このおばさまは、お料理好きで、ちょっと一工夫したものをお作りになる。この煮物も、僕だったら思いつかない食材を組み合わせてある。昆布のほかに、ちくわ、そしてオクラと山芋である。へえー、と感心しながら、まず眺めてしまった。一口食べると、意外な組み合わせのどれもがうまくまとまって、素朴な美味しさ。御年79歳(あ、すみません、公開してしまいました(笑))の主婦キャリアは、伊達じゃない。
富山の昆布消費量は、日本トップクラスである。その歴史は、海の昆布ロード、北前船がもたらしたものだ。北海道と日本海沿岸の港をめぐり、大阪、さらには江戸の物流にも関連していた北前船。だから、富山県内には、昆布問屋や昆布を扱うお店も多い。また、江戸から続く北前船のご縁なのか、実は北海道に入植した富山県民も多い。そして、最近ではすっかり全国区になった刺身の昆布〆も富山や石川の伝統料理だ。そんな様々なことを背景にして富山の食生活は育まれてきた。
昨今では、世界中の食べ物が集まる日本。確かに和洋中と、ものすごいバリエーションの食事を楽しむことができて、豊かな時代を実感することも多い。しかし、一方で、近所のおばさまが作った煮物のようなものを食べる機会はどんどん失われている。確かに豊かな食生活になってきているが、歴史と土地と暮らしに根ざした日本の食文化は、実は、本質的な文化としての豊かさを持った食事なのではないだろうか。
この煮物を食べながら、地域の豊かな食文化に育てられてきた自分の幸せをあらためてかみしめている。
#昆布 #昆布料理
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