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2021年12月25日

地域の食文化の危機

数日前、知り合いの農家の方から、赤かぶと大根の漬物などを頂いた。毎年恒例のものである。私にとって、60数年間生きて来て、一番美味しい赤かぶと大根の漬物である。あちこちで赤かぶや大根の漬物を見かけると買ってきたりしたけれど、この方が仕込んだ漬物をしのぐものにはまだ出会っていない。それくらい美味しい。
211225漬物DSC_1952.JPG

調べてみると、赤かぶの漬物というのは非常に手間がかかり、作る際にも味のセンスが要求される。漬物の中でも特に難しいとされているらしい。
塩加減、漬かり具合、歯ごたえから色など見た目の良さまで全てバランスが取れている。
わが家に届けて下さる方は、実は、昔父の部下でもあった方だが、優秀な農家として評価も高く、コシヒカリのお米も県内トップクラスの評価を得ているなど、彼の作る農作物は客観的な評価も極めて高い。そんな篤農家の方だが、やはりご高齢になられている。お子様たちのご家族に、この漬物の技術が継承されているかお聞きしたことがあったが、「なーん(=富山弁で、いえいえ、という否定の意味)あいつらはあんまりやらんのです」ということであった。
そうなると、この素晴らしい漬物文化は、継承されないことになる。私が学びたいところだが、いい赤かぶの栽培技術から漬物の仕込み技術までを学ぶには、前期高齢者では不適格だろう。

北陸の伝統食のひとつに「かぶら寿し」がある。正月前の今頃に、各家庭で仕込み始めて、正月に食べごろとなるようにするのである。今でも、この時期になると、かぶら寿し用の麹などが大量に並ぶから、少なくとも我が町では、現在でもかぶら寿しを仕込むご家庭が多いのだろう。
私の母は、私が小学生の頃に病に倒れて長期の療養生活をしていたので、残念ながらかぶら寿しを自ら仕込むことはなかったが、親戚の大叔母が、毎年仕込んだかぶら寿しを、いつも年末に届けてくださった。あくまで私個人の感想だが現在に至るまで、大叔母の作ったかぶら寿しの味を超えるものには、まだ出会っていない。しかし、残念ながら、大叔母が亡くなってから、そのかぶら寿しを楽しむことはできなくなってしまった。

地域の食文化は、偉大なる文化遺産である。母から娘や嫁に継承されていくことで、それは残っていく。それが味の文化遺産だろう。
#食文化 #かぶら寿し #赤かぶ漬
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