世界に比べて、比較的感染を抑え込んでいるというような評価もあったわが国も、今や危機的状況が進行している。病院などの医療体制は、パンパンの状態だ。医療に携わる人たちは、自らも感染するリスクと日々向き合いながら、目いっぱい働いていらっしゃる。しかし、もはや追いつかない状態になりつつある。感染者を受け入れることも限界になり、他の病気への治療も対応できないというような事態が起きている。
緊急事態宣言が出されても、国民の感覚が、悪い意味でコロナに馴れてしまったためか、全体としての切迫感が希薄になっているのではないかと懸念する。
こうした感染拡大に対して、現状もっとも期待できる対抗策がワクチンである。その接種が世界中で始まり、日本でも接種に向けた準備の真っ最中であるが、ここへきてワクチンの市場構造(と言ってよいかわからないが便宜上これで)に変化が起きている。アメリカやイギリスの製薬メーカーが開発に成功したというニュースを聞いた時に、これは、早晩世界中で取り合いになるのではないか?と思っていたが、やはり世界中で争奪戦や自国優先の動きが起きているという。
イスラエルは、世界トップクラスの接種率になっている。これは、イスラエルが、お金を持っているということで、高い金額でワクチンを買い占めた結果だという話もあるらしいが、あながち嘘ではないようだ。

「ワクチンナショナリズム」という言葉も生まれているようだ。これは、WHOの例のヒゲのご仁もスピーチしていたが、先進国と発展途上国との間で、ワクチンの接種環境に差が出てきたり、ワクチンを製造している国が自国への供給を優先して、契約している他国への供給が遅れたりしているというような事態になっている。
アメリカやイギリスなど感染者数が多い国では、自国を優先したいという気持ちも、むべなるかなとも思うけれど、日本にもそのナショナリズムが影響を及ぼしたのか、接種予定が当初の見込みから遅れそうだという。
ナショナリズムは、国家主義や国民主義などと訳されているが、国粋主義という言葉もあった。この言葉には、国際紛争を引き起こすような、きな臭い匂いが伴う。世界中が一致団結して立ち向かうべきコロナウィルスだが、そこにおいても、国家間の争いを招くような、ナショナリズムが起きてしまうことは、なんとか避けてもらいたいと願う。
ローマ教皇は、こうおっしゃったという。「私たちは皆、同じ船に乗っていて、一緒に漕ぐことを求められている」と。



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