2017年07月05日
【ソマリと森の神様】マンガ 感想&あらすじ 「人外の父」と「人間の娘」の絆を深める旅の記録を描いた擬似家族ファンタジー
WEBコミックぜにょん。2015年4月26日から連載中。既刊3巻
作者:暮石ヤコ
森の中で私はそれ≠ニ出会った。それ(人間)は、わたし(ゴーレム)を父と呼んだ――。
太古の時代に起きた人間と人外との争い。勝利した人外は地上を支配するようになり、あっさり敗北した人間はヒト狩りによって愛玩用・食用として捕獲され、現在では絶滅の危機に瀕していた。
ある日のこと、森の“守り人”と称される「ゴーレム」は自身が守護する森の中で、首輪と足枷を付けられて放置されていた人間の幼い少女と出会う。
その子はゴーレムの姿を目にすると、なぜか嬉しそうな笑顔を浮かべて「おとうさん」と呼びかけてきた。
人間が生きるには過酷な世界で、ゴーレムは彼女の両親を見つけて手渡すため、少女の手を引き旅に出る。滅びに瀕した種族である人間の少女・ソマリと、活動を停止させようとしているゴーレムは、旅の中で父娘としての絆を深めていく。
ネタバレも含まれているので注意
・ソマリ
主人公。種族「人間」。6歳か7歳ぐらい。
ゴーレムが守り人をしていた森に首輪と足枷を付けられて放置されていた少女(?)で、彼を見るなり「おとうさん」と呼びました。普段は角の付いたフードを被って人間だということを隠し、「牛角(ミノタウロス)」に属する種族と偽って旅をしています。ゴーレムの寿命が残りわずかだということは知らされておらず、これからもずっと一緒にいたいと思っています。
食いしん坊で旅先の料理に目がなく、美味しいメシを食べると無邪気にはしゃぐ。あと、モフモフが好きなので、そのような種族や動物に出会うと、嬉しそうに撫でたり抱きついたりします。
・ゴーレム
主人公。種族「ゴーレム」。ソマリからは「おとうさん」と呼ばれています。
清浄で神聖な森を守る丁度1000年生きる長命な種族。森を守る為に生きる“守り人”の中でも、特にゴーレムは神話じみた存在とされるほど珍しい。普通の食事をとる必要はなく、酸素・日光・水さえあれば活動可能。顔には大きな目が一つあって、万物の構成物質が視て分かります。動物との意思疎通も可能。あと1年と少しで活動停止することから、ソマリの両親を探し出して引き渡すために旅へ出ました。
ゴーレムなので感情はありませんでしたが、ソマリとの旅を通して様々な感情を学び、次第に本当の父娘のようになっていきます。
・ザザ
種族「人間」。
とある森の守り人が死に絶えた“終わりの森”に1人で住んでいる高齢の男性。元々は生き延びた人間が寄せ集まった村で母と2人で暮らしていましたが、ヒト狩りに見つかったことで母とも会えなくなり、その後は旅人として生きていました。隠れて生きることに疲れ果て、人外があまり寄り付かない現在住んでいる森を見つけて定住。安心
・シズノ/ヤバシラ
種族「鬼」
小鬼のシズノは薬師を生業とし、鬼のヤバシラは助手兼家政婦的存在。薬草の採取が便利なことから街を離れて森で暮らしています。ゴーレムの体の一部と交換に薬作りを伝授してもらいました。心配
・イゾルダ・ネヴゾルフ
種族「魔女」
魔女の村にある世界中のありとあらゆる本が保管されている「魔女印図書館」の館長。彼女の高祖母・フェオドラが見聞き体験した人間とハライソと呼ばれるゴーレムとの交流を、人間と多種族がゆっくり歩み寄れるようにと本にすることを禁じて口伝によって代々伝えられていましたが、その意図に気づかず「ハライソの伝記」と「ハライソの調書」の2冊の本を作成。人間と人外が交流を始めた時代に盗まれた「ハライソの調書」が歩き渡り、このことが原因で人間を死に追いやったとのではないかと罪の意識を背負って生きていました。彼女の勧めでソマリとゴーレムは地図の途切れた最果ての地を目指すことに。
・キキーラ
種族「ムク毛シュリガラ族」
アリの巣のように入り組んだ繁華街「アリの穴街」で出会った少年で、ソマリにとっては初めて出来たモフモフな友人。ソマリのゴーレムとずっと一緒いたいという願いを叶えるため、枯らさず持ち帰れば願いが叶うと言い伝えられている“夜覚めの花”のことを教え、危険な地下へ一緒に探しにいきます。結構やんちゃ。
