実は、テレビで見たパン職人の言葉と焼き方が心に残っていて、今日は、じっくりと発酵させてみようかと考えていた。
その職人さんの言っていたことのひとつが、「小麦粉によって水の吸い方が違う」、ということ。彼が使おうと思った小麦粉は、水を吸うのにすごく時間がかかるということで、彼はなんと生地を作るのに10時間もかけたという。もちろん素人の私が異なる産地の小麦粉を使ったりなどということはないわけだが、生地をこねていて、粉と水のなじみ方が違う時があるなあ、とは感じていた。たとえば冬と夏など、気温や湿度の違いによって生地の出来方がずいぶん違うなあとは感じていた。そして、もうひとつ、発酵をしっかりすることについても語っていた。そんなことを思い出しながら、今日はまず、こねはじめる最初の段階で、粉が水を吸う状態を、なるべく丹念に見ながら混ぜていこうと考えた。そしてもうひとつ、いつもより長めに発酵させてみようと。いつもは、一次発酵を25分くらいで、そのあとガスを抜いたら、すぐに焼いていた。今日はそれを、一次発酵も少し長めの時間にして、そして二次発酵もしっかり行いさらに生地を軽くこねてから、もう1時間くらい生地を休ませてみた。結果的には、たぶんそれらが功を奏したのだろうと思うが、これまででいちばんふっくらと美味しく焼きあがった。
こんな風にパンを焼きながら考えた。
こうして小麦粉と向き合いながら無心で時間を過ごすこと。それは、穏やかに暮らすということのひとつ。そんな時間が、年を取ってとても心に滲みてくる。それは別にリタイヤしたからというようなことではない。生きるということの在り方、普通に暮らすことのありがたさ、そういったものをしっかりととらえながら生きていくことがいかに大切かということ。
最近よく見ている番組も、365日の貞子さんとかやまと尼寺精進日記とかベニシアさんの番組とか。そういう番組は、人はどう生きるか、などと大上段に構えなくても、穏やかな毎日をていねいに過ごしながら、自然な形で自分に合った生き方を楽しむことの素晴らしさを教えてくれている。
静かにパン生地をこねてパンを焼いている時間は、自分の心を見つめる時間のようなところもある。
#パン作り
【このカテゴリーの最新記事】