以下の内容は誤りを含んでいるかも知れない.
単一の群を対象が 1 個の圏と見做す仕方を自分が正しく理解していない可能性がある.
現在確認中でありひとまず内容については留保する.
2017 年 8 月 14 日 追記
修正した文章 を書いた.
以下は間違った内容の文章である. 自分の忘備録として残しておく.
今やっているのは逆圏に関する次のような練習問題.
($a$) 任意の単一の群はそれ自体圏と見做せる. 圏としての群の逆圏は何かを説明せよ. この圏が元の圏としての群と同型になること, および同型ではあるが, 同一となるとは限らないことを示せ.
($b$) 上の ($a$) と同様のことをモノイド (結合律を満たす 2 項演算と単位元を持つ集合 = 単位元を持つ半群) に対して行え.
($c$) 上の ($b$) と同様のことを半順序集合 (poset: Partially Ordered Set) に対して行え.
上記の (a) について, $G$ を任意の群とし, その 6 つ組としての定義を
\begin{equation*}
G = (A, O, d^0, d^1, u, m)
\end{equation*}
とおく.
・ 射の集合 $A = \mathrm{Ar}(G) = G$: $(a : G \to G) \in \mathrm{Ar}(G)$ は各 $g \in G$ に対して $a$ の $g$ への左からの作用:
\begin{equation*}
g \longmapsto a \cdot g
\end{equation*}
を対応させる群準同型. ここで " $\cdot$ " は群 $G$ の積を与える 2 項演算である.
・ 対象の集合 $O = \mathrm{Ob}(G) = \left\{\, G \,\right\}$: 群 $G$ の台集合 $G$ のみからなる集合.
$d^0, d^1 : A \to O$ は各 $(a : G \to G) \in \mathrm{Ar}(G) = G$ に対してそれぞれそのソース $G$ とターゲット $G$ を対応させる関数.
・ $u : O \to A$ は $G \in O$ に対して恒等写像
\begin{equation*}
u(G) = (\mathrm{id}_{G} : G \to G)
\end{equation*}
を対応させる関数. つまり群 $G$ の単位元を $e$ とするとき, $u(G) = e$ である.
・ $m : P = G \times G \to G$ は各 $(g, h) \in P$ に対して
\begin{equation*}
m(g, h) = gh = g \cdot h
\end{equation*}
により定義される関数.
$G^{\,\mathrm{op}}$ をその逆圏とする.
以下では, 群 $G^{\,\mathrm{op}}$ の各元を, 群 $G$ の元 $g$ の右上に "$\mathrm{op}$" を付けて $g^{\mathrm{op}}$ と記すことにする.
$G^{\,\mathrm{op}}$ は 6 つ組
\begin{equation*}
G^{\,\mathrm{op}} = (A^{\mathrm{op}}, O^{\mathrm{op}}, d^{0,\mathrm{op}}, d^{1,\mathrm{op}}, u^{\mathrm{op}}, m^{\mathrm{op}})
\end{equation*}
として定義する. 個々の構成要素は次のように定められる.
・ 射の集合 $A^{\mathrm{op}} = \mathrm{Ar}(G^{\,\mathrm{op}}) = G^{\mathrm{op}}$: $(a^{\mathrm{op}} : G \to G) \in \mathrm{Ar}(G^{\mathrm{op}})$ は各 $g^{\mathrm{op}} \in G^{\mathrm{op}}$ に対して
\begin{equation*}
g^{\mathrm{op}} \longmapsto a^{\mathrm{op}} \cdot^{\mathrm{op}} g^{\mathrm{op}}
\end{equation*}
を対応させる群準同型. ここで " $\cdot^{\mathrm{op}}$ " は群 $G^{\mathrm{op}}$ の積を与える 2 項演算である (後述: $g \cdot^{\mathrm{op}} h = h \cdot g$ により定義される).
・ 対象の集合 $O^{\mathrm{op}} = \mathrm{Ob}(G^{\,\mathrm{op}}) = \left\{\, G \,\right\}$: 群 $G^{\,\mathrm{op}}$ の台集合 $G$ のみからなる集合.
・ $d^{0,\mathrm{op}}, d^{1,\mathrm{op}} : A^{\mathrm{op}} \to O^{\mathrm{op}}$ は各 $(a^{\mathrm{op}} : G \to G) \in \mathrm{Ar}(G^{\mathrm{op}}) = G^{\mathrm{op}}$ に対してそれぞれそのソース $G$ とターゲット $G$ を対応させる関数,
・ $u^{\mathrm{op}} : O^{\mathrm{op}} \to A^{\mathrm{op}}$ は $G \in O^{\mathrm{op}}$ に対して恒等写像
\begin{equation*}
u^{\mathrm{op}}(G) = (\mathrm{id}_{G}^{\mathrm{op}} : G \to G)
\end{equation*}
を対応させる関数. つまり群 $G^{\mathrm{op}}$ の単位元を $e^{\mathrm{op}}$ とするとき, $u^{\mathrm{op}}(G) = e^{\mathrm{op}}$ である.
・ $m^{\mathrm{op}} : P^{\mathrm{op}} = G \times G \to G$ は各 $(g^{\mathrm{op}}, h^{\mathrm{op}}) \in P^{\mathrm{op}}$ に対して
\begin{equation*}
m^{\mathrm{op}}(g^{\mathrm{op}}, h^{\mathrm{op}}) = g^{\mathrm{op}}h^{\mathrm{op}} = g^{\mathrm{op}} \cdot^{\mathrm{op}} h^{\mathrm{op}} = h \cdot g
\end{equation*}
により定義される関数.
関数 $i : G \to G^{\,\mathrm{op}}$ を
\begin{equation*}
i(g) = g^{\mathrm{op}} \quad (g^{\mathrm{op}} \in G^{\,\mathrm{op}})
\end{equation*}
と定義すると, これは群の同型写像となる.
ここで任意の $g, h \in G$ に対して
\begin{equation*}
g^{\mathrm{op}} \cdot^{\mathrm{op}} h^{\mathrm{op}} = h \cdot g
\end{equation*}
である.
群の同型写像 $i$ によって $G$ と $G^{\,\mathrm{op}}$ は同型になる.
一方で $i$ は $G$ の 2 つの元の積 $g \cdot h \,(g, h \in G)$ に対して
\begin{equation*}
i(g \cdot h) = g^{\mathrm{op}} \cdot^{\mathrm{op}} h^{\mathrm{op}} = h \cdot g
\end{equation*}
と移す. したがって, $G$ と $G^{\,\mathrm{op}}$ は基集合は同じだが 2 項演算 " $\cdot$ " と " $\cdot^{\mathrm{op}}$ " が異なるために一般に同じ群にはならない.
$G$ と $G^{\,\mathrm{op}}$ が同じ群になるための必要十分条件は任意の $g, h \in G$ に対して
\begin{equation*}
g \cdot h = g \cdot^{\mathrm{op}} h = h \cdot g
\end{equation*}
が成立すること, つまり $G$ が Abel 群になることである (†).
†: この式の中の $g \cdot^{\mathrm{op}} h$ は厳密には $g^{\mathrm{op}} \cdot^{\mathrm{op}} h^{\mathrm{op}}$ と記すべきだが, ここでは混乱は無いだろう.