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2015年03月25日

ネコの鈴の音

父が可愛がっていた猫は、茶トラのメスだった。
海辺の空き地に捨てられていて、4匹拾ったうちの一匹だった。
あとの3匹は、残念ながら死んでしまった。

ミーと名付けられた彼女は、すくすくすくと育った。
猫嫌いだった父が、ミーよ、ミーよと呼ぶ。
鈴をチリチリ言わせて走りよるミー。

子供も産み育て、その子がまた子を産みと、曾孫まで生まれたあと、
彼女は病気になってしまった。
足先手先が麻痺をして、歩けなくなった。

時間が来たらトイレへ、ご飯へと彼女の世話をしたのは父だ。
ミーよ、ミーよと呼んでも、あの鈴の音は鳴らなくなった。
近所の獣医、大学病院、都内の有名な病院で検査をしてもらった。
けれど、原因がわからなかった。

秋の始め、彼女はひっそりと押し入れの奥で亡くなった。
庭先の紅葉の木の下に埋めた。

ミーよ、父が呼ぶ。
縁側に続く廊下の向こうから、チリチリと微かに鈴の音が聞こえた。
それだけでも怖いやら悲しいやらなのに、父が、
「ああ、ようやっと歩けるねえ」
と嬉しそうに言ったので、私は我慢できずに泣きました。


ミーちゃん

お父さんがそちらに行ったと思うけど、
無事会えたかな?
お父さんも膝を悪くしちゃったので、温めてあげてね。
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