そもそも、イスラエルが、世界トップレベルのワクチン接種率であることがとても不思議だった。おおかた、石油関連による豊富な資金力を使って、ワクチンを早めに多少高値で買い占めた結果なのだろうと勝手に思っていた。しかし、どうもそうではないようだ。
まず、興味深いのは、ファイザーのワクチン開発に関連したトップは、移民出身だということだ。ファイザーと共同で新型コロナワクチンを開発したドイツ「ビオンテック」の創始者で最高経営責任者(CEO)のウグル・サヒン氏(55)は、世界の富豪番付で500位に入ったとブルームバーグ通信が少し前に報じている。もちろんワクチンの開発によって同社の株価が急騰したおかげである。サヒン氏は、トルコの労働者出身の両親のもとに生まれた移民2世で、「土の箸とスプーン神話」と呼ばれている。2008年にビオンテックを一緒に設立した妻のオーザム・トリジャ氏(53)もまたトルコ系の移民家庭出身だ。
(写真は、ファイザーとともに新型コロナワクチンの開発に成功したビオンテックの共同設立者、ウグル・サヒン(左)−オーザム・トリジャ(右)夫婦。ちなみに、彼らは、ワクチンによって巨額の富を得ている。)
こうした人たちが開発したワクチンに対して、イスラエルのネタニヤフ首相は、実に30回あまりも、直接ファイザーに電話をかけて直談判して、ワクチンを確保するアプローチをしたというのだ。なぜか?それは、もちろんイスラエル国民を救いたいという思いもあるだろうが、もうひとつ、間もなく行われる選挙において、再選を果たしたいという思いがあるからだという。彼は、汚職疑惑があり、もし再選されなければ、罪人として刑務所おくりになる可能性があるという。だからこそ、ファイザーと直接交渉することで、ワクチンをいちはやく確保し、国民からの支持を得る狙いがあったのではないかというのだ。
また、ファイザーのトップが、移民出身であったことも、イスラエルに対して心情的にシンパシーを感じたこともあったのかもしれないという。面白い推論である。
こんな話は、民放の午後のワイドショーには決して出てこないだろう。
ともあれ、ネタニヤフ首相の思惑が影響したことはあるにせよ、結果としてイスラエル国民は、アメリカやヨーロッパ諸国、そして日本よりもはるかに早くワクチンを接種している。
欧州にくらべて遅れをとった日本でも、4月からは医療従事者に続き、高齢者を中心とした一般人にもワクチン接種が始まる。かくいう私も前期高齢者なので、優先的に接種を受ける対象になるはずである。
今やワクチンこそが、これからのコロナ対策の最も大きな解決策になり得るものだろう。イスラエルに遅れる事数か月、ネタニヤフ首相の個人的な思いはともかくとしても、国のトップの判断とアクションが、国民の命運を動かしてしまうような時代になっている。さて、日本は、どうなることだろうか?
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