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2021年03月14日

食欲と言う本質的記憶

認知症の父が、食事を食べたのに食べていない、という事が多くなってきた。これは認知症の典型的な症状のひとつである。以前も書いたけれど、ご存知ない皆さんのためにこのことをまた書いておこうと思う。
今週はほぼ毎日それが起きている。知らない方は当然ぴんとこないだろうから、笑い話みたいなものだと思われるだろうが、介護をする人間にとっては、30分ごとくらいに繰り返し同じように、ご飯を食べてない、と言われ続けるのはかなり堪える。それが週に何度もおきると、けっこう神経がまいってくる。
彼の記憶の中では、食事をした記憶が消えているので、食べていないということが、彼における事実なのだ。だから困ってしまう。説明しても受け入れられない。彼の記憶の中には食べたという事実がメモリーされていないのだから。
210314DSC_1076.JPG

最近感じるのだが、こういう状態は、ちょっとコンピューターのメモリーのデータ書き込みに似ている気がする。食事を食べた、という記録データがちゃんと書き込まれていないと、いつまでたっても食べていないという状態のままになっている。だから、食事が欲しいというシグナルを起こし続ける〜
人の記憶データの中で、食事をしたかどうかは、命に係わる重大事だから、おそらくメモリーの優先順位が高いのだろう。それの書き込みとメモリーが、老化によってディスクが劣化してしまっていて正確に行われなくなる。「食べていない」、という一大事の信号だけが優先的に残ってしまう、そんなメカニズムなのかもしれないと思う。

介護をしていると、食べる、眠る、排泄する・・・人間というのは、本当にそのリズムで生きているんだということを痛感する。そのサイクルが乱れたり止まったりすると、生命維持に関わる。去年の9月に、父が体調を崩して口から食事を食べられなくなったことがあった。わずか3日ほどで、父はあっという間に衰弱した。主治医も、口から食事ができなくなると高齢者はあっという間に危険な状態になるのでご注意下さいと話していた。
点滴を3日ほど続けて父が回復し始めたところで、私はゼリーなどの流動食などともかく口から食べさせるということを一生懸命やった。そのかいあってか、主治医が驚くほど回復した。

人間の色認識で、紫色とか、青色とかは、食べ物が腐ったり危険な状態だったりすることが多い色なので、本能の中に生きる上で「危険な色」としてメモリーされているという話を読んだことがある。おそらくそうだと思うことは多い。

生命を維持するうえで、自らの意志で行う大切なアクションの筆頭は、食べることなのだろう。
父は、今日もアクティブに食べてくれた。人は、子供などに食事を与えている時に本質的な安心感を感じるという。子供がパクパク食べているのを見ると、とても幸せな気持ちになる。同じように、最近のわたしにとっては、父がうまいうまい、と言いながら食事を食べてくれるとほっとする。

そして、今夜も、夕食を食べ終わってしばらくしてから、「おい、メシを食べてない・・」と、父が言いだした・・・・
#認知症 













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