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2021年03月09日

【植物に依存】窒素化合物の代謝


 高等動物はNH3を使ってグルタミンやグルタミン酸を合成しますが、動物の窒素源はすべて動植物由来の食用たんぱく質なので、植物によるグルタミン合成はもっとも重要です。





 動物は食べたたんぱく質を消化酵素でアミノ酸に加水分解して吸収し、肝臓に送ります。ここで一部のアミノ酸は生合成などに使われ、残りは肝臓以外の組織に運ばれてたんぱく質になります。また、肝臓では必要以上のアミノ酸の窒素は尿素に、炭素骨格は糖や脂質代謝の中間体に変えられます。





 植物は、有機窒素化合物の合成に無機窒素(NH3やNO₃⁻)だけを利用します。NH3からグルタミン、グルタミンからグルタミン酸を合成し、この両者がほかの全アミノ酸と有機窒素化合物に窒素を供給します。





 アンモニア同化の主な経路のひとつは、生物界に広く存在するグルタミンシンテターゼという酵素によるグルタミンの合成です。





 グルタミン酸+ATP+NH3→グルタミン+ADP+H3PO4





 少なくとも植物では、グルタミンのアミド基(-C=ONH-)がほかのすべての窒素化合物の原材料となります。グルタミン酸以外の全アミノ酸は、アミノ基(-NH2)の転移でできます。あるアミノ酸のアミノ基が、アミノ基受容体に移ってアミノ酸になり、もとのアミノ酸は2-オキソ酸に変わります。アミノ基を転移する酵素アミノトランスフェラーゼは、いろいろ知られており、グルタミン酸型アミノトランスフェラーゼやアラニン型アミノトランスフェラーゼなどがあります。





 動物は、進化の過程でたんぱく質構成アミノ酸の半数を合成できなくなりました。人は必須アミノ酸として、アルギニン、イソロイシン、トリプトファン、トレオニン、バリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、メチオニン、リシン、ロイシンを必要とします。ほかのアミノ酸は体内で合成できます。





 今日の世界の食糧問題のひとつは、必須アミノ酸を含む良質なたんぱく質をいかに供給するかです。世界人口の大部分は、穀類に依存し、良質なたんぱく質の摂取が不足しがちです。



動植物の窒素源


 高等動物はNH3を使ってグルタミンやグルタミン酸を合成しますが、動物の窒素源はすべて動植物由来の食用たんぱく質なので、植物によるグルタミン合成はもっとも重要です。





 動物は食べたたんぱく質を消化酵素でアミノ酸に加水分解して吸収し、肝臓に送ります。ここで一部のアミノ酸は生合成などに使われ、残りは肝臓以外の組織に運ばれてたんぱく質になります。肝臓では血漿のアルブミン、グロブリン、フィブリノーゲン、プロトロンビンなど血液たんぱく質が合成されます。





 また、肝臓では必要以上のアミノ酸の窒素は尿素に、炭素骨格は糖や脂質代謝の中間体に変えられます。





 植物は、有機窒素化合物の合成に無機窒素(NH3やNO₃⁻)だけを利用します。NH3からグルタミン、グルタミンからグルタミン酸を合成し、この両者がほかの全アミノ酸と有機窒素化合物に窒素を供給します。



2161374.jpg


アンモニアの同化とアミノ基の転移


 アンモニア同化の主な経路のひとつは、生物界に広く存在するグルタミンシンテターゼという酵素によるグルタミンの合成です。





 グルタミン酸+ATP+NH3→グルタミン+ADP+H3PO4





 酵素は特異的でグルタミンだけが生じ、アスパラギン酸には作用しません。少なくとも植物では、グルタミンのアミド基(-C=ONH-)がほかのすべての窒素化合物の原材料となります。NH3が有機化合物に直接取り込まれる別の道は、カルバモイルリン酸の合成で、ごく一部の動物組織に限られます。





 グルタミンはいろいろな有機窒素化合物の前駆体で、細菌のグルタミンシンテターゼは、いろいろな化合物で調整されるアロステリック酵素です。アロステリックとは、たんぱく質の機能がほかの化合物によって調節されることです。グルタミンに由来するトリプトファン、ヒスチジン、グリシン、アラニン、グルコサミン、カルバモイルリン酸、AMPなどが、グルタミンシンテターゼをフィードバック阻害します。





 グルタミン酸以外の全アミノ酸は、アミノ基(-NH2)の転移でできます。あるアミノ酸のアミノ基が、アミノ基受容体に移ってアミノ酸になり、もとのアミノ酸は2-オキソ酸に変わります。アミノ基を転移する酵素アミノトランスフェラーゼは、いろいろ知られており、グルタミン酸型アミノトランスフェラーゼやアラニン型アミノトランスフェラーゼなどがあります。グルタミン酸型アミノトランスフェラーゼは、グルタミン酸をアミノ基供与体として、いろいろな2-オキソ酸をアミノ化する反応、逆にいろいろなアミノ酸からアミノ基を2-オキソ酸に移す反応を触媒します。アラニン型アミノトランスフェラーゼは、アラニンとピルビン酸に特異的で、ほかのアミノ酸とのアミノ基転移を触媒します。



アミノ酸の合成


 動物もNH3をグルタミンに取り込む場合がありますが、その窒素はたんぱく質やアミノ酸として摂取したものです。動物が自身で合成できないアミノ酸を含むたんぱく質を栄養として摂取しなければならないことは昔から知られています。





 動物は、進化の過程でたんぱく質構成アミノ酸の半数を合成できなくなりました。人は必須アミノ酸として、アルギニン、イソロイシン、トリプトファン、トレオニン、バリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、メチオニン、リシン、ロイシンを必要とします。ほかのアミノ酸は体内で合成できます。





 フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンの場合、合成できないのはベンゼン環です。植物や微生物はシキミ酸経路などでベンゼン環を合成することができますが、動物はできません。ただ、フェニルアラニンがあれば、酵素によりチロシンをつくることができます。バリン、ロイシン、イソロイシンの場合は、枝分かれした炭化水素鎖がつくれないので、必須アミノ酸として摂取しなければなりません。





 グルタミン酸の炭素骨格から誘導されるアミノ酸としては、グルタミン、プロリン、アルギニン、オルニチンがあります。アスパラギン酸の炭素骨格から誘導されるアミノ酸は、アスパラギン、リシン、メチオニン、トレオニン、イソロイシンです。ピルビン酸からは、アラニン、ロイシン、バリン、イソロイシンです。ホスホエノールピルビン酸からは、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンです。3-ホスホグリセリン酸からは、セリン、グリシン、システインです。微生物などは、ぶどう糖や酢酸などからたんぱく質の合成に必要な全アミノ酸を合成します。





 細菌や高等植物は、システインの硫黄を転移して、メチオニンを合成します。動物は細菌や高等植物と異なり、必須アミノ酸のメチオニンからシステインを合成します。





 今日の世界の食糧問題のひとつは、必須アミノ酸を含む良質なたんぱく質をいかに供給するかです。糖類は、お米、トウモロコシ、小麦、キャッサバなど主な穀類から供給されますが、良質なたんぱく質の供給は難しいです。動物性たんぱく質は、必須アミノ酸をすべて含むので、肉や魚の消費国では問題ありません。植物性たんぱく質でもマメ類であれば問題ありません。しかし、世界人口の大部分は、穀類に依存し、良質なたんぱく質の摂取が不足しがちです。トウモロコシやお米のたんぱく質だけであるとリシンが不足します。



まとめ


 高等動物はNH3を使ってグルタミンやグルタミン酸を合成しますが、動物の窒素源はすべて動植物由来の食用たんぱく質なので、植物によるグルタミン合成はもっとも重要です。





 動物は食べたたんぱく質を消化酵素でアミノ酸に加水分解して吸収し、肝臓に送ります。ここで一部のアミノ酸は生合成などに使われ、残りは肝臓以外の組織に運ばれてたんぱく質になります。また、肝臓では必要以上のアミノ酸の窒素は尿素に、炭素骨格は糖や脂質代謝の中間体に変えられます。





 植物は、有機窒素化合物の合成に無機窒素(NH3やNO₃⁻)だけを利用します。NH3からグルタミン、グルタミンからグルタミン酸を合成し、この両者がほかの全アミノ酸と有機窒素化合物に窒素を供給します。





 アンモニア同化の主な経路のひとつは、生物界に広く存在するグルタミンシンテターゼという酵素によるグルタミンの合成です。





 グルタミン酸+ATP+NH3→グルタミン+ADP+H3PO4





 少なくとも植物では、グルタミンのアミド基(-C=ONH-)がほかのすべての窒素化合物の原材料となります。グルタミン酸以外の全アミノ酸は、アミノ基(-NH2)の転移でできます。あるアミノ酸のアミノ基が、アミノ基受容体に移ってアミノ酸になり、もとのアミノ酸は2-オキソ酸に変わります。アミノ基を転移する酵素アミノトランスフェラーゼは、いろいろ知られており、グルタミン酸型アミノトランスフェラーゼやアラニン型アミノトランスフェラーゼなどがあります。





 動物は、進化の過程でたんぱく質構成アミノ酸の半数を合成できなくなりました。人は必須アミノ酸として、アルギニン、イソロイシン、トリプトファン、トレオニン、バリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、メチオニン、リシン、ロイシンを必要とします。ほかのアミノ酸は体内で合成できます。





 今日の世界の食糧問題のひとつは、必須アミノ酸を含む良質なたんぱく質をいかに供給するかです。世界人口の大部分は、穀類に依存し、良質なたんぱく質の摂取が不足しがちです。



posted by Kaoru at 06:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 食品の成分

2021年03月08日

【流転】窒素固定を含む窒素サイクルと硫黄サイクル


 窒素固定は、窒素サイクルという反応系の一部です。多くの細胞成分、つまり、たんぱく質、アミノ酸、核酸、プリン、ピリミジン、アルカロイド、ビタミンなどは窒素を含みますが、その窒素原子は、窒素サイクルで流転しています。大気はこのサイクルでの窒素の貯蔵庫となります。窒素は、窒素固定反応でこの貯蔵庫から引き出され、生体成分となり、脱窒反応で大気に戻ります。





 植物の成長には、アンモニアまたは硝酸イオンの形で窒素が必要です。アンモニアは、世界的規模で年間1億7,500万トン以上となる生物による窒素固定と年間約4,000万トンとされる窒素肥料で供給されます。





 窒素固定とは、安定なN2分子を無機窒素化合物のどれかに変えることで、強固に3重結合している2個のN原子を切り離すことが特徴です。この結合が切れにくいことは、ドイツで開発された窒素固定法であるHaber法反応条件(450℃・200気圧)からも明らかです。





 化学的窒素固定と異なり、生物の窒素固定は、常温常圧で酵素により行われます。窒素を固定する微生物は2種に大別されます。ひとつは、ほかの生物に依存せず生活できる非共生細菌で、好気性土壌細菌(Azotobactor)、嫌気性土壌細菌(Clostridium)、光合成細菌(Rhodospirillum rubrum)、青色細菌(Anabaena)などです。もうひとつは、高等植物のクローバー、アルファルファ(ムラサキウマゴヤシ)、大豆などマメ科植物と共生する根粒菌(Rhizobium)です。共生生物による窒素固定で大切なのは、マメ科植物の根粒です。特定の根粒菌が特定のマメ科植物に共生すると根粒ができ、窒素固定が始まります。





 窒素固定生物は、NH3からアミノ酸、たんぱく質、核酸、色素類などの窒素化合物をつくります。固定した窒素が余れば、土壌に排出します。これらは窒素固定ができない土壌細菌や高等植物に利用されます。





 自然界にはいろいろな酸化状態の無機硫黄化合物が存在します。有機化合物から離れた硫黄原子は、土壌細菌により硫酸イオンに酸化され、有機化合物に入るときはH2Sに還元されます。硫酸イオンは動植物のステロイド硫酸、フェノール硫酸、コリン硫酸、多糖類硫酸エステル(コンドロイチン硫酸など)などになります。硫酸イオンからシステインになるには、まずS2⁻のレベルに還元されます。これができるのは、高等植物と微生物です。このシステインが全生物界の有機硫黄源となります。



窒素サイクルの概要


 窒素固定は、窒素サイクルという反応系の一部です。多くの細胞成分、つまり、たんぱく質、アミノ酸、核酸、プリン、ピリミジン、アルカロイド、ビタミンなどは窒素を含みますが、その窒素原子は、窒素サイクルで流転しています。





 大気はこのサイクルでの窒素の貯蔵庫となります。窒素は、窒素固定反応でこの貯蔵庫から引き出され、生体成分となり、脱窒反応で大気に戻ります。





 窒素サイクルの中間体には、数種の無機窒素化合物、多くの有機化合物があります。無機物にはN2ガス、NH3、硝酸イオン、亜硝酸イオンなどで、窒素は種々の酸化状態をとります。自然界で窒素は、最も酸化されたNO3⁻、最も還元されたNH3の両方とも存在します。





 植物の成長には、アンモニアまたは硝酸イオンの形で窒素が必要です。アンモニアは、世界的規模で年間1億7,500万トン以上となる生物による窒素固定と年間約4,000万トンとされる窒素肥料で供給されます。そのほかに硝酸イオンとして鉱物の硝石と雷雨から約4,000万トンが供給されます。





 N2+O2→放電→2NO+O2→2NO2→雨→HNO2+HNO3



生物によらない窒素固定


 窒素固定とは、安定なN2分子を無機窒素化合物のどれかに変えることで、強固に3重結合している2個のN原子を切り離すことが特徴です。





 この結合が切れにくいことは、ドイツで開発された窒素固定法であるHaber法反応条件からも明らかです。第1次大戦中、イギリス海軍の海上封鎖作戦で、チリの硝石を入手できなくなったドイツは、工業用の硝酸を合成するため、N2とH2を高温高圧化で反応させて、NH3をつくりました。今日でもこのHaber法は、N2を固定して化学肥料をつくるために使われています。





 N2+3H2→450℃・200気圧→2NH3





 Δ=−8kcal/mol N2





 反応は発エルゴン的ですが、自然には進行せず、高温高圧が必要です。



生物による窒素固定


 化学的窒素固定と異なり、生物の窒素固定は、常温常圧で酵素により行われます。





 N2+3H2→25℃・1気圧・酵素→2NH3





 窒素を固定する微生物は2種に大別されます。ひとつは、ほかの生物に依存せず生活できる非共生細菌で、好気性土壌細菌(Azotobactor)、嫌気性土壌細菌(Clostridium)、光合成細菌(Rhodospirillum rubrum)、青色細菌(Anabaena)などです。もうひとつは、高等植物のクローバー、アルファルファ(ムラサキウマゴヤシ)、大豆などマメ科植物と共生する根粒菌(Rhizobium)です。マメ科植物以外に灌木、樹木など190種の植物も共生で窒素を固定します。アメリカタイサンボク、クロウメモドキ属の植物、ハンノキなどがその例です。高山の湖の肥沃度は、そこに流入する小川のほとりに茂るカワラハンノキに左右されます。





 共生生物による窒素固定で大切なのは、マメ科植物の根粒です。共生のないマメ単独では、窒素固定は起こらず、根粒菌も単独では有機窒素と酸素を限定して与えたときしか窒素固定をしません。しかし、特定の根粒菌が特定のマメ科植物に共生すると根粒ができ、窒素固定が始まります。



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共生生物による窒素固定


 窒素固定の機構は、主として嫌気的なClostridium pasteurianumや好気的なAzotobactor vinelandiiなど非共生細菌で研究されました。しかし、マメ科植物と根粒菌による共生窒素固定の方が、生物的窒素固定に占める割合が大きいです。





 根粒菌は、本来グラム陰性の非共生細菌ですが、クローバー、エンドウ、マメなど根毛に付着するといろいろな変化の末、腫瘍のような根粒を形成します。根粒には、運動性、生殖性を失って肥大化した根粒菌がバクテロイドとなって入っています。このバクテロイドは、完全なニトロゲナーゼ系を持っています。ニトロゲナーゼ系がN2をNH3に変えます。





 N2+6H⁺+6e⁻+12ATP+12H2O→2NH3+12ADP+12Pi





 ΔG=−136kcal/mol N2





 ニトロゲナーゼ系は特異性が低く、ATPの加水分解と共役してプロトン(H⁺)をH2に還元します。これを還元的ATPアーゼ活性と言います。





 2H⁺+2e⁻+4ATP+4H2O→H2+4ADP+4Pi





 こうしてニトロゲナーゼ系では、N2還元中でも還元力とATPの30%はプロトンのH2への還元に費やされます。





 根粒菌が付着した植物細胞には、レグヘモグロビンが存在します。これはヘモグロビンのようにO2と可逆的に結合する色素で、バクテロイドが酸化的リン酸化でATPをつくるのに必要なO2を供給します。





