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2021年03月14日

老朽インフラの安全性の問題


以前、山口県の橋で何らかの原因で橋の前後道路部分で20cmの段差が生じ自動車事故があり、

橋が通行止めとなり近隣利用者にも大きな不便が生じたニュースが配信された。

その橋は1969年建造とあり、50年以上経過した老朽化した橋であった。

平成24年12月に中央自動車道の山梨県大月の笹子トンネルでコンクリート製の天井版が落下して

その下敷きとなり9名の方が尊い命を落とされた、とても残念で悔やまれる事故があった。

それがきっかけで、国や自治体では早急に日本全国でトンネル点検が行われ、笹子トンネルと同様な構造の天井版は撤去された。

橋の点検は平成16年にすでに国土交通省を皮切りに始まり、全国の県、自治体などで実施され続け、

平成24年までのほとんどの自治体で橋の点検が完了し、安全性の検証などが行われている最中の出来事だった。

平成26年7月には国土交通省が道路橋やトンネルに対して5年に1回の定期点検を国の機関、高速道路会社

市町村や県などの地方自治体に義務づけた。

平成24年までに橋の安全点検をしつつ、現在まで安全性に問題のある橋や構造物の補修や補強工事などが進められている。

特に私たちに身近なインフラとして道路橋とトンネル、上下水道がある。

古い下水道管の老朽化も問題で、毎年日本全国で老朽化した下水道管や水道管が土中内で壊れて道路陥没事故などが多発している。

日本全国にトンネルは1万本、道路橋は72万橋あることが詳細調査の結果からわかっている。

道路トンネルは定義するまでもなく人や自動車が通る空間だが、橋にも定義がある。

橋とは2m以上の空間を渡過するものと定義されている。

ところで2mの短い橋でも老朽化で崩壊や落橋したりすれば、交通量が特に多い道路や高速道路

幹線道路の場合、車で走った先に橋が突然壊れて無ければ大事故につながることや

橋が一旦壊れれば、その道路は数カ月以上は通行止めになるわけだから、

高速道路や国道、幹線道路では国民経済、市道などの地方道では生活に支障をきたすことは容易にわかる。

今後、高齢化社会が更に進展し、地方の集落などにゆくために1本の市町村道しかない場合など

交通量が少なくとも、その集落へ行くために1本の道しかない際の橋でも、その橋が壊れれば

集落で生活する人たちが生活ができなくなるため重要な橋梁である。

老朽インフラではよく50年以上経過したインフラが安全性で問題だといわれる。

その理由は以下がある。

1、50年以上前東京オリンピック前後に急ピッチで多くの橋や構造物が建造されたため、
  突貫工事で品質や強度、構造などで問題があることが多い。

2、コンクリートはアルカリ性であるために2酸化炭素や酸性雨の影響で経年劣化している場合が多い。

3、橋や道路構造物は平成5年以降は車両荷重25トンに耐えられるようにで設計されているが、
  平成5年前の設計荷重は国道や県道でさえ20トンであり、
  市町村道の橋になると14トンと大型自動車の通行で耐久性や強度の面で問題がある。
  更にそれらの重い大型ダンプや貨物車などが繰り返し走行を続け疲労破壊が起き始めている可能性大。

4、平成11年よりも古いコンクリート構造物は鉄筋を被覆しているコンクリートの厚さが薄いために
  空気中の二酸化炭素や酸性雨の影響でコンクリートが劣化し、劣化によって鉄筋がさびて車の重さに抵抗する力が低下していることが多い。

5、50年前はまだコンクリート材料の劣化や鉄材の疲労に対しての研究が進んでない状況で
  現在と比べ、建造の際の品質管理や技術基準が緩い状態で橋などが多く建造されていた。

6、50年前はちょうど工事に用いる材料の規格が、統一された時期であり、それ以前では鉄筋やボルトなどの
 規格が厳格でなかった。また、コンクリートはそれほど劣化しないと世界的に考えられていた。

7、昭和後期までインフラの老朽化によるインフラの安全性の問題が顕著でなかったために、
老朽化に関する問題研究が少なく、更に世界的にも日本国内でも老朽化による問題事例が乏しかった。

よって、老朽化問題対策を取り入れた技術基準の項目が設計でも施工でもほとんどなかった。
全国の72万橋の内75%が市町村管理の橋であり、15%が都道府県管理の橋であるから合計9割が
地方自治体管理の橋ということになるが、橋の老朽化は橋の下から点検してみないとほとんどがわからない。

なぜなら橋の上は舗装で被覆されており、橋の表面からでは橋げたや床組みの損傷や劣化がわからないからだ。
橋の長さの内訳でゆくと、72万橋の内、15mを超える橋は全体の2割の16万橋、
15m未満の橋は全体の8割の56万橋であり、特に市町村が管理する橋のほとんどが15m以下のコンクリート製の橋で占められる。
50年以上前の橋やインフラ構造物は品質にバラツキがあるために
経年劣化で老朽化して強度も耐久性も低下したものが多い。

それらの橋を50年前に想定した自動車交通量よりもはるかに多い量の車が日夜走っており、
老朽化と部材疲労により、壊れやすくなっており、安全性に大きな問題がある可能性が高いことがわかる。
それならば、新しく橋を造り替えたり、補修すればよいではということになるが、
地方自治体では人口が減少し、地場産業も中小企業が多いため、税収も少なく予算が無いのである。
予算がない中で橋を補修し続けても、いつかは補修のしようがなくなり安全性が確保できなくなるために、
将来的には新しく橋をつくりかえなければいけなくなる。

よって、定期的な安全点検やお金がかからないように情報通信技術とセンサーなどを利用した異常探知と
老朽インフラの監視システム、橋を造り替えたり補修や補強、更新の際には今後は耐久性の高い材料と工法を研究開発して、
経済的で耐久性があり安全性も機能性も保持できる技術や施工法が必要であり、
現在インフラ整備を行う業界で鋭意研究開発中で取り組みが行われている。

また、道路橋では利用者が少なく、近隣に新しい橋があるような道路での古い橋は撤去するなど
お金がかからないようにして、必要な橋は残し、必要でない橋の撤去を自治体と住民で話し合いで検討するなど必要だと考えられる。

普段何気なく利用している道路や橋は実は地域生活にも国民生活、国民経済に重要な役割をある。
現在、橋などの構造物の老朽化のメカニズムも解明されてきているが、
問題は老朽化した安全性に懸念があるインフラを補修したり補強したり、更新したりするための
予算が地方自治体では厳しいことである。
以前は地方のインフラ整備の費用は国から道路特定財源を原資として地方自治体に配分されていた。

平成19年に道路特定財源の原資であるガソリン税や軽油税、自動車重要税、自動車取得税などの道路特定財源が廃止されて一般財源化され、
平成19年まで道路は橋の工事や維持に利用された財源が廃止されたことが果たして正解だったのか疑問である。

そもそも道路特定財源とは道路を多く利用する個人や企業などの自動車保有者がガソリン税や軽油税、自動車重要税などとして負担すべきという考えでの税収であり、道路や橋、トンネルなどの改良や補修、
維持管理などに利用されるべきという考えであるから、正当な考えの目的税だと思うが。

その当時、ガソリン税や自動車税などの税収を日本の税収が激減した中で、
道路などのインフラ整備や維持管理だけに利用するのではなく、

一般財源として広く利用すべきという論調でそうなったと思う。
税収が激減して国家財源が厳しい中、道路特定財源を廃止して一般財源化したことが果たしてよかったのか
老朽化した橋や道路などのインフラの利用者の安全性を確保するのによかったのか疑問が残る。



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