・ウゾイ/ハイトラ
種族:ウゾイは「ハラピュイア」。ハイトラは鳥の頭をした「ファルコホル」を名乗っていますが、実は「人間」。
砂漠越えをしているときに立ち寄ったサカズキ村で出会った2人組。ハイトラの病を治す薬を探して旅をしています。ウゾイは人間であるソマリの血ならハイトラの病を治せるのではないかと考え、攫って血を奪おうとしましたが、結局仲良くなったソマリを傷つけることはできませんでした。
【eBookJapan】 ソマリと森の神様 無料で試し読みできます
異形の人外が地上を支配する世界で、滅びに向かう種族「人間」の少女と、彼女を拾った森の番人であるゴーレムが、少女の両親を探す中で父娘の絆を深めていく旅の記録を綴った物語。
人外×少女の擬似家族ファンタジー。『魔法使いの嫁』で知られる漫画家・ヤマザキコレさんも推薦されている作品です。
作者は新鋭漫画家・暮石ヤコさん。当初はサスペンス設定で制作されていましたが、作者の画力を活かすためにファンタジーへ方向転換したそうです。
独特の設定と世界観、様々な種族からなる個性豊かなキャラクター、息を呑む美麗な絵、心がワクワクするストーリー。このような現実ではまずありえない魅力を放つファンタジー作品は、個人的にも子供のころからのめり込んできた大好きなジャンル。その世界に浸っていると、自分の創造や夢がどこまでも広がっていきそうな気さえします。
最近では『魔法使いの嫁』、『ハクメイとミコチ』、『とんがり帽子のアトリエ』など、若干呆れるほど(誉め言葉として)細かく丁寧に描き込まれた絵や、作り込まれた世界観で魅せるファンタジー作品が多くて嬉しい限り。漫画として読み終えた後に絵だけを眺めてみたり、設定や世界観を確認してみたりと、2度3度度読み返したくなる面白さがそれらにはあります。
今回紹介させていただく『ソマリと森の神様』も、とても美しい絵で描かれたファンタジー作品。絵だけではなく、ストーリーやキャラクターの心情にも美しさが溢れてる内容になってます。
作品の舞台は、人間との戦争にあっさり勝利した人外が地上を支配し、敗れた人間は迫害を受けたことで絶滅に瀕している世界。
そんな世界で、1000年の寿命を終えようとしている森の守り人であるゴーレム(998歳)と、彼(?)に拾われた人間の少女・ソマリ(6〜7歳)が、両親を探す中で多種多様な人外や僅かに生き残っている人間と出会い、様々の経験を通して父娘としての絆を深めていく旅の記録を綴った御伽物語。
ここ数年でいっきに数を増やしてきた人気ジャンル、人間の少女と異形の人外との交流を描いた作品。この作品では種族の壁を超えた父と娘の「親子愛」をテーマにしています。
中心は、少女と出会うまでは余計な感情を持っていなかったゴーレムと、彼を“おとうさん”と呼び慕う少女・ソマリ。現状この2人意外のキャラがレギュラー登場することはなく、エピソードごとに別れありきの出会いを繰り返すという構成。
かつては人外が人間を狩りの対象とし、食用にしたり、ペットにしていたというダークな設定をしていますが、グロい描写は全くなく、バトルも極稀にゴーレムがソマリを守るために戦うだけでほとんどありません。全体的にはほのぼのファンタジーといった感じで、優しさと切なさのあるストーリーと、穏やかな雰囲気、それからソマリの愛らしさを楽しむ漫画だと思います。
何より素晴らしいのは、丁寧に描き込まれている一切妥協がない精緻で美しい絵。
表紙イラストだけはよく出来ていて中身が残念な詐欺のような作品もたまにありますが、この作品に関してはどのページを捲っても、どのコマを覗いても、全く手抜きのない綺麗な絵を見ることができます。
様々な種族、動物、建築物、道具、洋服、そして川や森や砂漠などの雄大な自然背景など、どの描き込みも凄いの一言。ファンタジーらしい幻想的な描写がこれまた美しく、絵を見るだけでも価値はありそうです。
描き込みが凄ければ上手いと言うつもりはありませんし、絵も緩めるところは必要だと思いますが、個人的にはファンタジー作品の作画はどちらかと言うと密度が濃い方が好きです。本来は現実のどこにも存在しない作者の頭の中にある世界なので、しつこいぐらい描き込んでくれてる方が世界観を理解しやすいかなと。もちろんそれが全てではなくですけどね。