 窒素固定菌のニトロゲナーゼ系は、酵素生合成などで制御されます。アンモニウム塩があると窒素固定はすぐに止まりますが、アンモニア自身はニトロゲナーゼ系を阻害しません。過剰のアンモニアがあるとニトロゲナーゼ系の酵素が合成されなくなり、アンモニアが使われて濃度が下がると、再びニトロゲナーゼ系の酵素の合成が始まります。





 窒素固定生物は、NH3からアミノ酸、たんぱく質、核酸、色素類などの窒素化合物をつくります。固定した窒素が余れば、土壌に排出します。マメ科植物やカワラハンノキなどは、根のまわりにNH3やアミノ酸を排出します。青色細菌は、NH3、アミノ酸、ペプチドを排出します。これらは窒素固定ができない土壌細菌や高等植物に利用されます。高等植物で余ったNH3は、アスパラギンやグルタミンとして貯蔵されます。窒素固定細菌が死ぬとたんぱく質は加水分解され、アミノ酸となります。土壌の肥沃度は、窒素固定系から直接くるNH3、アミノ酸やたんぱく質から生じるNH3の量によって決まります。



硫黄サイクル


 自然界にはいろいろな酸化状態の無機硫黄化合物が存在します。硫酸イオン、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、元素状硫黄、硫化物イオンなど酸化数は、+6価から−2価まであります。





 有機化合物から離れた硫黄原子は、土壌細菌により硫酸イオンに酸化され、有機化合物に入るときはH2Sに還元されます。





 硫酸イオンは動植物のステロイド硫酸、フェノール硫酸、コリン硫酸、多糖類硫酸エステル(コンドロイチン硫酸など)などになります。硫酸はATPと反応することで活性化され、アデノシン5’ホスホ硫酸になり、さらに3’ホスホアデノシン5’ホスホ硫酸になります。





 硫酸イオンからシステインになるには、まずS2⁻のレベルに還元されます。これができるのは、高等植物と微生物です。動物が利用する有機硫黄化合物が、すべて高等植物などが同化したものです。硫酸イオンの硫黄の−2価への還元はクロロプラストで行われ、ここでシステインなどのアミノ酸もつくられます。このシステインが全生物界の有機硫黄源となります。



まとめ


 窒素固定は、窒素サイクルという反応系の一部です。多くの細胞成分、つまり、たんぱく質、アミノ酸、核酸、プリン、ピリミジン、アルカロイド、ビタミンなどは窒素を含みますが、その窒素原子は、窒素サイクルで流転しています。大気はこのサイクルでの窒素の貯蔵庫となります。窒素は、窒素固定反応でこの貯蔵庫から引き出され、生体成分となり、脱窒反応で大気に戻ります。





 植物の成長には、アンモニアまたは硝酸イオンの形で窒素が必要です。アンモニアは、世界的規模で年間1億7,500万トン以上となる生物による窒素固定と年間約4,000万トンとされる窒素肥料で供給されます。





 窒素固定とは、安定なN2分子を無機窒素化合物のどれかに変えることで、強固に3重結合している2個のN原子を切り離すことが特徴です。この結合が切れにくいことは、ドイツで開発された窒素固定法であるHaber法反応条件(450℃・200気圧)からも明らかです。





 化学的窒素固定と異なり、生物の窒素固定は、常温常圧で酵素により行われます。窒素を固定する微生物は2種に大別されます。ひとつは、ほかの生物に依存せず生活できる非共生細菌で、好気性土壌細菌(Azotobactor)、嫌気性土壌細菌(Clostridium)、光合成細菌(Rhodospirillum rubrum)、青色細菌(Anabaena)などです。もうひとつは、高等植物のクローバー、アルファルファ(ムラサキウマゴヤシ)、大豆などマメ科植物と共生する根粒菌(Rhizobium)です。共生生物による窒素固定で大切なのは、マメ科植物の根粒です。特定の根粒菌が特定のマメ科植物に共生すると根粒ができ、窒素固定が始まります。





 窒素固定生物は、NH3からアミノ酸、たんぱく質、核酸、色素類などの窒素化合物をつくります。固定した窒素が余れば、土壌に排出します。これらは窒素固定ができない土壌細菌や高等植物に利用されます。





 自然界にはいろいろな酸化状態の無機硫黄化合物が存在します。有機化合物から離れた硫黄原子は、土壌細菌により硫酸イオンに酸化され、有機化合物に入るときはH2Sに還元されます。硫酸イオンは動植物のステロイド硫酸、フェノール硫酸、コリン硫酸、多糖類硫酸エステル(コンドロイチン硫酸など)などになります。硫酸イオンからシステインになるには、まずS2⁻のレベルに還元されます。これができるのは、高等植物と微生物です。このシステインが全生物界の有機硫黄源となります。



posted by Kaoru at 06:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 食品の成分

2021年03月07日

【地球上の生命はすべて依存】光合成


 地球上の生命は、すべて光合成に依存しています。光合成とは、CO2とH2Oを生物が利用できる有機化合物に変える過程です。CO2とH2Oをぶどう糖に変える反応は、ぶどう糖をCO2とH2Oに酸化する反応の逆で、正反応で得られるエネルギーと同量以上のエネルギーを要求します。





 6CO2+6H2O→C6H12O6+6O2





 ΔG=+686kcal





 このエネルギーが光で供給されます。





 光合成の規模は、人工的なエネルギー転換などが及びもつかない大きさで、1年間に固定される炭素は、2,000億トンに達します。1molのCO2を固定するのに114kcal要るとすれば、毎年2×101⁸kcalのエネルギーがバイオマスとして貯蔵されたことになります。これは、地上に降り注ぐ太陽光エネルギーの0.1%にあたります。





光合成でCO2を糖類に還元するには、NADPHとATPが必要です。サイクル式光リン酸化では、ATPだけを生じ、電子供与体や受容体の酸化還元を伴いません。非サイクル式光リン酸化では、ATPを生じるとともに水から電子がNADP⁺のような電子受容体に移り、これに伴ってO2が発生します。この反応で、電子の流れはミトコンドリアのときとは逆になります。電位勾配に逆らって電子が逆流するにはエネルギーが必要で、光がこのエネルギーを供給します。





高等緑色植物、多細胞の紅藻、緑藻、褐藻、珪藻などの真核細胞では、光合成はプロトプラストで行われます。クロロプラストは、クロロフィルa、クロロフィルbなどの光合成色素を含みます。光合成生物は、いろいろな光合成色素を含みますが、光エネルギーを高エネルギー化合物に変える過程で、直接光で励起されて電荷分離を起こし、光電子伝達系を始動させるのは、クロロフィルaだけです。ほかの色素は直接エネルギー転換には関与せず、エネルギーの高い短波長光を集め、これを共鳴移動によって、クロロフィルaに渡す役割を持ちます。





 光は光子という粒子の波です。短波長の青色光の方が、長波長の赤色光よりエネルギーが大きくなります。物質は光を吸収します。電子がエネルギーを獲得し外側の高エネルギー準位の軌道に移ると原子は励起状態となります。励起する方法は、光子を吸収することです。励起状態の原子は不安定で、電子は外側の軌道から内側の軌道に戻ろうとします。まず電子は励起状態より少し低エネルギー準位の軌道に戻り、熱を放出します。さらに電子がもとの軌道に戻るとき、残りのエネルギーは蛍光やりん光として放出されます。





光合成のエネルギー利用効率は、48%となります。



光合成の概要


 地球上の生命は、すべて光合成に依存しています。光合成とは、CO2とH2Oを生物が利用できる有機化合物に変える過程です。CO2とH2Oをぶどう糖に変える反応は、ぶどう糖をCO2とH2Oに酸化する反応の逆で、正反応で得られるエネルギーと同量以上のエネルギーを要求します。





 6CO2+6H2O→C6H12O6+6O2





 ΔG=+686kcal





 このエネルギーが光で供給されます。





 解糖系などにつづき光合成系が進化したのは、クロロフィルなどの色素類ができたからです。これらの色素は、太陽光エネルギーを化学エネルギーに転換し、ATPを生産する過程、すなわち光リン酸化に必要です。





 CO2が空気中にたまったとき、光リン酸化にペントースリン酸経路を組み合わせて、CO2の還元が始まりました。ペントースリン酸経路とは、細胞質内で進行するグルコース6リン酸を出発点としリボース5リン酸 などの 5 炭糖及びNADPH を生成する経路です。5 炭糖は、ホスホリボシルピロリン酸となり、ヌクレオチド(DNAやRNA の構成単位) の原材料として用いられます。NADPH は還元剤で、脂肪酸やステロイドの合成、過酸化物の無害化 などさまざまな反応に用いられます。



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光合成の規模


 光合成の規模は、人工的なエネルギー転換などが及びもつかない大きさで、1年間に固定される炭素は、2,000億トンに達します。1molのCO2を固定するのに114kcal要るとすれば、毎年2×101⁸kcalのエネルギーがバイオマスとして貯蔵されたことになります。これは、地上に降り注ぐ太陽光エネルギーの0.1%にあたります。





 植物を照らす太陽光のうちクロロプラストに吸収されるのは、10分の1と見積もられ、その1%がバイオマスの生産に使われたことになります。





 バイオマスの大部分は、セルロースとリグニンで食用とはなりませんが、燃料としての熱エネルギーの供給やセルロースを食べるシロアリ腸管微生物などとして利用されます。



光リン酸化


 光合成でCO2を糖類に還元するには、NADPHとATPが必要です。1954年にArnonらは、特殊な方法で単離したクロロプラストが明所でCO2を糖類に変えることを発見し、さらにミトコンドリアがなくても、光を当てればクロロプラストが2通りの方法でATPを生産することを示しました。ひとつは、サイクル式光リン酸化でATPだけを生じ、電子供与体や受容体の酸化還元を伴いません。





 ADP+H3PO4→ATP+H2O





 もうひとつは、非サイクル式光リン酸化で、ATPを生じるとともに水から電子がNADP⁺のような電子受容体に移り、これに伴ってO2が発生します。この反応で、電子の流れはミトコンドリアのときとは逆になります。ミトコンドリアでは、NADHからO2に電子が流れるのに伴って、遊離するエネルギーの一部がATPの生産に利用されますが、H2Oから電子が逆流して、NADP⁺をNADPHに還元します。電位勾配に逆らって電子が逆流するにはエネルギーが必要で、光がこのエネルギーを供給します。また、電子がH2OからNADP⁺に逆流しながら、ATPも生産します。





 2NADP⁺+2H2O+2ADP+2H3PO4→2NADPH+2H⁺+O2+2ATP+2H2O



光合成器官


藍藻、紅色細菌、緑色細菌など原核細胞では、光合成はクロマトホアで行われます。高等緑色植物、多細胞の紅藻、緑藻、褐藻、珪藻などの真核細胞では、光合成はプロトプラストで行われます。





 クロロプラストは、クロロフィルa、クロロフィルbなどの光合成色素を含みます。高等緑色植物では、β-カロテンなどのカロテノイドもあります。





 光合成生物は、いろいろな光合成色素を含みますが、光エネルギーを高エネルギー化合物に変える過程で、直接光で励起されて電荷分離を起こし、光電子伝達系を始動させるのは、クロロフィルaだけです。ほかの色素は直接エネルギー転換には関与せず、エネルギーの高い短波長光を集め、これを共鳴移動によって、クロロフィルaに渡す役割を持ちます。これをアンテナ色素と言います。



光の性質


 光は光子という粒子の波です。短波長の青色光の方が、長波長の赤色光よりエネルギーが大きくなります。紫外線(395nm)は72kcal/mol、青色光(490nm)は58kcal/mol、赤色光(650nm)は44kcal/mol、赤外線(750nm)は38kcal/molです。





 物質は光を吸収します。その吸収能力は原子構造で決まります。電子がエネルギーを獲得し外側の高エネルギー準位の軌道に移ると原子は励起状態となります。励起する方法は、光子を吸収することです。原子にはいろいろな励起状態があり、どの状態になるかは吸収する光の波長で決まります。





 励起状態の原子は不安定で、電子は外側の軌道から内側の軌道に戻ろうとします。まず電子は励起状態より少し低エネルギー準位の軌道に戻り、熱を放出します。さらに電子がもとの軌道に戻るとき、残りのエネルギーは蛍光やりん光として放出されます。





 クロロフィルは、赤と青の可視光線を吸収します。青色光は赤色光よりもエネルギーが大きいので、光合成により有効と考えがちですが、効率は変わりません。



光合成の収率


 光合成のエネルギー所要量として、波長650nmの光は光子1molあたり44kcalのエネルギーを持ちます。光合成に利用されるのはこの70%(30kcal/mol)で、残りは電子が励起準位から遷移状態に移行するときに熱として放出されます。





 一方、エネルギー変換系で2molのNADPHを生産するのに少なくとも光子8molを必要とするため、1molのCO2を糖質に変えるには、8×30=240kcalの光エネルギーを用いることになります。





 この反応の自由エネルギー変化は、+114kcalなので、光合成のエネルギー利用効率は、114/240×100=48%となります。



まとめ


 地球上の生命は、すべて光合成に依存しています。光合成とは、CO2とH2Oを生物が利用できる有機化合物に変える過程です。CO2とH2Oをぶどう糖に変える反応は、ぶどう糖をCO2とH2Oに酸化する反応の逆で、正反応で得られるエネルギーと同量以上のエネルギーを要求します。





 6CO2+6H2O→C6H12O6+6O2





 ΔG=+686kcal





 このエネルギーが光で供給されます。





 光合成の規模は、人工的なエネルギー転換などが及びもつかない大きさで、1年間に固定される炭素は、2,000億トンに達します。1molのCO2を固定するのに114kcal要るとすれば、毎年2×101⁸kcalのエネルギーがバイオマスとして貯蔵されたことになります。これは、地上に降り注ぐ太陽光エネルギーの0.1%にあたります。





 光合成でCO2を糖類に還元するには、NADPHとATPが必要です。サイクル式光リン酸化では、ATPだけを生じ、電子供与体や受容体の酸化還元を伴いません。非サイクル式光リン酸化では、ATPを生じるとともに水から電子がNADP⁺のような電子受容体に移り、これに伴ってO2が発生します。この反応で、電子の流れはミトコンドリアのときとは逆になります。電位勾配に逆らって電子が逆流するにはエネルギーが必要で、光がこのエネルギーを供給します。





 高等緑色植物、多細胞の紅藻、緑藻、褐藻、珪藻などの真核細胞では、光合成はプロトプラストで行われます。クロロプラストは、クロロフィルa、クロロフィルbなどの光合成色素を含みます。光合成生物は、いろいろな光合成色素を含みますが、光エネルギーを高エネルギー化合物に変える過程で、直接光で励起されて電荷分離を起こし、光電子伝達系を始動させるのは、クロロフィルaだけです。ほかの色素は直接エネルギー転換には関与せず、エネルギーの高い短波長光を集め、これを共鳴移動によって、クロロフィルaに渡す役割を持ちます。





 光は光子という粒子の波です。短波長の青色光の方が、長波長の赤色光よりエネルギーが大きくなります。物質は光を吸収します。電子がエネルギーを獲得し外側の高エネルギー準位の軌道に移ると原子は励起状態となります。励起する方法は、光子を吸収することです。励起状態の原子は不安定で、電子は外側の軌道から内側の軌道に戻ろうとします。まず電子は励起状態より少し低エネルギー準位の軌道に戻り、熱を放出します。さらに電子がもとの軌道に戻るとき、残りのエネルギーは蛍光やりん光として放出されます。





 光合成のエネルギー利用効率は、48%となります。



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2021年03月06日

【豪華な宴会料理】満漢全席/まんかんぜんせき


 満漢全席は、清朝の美食家であった乾隆帝の時代から始まったとされている豪華な宴会様式です。この宴会料理は、満州族の料理と漢族の料理で構成されています。





 宴会料理の満漢全席は、出し物を見ながら、数日間をかけて、料理からデザートまで合わせて、1人100〜160品、少なくとも30品以上の料理を順番に食べるという形式で行われていたようです。しかし、清朝が滅亡することで、宮廷料理人がいなくなり、料理自体が途絶えてしまったとされています。





 満漢全席は、最初に満州料理、次に漢民族の料理が提供されるとういう順番が定められています。満州料理は、直火であぶり焼く方法など4種類の料理法で、豚あるいは羊の各部位が調理され、30品以上の料理に仕上げられます。また、料理だけでなく、満州料理の時には調度品、用具、服装までも満州様式のものを身に着け、満州の作法に則って食べます。漢族の料理に移るときは、漢民族の風習に従って行われることになるため、調度品などが大きく変わり、服装も着替え、満州様式よりも格式ばった感じになります。





