとなっていた高松繁太郎(渡辺裕之さん演じる)と出会う。偶然の再会だった。
 まだ平蔵が長官となる以前の八年前、高松繁太郎は佐嶋忠介に、「好きな女と他国へ行く」と書き置きを残し出奔していたのだったが、その本当の理由は、平蔵の前任者の堀帯刀の下で働くことに嫌気が差したからだった。
 高松繁太郎はある盗賊と深い因縁があり、佐嶋と再会後も命を狙われることになる。
 それから、ドラマ上でもさまざまな展開があり、結局、ラストの方では、高松繁太郎は彦十(江戸家猫八さん演じる)や粂八(蟹江敬三さん演じる)らと同じ密偵となる。
 ところが、大酒を飲んだ帰りに、闇夜で何者かに殺される。
 このとき、「盗賊の一味が殺したのか」と色めき立つ部下たちに平蔵が言った言葉が注目に値します。
 酔っていたとはいえ、高松程の剣の使い手が盗賊にやられるわけがない。何者かが大枚はたいて「仕掛人」を雇ったのだ、と。
 池波正太郎さん原作の「鬼平犯科帳」だけに、池波正太郎さんが創作した「仕掛人」という言葉が登場するのです。
 ちなみに、「剣客商売」でも「仕掛人」が登場します。





加藤剛主演「大岡越前」第7部第2話「紅蜘蛛の娘」







 3月16日の午後9時から、CS放送の時代劇専門チャンネルで、加藤剛主演「大岡越前」第7部の第2話「紅蜘蛛の娘」が放送されました。
 或る商家に盗賊が入ります。凶悪な押し込み強盗で、寝ている人間を手当たり次第に殺します。
 その盗賊の中に、覆面をした女(叶和貴子さん演じる)がいました。「おけい」という名のその女は、こっそりと、家内の小さな女の子を抱き上げ押し入れの中に入れて隠します。
 女の子はそのおかげで助かりました。
 おけいが女の子を助けたことを知らない盗賊の頭は、おけいをほめ、「よくやった」と言います。おけいは商家に入り込んで内側から盗賊を手引きする「引き込み役」だったのです。
 翌日、商家の主人一家や使用人たちの惨殺死体が発見されます。強盗殺人現場を調べる風間駿介(和田浩治さん演じる)ら南町奉行所の役人たちが「こんなひどいのは見たことがない」「人間のすることじゃない」とあきれるほどの凶行でした。
 そこへ大岡越前守忠相(加藤剛さん演じる)がやってきます。
 忠相が商家の中に入り様子をみたその時、小さい子どもの泣き声が何処からか聞こえました。おけいに助けられた女の子です。
 女の子の証言により、盗賊の中に「蜘蛛の入れ墨」をした男がいることと、盗賊な手下の中に女がいてその女が助けてくれた、ということが分かります。
 奉行所役人の探索が進むうちに「奉行所の役人は蜘蛛の入れ墨の者を探している」ということを盗賊一味の者が知り、「皆殺しにしたはずなのに何故?」「仲間の誰かが助けたのか?」ということになり、おけいを疑う者が出始めます。
 おけいは、親も盗賊でしたが、親亡きあと、今回の凶行に及んだ盗賊の頭の保護下で働くようになり、脅され嫌々ながら凶行に加わったのでした。
 蜘蛛の入れ墨の盗賊たちは、次の押し込み先と狙いを定めた豪商の主人に近づきます。その商人は好色な男で、盗賊の頭を盗賊と知らぬまま「あの女(おけいのこと)を好きなようにしていいですよ」とそそのかされ、その気になります。
 おけいは盗賊の頭に、あの商人に抱かれろ、と言われ、断ります。が、頭は「これも仕事のうちだ」とばかりに、なかば脅し、おけいが湯に入っている時に商人に覗かせる、などのことをします。
 女子供も殺す凶行を行いながら平然としている頭の指示にしたがい、好色な男に抱かれろ、と言われることなどに嫌気がさしたおけいは、たまらず逃げ出します。そして追ってから逃げるうちに忠相らに助けられることになり、猿の三次(松山英太郎さん演じる)の家でかくまわれることとなる。
 かつては盗賊で今は忠相に仕える三次は、おけいに打ち明ける。自分はむかし、あんたのおとっつあんに会世話になった。だからあんたを助けたいのだ、と。
 しかし、盗賊たちはおけいが三次の家にかくまわれていることを知り、三次の家に潜入して三次とおけいを脅し、二人を連れ去ります。
 ふたりはいったい、どうなってしまうのか?

