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2020年06月10日

息子の死


ある晩の9時前、とある病院でスミスという医者が電話に出た。
「こちらはグリーンヒル病院のジャクソンです。今この病院に重い病気の子供がいます。彼は手術をする必要があります。
しかしこちらには今外科医がいません。お願いです。こちらに来てくれませんか?」と、電話口の医者は言った。
「私はグリーンヒルから60マイル離れた場所に今いるし、その上雪まで降っている。多分0時頃に着くと思うが、
それでもいいだろうか?」とスミス医師が答えると、相手は了解した。

その30分後、スミス医師は車に乗って道を走っていた。そして赤信号で止まっていると、
古い黒のコートを着た男が近づいてきた。
スミス医師が窓を開けて声をかけようとしたが、男は「騒ぐな」とだけ言い、そして「出ろ」とすごんできた。
スミス医師はとっさのことだったので何もできないまま車を奪われてしまった。

なんとかタクシーを拾ってスミス医師がグリーンヒルの病院に着いたのは午前2時のことだった。
ジャクソン医師は彼をずっと待っていた。
スミス医師は言い訳をしようとしたが、それを遮るようにしてジャクソン医師はこう言った。
「あの少年は1時間前に死んでしまったよ」
スミス医師はすまない気持ちでいっぱいになった。何と言って遺族に言い訳すればいいのだろうか……。
そんなことを考えながら、スミス医師はジャクソン医師と共に遺族の待つ待合室まで歩いた。
すると、そこには見覚えのある古いコートを着た男性が落胆していた。

「ブラウンさん、こちらはスミス医師です。彼ははるばるオールバニーからあなたの息子を助けようとしてやってきてくれた医師です」


自分の息子を愛するあまり、自分自身の手で息子の死を早めてしまった男という皮肉話です。
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