 満漢全席は、短くても3時間、長いと5〜6時間もかかります。これが3日以上にわたって延々と繰り広げられます。そのため、用事のある場合には、席をはずすこと、途中で帰ることも問われません。合間に休憩をはさみ、観劇、詩、お酒を飲む遊戯、壺に矢を投げ入れて競う遊戯、双六、囲碁に興じることになります。





 満漢全席の正式名称は、満漢燕翅焼烤全席と言います。メインは、満漢燕翅焼烤全席という正式名称が示すように、満漢全席の中で欠かすことができない代表的な料理が供されます。その料理は、ツバメの巣、フカヒレ、豚の丸焼き、熊の掌、鹿の尾、ラクダのコブなど珍味とされるものばかりです。前菜が出された後、つばめの巣の料理、フカヒレの料理、豚の丸焼きという順で出されることになります。さらに点心、アヒルの丸焼き、ラクダのコブなどを用いた煮物が食卓に並びます。終わりには、魚の料理、スープ、お粥が順に供されます。





 このようにツバメ、フカヒレ、豚の丸焼きをすべて含んでおり、満族形式と漢族形式を融合させた料理こそが、正式な満漢全席です。





 清王朝の崩壊後、宮廷料理の満漢全席は途絶えてしまいましたが、現代において、このような食文化が見直され、その復元が進んでいます。日本でもいくつかの中国料理店で、イベントなどで満漢全席を再現しており、食べることができるようです。





 満漢全席を食べていた時代や中国料理の歴史を振り返りながら、かつての清朝の栄華を味わってみてはいかがでしょうか。



満漢全席(まんかんぜんせき)


 満漢全席は、清朝の美食家であった乾隆帝の時代から始まったとされている豪華な宴会様式です。





 この宴会料理は、満州族の料理と漢族の料理で構成されています。すなわち、満漢全席の満とは、満族の住む満州地方の料理のことで、漢とは、漢民族の住む華北、華中、華南の料理のことを表しています。





 宴会料理の満漢全席は、出し物を見ながら、数日間をかけて、料理からデザートまで合わせて、1人100〜160品、少なくとも30品以上の料理を順番に食べるという形式で行われていたようです。しかし、清朝が滅亡することで、宮廷料理人がいなくなり、料理自体が途絶えてしまったとされています。



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満漢全席の形式


 満漢全席は、最初に満州料理、次に漢民族の料理が提供されるとういう順番が定められています。





 最初の満州料理は、体裁にはあまりこだわらない料理が多い傾向です。この時代の清朝の支配層は満州族で、元々は遊牧により、牛や羊の肉類をよく食べていました。満州族が北京に移住したことで、食習慣は主に山東料理の影響を受けることになります。また、生活水準の向上もあり、特に肉料理は洗練され、満州形式の料理は、全猪席、全羊席と呼ばれる豪華な料理へと変わっていきました。





 全猪席と全羊席は、直火であぶり焼く方法、肉を火であぶって焦げ目をつける方法、味をつけずに原材料本来の自然の色に仕上げる方法、湯の中で煮る方法の4種類の料理法を用いて提供されます。





 こうした料理法により、1頭の豚あるいは羊の各部位を調理し、30品以上の料理に仕上げられ、こうした料理が満州料理と呼ばれます。また、料理だけでなく、満州料理の時には調度品、用具、服装までも満州様式のものを身に着け、満州の作法に則って食べます。





 漢族の料理に移るときは、漢民族の風習に従って行われることになるため、調度品などが大きく変わります。服装も着替えることになり、満州様式よりも格式ばった感じになります。





 満漢全席は、短くても3時間、長いと5〜6時間もかかります。これが3日以上にわたって延々と繰り広げられます。そのため、用事のある場合には、席をはずすこと、途中で帰ることも問われません。





 満漢全席では、合間に休憩をはさみ、観劇、詩、お酒を飲む遊戯、壺に矢を投げ入れて競う遊戯、双六、囲碁に興じることになります。



満漢全席の料理内容


 満漢全席の正式名称は、満漢燕翅焼烤全席と言います。満漢全席の料理が始まった由来に関しては、諸説存在しており定まってはいません。





 満漢全席1日のメニュー構成は、前菜8品、大皿6品、小皿6品、碗4品、季節に応じた点心、デザート4品、新鮮な果物と乾燥させた果物を各4品ずつ、そのほかに茶が2種類以上となります。





 席に着くと卓上には食器が準備され、あらかじめそこには切り花と共にスイカやかぼちゃの種を干したものなどが供されています。主人は酒壺を持ち、主賓にお酒をすすめて注ぎます。それから全員に着席を求め、ほかの人へもお酒をすすめます。お酒が行き渡ったところで冷たい前菜が供され、この冷菜を食べ終えた頃に温かい前菜が供されます。このときに、スイカやかぼちゃの種を干したものなどと花が下げられます。





 ここからがメインとなり、満漢燕翅焼烤全席という正式名称が示すように、満漢全席の中で欠かすことができない代表的な料理が供されます。その料理は、ツバメの巣、フカヒレ、豚の丸焼き、熊の掌、鹿の尾、ラクダのコブなど珍味とされるものばかりです。





 前菜が出された後、つばめの巣の料理、フカヒレの料理、豚の丸焼きという順で出されることになります。豚の丸焼きを食べる頃に宴が最高潮となり、お酒も白酒に代えられ、主人は再びお酒をすすめます。





 さらに点心が出されて、その後にアヒルの丸焼きやラクダのコブなどを用いた煮物が食卓に並びます。終わり頃には、魚の料理、スープ、お粥が順に供されます。





 このようにツバメ、フカヒレ、豚の丸焼きが必ず入ります。これらをすべて含んでおり、満族形式と漢族形式を融合させた料理こそが、正式な満漢全席です。



八珍


 昔から中国には、八珍と呼ばれるさまざまな珍味が定められていました。この八珍に含まれる食材は、時代と共に変化していますが、清の時代は、八珍をさらに拡張し、四八珍を定めて満漢全席に含めています。





 四八珍とは、山八珍、海八珍、禽八珍、草八珍からなる四つの八珍で構成されていて、八珍が四つとなるので合計で32種類となります。





  山八珍 は、ラクダのコブ、熊の掌 、サルの脳みそ、オランウータンの唇、ゾウの鼻先、ヒョウの胎子、サイのペニス、シカのアキレス腱です。





 海八珍 は、ツバメの巣、フカヒレ、ナマコ、魚の浮き袋、チョウザメの軟骨、アワビ、アザラシ、 オオサンショウウオです。





 禽八珍は、ウズラ、ハクチョウ、シャコ、クジャク、キジバトなどです。





 草八珍 は、ヤマブシタケ、白キクラゲ、キヌガサタケ、アミガサダケ、シイタケなどです。



日本で食べられる満漢全席


 清王朝の崩壊後、宮廷料理の満漢全席は途絶えてしまいました。しかし、現代において、このような食文化が見直され、その復元が進んでいます。





 日本でもいくつかの中国料理店で、イベントなどで満漢全席を再現しており、食べることができるようです。ある中国宮廷料理店でのイベントでは、通常100種類以上もある料理を40種類に厳選し、提供しています。代表的なメニューのひとつである熊の掌は、獣臭がなく、トロトロに煮込まれており、口の中にうま味が広がって、これだけでも食べる価値があります。





 満漢全席を食べていた時代や中国料理の歴史を振り返りながら、かつての清朝の栄華を味わってみてはいかがでしょうか。



まとめ


 満漢全席は、清朝の美食家であった乾隆帝の時代から始まったとされている豪華な宴会様式です。この宴会料理は、満州族の料理と漢族の料理で構成されています。





 宴会料理の満漢全席は、出し物を見ながら、数日間をかけて、料理からデザートまで合わせて、1人100〜160品、少なくとも30品以上の料理を順番に食べるという形式で行われていたようです。しかし、清朝が滅亡することで、宮廷料理人がいなくなり、料理自体が途絶えてしまったとされています。





 満漢全席は、最初に満州料理、次に漢民族の料理が提供されるとういう順番が定められています。満州料理は、直火であぶり焼く方法など4種類の料理法で、豚あるいは羊の各部位が調理され、30品以上の料理に仕上げられます。また、料理だけでなく、満州料理の時には調度品、用具、服装までも満州様式のものを身に着け、満州の作法に則って食べます。漢族の料理に移るときは、漢民族の風習に従って行われることになるため、調度品などが大きく変わり、服装も着替え、満州様式よりも格式ばった感じになります。





 満漢全席は、短くても3時間、長いと5〜6時間もかかります。これが3日以上にわたって延々と繰り広げられます。そのため、用事のある場合には、席をはずすこと、途中で帰ることも問われません。合間に休憩をはさみ、観劇、詩、お酒を飲む遊戯、壺に矢を投げ入れて競う遊戯、双六、囲碁に興じることになります。





 満漢全席の正式名称は、満漢燕翅焼烤全席と言います。メインは、満漢燕翅焼烤全席という正式名称が示すように、満漢全席の中で欠かすことができない代表的な料理が供されます。その料理は、ツバメの巣、フカヒレ、豚の丸焼き、熊の掌、鹿の尾、ラクダのコブなど珍味とされるものばかりです。前菜が出された後、つばめの巣の料理、フカヒレの料理、豚の丸焼きという順で出されることになります。さらに点心、アヒルの丸焼き、ラクダのコブなどを用いた煮物が食卓に並びます。終わりには、魚の料理、スープ、お粥が順に供されます。





 このようにツバメ、フカヒレ、豚の丸焼きをすべて含んでおり、満族形式と漢族形式を融合させた料理こそが、正式な満漢全席です。





 清王朝の崩壊後、宮廷料理の満漢全席は途絶えてしまいましたが、現代において、このような食文化が見直され、その復元が進んでいます。日本でもいくつかの中国料理店で、イベントなどで満漢全席を再現しており、食べることができるようです。





 満漢全席を食べていた時代や中国料理の歴史を振り返りながら、かつての清朝の栄華を味わってみてはいかがでしょうか。



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2021年03月05日

【シェフの帝王】芸術を重んじたアントナン・カレーム


 アントナン・カレームは、1784年6月8日にパリで生まれました。家は貧しく、父親は建設現場で働き、25人もの子どもがいたようです。ある日、父親は息子のアントナン・カレームを散歩に連れ出し、食事の後、息子の将来について語り、家族の元を離れるよう促しました。





 10歳で放り出されたアントナン・カレームは、食堂での下働きから始まり、その才能と努力で次第に頭角を現していきます。17歳でタレーラン邸に出入りしている有名菓子店のバイイに見習いとして入ります。美食家としても知られるタレーランは、一時は首相にまでなった大政治家です。ナポレオンの要請に応じ、タレーランは要人を歓迎するための相応しき場所となるルネッサンス建築様式のヴァロンセ城を購入し、そこにアントナン・カレームを招きました。タレーランは、アントナン・カレームに季節の食材のみを使用した重複のない1年分のメニューをつくる事を命じています。





 タレーラン邸を皮切りに、アントナン・カレームはその後、イギリス皇太子、ロシア皇帝アレクサンドロ1世、オーストリア帝国皇帝フランツ1世、ロスチャイルド邸の料理長などを歴任し、国王のシェフ、シェフの帝王と呼ばれる宮廷料理人となりました。





 アントナン・カレームは、つくり出す料理の芸術性を重視し、高級食材だけでなく手が込んでいました。バイイでパティシエとして仕事をしていた時から菓子と建築物を結び付け、巨大な建築物のようなピエス・モンテを製作しており、それを料理の世界に持ち込んで、ピエス・モンテのような装飾をほどこした料理が並びました。アントナン・カレームの芸術は、食べ物を精神と心のために提供し、美食家の余暇を楽しみで満たすことです。





 ピエス・モンテは、フランス語で小片を積み上げたという意味で、大型装飾菓子のことを言います。ヨーロッパ王朝の宴席の食卓は、植物、果物、食器、照明器具などをはじめ、パン生地を窯で乾燥させてつくる彫刻や本物ないしイミテーションのパイやケーキなどが装飾として並べられていました。





 アントナン・カレームのピエス・モンテは、立体的で美しくデザインされ、ときには高さ数フィートにも達し、その上に人が乗って踊ることができるほどだったようです。アントナン・カレームは、建築の知識と料理の才能を駆使し、本から発想を得て、寺院、ピラミッドなどのピエス・モンテを創造しました。



料理の芸術性を重視したアントナン・カレーム


 アントナン・カレームは、1784年6月8日にパリで生まれました。家は貧しく、父親は建設現場で働き、25人もの子どもがいたようです。ある日、父親は息子のアントナン・カレームを散歩に連れ出し、食事の後、息子の将来について語り、家族の元を離れるよう促しました。





 父親は、「行け、世の中にはいい仕事がある。期待している。貧乏は運命で、自分はその中で死んでいく。今は幸運をつかんだ者の時代だ。何かするには才気さえあればいい。お前にはある。行け。お前の為にどこかの店が開くだろう。」と言い、こうして10歳のアントナン・カレームは、パリに放り出されました。





 アントナン・カレームは、パリで洋服屋でも何でもドアを叩くことができましたが、運命に導かれて、しがない食堂のドアを叩きました。アントナン・カレームは、食堂での下働きから始まり、その才能と努力で次第に頭角を現していきます。初歩的な教育でさえ受けることができなかったアントナン・カレームは、独学で料理に関する本を読めるようになります。15歳でアントナン・カレームを育てた食堂を離れ、有名レストランに入り、17歳でタレーラン邸に出入りしている有名菓子店のバイイに見習いとして入ります。





 バイイで可愛がられたアントナン・カレームは、画廊に出かけ、スケッチするのを快く許可されました。アントナン・カレームのデッサンを認めたバイイは、アミアン条約締結の祝宴のテーブルにアントナン・カレームのピエス・モンテを出す事を約束しました。





 アントナン・カレームは、バイイの縁でタレーラン邸お抱えの仕事に12年間従事します。ここには美食で知られたコンデ公の元料理長ブーシェがおり、ブーシェのもとでアントナン・カレームはパティシエとして仕事をすると同時に料理を学びました。





 作曲家のロッシーニとともに美食家としても知られるタレーランは、フランス革命からナポレオン時代、その後のウィーン会議まで外相を勤め、一時は首相にまでなった大政治家です。ウィーン会議においては、美食を振る舞うことを含め、巧みな交渉術で有利な要求を相手国に飲ませるなど、フランスの国益を守りました。





 「美食外交」と後に語られるのは、各国の要人を美しい城と最高の料理でもてなしたことによります。ナポレオンの要請に応じ、タレーランは要人を歓迎するための相応しき場所となるルネッサンス建築様式のヴァロンセ城を購入し、そこにアントナン・カレームを招きました。タレーランは、アントナン・カレームに季節の食材のみを使用した重複のない1年分のメニューをつくる事を命じています。





 中でも、長年対立関係にあったイギリスとフランスの同盟関係を固め、19世紀以降200年以上続く両国の協調の礎を築いたのは、タレーランの業績とされています。なお、タレーランはメートル法を提案したことでも知られています。これにより、世界中にあった長さの単位が共通となり、その後のグローバル化に大いに役立ちました。





 タレーラン邸を皮切りに、アントナン・カレームはその後、イギリス皇太子、ロシア皇帝アレクサンドロ1世、オーストリア帝国皇帝フランツ1世、ロスチャイルド邸の料理長などを歴任し、国王のシェフ、シェフの帝王と呼ばれる宮廷料理人となりました。





 アントナン・カレームは、つくり出す料理の芸術性を重視し、高級食材だけでなく手が込んでいました。バイイでパティシエとして仕事をしていた時から菓子と建築物を結び付け、巨大な建築物のようなピエス・モンテを製作しており、それを料理の世界に持ち込んで、ピエス・モンテのような装飾をほどこした料理が並びました。その装飾には食べられないものもしばしば使用されています。アントナン・カレームの芸術は、食べ物を精神と心のために提供し、美食家の余暇を楽しみで満たすことです。





 また、アントナン・カレームの創作や改良とされている料理や菓子、道具は多く、エクレア、ポタージュ、数々のソース、コック帽などがあります。さらにベースとなるソースによって、全てのソースを4つの基本ソース(アルマンド、ベシャメル、エスパニョール、ヴルーテ)に基づき分類したことでも知られています。





 アントナン・カレームは、食に関するあらゆるものに興味を示し、料理人としてだけでなく、著作を残すことに生涯の情熱を費やしました。著作には、華麗なる菓子職人、フランスの給仕長、19世紀のフランス料理術などがあります。





 アントナン・カレームの生きた時代は、まさにフランスの美食発祥の時期です。特権階級に仕えていた料理人達は、レストランを開くこともあれば、新興貴族の厨房を担いました。



ピエス・モンテとアントナン・カレーム


 ピエス・モンテは、フランス語で小片を積み上げたという意味で、大型装飾菓子のことを言います。ヨーロッパ王朝の宴席の食卓は、植物、果物、食器、照明器具などをはじめ、パン生地を窯で乾燥させてつくる彫刻や本物ないしイミテーションのパイやケーキなどが装飾として並べられていました。