本来は感情のない機械的な存在であるのがゴーレムという種族。当然表情の変化なんてありませんし、行動は合理的で遊び心はなく、言動も若干堅苦しいです。まあ、他者とふれあうことのない森にいたのだから語彙が乏しいのもある意味では当然なのかな。
そんなゴーレムがソマリとの旅で変化を見せるようになりました。様々な出来事や出会いを経験していくなかで、最初は「安心」を、次に「心配」をといったように、少しずつ感情を知るようになり、ゴーレム自身にも感情が芽生え出しているように見えます。
当初は「余分な感情は備わっていない」という言葉通りの受け答えや行動しかしていませんでしたが、ソマリのことを本気で心配する様子を見せ、自身の変化に若干戸惑いはありながらも、確実に父性が目覚めているゴーレム。ソマリも彼のことを「おとうさん」と慕ってずっといっしょに居たいと願ってます。
今のほのぼの感が心地良いだけに、この先の別れを思うと本当に切ない気持ちになります。
ということで、幼い人間の少女と人外が父娘の愛を深める旅の記録を描いた『ソマリと森の神様』の紹介でした。謎はありますけどそれほど深く考察する必要はなく、テンポも悪くないのでとても読みやすい作品だったと思います。
最たる魅力は絵の美しさでしょうが、父性を持ち始めたゴーレムがソマリのことを大切に想う心も非常に美しかったです。少しずつでも着実に別れが近づいていることは切なさを感じますが、親子のように一緒に旅をする様子はとても温かい気持ちにもさせてもらえます。
手を繋いで旅をするソマリとゴーレムの姿が印象的で、その光景を見てると、この先に待つ旅の終わりは2人にとって良い形になって欲しい、そう心の中で祈らずにはいられません。
ファンタジー好きや、丁寧に描きこまれた絵が好きな方なら楽しめると思いますので、よければ読んでみてください。自信を持っておすすめさせていただきます。
作者:暮石ヤコ
あらすじ
森の中で私はそれ≠ニ出会った。それ(人間)は、わたし(ゴーレム)を父と呼んだ――。
太古の時代に起きた人間と人外との争い。勝利した人外は地上を支配するようになり、あっさり敗北した人間はヒト狩りによって愛玩用・食用として捕獲され、現在では絶滅の危機に瀕していた。
ある日のこと、森の“守り人”と称される「ゴーレム」は自身が守護する森の中で、首輪と足枷を付けられて放置されていた人間の幼い少女と出会う。
その子はゴーレムの姿を目にすると、なぜか嬉しそうな笑顔を浮かべて「おとうさん」と呼びかけてきた。
人間が生きるには過酷な世界で、ゴーレムは彼女の両親を見つけて手渡すため、少女の手を引き旅に出る。滅びに瀕した種族である人間の少女・ソマリと、活動を停止させようとしているゴーレムは、旅の中で父娘としての絆を深めていく。
登場人物
ネタバレも含まれているので注意
・ソマリ
主人公。種族「人間」。6歳か7歳ぐらい。
ゴーレムが守り人をしていた森に首輪と足枷を付けられて放置されていた少女(?)で、彼を見るなり「おとうさん」と呼びました。普段は角の付いたフードを被って人間だということを隠し、「牛角(ミノタウロス)」に属する種族と偽って旅をしています。ゴーレムの寿命が残りわずかだということは知らされておらず、これからもずっと一緒にいたいと思っています。
食いしん坊で旅先の料理に目がなく、美味しいメシを食べると無邪気にはしゃぐ。あと、モフモフが好きなので、そのような種族や動物に出会うと、嬉しそうに撫でたり抱きついたりします。
・ゴーレム
主人公。種族「ゴーレム」。ソマリからは「おとうさん」と呼ばれています。
清浄で神聖な森を守る丁度1000年生きる長命な種族。森を守る為に生きる“守り人”の中でも、特にゴーレムは神話じみた存在とされるほど珍しい。普通の食事をとる必要はなく、酸素・日光・水さえあれば活動可能。顔には大きな目が一つあって、万物の構成物質が視て分かります。動物との意思疎通も可能。あと1年と少しで活動停止することから、ソマリの両親を探し出して引き渡すために旅へ出ました。