 この回で重要なのは、「恩人の娘をなんとしても助けたい、という三次の気持ちです。元盗人とはいえ、いや、三次のような男だからこそ、というべきか、「義理人情を重んじる気持ち」は大きく、恩人の娘にであっても、恩返ししたい気持ちは大きいのです。
 このように義理人情が前面に出るところが時代劇らしいところです。「大岡越前」は人情時代劇といわれるだけにその色彩が濃いようです。
 それはこの回のクライマックスの「お白州」の場面にもよく表れています。







 

村上弘明主演「銭形平次 1」第10話「切腹直前! 殺人者にされた与力」







 3月16日の午後8時から、CS放送の時代劇専門チャンネルで、村上弘明主演「銭形平次 1」の第10話「切腹直前!殺人者にされた与力」が放送されました。
 時代劇によく登場「する「岡っ引き」というものは、奉行所の役人の手下となって働く者で、正式な意味での幕府の役人ではありません。ですから幕臣そのものでもありません。たいてい、なんらかの職をもっている町人で、市井にあってさまざまな情報を集め、奉行所の与力・同心のために集めた情報を注進したり捕り物に参加したりします。
 「岡ぼれ」とか「岡場所」などという言葉があるように、「岡」という字がつくのは、正式なものではないことを示しています。
 しかし、そういう身分だからこそ活躍の場があるというものです。
 奉行所の役人は、江戸八百八町を取り締まるにしては人数が少なすぎた。それで、どうしても「岡っ引き」のような存在が必要になったのです。
 時代劇でもよく登場するように、「お上から預かった十手」だと言ってお上の威光をかさに十手の権威を振りかざす者もいたようですが、そのぶん、庶民のために悪を許さず治安を守る者として岡っ引きには「庶民の味方」であってほしい、と思う江戸町民は多かったと思われます。
 その思いを近代の野村胡堂という作家がくみ取って作品に反映させたのかもしれません。
 
 さて、この10話です。主人公の銭形平次(村上弘明さん演じる)の直属の上司的存在である与力・笹野新三郎(西岡徳馬さん演じる)が、 田宮左門(堤大二郎さん演じる)という旗本のしかけた罠にはまり、犯してもいない罪に問われます。
 奈良屋(西園寺章雄さん演じる)から賄賂を受け取った、とされ、その奈良屋が笹野と会う直前に何者かに惨殺されます。そして、笹野が惨殺死体を見た直後に田宮一派に踏み込まれ、刀を改められ、血をぬぐった跡がある、これが証拠だ、と言われて追い詰められます。
 実はこれこそ、田宮一派と、田宮の愛人(現代風にいうと)だった奈良屋の女房・お志摩(寺田千穂さん演じる)が巧妙に仕組んだ罠だったのです。
 ではなぜ、田宮はそんなことをするのか?
 銭形平次は笹野から田宮との因縁を聞こうとしますが、笹野はなかなか話そうとしません。
 ようやく分かったことは、田宮左門の父が笹野の恩人で、笹野は「息子を頼む」との遺言を受けていたのです。
 それで笹野は田宮左門の乱行を見てもかばおうとしていたが、左門の母に「息子が不義密通を行ったら成敗してほしい」と言われ、その「密通」の現場をおさえて斬ろうとしたことがあった。
 「おれが悪かった! 心を入れ替える」
 そう言った左門の言葉を信じて笹野は斬るのを思いとどまり、反省文のようなものを書かせた。
 それを左門はずっと逆恨みし続け「復讐」の機会を伺っていた。
 そして周到な罠で笹野を無実の罪に問い、身柄を拘束したところで仲間とともに笹野邸に踏み込み、どさくさにまぎれて「反省文」を取り返してこっそり始末しようとしたのだ。
 ところが、「反省文」は、書かせてすぐに笹野が田宮家の墓前で焼いていた。
 田宮の父母のことを思っていた笹野の気持ちを知らずに、左門は笹野を恨み続けて、今はもうない「反省文」を躍起になって取り戻そうとしていたわけです。
 結局、笹野・銭形と左門は対決しますが、逆ギレ(現代風にいうと)した左門に笹野に怒りが頂点に達します。
 「あのとき斬っておけばよかった」
 と。

 いつの世にも「左門」タイプの人間はいるものです。
 自分の悪事がバレるや、平謝りに謝る。しかしそれは自分の身を守るためだけのものであって、心の底から反省したわけではない。いや、心の底どころか表面だけの反省ですらなく、みせかけの、言葉だけの反省に過ぎず、反省を促した人間に逆恨みして、ずっと恨み続けるのです。
 腐った人間はなかなか悔い改めることなく、腐り続けている。そういう例が多いものです。
 それにしても、笹野の恩人という男とその妻が左門を立派な男に育て上げられなかったのは、どうしたわけなのでしょうか?
 いろいろな原因が考えられます。
 もちろん、これは創作ドラマの話ですが、ほんとうに、悪人の姿というものや、そういう悪人が出来上がった原因について様々考えさせられます。








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