 17世紀頃からイタリア、イギリス、フランスで、果物の砂糖漬けをピラミッド状に積み上げたもの、彩色したアーモンドペーストと砂糖のシロップをこね合わせたマジパンで果物や花や鳥を作って芸術的に並べたもの、砂糖やでん粉などを混ぜ合わせたパスティヤージュで建築物などがつくられはじめ、芸術作品としての要素が高まっていきました。





 その後19世紀頃からは、菓子職人の技を競い合う意味合いも含めたピエス・モンテの製作が盛んに行われるようになり、ヨーロッパ以外の国にも広がりをみせます。その間に原材料や道具の進化で内容が様変わりし、現在のピエス・モンテの主流は、あめ細工やチョコレート細工で、世界大会も行われています。





 アントナン・カレームは、ピエス・モンテによってパリで名声を得るに至りました。ピエス・モンテとは、菓子の原材料などからできており、これらを用いて建築物のように積み上げた精巧かつ装飾的な意味合いのものです。





 アントナン・カレームのピエス・モンテは、立体的で美しくデザインされ、ときには高さ数フィートにも達し、その上に人が乗って踊ることができるほどだったようです。アントナン・カレームは、建築の知識と料理の才能を駆使し、本から発想を得て、寺院、ピラミッドなどのピエス・モンテを創造しました。



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まとめ


 アントナン・カレームは、1784年6月8日にパリで生まれました。家は貧しく、父親は建設現場で働き、25人もの子どもがいたようです。ある日、父親は息子のアントナン・カレームを散歩に連れ出し、食事の後、息子の将来について語り、家族の元を離れるよう促しました。





 10歳で放り出されたアントナン・カレームは、食堂での下働きから始まり、その才能と努力で次第に頭角を現していきます。17歳でタレーラン邸に出入りしている有名菓子店のバイイに見習いとして入ります。美食家としても知られるタレーランは、一時は首相にまでなった大政治家です。ナポレオンの要請に応じ、タレーランは要人を歓迎するための相応しき場所となるルネッサンス建築様式のヴァロンセ城を購入し、そこにアントナン・カレームを招きました。タレーランは、アントナン・カレームに季節の食材のみを使用した重複のない1年分のメニューをつくる事を命じています。





 タレーラン邸を皮切りに、アントナン・カレームはその後、イギリス皇太子、ロシア皇帝アレクサンドロ1世、オーストリア帝国皇帝フランツ1世、ロスチャイルド邸の料理長などを歴任し、国王のシェフ、シェフの帝王と呼ばれる宮廷料理人となりました。





 アントナン・カレームは、つくり出す料理の芸術性を重視し、高級食材だけでなく手が込んでいました。バイイでパティシエとして仕事をしていた時から菓子と建築物を結び付け、巨大な建築物のようなピエス・モンテを製作しており、それを料理の世界に持ち込んで、ピエス・モンテのような装飾をほどこした料理が並びました。アントナン・カレームの芸術は、食べ物を精神と心のために提供し、美食家の余暇を楽しみで満たすことです。





 ピエス・モンテは、フランス語で小片を積み上げたという意味で、大型装飾菓子のことを言います。ヨーロッパ王朝の宴席の食卓は、植物、果物、食器、照明器具などをはじめ、パン生地を窯で乾燥させてつくる彫刻や本物ないしイミテーションのパイやケーキなどが装飾として並べられていました。





 アントナン・カレームのピエス・モンテは、立体的で美しくデザインされ、ときには高さ数フィートにも達し、その上に人が乗って踊ることができるほどだったようです。アントナン・カレームは、建築の知識と料理の才能を駆使し、本から発想を得て、寺院、ピラミッドなどのピエス・モンテを創造しました。



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2021年03月04日

【食品の製品開発も可能】クラウドファンディング


 新しく事業を始める人にとって、最初の関門は資金調達ではないでしょうか。最近ではクラウドファンディングの登場によって、起業家の環境が大きく変化し、資金調達のハードルは相対的に低くなってきました。とはいえ、クラウドファンディングという言葉は知っていても、仕組みやメリット、デメリットがよく分からない人も多いかもしれません。





 クラウドファンディングは、通常ビジネスアイデアを持つ起案者と資金を提供する支援者をマッチングさせる運営会社を通じて行われます。代表的な運営会社として、「Makuake」や「CAMPFIRE」などがあげられます。クラウドファンディングサービスを通じて行う資金調達のことを、プロジェクトといいます。プロジェクトを立ち上げることで、支援者に対し資金提供を呼びかけます。





 クラウドファンディングには複数の種類があります。資金調達の目的に応じて、使い分ける必要があります。購入型は、もっとも多く行われているクラウドファンディングです。支援者にとっては、お金を出してモノやサービスを購入することとほぼ同じなので、購入型と呼ばれます。寄付型は、リターンがないクラウドファンディングです。自治体やNPO法人などが活動資金を得るためのものが多く、内容は地域活性化、社会問題の解決など社会貢献に関係することが多い傾向にあります。金融型は、支援者に金銭的なリターンが発生するのが特徴です。借り手企業は毎月、返済金とともに利息を支払います。





 クラウドファンディングには、主に2種類の資金調達方式が用意されています。All or Nothing方式では、設定した期間内に目標金額が集まらなければ、支援金は決済されません。All in方式の支援金の決済では、目標額達成の有無は問われません。支援者がプロジェクトに申し込んだ時点で支援が成立し、支援金が決済されます。





 起案者の立場でクラウドファンディングを活用する場合の始め方としては、まずビジネスの目的、プロジェクトでの目標額などを設定します。計画ができたら、プロジェクトに合ったクラウドファンディングサービスを選び、登録します。登録後、クラウドファンディングサービスの審査を受け、通過すれば、プロジェクトが公開されてクラウドファンディングがスタートします。期日にプロジェクトが終了し、目標の金額を達成していた場合は、クラウドファンディングサービスの手数料を引いた金額が、登録している口座に入金されます。





 クラウドファンディングでは、支援者の賛同さえあれば、資金を調達できるため、融資よりも資金集めのハードルが低くなります。購入型クラウドファンディングであれば、リターンをモノやサービスにできます。寄付型クラウドファンディングならリターンを設定する必要がありません。どんなプロジェクトでも人目に触れることになり、資金を集めるだけでなく、事業について知ってくれる人が増えるため、宣伝効果が期待できます。クラウドファンディングサービス運営会社は、原則として完全成功報酬制のため、プロジェクトへの出資を募る段階で、お金はかかりません。一方、すべてのプロジェクトで目標が達成されることはないため、クラウドファンディングをしたからといって、必ず目標額が集まることはありません。





 新製品を製造する食品工場の立ち上げや新たな設備の導入に、購入型や金融型のクラウドファインディングを用いて資金を調達する事例も見受けられます。お店の存続やその店が好きで応援したい人が、リーズナブルに購入できる寄付型のリターンも増えています。購入型では、金額に応じてお店の食事券をもらえること、お店のおすすめコースや人気料理を来店時に提供してもらえること、お店の人気メニューをレトルト殺菌した上で発送してもらえること、さらに料理長の出張料理などもあります。





 食品の製品開発においては、自社で製造しようにも製造設備がなかったり、ノウハウがなかったりで、新製品をつくろうとしてもなかなか進まないことがあります。そこで購入型クラウドファンディングの活用です。食品の場合、1回あたりのプロジェクトで集まる金額は、30〜50万円程度かもしれませんが、初回生産ロットの25〜50%前後は生産前に注文が確定し、リスクの軽減を見込むことができます。そのため、クラウドファンディングを資金集めといった側面だけでなく、自社の新製品をアピールする場として活用することもできます。



クラウドファンディングの仕組み


 新しく事業を始める人にとって、最初の関門は資金調達ではないでしょうか。最近ではクラウドファンディングの登場によって、起業家の環境が大きく変化し、資金調達のハードルは相対的に低くなってきました。とはいえ、クラウドファンディングという言葉は知っていても、仕組みやメリット、デメリットがよく分からない人も多いかもしれません。





 クラウドファンディングは、群衆(クラウド)と資金調達(ファンディング)という言葉を組み合わせた造語でで、インターネットを利用して不特定多数の人々から資金を調達する仕組みです。





 クラウドファンディングは、通常ビジネスアイデアを持つ起案者と資金を提供する支援者をマッチングさせる運営会社を通じて行われます。代表的な運営会社として、「Makuake」や「CAMPFIRE」などがあげられます。クラウドファンディングサービスを通じて行う資金調達のことを、プロジェクトといいます。プロジェクトを立ち上げることで、支援者に対し資金提供を呼びかけます。





 クラウドファンディングには、リターンという仕組みがあります。リターンは、出資してくれた支援者へのお礼を意味します。通常は、出資額に応じてリターンの内容に差をつけ、より多く出資してくれた人に対して大きなリターンがあります。





 今までは、新しいビジネスを始めるために何年もかかってお金を貯めること、お金を借りなければなりませんでした。しかも、資金を集めたからといって、ビジネスが成功する保証はありません。そこで、クラウドファンディグをテストマーケティングとして活用することで、必要な資金を調達するだけではなく、新しいビジネスのニーズが世の中にあるかどうかを知ることもできます。結果として、失敗のリスクの低減にもつながります。



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クラウドファンディングの種類


 クラウドファンディングには複数の種類があります。資金調達の目的に応じて、使い分ける必要があります。





 購入型は、もっとも多く行われているクラウドファンディングです。新型コロナウイルスで売り上げの落ちた飲食店の支援プロジェクトなどがあげられます。これは、お金を出して支援してくれた人に、飲食店での食事券などをリターンとするものです。支援者にとっては、お金を出してモノやサービスを購入することとほぼ同じなので、購入型と呼ばれます。





 寄付型は、リターンがないクラウドファンディングです。自治体やNPO法人などが活動資金を得るためのものが多く、内容は地域活性化、社会問題の解決など社会貢献に関係することが多い傾向にあります。自然災害からの復興などでも、寄付型で資金が集められています。





 金融型は、支援者に金銭的なリターンが発生するのが特徴です。金融型は、さらに融資型、ファンド型、株式型に分かれます。融資型は、クラウドファンディング運営会社が資産運用をしたい個人から資金を集めて、お金を借りたい会社に融資する仕組みです。借り手企業は毎月、返済金とともに利息を支払います。融資型は、7〜10%程度の高利回りが提示されています。ファンド型では、支援者は主に起案者である企業の事業に投資し、リターンとして分配金を受け取ります。分配金の額は実績に応じて変動するため、支援者の利益はビジネスの成功にかかっています。株式型は、支援者が資金提供先の企業の株式をリターンとして受け取ります。



クラウドファンディングの決済の仕組み


 クラウドファンディングには、主に2種類の資金調達方式が用意されています。ひとつはAll or Nothing方式、もうひとつはAll in方式です。





 All or Nothing方式では、設定した期間内に目標金額が集まらなければ、支援金は決済されません。つまり、2ヵ月間で100万円を目標としていた場合、100万円以上が期間内に集まらなければ、起案者は1円も得ることができません。この方式では、資金調達に成功しないとプロジェクトをスタートできないことから、意気込みや熱意を支援者に伝えやすいというメリットがあります。一方で、目標額に達しなかった場合、プロジェクトにかけた労力や時間が無駄になってしまうことがあります。





 All in方式の支援金の決済では、目標額達成の有無は問われません。支援者がプロジェクトに申し込んだ時点で支援が成立し、支援金が決済されます。100万円の募集に対して、10万円しか集まらなかった場合でも、この10万円を受け取ることができます。確実に資金が調達できる点はメリットです。一方、目標額が達成できずに資金不足の場合でも、必ずプロジェクトを実行しなくてはなりません。



クラウドファンディングの始め方


 起案者としてクラウドファンディングを活用する場合の始め方についてです。





 まずは、ビジネスの目的、プロジェクトでの目標額などを設定します。この時点でしっかりとした計画を立てることが、クラウドファンディング成功の第一歩です。





  計画ができたら、プロジェクトに合ったクラウドファンディングサービスを選び、プラットフォームにプロジェクトを登録します。支援者にアピールできるように、わかりやすい文章を心がけます。





 プロジェクトを登録後、クラウドファンディングサービスの審査を受けます。審査を通過すれば、プロジェクトが公開されてクラウドファンディングがスタートします。プロジェクト公開後は、SNSなどで積極的にアピールしたりします。





 期日にプロジェクトが終了し、目標の金額を達成していた場合は、クラウドファンディングサービスの手数料を引いた金額が、登録している口座に入金されます。



クラウドファンディングのメリットとデメリット


 実績のない事業主の場合、金融機関からの融資を受けることは簡単ではありません。また、将来性が不確実な新規事業に対して、金融機関の融資審査は慎重になります。クラウドファンディングでは、支援者の賛同さえあれば、資金を調達できるため、融資よりも資金集めのハードルが低くなります。





 もちろん、金融機関から借りた場合、お金で返済をしなくてはなりませんが、クラウドファンディングでは、支援者へのリターンをお金以外で設定することができます。購入型クラウドファンディングであれば、リターンをモノやサービスにできます。寄付型クラウドファンディングならリターンを設定する必要がありません。





 支援者などが多いクラウドファンディングサービスを使用すれば、どんなプロジェクトでも人目に触れることになります。結果として、資金を集めるだけでなく、事業について知ってくれる人が増えるため、宣伝効果が期待できます。ひいては賛同者やファンの獲得にもつながります。





 クラウドファンディングサービス運営会社は、原則として完全成功報酬制です。そのため、プロジェクトへの出資を募る段階で、お金はかかりません。自己資金がない人でも気軽に利用できます。





 一方、すべてのプロジェクトで目標が達成されることはないため、クラウドファンディングをしたからといって、必ず目標額が集まることはありません。目標額が高すぎる場合、プロジェクトに魅力がない場合は、目標達成が困難です。さらにクラウドファンディングで目標額を達成し、事業が進み出しても、途中で頓挫することもあります。この場合は、支援者からだけではなく、社会的な信用も失うかもしれません。





 また、クラウドファンディングは、オリジナルの製品やサービスを広く公開することによって出資を募るという特徴があります。そのため、アイデアが他者に盗用されてしまうリスクもあります。盗用を防ぐ方法としては、事前に知的財産権を取得することなどがあげられます。



食とクラウドファインディング


 新製品を製造する食品工場の立ち上げや新たな設備の導入に、購入型や金融型のクラウドファインディングを用いて資金を調達する事例も多々見受けられます。





 最近では、お店の存続やその店が好きで応援したい人が、リーズナブルに購入できる寄付型のリターンも増えています。昔通った懐かしい店の存続を応援するため、手軽に支援ができます。





 購入型では、金額に応じてお店の食事券をもらえること、お店のおすすめコースや人気料理を来店時に提供してもらえることなど、普段できないぜいたくなサービスを設定することで、注目されています。また、お店の人気メニューをレトルトパウチに入れ、レトルト殺菌した上で発送することで、来店できない人も家で人気料理を楽しめるサービスも増えています。さらに料理長の出張料理やオリジナルグッズの提供などもあります。





 ひとつのお店や会社で独自のクラウドファンディングを立ち上げる方法もありますが、地域が一体となって地元の食材などを扱うこともあります。





 食品の製品開発においては、自社で製造しようにも製造設備がなかったり、ノウハウがなかったりで、新製品をつくろうとしてもなかなか進まないことがあります。OEMで製品開発をしようとしても、メーカーがなかなか見つからず、なんとか見つけたOEM先も製造ロットが大きく、リスクが高いため、なかなか開発に踏み出せないといった状況が散見されます。そこで購入型クラウドファンディングの活用です。食品の場合、1回あたりのプロジェクトで集まる金額は、30〜50万円程度かもしれませんが、初回生産ロットの25〜50%前後は生産前に注文が確定し、リスクの軽減を見込むことができます。そのため、クラウドファンディングを資金集めといった側面だけでなく、自社の新製品をアピールする場として活用することもできます。



まとめ


 新しく事業を始める人にとって、最初の関門は資金調達ではないでしょうか。最近ではクラウドファンディングの登場によって、起業家の環境が大きく変化し、資金調達のハードルは相対的に低くなってきました。とはいえ、クラウドファンディングという言葉は知っていても、仕組みやメリット、デメリットがよく分からない人も多いかもしれません。





 クラウドファンディングは、通常ビジネスアイデアを持つ起案者と資金を提供する支援者をマッチングさせる運営会社を通じて行われます。代表的な運営会社として、「Makuake」や「CAMPFIRE」などがあげられます。クラウドファンディングサービスを通じて行う資金調達のことを、プロジェクトといいます。プロジェクトを立ち上げることで、支援者に対し資金提供を呼びかけます。