ゴーレムなので感情はありませんでしたが、ソマリとの旅を通して様々な感情を学び、次第に本当の父娘のようになっていきます。
・ザザ
種族「人間」。
とある森の守り人が死に絶えた“終わりの森”に1人で住んでいる高齢の男性。元々は生き延びた人間が寄せ集まった村で母と2人で暮らしていましたが、ヒト狩りに見つかったことで母とも会えなくなり、その後は旅人として生きていました。隠れて生きることに疲れ果て、人外があまり寄り付かない現在住んでいる森を見つけて定住。安心
・シズノ/ヤバシラ
種族「鬼」
小鬼のシズノは薬師を生業とし、鬼のヤバシラは助手兼家政婦的存在。薬草の採取が便利なことから街を離れて森で暮らしています。ゴーレムの体の一部と交換に薬作りを伝授してもらいました。心配
・イゾルダ・ネヴゾルフ
種族「魔女」
魔女の村にある世界中のありとあらゆる本が保管されている「魔女印図書館」の館長。彼女の高祖母・フェオドラが見聞き体験した人間とハライソと呼ばれるゴーレムとの交流を、人間と多種族がゆっくり歩み寄れるようにと本にすることを禁じて口伝によって代々伝えられていましたが、その意図に気づかず「ハライソの伝記」と「ハライソの調書」の2冊の本を作成。人間と人外が交流を始めた時代に盗まれた「ハライソの調書」が歩き渡り、このことが原因で人間を死に追いやったとのではないかと罪の意識を背負って生きていました。彼女の勧めでソマリとゴーレムは地図の途切れた最果ての地を目指すことに。
・キキーラ
種族「ムク毛シュリガラ族」
アリの巣のように入り組んだ繁華街「アリの穴街」で出会った少年で、ソマリにとっては初めて出来たモフモフな友人。ソマリのゴーレムとずっと一緒いたいという願いを叶えるため、枯らさず持ち帰れば願いが叶うと言い伝えられている“夜覚めの花”のことを教え、危険な地下へ一緒に探しにいきます。結構やんちゃ。
・ウゾイ/ハイトラ
種族:ウゾイは「ハラピュイア」。ハイトラは鳥の頭をした「ファルコホル」を名乗っていますが、実は「人間」。
砂漠越えをしているときに立ち寄ったサカズキ村で出会った2人組。ハイトラの病を治す薬を探して旅をしています。ウゾイは人間であるソマリの血ならハイトラの病を治せるのではないかと考え、攫って血を奪おうとしましたが、結局仲良くなったソマリを傷つけることはできませんでした。
【eBookJapan】 ソマリと森の神様 無料で試し読みできます
感想・見所
異形の人外が地上を支配する世界で、滅びに向かう種族「人間」の少女と、彼女を拾った森の番人であるゴーレムが、少女の両親を探す中で父娘の絆を深めていく旅の記録を綴った物語。
人外×少女の擬似家族ファンタジー。『魔法使いの嫁』で知られる漫画家・ヤマザキコレさんも推薦されている作品です。
作者は新鋭漫画家・暮石ヤコさん。当初はサスペンス設定で制作されていましたが、作者の画力を活かすためにファンタジーへ方向転換したそうです。
独特の設定と世界観、様々な種族からなる個性豊かなキャラクター、息を呑む美麗な絵、心がワクワクするストーリー。このような現実ではまずありえない魅力を放つファンタジー作品は、個人的にも子供のころからのめり込んできた大好きなジャンル。その世界に浸っていると、自分の創造や夢がどこまでも広がっていきそうな気さえします。
最近では『魔法使いの嫁』、『ハクメイとミコチ』、『とんがり帽子のアトリエ』など、若干呆れるほど(誉め言葉として)細かく丁寧に描き込まれた絵や、作り込まれた世界観で魅せるファンタジー作品が多くて嬉しい限り。漫画として読み終えた後に絵だけを眺めてみたり、設定や世界観を確認してみたりと、2度3度度読み返したくなる面白さがそれらにはあります。
今回紹介させていただく『ソマリと森の神様』も、とても美しい絵で描かれたファンタジー作品。絵だけではなく、ストーリーやキャラクターの心情にも美しさが溢れてる内容になってます。
「異形の父」と「人間の娘」の絆を描いた御伽物語
作品の舞台は、人間との戦争にあっさり勝利した人外が地上を支配し、敗れた人間は迫害を受けたことで絶滅に瀕している世界。
