調べてみると、赤かぶの漬物というのは非常に手間がかかり、作る際にも味のセンスが要求される。漬物の中でも特に難しいとされているらしい。
塩加減、漬かり具合、歯ごたえから色など見た目の良さまで全てバランスが取れている。
わが家に届けて下さる方は、実は、昔父の部下でもあった方だが、優秀な農家として評価も高く、コシヒカリのお米も県内トップクラスの評価を得ているなど、彼の作る農作物は客観的な評価も極めて高い。そんな篤農家の方だが、やはりご高齢になられている。お子様たちのご家族に、この漬物の技術が継承されているかお聞きしたことがあったが、「なーん(=富山弁で、いえいえ、という否定の意味)あいつらはあんまりやらんのです」ということであった。
そうなると、この素晴らしい漬物文化は、継承されないことになる。私が学びたいところだが、いい赤かぶの栽培技術から漬物の仕込み技術までを学ぶには、前期高齢者では不適格だろう。
北陸の伝統食のひとつに「かぶら寿し」がある。正月前の今頃に、各家庭で仕込み始めて、正月に食べごろとなるようにするのである。今でも、この時期になると、かぶら寿し用の麹などが大量に並ぶから、少なくとも我が町では、現在でもかぶら寿しを仕込むご家庭が多いのだろう。
私の母は、私が小学生の頃に病に倒れて長期の療養生活をしていたので、残念ながらかぶら寿しを自ら仕込むことはなかったが、親戚の大叔母が、毎年仕込んだかぶら寿しを、いつも年末に届けてくださった。あくまで私個人の感想だが現在に至るまで、大叔母の作ったかぶら寿しの味を超えるものには、まだ出会っていない。しかし、残念ながら、大叔母が亡くなってから、そのかぶら寿しを楽しむことはできなくなってしまった。
地域の食文化は、偉大なる文化遺産である。母から娘や嫁に継承されていくことで、それは残っていく。それが味の文化遺産だろう。
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