 クラウドファンディングには複数の種類があります。資金調達の目的に応じて、使い分ける必要があります。購入型は、もっとも多く行われているクラウドファンディングです。支援者にとっては、お金を出してモノやサービスを購入することとほぼ同じなので、購入型と呼ばれます。寄付型は、リターンがないクラウドファンディングです。自治体やNPO法人などが活動資金を得るためのものが多く、内容は地域活性化、社会問題の解決など社会貢献に関係することが多い傾向にあります。金融型は、支援者に金銭的なリターンが発生するのが特徴です。借り手企業は毎月、返済金とともに利息を支払います。





 クラウドファンディングには、主に2種類の資金調達方式が用意されています。All or Nothing方式では、設定した期間内に目標金額が集まらなければ、支援金は決済されません。All in方式の支援金の決済では、目標額達成の有無は問われません。支援者がプロジェクトに申し込んだ時点で支援が成立し、支援金が決済されます。





 起案者の立場でクラウドファンディングを活用する場合の始め方としては、まずビジネスの目的、プロジェクトでの目標額などを設定します。計画ができたら、プロジェクトに合ったクラウドファンディングサービスを選び、登録します。登録後、クラウドファンディングサービスの審査を受け、通過すれば、プロジェクトが公開されてクラウドファンディングがスタートします。期日にプロジェクトが終了し、目標の金額を達成していた場合は、クラウドファンディングサービスの手数料を引いた金額が、登録している口座に入金されます。





 クラウドファンディングでは、支援者の賛同さえあれば、資金を調達できるため、融資よりも資金集めのハードルが低くなります。購入型クラウドファンディングであれば、リターンをモノやサービスにできます。寄付型クラウドファンディングならリターンを設定する必要がありません。どんなプロジェクトでも人目に触れることになり、資金を集めるだけでなく、事業について知ってくれる人が増えるため、宣伝効果が期待できます。クラウドファンディングサービス運営会社は、原則として完全成功報酬制のため、プロジェクトへの出資を募る段階で、お金はかかりません。一方、すべてのプロジェクトで目標が達成されることはないため、クラウドファンディングをしたからといって、必ず目標額が集まることはありません。





 新製品を製造する食品工場の立ち上げや新たな設備の導入に、購入型や金融型のクラウドファインディングを用いて資金を調達する事例も見受けられます。お店の存続やその店が好きで応援したい人が、リーズナブルに購入できる寄付型のリターンも増えています。購入型では、金額に応じてお店の食事券をもらえること、お店のおすすめコースや人気料理を来店時に提供してもらえること、お店の人気メニューをレトルト殺菌した上で発送してもらえること、さらに料理長の出張料理などもあります。





 食品の製品開発においては、自社で製造しようにも製造設備がなかったり、ノウハウがなかったりで、新製品をつくろうとしてもなかなか進まないことがあります。そこで購入型クラウドファンディングの活用です。食品の場合、1回あたりのプロジェクトで集まる金額は、30〜50万円程度かもしれませんが、初回生産ロットの25〜50%前後は生産前に注文が確定し、リスクの軽減を見込むことができます。そのため、クラウドファンディングを資金集めといった側面だけでなく、自社の新製品をアピールする場として活用することもできます。



posted by Kaoru at 06:45| Comment(0) | TrackBack(0) | トピックス

2021年03月03日

【誰一人取り残さない】SDGsと食品産業


 SDGsは、2015年9月の国連サミットで150を超える加盟国首脳の参加のもと、全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲げられた、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことです。





   SDGsは、先進国や発展途上国すべての国を対象に、経済、社会、環境の3つの側面のバランスがとれた社会を目指す世界共通の目標として、17のゴールとその課題ごとに設定された169のターゲット(達成基準)から構成されます。





   これらは、貧困や飢餓から環境問題、経済成長やジェンダーに至る広範な課題を網羅しており、豊かさを追求しながら地球環境を守り、そして、誰一人取り残さないことを強調し、人々が人間らしく暮らしていくための社会的基盤を2030年までに達成することが目標とされています。





 SDGsの目標達成には、公的機関だけではなく、民間企業や市民の参加が不可欠です。特に企業に対しては、ビジネス活動の一環として行う投資やイノベーションを通じて、社会課題を解決することが期待されています。食品産業でも既に実践的にSDGsに取り組んでいます。



SDGS(持続可能な開発目標)


 SDGsは、2015年9月の国連サミットで150を超える加盟国首脳の参加のもと、全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲げられた、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことです。





   SDGsは、先進国や発展途上国すべての国を対象に、経済、社会、環境の3つの側面のバランスがとれた社会を目指す世界共通の目標として、17のゴールとその課題ごとに設定された169のターゲット(達成基準)から構成されます。





   これらは、貧困や飢餓から環境問題、経済成長やジェンダーに至る広範な課題を網羅しており、豊かさを追求しながら地球環境を守り、そして、誰一人取り残さないことを強調し、人々が人間らしく暮らしていくための社会的基盤を2030年までに達成することが目標とされています。



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SDGSの特徴


  SDGsは、社会のあらゆるセクター及び世界各地から寄せられた意見を広く取り入れており、1,500を超える企業や団体が意見や指針を提供してきました。





   SDGsは、発展途上国にも先進国にも共通する普遍的目標です。各国政府は、それぞれの国に特有の優先課題や強みを踏まえ、SDGsを自国の行動計画に移し換えることが期待されています。





   かつては、環境問題や社会課題は国や国際機関が対処すべきものという考え方が一般的でした。しかし、近年、世界的に深刻化する環境問題及び経済社会問題に対し、国や国際機関だけでは対処しきれない現実に直面しています。





   SDGs が対象とするのは主に政府ですが、幅広い分野で活躍する団体も巻き込み、共通の枠組みを土台として、持続可能な開発に向けた協力の優先課題や世界のあるべき姿が打ち出されるように意図しています。SDGsの最も重要な特徴は、目標達成に企業が果たし得る、あるいは果たすべき主要な役割を認識している点にあります。



SDGS実施指針における5つの主要原則


 日本政府は2016年12月にSDGs実施指針を決定しました。





 政府が関係府省一体となって、あらゆる分野のステークホルダーと連携しつつ、広範な施策や資源を効果的かつ一貫した形で動員していくことを可能にするために、5つの主要原則を定めています。





・普遍性





 国内実施と国際協力の両面で率先して取り組む。





・包摂性





 誰一人取り残さない。国内実施、国際協力のあらゆる課題への取組において、人権の尊重とジェンダー平等の実現を目指し、子供、若者、高齢者、障害者、難民、国内避難民など、脆弱な立場におかれた人々一人一人に焦点を当てる。





・参画型





 脆弱な立場におかれた人々を含む誰もが、持続可能な社会の実現に貢献できるよう、あらゆるステークホルダーの参画を重視し、全員参加型で取り組む。





・統合性





 経済、社会、環境の3分野の全てに、複数のゴール、ターゲットの相互関連性、相乗効果を重視しつつ取り組む。





・透明性と説明責任





 取組状況を定期的に評価し、公表、説明する。



17の目標と食品産業


 2030年に日本の総人口は、1億1900万人となり、高齢化率は31.2%に上昇するとの推計があります。





   一方、世界の人口は、爆発的な増加を続け、85億5千万人に達する見込みです。エネルギーや食料資源の需給がひっ迫するだけでなく、地球温暖化など世界規模での環境悪化が懸念されています。





   こうした中で、2030年に向けて、すべての人々が豊かで平和に暮らし続けられる社会をめざし、SDGsが国連サミットで採択されました。





 SDGsは、世界中の国が共通して解決しなければいけない経済、社会、環境の課題を17の目標で示しており、その達成には公的機関だけではなく、民間企業や市民の参加が不可欠です。特に企業に対しては、ビジネス活動の一環として行う投資やイノベーションを通じて、社会課題を解決することが期待されています。





   食品産業でも既に実践的にSDGsに取り組んでいます。





・目標1:地球上のあらゆる形の貧困をなくそう





   この目標は、2030年までに、世界中で極度の貧困にある人をなくすこと、様々な次元で貧困ラインを下回っている人の割合を半減させることなどを目指しています。貧困とは、単に収入や資産がないことだけではなく、飢餓、栄養不良、教育や基本的サービスへのアクセス不足、社会的な差別や排除、意思決定からの除外なども含みます。また、弱い立場にある人たちが、気象変動や災害などの影響をより強くうけることも防ぐ必要があります。





 国民生活基礎調査によると、全世帯員の相対的貧困率は、2015年には15.7%となりました。年齢別の相対的貧困率を見ると、17歳以下の貧困率は2015年には13.9%、18〜64歳は13.6%、65歳以上は19.6%となっています。





   世界の極度の貧困にある人の割合は減少していますが、このペースでは2030年に極度の貧困で生活している人は6%になると予測され、2030年までに貧困を終わらせるという目標の達成には至りません。





 所得が食事の内容に影響する食の格差が、さまざまな調査で指摘されています。また、所得によって教育などへの機会格差が生じ、企業の持続的な発展に必要な人材の確保という点でも問題となります。 さらに、食品産業の多くが海外に原材料を依存する状況では、持続可能な農林水産物の確保に向けて、生産者の生活を安定させる必要があります。





 モスグループでは、食に対する関心の低下の解消、地域行政との連携の観点から、出張授業となるモスの食育プログラム、一人親家庭の子供たちを対象にした学習支援、子ども食堂支援などの活動に取り組んでいます。エスビー食品では、人権への配慮や公正な取引、取引先との共存共栄を柱とした購買基本方針を定め、これに基づいて原料や資材を調達しています。エスビー食品は、市場より高い価格での購入を保証するとともに、原料の購入数量に応じて、生産者組合に直接奨励金を支払います。奨励金は各生産者グループに分配され、話し合いで用途を決定します。これらは農機具や子どもの教材など生活向上のために使われています。





・目標2:飢えをなくし、だれもが栄養のある食料を十分に手に入れられるよう、地球の環境を守り続けながら農業を進めよう





   この目標は2030年までに、飢餓とあらゆる栄養不良に終止符を打ち、持続可能な食料生産を達成することを目指しています。また、誰もが栄養のある食料を十分得られるようにするためには、環境と調和した持続可能な農業を推進し、生産者の所得を確保し、農業生産性を高めるための研究・投資を行う必要があります。





    日本では主食、主菜、副菜を組み合わせた食事に関する状況は悪化しており、特に20〜30 歳代ではこれらを組み合わせた食事を食べている割合が低くなっています。また、所得の低い世帯では、所得の高い世帯と比較して、穀類の摂取量が多く野菜類や肉類の摂取量が少なくなっています。65歳以上の高齢者では、低栄養傾向の者の割合が、男性で12.5%、女性で19.6%です。





 世界の食料需給は、世界人口の増加や開発途上国の経済発展による所得向上に伴う畜産物等の需要増加に加え、異常気象の頻発、水資源の制約による生産量の減少などさまざまな要因によって逼迫する可能性があります。





   食品産業は、多様な栄養素を含む食品の安定供給を通じて、この目標の達成に中心的な役割を果たすことができます。 国内外の原材料生産者との連携により、持続可能な農業に貢献している事例も多く見られます。





 味の素は、グループポリシーの基本原則に栄養改善の取組を掲げ、世界各国のさまざまな人々の栄養ニーズに基づき、毎日の食事の栄養バランスを向上させる製品を供給しています。また、栄養バランスのよいメニューの提案などにも積極的に取組んでいます。伊藤園では、コミュニティと産業育成を重要課題に掲げ、調達の一部で茶農家や行政と協働で取り組む茶産地育成事業を展開しています。キユーピーは、重点課題の中で健康寿命延伸への貢献と資源の有効活用と持続可能な調達を掲げています。また、資源の有効活用について、野菜の未利用部位を資源として無駄にせず、より有効に使う工夫を重ねています。不二製油では、大豆事業の成長を中期経営計画に位置づけ、環境負荷が少ない植物性たん白質で食資源不足の課題解決に貢献することを目指しています。





・目標3:だれもが健康で幸せな生活を送れるようにしよう





   この目標は、母子保健を増進し、主要な感染症の流行に終止符を打ち、非感染性疾患と環境要因による疾患を減らすことを含めて、あらゆる年齢のすべての人々の健康と福祉を確保することを目指しています。





 日本では特に、20歳代女性のやせの割合が21.7%と高くなっています。若年女性のやせは、骨量減少、低出生体重児出産のリスクなどとの関連があることが示されています。けがや病気で病院などに通院しながら働いている人数は、年々増加しています。生活習慣病などの病気の有病率は年齢が上がるほど高くなる状況にあり、高齢化の進行に伴い、職場においても労働力の高齢化が進むことが見込まれる中、企業において病気を有した労働者への対応が必要となる場面はさらに増えることが予想されます。





 世界において、マラリアや結核などへの取組はまだ不十分です。世界人口の少なくとも半分は不可欠な医療サービスを受けられず、過度な経済的困難に苦しむ人々が極度の貧困においやられています。





 食品産業は、食品や関連製品・サービスの提供を通じて、人々の健康に大きく貢献することが可能です。 一方で、食品による健康被害は未然に防止しなければなりません。また、安定した企業活動のためには、従業員や取引先、原材料生産者の健康が維持されることが不可欠です。





 ヤクルトは、予防医学、健腸長寿、誰もが手に入れられる価格でという考えに基づき、食品、医薬品の研究開発、生産、販売などの企業活動を行っています。ニッポンハムの主な取組は、安全安心な食品づくりと食とスポーツで心と体の元気を応援です。食物アレルギーの研究、対応食品の開発に力を入れるとともに、食を楽しむ体験型イベントや出前授業、食肉成分の研究などに取り組んでいます。日清食品は、カロリーカットや減塩、低糖質、食物繊維や栄養素の配合など健康志向に応える製品開発に取り組んでいます。日本製粉では、栄養バランスの良い食品を食べて健康になることを目指し、パンの副資材などに健康食材を提供する取組を進めてきました。





・目標4 :だれもが公平に、良い教育を受けられるように、また一生に渡って学習できる機会を広めよう





 この目標は、2030年までにすべての子供が平等に質の高い教育を受けられるようにすること、高等教育にアクセスできることを目指しています。また、働きがいのある人間らしい仕事や企業に必要な技能を備えた若者・成人の割合を大幅に増加させることもねらっています。





 日本では、2030年とその先の世界を担う子供たちに、持続可能な社会や世界の創り手となるために必要な資質、能力が育成されるよう、持続可能な開発のための教育をさらに推進するとともに、学校教育をはじめ、家庭、職場、地域等のあらゆる場におけるSDGsに関する学習などを奨励しています。





 教育は社会経済的な地位を向上させ、貧困からの脱出の鍵となりますが、世界では6歳〜17歳までの子供たちの5人に1人が依然として未就学で、半数以上の子供と青少年が読書と数学の最低限の習熟基準を満たしていません。また、7億5000万人の大人が、単純な文章の読み書きができません。





   食生活の乱れや、3Rに関する認知度の低下などが課題となっている今日では、食品産業も、食育や環境教育などに、より深く関わっていく必要があります。





 森永乳業では、未来をつくる子どもたちへのプログラムを作成し、子どもたちに生きる力を身につけてもらいたいという想いから、出前講座などの食育活動や野外教育活動を行っています。さらに、キッザニアでの職業体験や企業インターンワークの実施など、キャリア教育を支援しています。





・目標5 : 男女平等を実現し、すべての女性と女の子の能力を伸ばし可能性を広げよう





 この目標は、女性が潜在能力を十分に発揮して活躍できるようにするため、教育や訓練の充実はもとより、有害な慣行を含め、女性と女児に対するあらゆる形態の差別と暴力をなくすことを目指しています。経済分野においても、あらゆるレベルの意思決定において女性の平等な参画とリーダーシップの機会の確保が求められています。





   2018年の日本の就業者に占める女性の割合は44.2%で、諸外国と比較して大きな差はありません。しかしながら、同年の管理的職業従事者に占める女性の割合について見ると14.9%であり、諸外国と比べると依然として際立って低い水準となっています。第1子出産後の女性の継続就業割合は53.1%であり、半数近くの女性が出産を機に離職しています。さらに男性の子育てや家事に費やす時間も先進国中最低の水準です。





   食品産業は他産業に比べて女性の就業率が高い産業です。今後も人手不足が深刻化する中で、将来にわたって優れた人材を確保するためには、女性が働きやすい職場環境や、その能力が育ち活躍しやすい仕組みの構築が不可欠です。





 日本コカ・コーラでは、2020年までに女性管理職比率を30%にするとの目標の下、女性社員の能力開発、女性社員同士のサポート体制の強化、リーダーシップ人材の育成、働きがいのある環境づくりなどに注力しています。ヤクルトでは、世界で8万人超のヤクルトレディが宅配システムを中心とした健康に寄与する製品のお届けのほか、健康的な生活習慣の定着に向けた啓発活動、地域貢献活動に取り組んでおり、就労の機会を通じて、女性の活躍を推進しています。