そんな世界で、1000年の寿命を終えようとしている森の守り人であるゴーレム(998歳)と、彼(?)に拾われた人間の少女・ソマリ(6〜7歳)が、両親を探す中で多種多様な人外や僅かに生き残っている人間と出会い、様々の経験を通して父娘としての絆を深めていく旅の記録を綴った御伽物語。
ここ数年でいっきに数を増やしてきた人気ジャンル、人間の少女と異形の人外との交流を描いた作品。この作品では種族の壁を超えた父と娘の「親子愛」をテーマにしています。
中心は、少女と出会うまでは余計な感情を持っていなかったゴーレムと、彼を“おとうさん”と呼び慕う少女・ソマリ。現状この2人意外のキャラがレギュラー登場することはなく、エピソードごとに別れありきの出会いを繰り返すという構成。
かつては人外が人間を狩りの対象とし、食用にしたり、ペットにしていたというダークな設定をしていますが、グロい描写は全くなく、バトルも極稀にゴーレムがソマリを守るために戦うだけでほとんどありません。全体的にはほのぼのファンタジーといった感じで、優しさと切なさのあるストーリーと、穏やかな雰囲気、それからソマリの愛らしさを楽しむ漫画だと思います。
圧倒的な画力で描き込まれている美しい世界観
何より素晴らしいのは、丁寧に描き込まれている一切妥協がない精緻で美しい絵。
表紙イラストだけはよく出来ていて中身が残念な詐欺のような作品もたまにありますが、この作品に関してはどのページを捲っても、どのコマを覗いても、全く手抜きのない綺麗な絵を見ることができます。
様々な種族、動物、建築物、道具、洋服、そして川や森や砂漠などの雄大な自然背景など、どの描き込みも凄いの一言。ファンタジーらしい幻想的な描写がこれまた美しく、絵を見るだけでも価値はありそうです。
描き込みが凄ければ上手いと言うつもりはありませんし、絵も緩めるところは必要だと思いますが、個人的にはファンタジー作品の作画はどちらかと言うと密度が濃い方が好きです。本来は現実のどこにも存在しない作者の頭の中にある世界なので、しつこいぐらい描き込んでくれてる方が世界観を理解しやすいかなと。もちろんそれが全てではなくですけどね。
旅の中で芽生える感情と育まれる父娘愛
本来は感情のない機械的な存在であるのがゴーレムという種族。当然表情の変化なんてありませんし、行動は合理的で遊び心はなく、言動も若干堅苦しいです。まあ、他者とふれあうことのない森にいたのだから語彙が乏しいのもある意味では当然なのかな。
そんなゴーレムがソマリとの旅で変化を見せるようになりました。様々な出来事や出会いを経験していくなかで、最初は「安心」を、次に「心配」をといったように、少しずつ感情を知るようになり、ゴーレム自身にも感情が芽生え出しているように見えます。
当初は「余分な感情は備わっていない」という言葉通りの受け答えや行動しかしていませんでしたが、ソマリのことを本気で心配する様子を見せ、自身の変化に若干戸惑いはありながらも、確実に父性が目覚めているゴーレム。ソマリも彼のことを「おとうさん」と慕ってずっといっしょに居たいと願ってます。
今のほのぼの感が心地良いだけに、この先の別れを思うと本当に切ない気持ちになります。
最後に
ということで、幼い人間の少女と人外が父娘の愛を深める旅の記録を描いた『ソマリと森の神様』の紹介でした。謎はありますけどそれほど深く考察する必要はなく、テンポも悪くないのでとても読みやすい作品だったと思います。
最たる魅力は絵の美しさでしょうが、父性を持ち始めたゴーレムがソマリのことを大切に想う心も非常に美しかったです。少しずつでも着実に別れが近づいていることは切なさを感じますが、親子のように一緒に旅をする様子はとても温かい気持ちにもさせてもらえます。
手を繋いで旅をするソマリとゴーレムの姿が印象的で、その光景を見てると、この先に待つ旅の終わりは2人にとって良い形になって欲しい、そう心の中で祈らずにはいられません。
ファンタジー好きや、丁寧に描きこまれた絵が好きな方なら楽しめると思いますので、よければ読んでみてください。自信を持っておすすめさせていただきます。
ソマリと森の神様(1) (ゼノンコミックス) | ||||
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