懐かしい方々のインタビューや見慣れた街並み、毎日のように通ったエリアが映し出され、私にとっては、懐かしく思い出深い映像でもあった。
2012年5月22日、冷たい雨が降る東京スカイツリー開業のその日、スカイツリープロジェクトの仕事に多少関わっていた私は、会社の仲間たちと一緒に、スカイツリーの1階にある商業ゾーンのビルの中で、オープニングの瞬間を待っていた。冷たい雨を受けながら、外には、数多くの報道陣がオープニングの瞬間を撮影すべく待機していた。
ツリーの開業から半年ほど経ったところで、郷里で一人暮らしをしていた父が、突然倒れた。悩んだ末に、私は定年を繰り上げて介護のために帰郷することを決断した。
あれから、もう10年近い年月が経ったのだと思うと、本当に感慨深い。
番組で取り上げられていた皆さんにとって、大きな変化となった10年は、私にとっても大きな人生の転機であった。
この10年弱の間に、私が世話をし始めてしばらくしてから、父が完全に元気になった期間が1年強ほどあった。しかし、それ以降は、どんどん寝たきりになり、この3年ほどは、本格的な介護生活に突入した。この10年は、仕事を捨て、お金も時間も、ほとんど父の介護を中心に費やしたような時間でもあった。
父の汚物を処理したり、シーツや衣類を洗濯したりしながら、実は、何度か涙を流したこともあった。介護をすることに対して、多少心にゆとりが持てるようになったのは、数年前くらいだろうか。しかし、認知症が急激に進んできたこの1年ほどは、私の精神的な負荷もまた増してきている。
地域を動かす大きなプロジェクトの末席に仕事で関わったことは、私にとって本当に大きなことで、父が倒れなければ、もしかするとその時に知り合った方々と今でも仕事をしていたのではないかと思う。人生、何が起きるか、どう変わるのかは、本当に先が読めないものである。
番組では、私も大好きな商店街の人たちや、なじみの町工場の社長など、それぞれの人たちの変化に満ちた10年が描かれていた。
その映像を見ながら、私も、この10年を振り返っていた。
そしてこれからの10年について、あらためて考えていこうと、思いを新たにした。
#東京スカイツリー10年
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