・目標6:だれもが安全な水とトイレを利用できるようにし、自分たちでずっと管理していけるようにしよう





  この目標は飲料水、衛生施設、衛生状態を確保するだけではなく、水源の質と持続可能性をめざすものです。





 日本は降水量が多く水が豊かな国ですが、河川の流量は一年を通じて変動が大きく、安定的な水利用を可能にするためにダムや堰等の水資源開発施設を建設しています。





 世界では、7億8500万人もの人が基本的な飲料水サービスを受けられずにいます。5人に一人が、家に水のある手洗い設備をもっておらず、医療施設の4つに1つが飲料水サービスを欠いています。2030年までに7億人が、過酷な水不足によって住居を追われる可能性があります。6億7300万人が屋外で排泄しており、その多くが南アジアです。





 食品産業は、事業で多量の水を消費するだけでなく、食品の原材料となる農産物や資材の生産過程でも莫大な水を必要としています。このため、サプライチェーン全体を通じて安全な水が持続的に確保されることが、企業の将来にとって不可欠です。





   サントリーでは、事業活動にとっても重要な原材料の水を守ることが最重要課題であると位置づけ、水源保全を行うことで、水と生きるという企業理念を実践しています。明治は、2030年度に向けて、国内水使用量を2015年度比で20%以上削減する目標を設定しています。この目標に向けて、生産工程の見直しによる水利用の効率化、適正な排水管理、国内外の事業所周辺地域の水リスクの評価に取り組んでいます。





・目標7:すべての人が、安くて安全で現代的なエネルギーをずっと利用できるようにしよう





 この目標は、国際協力の強化や、クリーンエネルギーに関するインフラと技術の拡大などを通じ、エネルギーへのアクセス拡大と、再生可能エネルギーの使用増大を推進しようとするものです。





   日本には、太陽光、風力、水、地熱など豊富な再生可能エネルギーが、特に地方部に多く存在しています。これまで地域外に支払ってきたエネルギー代金を地域内の再生可能エネルギーの導入や投資に回すことで、エネルギー収支を改善し、足腰の強い地域経済の構築、新たな雇用創出や災害時の強靭さ(レジリエンス)の向上にもつながる効果が期待されます。





 世界では、10人に9人が電力にアクセスできるようになり、エネルギー消費の17.5%が再生可能エネルギーとなっています。しかし、今も電気なしで暮らす人は8億4千万人おり、その87%が地方に住んでいます。





 今後の人口増加と世界的経済成長の下で、エネルギーの大幅な需要増加が見込まれ、食品産業を含む全産業が、さらなる省エネルギーの推進と再生可能エネルギーへの転換を迫られています。





 日清食品 は、CO2排出量を削減したバイオマスECOカップの採用、即席麺容器や食品残渣を含むごみの再資源化に向けた取り組みを行っています。国分は、主要な大型物流拠点の冷蔵冷凍設備に自然冷媒の導入や人感センサー付きLED照明を採用すること等により、省エネルギー化に取り組んでいます。





・目標8:みんなの生活を良くする安定した経済成長を進め、だれもが人間らしく生産的な仕事ができる社会を作ろう





 継続的、包摂的かつ持続可能な経済成長は、グローバルな繁栄の前提条件です。この目標は、すべての人々に生産的な完全雇用とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会を提供しつつ、強制労働や人身取引、児童労働を根絶することをねらいとしています。





 日本では、生産年齢人口が減少する中で、全産業・製造業・非製造業のいずれにおいても人手不足感があります。





   近年、有期契約労働者やパートタイム労働者、派遣労働者といった非正規雇用労働者は全体として増加傾向にあり、雇用者の約4割を占めています。非正規雇用労働者は、雇用が不安定、賃金が低い、能力開発機会が乏しいなどの課題があります。また、長時間労働の問題への対応、さらに仕事と子育てや介護を無理なく両立させるためにも、多様なニーズに対応した新たな働き方の選択肢を設けることが求められています。





   労働力不足の中で、雇用を引き寄せるためには、食品産業においても働き方改革が不可欠です。優れた技術や企画力を有するなど質の高い人材を食品製造業に惹き付けるためには、勤務時間の柔軟化、女性や高齢者に配慮した職場環境の改善を図るほか、ICT化、ロボット化を含めた設備投資を積極的に進めるなど、働く場としての魅力や生産性を高めることが重要となります。





 カルビーでは、全従業員がその能力を十分に発揮し活躍できるよう、公正な評価報酬の制度も含めた仕組みづくりを行っています。さらに従業員の約半数を占める女性の活躍推進に注力するとともに、障害者雇用の促進、外国人の活躍推進を進め、グローバル水準でのダイバーシティ経営を目指しています。ニチレイフーズでは、組織間の壁をハミだすことを目指し、さまざまな啓発活動を通じて、個性や能力を存分に発揮できる明るく元気で風通しの良い会社づくりを進めています。カゴメは、生産性の向上による収益構造の改革と働き方の改革を両立させて、多様な人財が働きがいをもって働き続けられる環境づくりを推進しています。





・目標9:災害に強いインフラを整え、新しい技術を開発し、みんなに役立つ安定した産業化を進めよう





 この目標は、金融、技術支援、研究とイノベーション、情報通信技術へのアクセス拡大を通じて安定した産業化を図ることを目指しています。





 日本のイノベーションの課題としては、自前主義に陥っている研究開発投資、企業における短期主義などがあげられています。これらの課題を解決し、イノベーション創出をしていくためには、オープンイノベーションの推進が重要だとされています。





 技術開発により多くの新製品を生み出してきたことが、日本の食品産業の強みのひとつです。超高齢化社会の到来により、機能性、健康、介護などに配慮した製品づくりへのニーズがいっそう高まっています。また、人材確保がますます困難になる中、機械化やIoTを活用した省人化の取組の重要性も増しています。





   ロッテは、培ってきた知見や技術を活かし、地域や社会に新たな価値を提供することで、成長し続けてきました。これからも、身体はもちろん、心の健康にも役立つ製品の研究開発や情報発信、啓発活動に注力し、食で健康価値を提供していきます。





・目標10 : 世界中から不平等を減らそう





 この目標は、国内および国家間の所得の不平等だけでなく、性別、年齢、障害、人種、階級、民族、宗教、機会に基づく不平等の是正も求めています。





 日本では、いじめや虐待等の子供の人権問題に加え、インターネットを悪用した人権侵害、障害等を理由とする偏見や差別、いわゆるヘイトスピーチを含む外国人に対する人権侵害などのさまざまな人権問題も依然として存在しています。





 食品産業は女性就業比率、高齢者の就業割合、非正規労働者やパートタイム労働者の就業割合率が高く、多様な人材が差別を受けることなく活躍できる環境づくりが必要です。また、サプライチェーンにおける人権労働問題に注目が集まっており、直接取引のある1次サプライヤーだけではなく、2次、3次サプライヤーの人権・労働問題についても、配慮が必要な状況になっています。





 アサヒグループは、世界人権宣言などで定める基本的人権を尊重し、人種、国籍、思想信条、宗教、身体障がい、年齢、性別、配偶者の有無及び性自認・性的指向による差別は一切行わないことを、アサヒグループの指針として明示しています。ハウス食品グループでは、事業を展開するすべての国・地域及びサプライチェーン全体において、雇用や人事に関し、人種、民族、国籍、性別、年齢、信条、宗教、社会的身分、障害等を理由とする違法な差別的取り扱いをせず、多様性を尊重することを目指して、ダイバーシティ経営を推進しています。





・目標11:だれもがずっと安全に暮らせて、災害にも強いまちをつくろう





 この目標は、コミュニティの絆と個人の安全を強化しつつ、イノベーションや雇用を刺激する形で、都市その他の人間居住地の再生と計画を図ることを目指したものです。





 日本では、高齢化や単身世帯の増加、地元小売業の廃業、既存商店街の衰退等により、過疎地域のみならず都市部においても、高齢者等を中心に食料品の購入や飲食に不便や苦労を感じる、いわゆる買い物難民が増えてきており、食料品アクセス問題として社会的な課題になっています。





 街の安全と賑わいが維持されることは、顧客の獲得や労働力の確保などの観点から、事業の継続性に不可欠な要素です。災害の多発が、顧客の生活の安全だけでなく、食品産業の操業や原材料の調達にも大きなリスクとなっていることから、それに備えた事業継続計画の策定、強靱な事業体制を整える必要があります。





 日清食品は、防災備蓄食を日常的に消費しながら、使った分だけ定期的に買い足していくことで、一定量の食品を家に備蓄していくローリングストックの認知向上を図り、消費者に実践を促す啓発活動を行っています。





・目標12:生産者も消費者も、地球の環境と人々の健康を守れるよう、責任ある行動をとろう





 この目標は、環境に害を及ぼす物質の管理に関する具体的な政策や国際協定などの措置を通じ、持続可能な消費と生産のパターンを推進することを目指しています。





 本来食べられるにもかかわらず廃棄されている食品、いわゆる食品ロスの量は2016年度で643万トンでした。3Rの認知度やごみ減量への配慮、グリーン購入に対する意識は減少の一途をたどっています。





 食品産業の事業活動により、エネルギーや資源の消費、温室効果ガスの発生、廃棄物の排出など環境に対してさまざまな負の影響が生じています。エネルギー転換や資源の循環利用などを主体的に取り組むことで、SDGsに掲げられた他の目標に寄与するだけでなく、企業にとってもコスト削減や、企業評価の向上につながります。





 不二製油では、パームやカカオなどの基幹原料のサステナブル調達を、事業戦略上の重要テーマのひとつとして捉えています。永谷園は、環境負荷低減のために資源の効率的な利用と廃棄物のリサイクルに努めています。特に、まだ食べられるにもかかわらず廃棄される食品ロスの削減を重視し、賞味期限の延長や、需要予測の精度向上による流通在庫減・欠品防止に取り組んでいます。サントリーでは、企業理念に掲げる人と自然と響きあうの実現を目指し、グローバルにサステナビリティ経営を推進し、水のサステナビリティや気候変動対策などに取り組んでいます。





・目標13:気候変動から地球を守るために、今すぐ行動を起こそう





 気候変動は開発にとって最大の脅威であり、その広範な未曽有の影響は、最貧層と最も脆弱な立場にある人々に不当に重くのしかかっています。気候変動とその影響に対処するだけでなく、気候関連の危険や自然災害に対応できるレジリエンスを構築するためにも、緊急の対策が必要です。





 日本は、世界より速いペースで気温が上昇しており、大雨の頻度の増加や、農作物の品質低下、動植物の分布域の変化、熱中症リスクの増加など気候変動及びその影響が全国各地で現れ、長期にわたり拡大するおそれがあります。





 地球温暖化により、食品の原材料となる農林水産物の供給に大きな影響が生じるとともに、災害の多発による操業等への影響が懸念されています。食品産業は、事業活動を通じて温室効果ガスの発生源のひとつとなっています。各業界では、自主的に削減目標を設定し、その実現のための対策を推進することが求められています。





 キユーピーでは気候変動の原因となるCO2排出量削減のため、調達、生産、物流、販売の各段階において、省エネルギーやエネルギー転換など積極的に取り組んでいます。昭和産業は、CO2排出量に関する目標を設定し、エネルギーロス、工程不具合削減などの対策のほか、使用エネルギーの見直しに取り組んでいます。





・目標14:海の資源を守り、大切に使おう





 この目標は、海洋及び沿岸生態系の保全と持続可能な利用を推進し、海洋汚染を予防するとともに、海洋資源の持続可能な利用によって、領土が狭い低地の島国などの経済的利益を増大させようとするものです。





 2018年度の日本周辺水域の資源評価結果によれば、マイワシ太平洋系群やマサバ太平洋系群については引き続き資源量に増加の傾向が見られる一方で、スケトウダラ根室海峡系群やスルメイカ冬季発生系群については資源量に減少の傾向があります。また、海洋ごみが、生態系を含めた海洋環境の悪化や海岸機能の低下、景観への悪影響、船舶航行の障害、漁業や観光への影響など、様々な問題を引き起こしています。さらに近年は、マイクロプラスチックによる海洋生態系への影響が懸念されており世界的な課題となっています。





   世界的な水産資源の漁獲量増加や海洋環境の悪化により、需給のひっ迫が懸念される中で、多くの水産資源を利用する日本の食品産業において、その持続性の確保は喫緊の課題です。また、海洋プラスチック問題が国際的にも大きな注目を集めており、様々なプラスチック製品を活用している食品産業も、その対策に取り組んでいく必要があります。





 日本水産は、豊かな海を守り持続可能な水産資源の利用と調達を推進するという重要課題に対応し、人権と地球環境に配慮した原材料・製品の調達、養殖や食品加工等の事業活動による海洋環境と水産資源への負荷の低減に取り組んでいます。マルハニチロでは、持続可能な水産資源の調達を推進するとともに、魚に関するさまざまな角度からの情報提供を行っています。





・目標15:陸の豊かさを守り、砂漠化を防いで、多様な生物が生きられるように大切に使おう





 この目標は、持続可能な形で森林を管理し、劣化した土地を回復し、砂漠化対策を成功させ、自然の生息地の劣化を食い止め、生物多様性の損失に終止符を打つことに注力するものです。これらの取組をすべて組み合わせれば、森林その他の生態系に直接依存する人々の生計を守り、生物多様性を豊かにし、これら天然資源の恩恵を将来の世代に与えることに役立つと考えられます。





 日本では、依然として長期的には生物多様性の状況は悪化している傾向にあります。自然性の高い森林、農地、湿原、干潟といった生態系の規模が著しく縮小し、外来種の影響が増大することに加え、気候変動による生物多様性への影響が、より明確に現れてきています。





 豊かな森林は、水源涵養やCO2 の吸収に大きな役割を果たすだけでなく、そこで暮らして農林漁業を営む人々の生活を支えるものであり、食品産業の持続性にとってきわめて重要です。また、多様な生物資源は、将来の資源不足を解決するイノベーションの核となるものでもあります。





 キリンは、原材料生産地と事業地域における自然環境を守り、生態系を保全することを掲げ、成果指標として、日本の農地における生物多様性の確保をあげています。明治では、カカオ、パーム油、紙について、調達方針や調達ガイドラインに基づき、人権や環境に配慮した調達活動に取り組んでいます。さらに環境との調和を意識することが大切であると考え、生物多様性の保全活動に力を入れています。





・目標16:平和でだれもが受け入れられ、すべての人が法や制度で守られる社会をつくろう





   この目標は人権の尊重、法の支配、あらゆるレベルでの良い統治、および透明かつ効果的で責任ある制度に基づく平和で包括的な社会を目指すものです。





  投資家が、企業の持続的成長や中長期的な価値向上を評価する上で、 ESG (環境・社会・ガバナンス)の要素が重要です。企業経営においても、自らの価値観やビジネスモデル、リスク、戦略などをESGの要素を踏まえて統合的に考え、示していくことが求められており、それらを規律づける要としてガバナンスの在り方が問われています。





 食品産業にとって、消費者からの信頼を高めていくためにはコンプライアンスの徹底が重要です。ひとたび企業の信頼を揺るがすような事案が生じると、その回復は容易ではありません。また、近年では、サプライチェーンの上流に至るまで、人権や労働環境などの社会問題への配慮が求められています。常に企業を取り巻く社会環境の変化に適切に対応し、法令や社会規範を遵守し、社会倫理に沿った企業活動を進めていくことが不可欠です。





 昭和産業は、従業員ひとりひとりがコンプライアンス実践者となり、より堅牢な組織としていくために、コンプライアンス委員会を設置し、推進体制の維持・強化と、啓発活動に努めています。





・目標17:世界のすべての人がみんなで協力しあい、これらの目標を達成しよう





 持続可能な開発アジェンダを成功へと導くためには、政府、民間セクター、市民社会の間のパートナーシップが必要です。人間と地球を中心に据えた原則や価値観、共有されているビジョンと目標に根差すこのような包摂的パートナーシップは、グローバル、地域、国内、地方の各レベルで必要とされています。





  日本では、企業や自治体、NGOなど国家政府以外の多様な主体が気候変動対策の中で大きな役割を果たすようになってきています。SDGsの実施にあたっては、地方自治体、民間セクター、NGOなどの連携を推進していくことが重要であり、広く全国の地方自治体や地域でSDGsに資する活動を行っているステークホルダーによる積極的な取組が期待されます。





   食品産業の多くが地域性の高い中小企業であり、地域社会に支えられて経営が成立しています。地方自治体や他企業、市民団体等と連携して行動することで、一社ではできない社会への貢献や地域での信頼獲得につながります。また、取組を通じて新しい取引先や事業パートナーの獲得、新たな事業の創出なども期待されます。





 雪印メグミルクは、地方自治体と協定を結び、酪農振興に貢献するとともに、食を中心とするさまざまな分野で地域に貢献しています。さらに各地域の農協や指導機関と連携し、自給飼料の増産のための実証研究等を通じて持続可能な酪農生産をサポートしています。 エスビー食品では、お客様視点に立った製品づくりを行うために、社内外におけるモニター調査の活用、お客様相談センターとの連携、取引先からの原材料の情報収集を行っています。さらに、機能性などの新たな価値創出のため、大学などとの共同研究を実施しています。



まとめ


 SDGsは、2015年9月の国連サミットで150を超える加盟国首脳の参加のもと、全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲げられた、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことです。





   SDGsは、先進国や発展途上国すべての国を対象に、経済、社会、環境の3つの側面のバランスがとれた社会を目指す世界共通の目標として、17のゴールとその課題ごとに設定された169のターゲット(達成基準)から構成されます。





   これらは、貧困や飢餓から環境問題、経済成長やジェンダーに至る広範な課題を網羅しており、豊かさを追求しながら地球環境を守り、そして、誰一人取り残さないことを強調し、人々が人間らしく暮らしていくための社会的基盤を2030年までに達成することが目標とされています。





 SDGsの目標達成には、公的機関だけではなく、民間企業や市民の参加が不可欠です。特に企業に対しては、ビジネス活動の一環として行う投資やイノベーションを通じて、社会課題を解決することが期待されています。食品産業でも既に実践的にSDGsに取り組んでいます。



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2021年03月02日

【説明が難しい】食べ物の「コク」


 日常の食事で、コクがあって美味しい という言い方をよく耳にします。コクという言葉は、日常的によく使われるにもかかわらず、その意味はあいまいです。





 コクは熟成した食べ物を口にしたときの豊かな味わいを指し、お酒などの深みのある濃厚さに対して使われることが一般的のようです。しかし、コクがあるとなぜ美味しいのかと聞かれて、適切に説明できる人はほとんどいません。





 時間をかけてじっくり熟成している間、あるいは調理をしている間に、食材からさまざま成分が溶け出して、その成分が口内の味蕾などの受容器を刺激 するところにコクの原点があると考えられます。また、香りや食感もコクの発現に大きく関与しています。





 コクの表現には、厚み、広がり、芳醇性などがあります。また、先味、すなわち立ち上がりの速さ、奥深さ、持続性、後味、嫌な味を抑えて好ましい味を強めること、バランスのよさ、まろやかさも含まれます。





 コクをきちんと説明することは確かに難しいですが、言えることとしては、口の中の味蕾が刺激されること、その刺激が持続することが、コクを認識する条件となります。粘性を高め滞留時間を延長して作用時間を長くすること、すなわち、とろみのある ものはコクを出す要因の ひとつとなります。そして、このような味覚の情報は、香り、テクスチャー、辛味、温度などほかの情報とともに脳で統合的に処理され、その結果、コクとして認識されることになります。





 このような要因の揃った食べ物のひとつは、カレーです。コクのある食べ物に含まれる成分を分析することにより、コクを生じさせる可能性のある成分が、近年明らかとなりつつあります。グリコーゲン、脂肪、にんにくや玉ねぎに含まれるアリインやグルタチオンなどの含硫化合物、ペプチド各種、 遊離アミノ酸の混合物といったものがその成分です。





 食べ物のコクや味は、温度によって感じ方が変化します。塩味は、温度が低くなるほど強く感じます。甘味は体温に近い 35℃前後で、一番強く感じられます。体温から遠ざかるにしたがって弱く感じます。温度によって変化がしないのが酸味です。どの温度帯でも、酸味を感じることができます。苦味やうま味は、温度が下がると感じにくくなります。食事をするときに、人は視覚、触覚、味覚などを使いながら、コクなどの美味しさ感じとって、食べています。食べ物からコクや味を感じ取り、美味しいと判断する温度は、温かいもので60〜70℃、冷たいもので5〜10℃が適温と言われています。



コクの概念


 日常の食事で、コクがあって美味しい という言い方をよく耳にします。コクがあってキレがいいといったテレビコマーシャルもあります。コクという言葉は、日常的によく使われるにもかかわらず、その意味はあいまいです。





 コクは熟成した食べ物を口にしたときの豊かな味わいを指し、お酒などの深みのある濃厚さに対して使われることが一般的のようです。しかし、コクがあるとなぜ美味しいのかと聞かれて、適切に説明できる人はほとんどいません。ある調査で、コクがある食べ物は何ですかという質問をしたところ、カレーと答えた人がもっとも多く、ラー メン、スープ、シチュー、乳製品と続きました。次にコクとは何ですかという質問には、深みが多く、濃さ、うま味、まろやかさ、煮 込む、食材の味が出ているなどが続きます。





 食のプロフェッショナルは、コクをどのように捉えているのでしょうか。一例としては、 1年熟成したチーズは 1ヵ月熟成したものに比べてコクがある、熟成期間の長いワインはボジョレー・ヌーヴォーのようなワインよりコクがある、12 時間煮込んだスープは 、1時間煮込んだスープよりコクがあるといったものです。時間をかけてじっくり熟成している間、あるいは調理をしている間に、食材からさまざま成分が溶け出して、その成分が口内の味蕾などの受容器を刺激 するところにコクの原点があると考えられます。また、香りや食感もコクの発現に大きく関与しています。



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コクの表現


 コクの表現には、厚み、広がり、芳醇性などがあります。また、先味、すなわち立ち上がりの速さ、奥深さ、持続性、後味、嫌な味を抑えて好ましい味を強めること、バランスのよさ、まろやかさも含まれます。





 甘い、塩辛い、酸っぱいといった明確な味とは違って、このような概念的な表現は漠然としていて、あいまいなため、客観的にきちんと評価することができないところにコクの難しさがあります。



コクの認識


 コクをきちんと説明することは確かに難しいですが、言えることとしては、口の中の味蕾が刺激されること、その刺激が持続することが、コクを認識する条件となります。この味蕾をより効果的に刺激するうま味成分などが、コクの発現に関与し、味蕾を長く刺激することになります。また、強い刺激ほど後味が持続することも知られています。より多くの味蕾を刺激することは、より多くの脳細胞を興奮させることにつながります。





 一方、粘性を高め滞留時間を延長して作用時間を長くすること、すなわち、とろみのある ものはコクを出す要因の ひとつとなります。そして、このような味覚の情報は、香り、テクスチャー、辛味、温度などほかの情報とともに脳で統合的に処理され、その結果、コクとして認識されることになります。





 このような要因の揃った食べ物のひとつは、カレーです。コクのある食べ物に含まれる成分を分析することにより、コクを生じさせる可能性のある成分が、近年明らかとなりつつあります。グリコーゲン、脂肪、にんにくや玉ねぎに含まれるアリインやグルタチオンなどの含硫化合物、ペプチド各種、 遊離アミノ酸の混合物といったものがその成分です。 熟成や調理時間の短い食べ物に、このような物質を添加することで、てっとり早くコクを出すことも可能となります。



食べ物のコクや味と温度の関係


 温かいみそ汁を飲んだ時には、コクがあって美味しいのに、時間がたって冷めてから飲むと、単に塩味のある汁と感じることがあるかもしれません。 食べ物のコクや味は、温度によって感じ方が変化します。





 塩味は、みそ汁のように温度が低くなるほど強く感じます。そのため、あらかじめ料理ができ上がってから食べるまでに時間が経過して温度が下がるようであれば、塩分を控えて料理をつくると、比較的好ましい呈味となります。冷たいスープをつくるときには、塩分を控えてつく、冷やしたあとで味見をして、調整します。





 甘味は体温に近い 35℃前後で、一番強く感じられます。体温から遠ざかるにしたがって弱く感じます。そのため、ジュースのように冷やして飲む物は、甘味を感じられるように強めに調整されていることがあります。冷えていないジュースは、冷たいときよりも甘く感じられます。一方、果物の中に多く含まれている糖質のひとつの果糖は、温度が低い方が甘味を強く感じられるので、果物は冷蔵庫で冷やしてから食べる方が、より甘味が感じられ、美味しく食べられます。





 温度によって変化がしないのが酸味です。どの温度帯でも、酸味を感じることができます。ホットレモンなど温かいものであっても、冷たい酢の物であっても酸味は変わらず感じることができます。





 苦味やうま味は、温度が下がると感じにくくなります。





 食事をするときに、人は視覚、触覚、味覚などを使いながら、コクなどの美味しさ感じとって、食べています。その中で味覚は、食べ物の温度によって感じ方が変化します。





 食べ物からコクや味を感じ取り、美味しいと判断する温度は、温かいもので60〜70℃、冷たいもので5〜10℃が適温と言われています。そのため、よく冷えたビールや温かいみそ汁は美味しいのに、生ぬるいビールや冷えたみそ汁は、あまり美味しくないとされます。



まとめ


 日常の食事で、コクがあって美味しい という言い方をよく耳にします。コクという言葉は、日常的によく使われるにもかかわらず、その意味はあいまいです。





 コクは熟成した食べ物を口にしたときの豊かな味わいを指し、お酒などの深みのある濃厚さに対して使われることが一般的のようです。しかし、コクがあるとなぜ美味しいのかと聞かれて、適切に説明できる人はほとんどいません。





 時間をかけてじっくり熟成している間、あるいは調理をしている間に、食材からさまざま成分が溶け出して、その成分が口内の味蕾などの受容器を刺激 するところにコクの原点があると考えられます。また、香りや食感もコクの発現に大きく関与しています。





 コクの表現には、厚み、広がり、芳醇性などがあります。また、先味、すなわち立ち上がりの速さ、奥深さ、持続性、後味、嫌な味を抑えて好ましい味を強めること、バランスのよさ、まろやかさも含まれます。





 コクをきちんと説明することは確かに難しいですが、言えることとしては、口の中の味蕾が刺激されること、その刺激が持続することが、コクを認識する条件となります。粘性を高め滞留時間を延長して作用時間を長くすること、すなわち、とろみのある ものはコクを出す要因の ひとつとなります。そして、このような味覚の情報は、香り、テクスチャー、辛味、温度などほかの情報とともに脳で統合的に処理され、その結果、コクとして認識されることになります。





 このような要因の揃った食べ物のひとつは、カレーです。コクのある食べ物に含まれる成分を分析することにより、コクを生じさせる可能性のある成分が、近年明らかとなりつつあります。グリコーゲン、脂肪、にんにくや玉ねぎに含まれるアリインやグルタチオンなどの含硫化合物、ペプチド各種、 遊離アミノ酸の混合物といったものがその成分です。





 食べ物のコクや味は、温度によって感じ方が変化します。塩味は、温度が低くなるほど強く感じます。甘味は体温に近い 35℃前後で、一番強く感じられます。体温から遠ざかるにしたがって弱く感じます。温度によって変化がしないのが酸味です。どの温度帯でも、酸味を感じることができます。苦味やうま味は、温度が下がると感じにくくなります。食事をするときに、人は視覚、触覚、味覚などを使いながら、コクなどの美味しさ感じとって、食べています。食べ物からコクや味を感じ取り、美味しいと判断する温度は、温かいもので60〜70℃、冷たいもので5〜10℃が適温と言われています。



posted by Kaoru at 06:30| Comment(0) | TrackBack(0) | トピックス

2021年03月01日

【手がかりは和菓子】手づくり感のあるクッキーの開発


 焼きたての手づくり感のあるクッキーを家庭で手軽に食べてもらいたいとの思いから、不二家は、カントリーマアムに着手しました。





 焼きたてのような手づくり感のあるクッキーをつくり、家庭で手軽に食べられるようにする開発プロジェクトが始まった当時、市場にあるクッキーは中までしっかり焼き上げたビスケットタイプが主流です。焼きたて感のあるホームメイドタイプのクッキーを生産するノウハウはまだ培われていませんでした。





 外の生地はサックリとしていて、中の生地はしっとりとしている製品設計は、開発に苦慮すると思われましたが、手がかりはすぐ近くにある日本伝統の和菓子のまんじゅうでした。まんじゅうは、外側の生地とあんからできています。別々に仕込みひとつに成形してから蒸します。生地の加工段階についてのアイデアは、まんじゅうにヒントを得たもので、これを裏付けるように原材料には、白あんが含まれています。サックリとした食感の外側が特徴の生地とある程度の水分を残した内側の生地を別々に仕込み、内側を外側の生地で包み込むまんじゅうの構造を採用し、焼いても中の生地がしっとりとした状態になる食感を実現することができました。





 また、生地を2重構造にしたことで、チョコチップの食感が強調されます。ひとつの生地にチョコチップを入れて焼くと固くなってしまいますが、水分を含んだ内側の生地に含めて焼くことで、柔らかい食感を残すことができ、まんじゅうの構造のもうひとつの利点も活かしています。





 専用チョコチップとまんじゅうから手がかりを得た2重構造の生地を生産ラインに乗せ、低温でゆっくり焼き上げると、大きさや形にバラつきが出ます。試行錯誤を重ねた結果、ある程度安定した形状に揃えることに成功しました。





 もっとも、焼き上げたクッキーの大きさが不揃いになることは当初から想定していたことで、カントリーマアムが目指したのは手づくり感のあるクッキーです。手づくりのクッキーに同じ形状がないように、カントリーマアムでも同一形状にはせず不揃いであることに製品価値を見出しています。





 発売すると今まで市場になかった食感だっただけに、消費者から湿気ったクッキーと言われたこともあったようです。当時、クッキーといえば固い食感のものが一般的です。内側がしっとりした食感のクッキーを消費者に浸透させる必要がありました。





 不二家は発売するとアットホームなアメリカの田舎を連想させるテレビコマーシャルを放映しました。アメリカの田舎で婦人が、カントリーマアムを割ってしっとりとした生地を見せる内容で、手づくり風のクッキーを訴求したことにより、外側がサクッとしていて、内側はしっとりしている食感を消費者に伝えることができ、認知度が高まりました。





 その後カントリーマアムブランドから、内側の生地もサクサクとした食感が特徴のカントリーマアムクリスピーを発売しています。製品群の強化は、ブランドの拡張だけではなく、定番品の活性化の意味合いも持ちます。新製品の投入は、定番品を再度知ってもらう機会にもなるからです。





 このような展開が実り、カントリーマアムブランドは、不二家の菓子事業を担うブランドに成長しています。これは、手づくり感にこだわった製品を消費者に提供したいとの思いを持ち、製品改良を続けてきた結果によるものです。



手づくり感のあるクッキーを家庭に


 焼きたての手づくり感のあるクッキーを家庭で手軽に食べてもらいたいとの思いから、不二家は、カントリーマアムに着手しました。外の生地はサックリしていて、中の生地はしっとりしている製品設計は、当初開発に苦慮すると思われました。しかし、手がかりは身近にありました。それは日本伝統の和菓子であるまんじゅうです。





 外はサックリ、中はしっとり仕上げたソフトクッキーというキャッチコピーは、不二家がチョコチップクッキーのカントリーマアムを発売した当時に使用していました。ふたつの食感が楽しめる秘密は、原材料と仕込み方に異なる2種類の生地を使った2重構造にあります。しっとりとした生地をもうひとつの生地で包み込み、低温でじっくり焼き上げます。生産性を考えると手間のかかる製造工程は省きたくなりますが、それでは求める品質が追求できません。惜しまず心血を注いだのは、焼きたての手づくり感のあるクッキーを家庭に届けたいとの思いでした。





 不二家は、キャンディのミルキーやチョコレートのルックチョコレートに続く第3のジャンルを探していました。市場にインパクトを与えられる製品構想を検討していたところ、ヒントは街角にありました。





 当時アメリカで人気となっていた焼きたてクッキーが、日本に上陸し、手づくりクッキーを売るお店が広がりつつありました。ナッツ、ドライフルーツ、チョコレートチップを入れたものなど、さまざまな種類のクッキーが店の棚を飾っています。





 焼きたてのような手づくり感のあるクッキーをつくり、家庭で手軽に食べられるようにする開発プロジェクトが始まった当時、市場にあるクッキーは中までしっかり焼き上げたビスケットタイプが主流です。焼きたて感のあるホームメイドタイプのクッキーを生産するノウハウはまだ培われていませんでした。



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生地のアイデアは日本伝統の和菓子まんじゅう


 外の生地はサックリとしていて、中の生地はしっとりとしている製品設計は、開発に苦慮すると思われましたが、手がかりはすぐ近くにある日本伝統の和菓子のまんじゅうでした。まんじゅうは、外側の生地とあんからできています。別々に仕込みひとつに成形してから蒸します。生地の加工段階についてのアイデアは、まんじゅうにヒントを得たもので、これを裏付けるように原材料には、白あんが含まれています。サックリとした食感の外側が特徴の生地とある程度の水分を残した内側の生地を別々に仕込み、内側を外側の生地で包み込むまんじゅうの構造を採用し、焼いても中の生地がしっとりとした状態になる食感を実現することができました。





 もうひとつこだわったのが、チョコチップです。不二家は、ルックチョコレートやアーモンドチョコレートなどさまざまなチョコレートを発売していますが、カントリーマアムでは専用のチョコチップを開発し、自社で製造しています。





 生地自体が甘いため、相性を考慮し、ビター感のあるチョコレートを使用することで存在感を引き立たせるだけでなく、手づくりのような形状にして、手づくり感が出るように工夫しました。





 また、生地を2重構造にしたことで、チョコチップの食感が強調されます。ひとつの生地にチョコチップを入れて焼くと固くなってしまいますが、水分を含んだ内側の生地に含めて焼くことで、柔らかい食感を残すことができ、まんじゅうの構造のもうひとつの利点も活かしています。





 専用チョコチップとまんじゅうから手がかりを得た2重構造の生地を生産ラインに乗せ、低温でゆっくり焼き上げると、大きさや形にバラつきが出ます。試行錯誤を重ねた結果、ある程度安定した形状に揃えることに成功しました。





 もっとも、焼き上げたクッキーの大きさが不揃いになることは当初から想定していたことで、カントリーマアムが目指したのは手づくり感のあるクッキーです。手づくりのクッキーに同じ形状がないように、カントリーマアムでも同一形状にはせず不揃いであることに製品価値を見出しています。



食感の浸透を図る努力


 発売すると今まで市場になかった食感だっただけに、消費者から湿気ったクッキーと言われたこともあったようです。当時、クッキーといえば固い食感のものが一般的です。内側がしっとりした食感のクッキーを消費者に浸透させる必要がありました。





 不二家は発売するとアットホームなアメリカの田舎を連想させるテレビコマーシャルを放映しました。アメリカの田舎で婦人が、カントリーマアムを割ってしっとりとした生地を見せる内容で、手づくり風のクッキーを訴求したことにより、外側がサクッとしていて、内側はしっとりしている食感を消費者に伝えることができ、認知度が高まりました。また、スーパーなどの店頭では、消費者にカントリーマアムを温めてもらうことで、さらに焼きたて感が楽しめる取り組みを地道に行っています。





 発売から数年後には、トレーの中でクッキーが崩れてしまったり、湿気ってしまったりしたため、包装形態を分割トレーから個別包装タイプに変更しました。個装タイプの方が、袋を持ったまま食べられるため、消費者に好まれることが分かったことも、背景にありました。さらに大袋タイプを発売するなど、さまざまな取り組みを行っています。



製品群の強化


 その後カントリーマアムブランドから、内側の生地もサクサクとした食感が特徴のカントリーマアムクリスピーを発売しています。これは、カントリーマアムに専用のチョコチップを使っていることから、チョコとサクッとした食感に特化した製品を発売することで、チョコチップをふんだんに使ったクッキーであることを消費者に認識してもらうためです。





 さらにチョコチップをふんだんに使用したカントリーマアムクリスピーバニラ、チョコチップとホワイトチョコチップを使ったカントリーマアムWチョコを発売しています。





 製品群の強化は、ブランドの拡張だけではなく、定番品の活性化の意味合いも持ちます。新製品の投入は、定番品を再度知ってもらう機会にもなるからです。





 このような展開が実り、カントリーマアムブランドは、不二家の菓子事業を担うブランドに成長しています。市場にない独特の食感で、今では不二家の屋台骨を支えています。これは、手づくり感にこだわった製品を消費者に提供したいとの思いを持ち、製品改良を続けてきた結果によるものです。



まとめ


 焼きたての手づくり感のあるクッキーを家庭で手軽に食べてもらいたいとの思いから、不二家は、カントリーマアムに着手しました。





 焼きたてのような手づくり感のあるクッキーをつくり、家庭で手軽に食べられるようにする開発プロジェクトが始まった当時、市場にあるクッキーは中までしっかり焼き上げたビスケットタイプが主流です。焼きたて感のあるホームメイドタイプのクッキーを生産するノウハウはまだ培われていませんでした。





 外の生地はサックリとしていて、中の生地はしっとりとしている製品設計は、開発に苦慮すると思われましたが、手がかりはすぐ近くにある日本伝統の和菓子のまんじゅうでした。まんじゅうは、外側の生地とあんからできています。別々に仕込みひとつに成形してから蒸します。生地の加工段階についてのアイデアは、まんじゅうにヒントを得たもので、これを裏付けるように原材料には、白あんが含まれています。サックリとした食感の外側が特徴の生地とある程度の水分を残した内側の生地を別々に仕込み、内側を外側の生地で包み込むまんじゅうの構造を採用し、焼いても中の生地がしっとりとした状態になる食感を実現することができました。





 また、生地を2重構造にしたことで、チョコチップの食感が強調されます。ひとつの生地にチョコチップを入れて焼くと固くなってしまいますが、水分を含んだ内側の生地に含めて焼くことで、柔らかい食感を残すことができ、まんじゅうの構造のもうひとつの利点も活かしています。





 専用チョコチップとまんじゅうから手がかりを得た2重構造の生地を生産ラインに乗せ、低温でゆっくり焼き上げると、大きさや形にバラつきが出ます。試行錯誤を重ねた結果、ある程度安定した形状に揃えることに成功しました。





 もっとも、焼き上げたクッキーの大きさが不揃いになることは当初から想定していたことで、カントリーマアムが目指したのは手づくり感のあるクッキーです。手づくりのクッキーに同じ形状がないように、カントリーマアムでも同一形状にはせず不揃いであることに製品価値を見出しています。





 発売すると今まで市場になかった食感だっただけに、消費者から湿気ったクッキーと言われたこともあったようです。当時、クッキーといえば固い食感のものが一般的です。内側がしっとりした食感のクッキーを消費者に浸透させる必要がありました。





 不二家は発売するとアットホームなアメリカの田舎を連想させるテレビコマーシャルを放映しました。アメリカの田舎で婦人が、カントリーマアムを割ってしっとりとした生地を見せる内容で、手づくり風のクッキーを訴求したことにより、外側がサクッとしていて、内側はしっとりしている食感を消費者に伝えることができ、認知度が高まりました。





 その後カントリーマアムブランドから、内側の生地もサクサクとした食感が特徴のカントリーマアムクリスピーを発売しています。製品群の強化は、ブランドの拡張だけではなく、定番品の活性化の意味合いも持ちます。新製品の投入は、定番品を再度知ってもらう機会にもなるからです。





 このような展開が実り、カントリーマアムブランドは、不二家の菓子事業を担うブランドに成長しています。これは、手づくり感にこだわった製品を消費者に提供したいとの思いを持ち、製品改良を続けてきた結果によるものです。



posted by Kaoru at 04:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 食品の開発

2021年02月28日

【老化が関係】たるみの原因と食による対策


 肌がたるんでいると実年齢よりも老けて見られる原因となります。肌がたるんでしまう主な原因は、老化や乾燥による肌へのダメージと紫外線です。





 そもそも老化とは、細胞ひとつひとつの機能が低下し、同時に体のさまざまな部分の機能が低下してしまうことです。老化によるたるみは、細胞機能の低下に伴い、角質層の機能や皮脂の分泌機能の低下が原因のひとつです。





 老化は、特に40歳代以降にとって、たるみをはじめとした見た目だけでなく生活習慣病にも深く関わってきますが、この老化を抑える食べ方があります。





 たるみをはじめとした老化を防ぐ食事方法としては、3食をきちんと摂ること、腹八分目の食事、最初に野菜を食べることです。





 たるみをはじめとした老化に効果的な食べ物としては、良質なたんぱく質を含む肉、魚、卵、大豆製品、食物繊維やビタミン、ミネラル、ポリフェノールを含む野菜、きのこ類、海藻、ナッツ類、そして免疫機能を高める発酵食品です。





 たるみをはじめとした老化を防ぐことで、健康な見た目を保つことができると共に病気の予防、健康寿命を延ばすことが可能となります。



たるみの原因


 肌がたるんでいると実年齢よりも老けて見られる原因となります。特に、目元や口元など顔で動きのある部分で目立ちます。





 肌がたるんでしまう主な原因は、老化や乾燥による肌へのダメージと紫外線です。老化や乾燥によりヒアルロン酸が減少すること、紫外線で真皮層にある線維芽細胞がダメージをうけることでたるみが発生することがあります。また、老化とは関係なく、急激な体重の増加現象もたるみにつながることがあります。ピンと張った若々しいハリのある肌と比較すると、どうしても肌にたるみがある方が老けて見られがちです。



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 そもそも老化とは、細胞ひとつひとつの機能が低下し、同時に体のさまざまな部分の機能が低下してしまうことです。老化によるたるみは、細胞機能の低下に伴い、角質層の機能や皮脂の分泌機能の低下が原因のひとつです。





 老化は、特に40歳代以降にとって、たるみをはじめとした見た目だけでなく生活習慣病にも深く関わってきますが、この老化を抑える食べ方があります。



たるみをはじめとした老化を防ぐ食事方法


・3食をきちんと摂る





 朝、昼、夜の1日3食を決まった時間に食べます。特に朝食を抜くと、低血糖の状態が続いてしまい、血糖を補うインスリン拮抗ホルモンが大量に分泌されます。その後、昼食を食べると血糖値が急上昇し、血糖値を下げるインスリンが分泌されます。血糖値の激しいアップダウンは、体調不良の一因です。





 次の食事までの時間が長くなると、血糖値が低い状態が続き、脳が強い飢餓感を感じます。そうすると食欲のコントロールができなくなり、肥満を招きやすくなってしまいます。その上、体温も上がらず、基礎代謝が低下します。食事の感覚が空くと、体にさまざまな負担がかかるという研究結果もあるため、朝食は欠かさず食べます。もちろん、偏食をしないことは基本です。





・腹八分目の食事





 まずは、食事の総エネルギー量が多くならないように注意します。活動量の少ない成人女性の場合は、1,400〜2,000kcal、男性は2,200±200kcal程度が目安です。





 糖質、脂質、塩分の摂りすぎに注意することで、高血圧や肥満などを未然に防ぐことができます。糖質を摂りすぎると、余った糖が体内で糖化を引き起こします。これは健康寿命によくない作用をもたらします。たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどを十分に摂り、糖質、脂肪の摂取を少なめにした腹八分目の食事が、たるみなどの老化防止に効果のある食事と言えます。





・最初に野菜を食べる





 野菜を最初に食べることで、肌の弾力を低下させる糖化や脂肪をため込んで肌をたるませる肥満も、抑えられることが分かってきました。





 お菓子や甘いものをよく食べること、清涼飲料水やジュースをよく飲むこと、野菜や豆類をあまり食べないこと、 夜遅い時間に食べることで終末糖化産物(AGEs)が増加します。終末糖化産物は、甘い飲み物や食事などで摂取した余分な糖質が、体中でコラーゲンなどのたんぱく質と結びつき生成します。この終末糖化産物が、肌や体の組織の新陳代謝を阻害して、肌のたるみを招きます。さらに骨や血管をもろくする原因にもなります。





 主食の前に野菜など糖質の吸収をゆるやかにする食物繊維が豊富な食材を食べることで、血糖値の上昇が抑えられ、それに伴い最終糖化産物の生成や肥満予防につながります。





 そのため、ご飯、パン、麺類といった糖質、肉、魚などのたんぱく質を食べる前に、食物繊維が豊富な野菜を食べて、糖質の吸収を穏やかにすることで、血糖値の急上昇を防ぎます。





 最初に食べる食材は、野菜をはじめ豆類や海藻など食物繊維が多いものを選びます。食物繊維は、最終糖化産物の排出を促す働きがあり、緑黄色野菜や果物などには抗酸化作用を持つ成分が豊富なため、終末糖化産物の生成予防に役立ちます。





 なかでも朝食の影響が大きく、朝食を血糖値が上がりにくい食事にすると効果が高まり、昼食後の血糖値も上がりにくくなります。





 一方、ストレスなどによって発生する活性酸素も、糖化を加速させ、終末糖化産物を増やします。抗酸化成分が多い野菜を選んで食べると、体の中から終末糖化産物の増加を抑えるだけでなく、食物繊維には、終末糖化産物の排出を促す働きもあります。





 食後に高血糖が続くと、インスリンが大量に分泌され、糖質が脂肪として蓄積されます。しかもその後は、お腹が空いて過食傾向となります。それと同時に終末糖化産物も蓄積されます。たるみなど体のため、食後の血糖値の上昇をゆるやかにすることが、何より大切です。



たるみをはじめとした老化に効果的な食べ物


 食生活を改善することで、たるみをはじめとした老化防止効果が期待できる食べ物を積極的に取り入れてください。





・良質なたんぱく質を含む肉、魚、卵、大豆製品





 たんぱく質は、肌をつくるコラーゲンの原材料となります。たんぱく質を多く含む食べ物は、肉、魚、卵、大豆製品です。厚生労働省が推奨する1日あたりのたんぱく質の摂取量は、成人男性で60g、成人女性で 50gが目安です。





・食物繊維やビタミン、ミネラル、ポリフェノールを含む野菜、きのこ類、海藻





 酸化や糖化を予防する野菜、きのこ類、海藻を食べて、体の中から老化を防ぎます。厚生労働省が定めた野菜の摂取量の目標値は、1日350g以上です。しかしながら、日本人の野菜摂取量平均値は、276.5gです。





 野菜、きのこ類、海藻には、代謝や老化の防止に必要なビタミンやミネラルが含まれています。抗酸化物質は、カロテノイドやポリフェノールと言った種類に分類されます。カロテノイドは、緑黄色野菜や果物などに含まれる「β-カロテン」、トマトなど赤色色素の「リコピン」、えびかになどの甲殻類やさけに含まれる「アスタキサンチン」などがあります。ポリフェノールは、大豆の「イソフラボン」、ブルーベリーなどの「アントシアニン」、そばの「ルチン」などのことです。きのこ類や海藻には多くの食物繊維が含まれており、糖化の予防が期待されます。





・イソフラボンを含む大豆製品





 大豆には、イソフラボン、植物性たんぱく質、ビタミンEなど老化防止に役立つ栄養素が豊富に含まれています。





大豆に含まれるイソフラボンには、抗酸化作用だけでなく、女性ホルモンであるエストロゲンと似た性質をもち、肌の潤いを保持する働きがあります。エストロゲンの分泌は、一般的に30代後半ごろから減りはじめることから、大豆イソフラボンを補うことが老化防止につながります。納豆なら1パック、豆腐なら1丁を目安として、毎日食べてはいかがでしょうか。





・ビタミンやミネラルを含むナッツ類





 アーモンドやクルミなどのナッツ類には、ビタミンEが豊富に含まれています。血行を促進すること、新陳代謝を活発にすることで、肌のターンオーバーを促し、たるみをはじめとした老化の防止には必須の栄養素です。また、ナッツ類は代謝を促すミネラルも豊富です。





・免疫機能を高める発酵食品





 発酵食品は、老化防止に効果的な食べ物のひとつです。漬物、ヨーグルトなどを積極的に摂ることで腸内を整え、免疫機能を保ちます。ヨーグルト、みそ汁、キムチなど毎日数種類の発酵食品を少量ずつ食べることが理想です。





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たるみをはじめとした老化を防止する意義


 たるみをはじめとした老化防止には、さまざまなメリットがあります。たるみを防ぐことで、健康な見た目を保つことができ、さらに病気になるリスクの軽減、健康寿命を延ばすことができます。健康寿命とは、健康上の問題がない状態で、心身ともに健やかな日常生活を送ることができる期間のことです。老化を防止することにより、病気の予防につながり、健康寿命も延ばすことが可能となります。



まとめ


 肌がたるんでいると実年齢よりも老けて見られる原因となります。肌がたるんでしまう主な原因は、老化や乾燥による肌へのダメージと紫外線です。





 そもそも老化とは、細胞ひとつひとつの機能が低下し、同時に体のさまざまな部分の機能が低下してしまうことです。老化によるたるみは、細胞機能の低下に伴い、角質層の機能や皮脂の分泌機能の低下が原因のひとつです。





 老化は、特に40歳代以降にとって、たるみをはじめとした見た目だけでなく生活習慣病にも深く関わってきますが、この老化を抑える食べ方があります。





 たるみをはじめとした老化を防ぐ食事方法としては、3食をきちんと摂ること、腹八分目の食事、最初に野菜を食べることです。





 たるみをはじめとした老化に効果的な食べ物としては、良質なたんぱく質を含む肉、魚、卵、大豆製品、食物繊維やビタミン、ミネラル、ポリフェノールを含む野菜、きのこ類、海藻、ナッツ類、そして免疫機能を高める発酵食品です。





 たるみをはじめとした老化を防ぐことで、健康な見た目を保つことができると共に病気の予防、健康寿命を延ばすことが可能となります。



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