2024年12月30日
2024年 野球界重大ニュース 〜日本編〜
残りわずかとなった激震のスタートを切った2024年、ここからは、メジャーリーグ編に続いて、今年の日本球界で起きた様々な出来事から 5つを重大ニュースとして取り上げ、振り返ってみたいとおもいます。
◆ 2024年 野球界重大ニュース 〜日本編〜
◆ 低反発バット「元年」となった高校野球
今春から高校野球界では、公式戦で使用する金属バットが、従来よりも飛距離や打球スピードを抑えた「新基準バット」に完全統一されました。
低反発バットとは、最大直径64oでSG基準(実用性を重視した上で安全を作り込んだ基準)でバットの肉厚が約4oを基準とした、より反発性能が抑制された新基準の金属バットを指します。
※旧金属バット:最大直径67o、打球部の肉厚約3o
これによって、より細く、打球部の厚みが増したことで、日本高野連の実験では、打球初速が約3.6%減少し、反発性能も5%から9%落ちたと報告されています。
目的は
@打球による負傷事故の防止(特に投手)
A投手の負担軽減によるケガ防止
ですが、 野球の“華”である本塁打も、飛距離が出づらくなった為に激減しました。
新基準に完全統一されて初めての公式戦となった今春のセンバツは前年の12本から3本塁打に減少。
内1本はランニング本塁打で、柵越えはわずか2本。
第96回選抜高等学校野球大会(センバツ)3月19日、大会2日目、第1試合でライナー性の打球が右翼ポール際へ吸い込まれる
“新基準バット1号” を放った豊川(愛知) のモイセエフ・ニキータ選手。
高校野球は12月から3月初旬まで、対外試合が禁じられており、センバツは実戦再開から間もなく開催されるため、打者の感覚が戻りきらず、例年“投高打低”になりやすいと言われます。
そのため、「夏を見ないことには判断できない」とも言われましたが、この夏の結果はどのようなものだったか。
まず今夏の本塁打は7本にとどまりました。前年の23本から激減しているだけでなく、高校野球に金属バットが導入された1974年以降では最少の本数。
長打全体に目を移しても、同じく48試合が実施された昨年の二塁打が142本だったのに対し、今夏は88本。三塁打は2年連続で19本だったものの、試合を観ていても角度の付いた打球の失速が目立ち、基準変更がもたらした影響を如実に感じさせられました。
このように基準変更の煽りを真っ向から受ける形となりましたが、長打は激減も、エキサイティングな試合は多数あり、来年以降の低反発バット対応に注目が集まります。
◆ 球史に名を刻む選手の現役引退
● ヤクルトの青木宣親外野手(42歳) が日米通算21年間の現役生活に別れを告げる決断を下しました(画像は引退会見時のもの)。
メジャー6年間を含む21年間のプロ生活で積み上げた通算2723安打(日1949、米774)は歴代5位。
今季は代打での出場が中心で、8月5日に出場選手登録を抹消された後もチームの精神的支柱として1軍に同行してチームを鼓舞。
1メートル75センチという決して大きくない体で、数々の記録を残し、日本では史上唯一の2度のシーズン200安打、3度の首位打者。12年にメジャーに挑戦し、17年には日米通算2000安打を記録。18年1月に古巣ヤクルトに復帰。21年に自身初の日本一に輝くと「このために自分は帰ってきたんだ」と人目をはばからずに涙。
日本球界の歴史に名を残す安打製造機。NPBではヤクルト一筋、ファンから愛された「ミスタースワローズ」でした。
● ソフトバンクの和田毅投手(43歳)が今季限りで現役を引退する決断を下しました(画像は引退会見時のもの)。
並み外れた練習量を誇り、40歳を超えても活躍を続け、22年のプロ生活で日米通算165勝をマーク。
2002年のドラフト自由枠でダイエーホークスに入団。ルーキーイヤーに8完投・2完封を含む14勝を挙げ新人王に輝くと、2007年まで5年連続で2桁勝利を記録。
2011年オフに海外FA権を行使し、オリオールズへの移籍後2年間はマイナーリーグで過ごしたものの、2014年にカブスでMLBデビューを果たしました。
2016年にNPBに復帰すると、15勝(5敗)、勝率.750で最多勝利と最高勝率のタイトルを獲得。その後も先発ローテーションの一角を担い、2022年9月30日にNPB通算150勝、2023年5月24日にはNPB通算2000投球回を達成。
「松坂世代」と呼ばれた1980年度生まれ、前身のダイエー時代を知る最後の現役選手でした。
このほかにもプロ野球で実績を残した選手が今年現役引退を決めています。
●オリックス<投手>比嘉幹貴(41歳)
【通算】418登板 26勝11敗 防御率2.65 93ホールド 3セーブ
<内野手>安達了一(36歳)
【通算】1176試合 打率.245(3704−906) 36本塁打 325打点
<外野手>小田裕也(34歳)
【通算】681試合 打率.239(683−163) 10本塁打 62打点
T-岡田(36歳)
【通算】1363試合 打率.257(4651−1193) 204本塁打 715打点
●西武<投手>増田達至(36歳)
【通算】560登板 31勝40敗 防御率3.03 109ホールド 194セーブ
<捕手>岡田雅利(35歳)
【通算】326試合 打率.219(544−119) 6本塁打 40打点
<外野手>金子侑司(34歳)
【通算】1020試合 打率.241(3023−729) 21本塁打 223打点 225盗塁
●日本ハム<投手>鍵谷陽平(34歳)
【通算】420登板 25勝15敗 防御率3.45 84ホールド 7セーブ
●阪神<投手>秋山拓巳(33歳)
【通算】134登板 49勝44敗 防御率3.66 0ホールド 0セーブ
●広島<投手>野村祐輔(35歳)
【通算】210登板 80勝64敗 防御率3.53 0ホールド 0セーブ
●ヤクルト<外野手>山崎晃大朗(31歳)
【通算】595試合 打率.245(1444−354) 7本塁打 97打点
●中日<投手>田島慎二(34歳)
【通算】461登板 防御率3.62 116ホールド 75セーブ
砂田毅樹(29歳)
【通算】287登板 防御率3.71 73ホールド 0セーブ
<外野手>加藤翔平(33歳)
【通算】671試合 打率.242(1408−341) 16本塁打 94打点
◆ 高校野球 甲子園大会
春 夏ともに 躍進・新鋭校が大旗を掴む !!
◇ 春のセンバツ甲子園
健大高崎(群馬)が春夏通じて初の全国制覇を果たす!!
第96回選抜高校野球大会(春のセンバツ)の決勝戦が3月31日行われ、健大高崎(群馬)が強豪・報徳学園(兵庫)との接戦を 3 対 2 で制し、春夏通じて初の全国制覇を果たしました。
さらに群馬県勢としてはセンバツ初Vの快挙で、甲子園制覇は1999年夏の甲子園の桐生第一、2013年の前橋育英に続く3度目。
昨年準優勝の報徳学園は1点差で及ばず2年連続の準V、22年ぶりの優勝には惜しくも届きませんでした。
2年連続7回目出場の健大高崎は、1回戦で学法石川(福島)に4−0、2回戦で明豊(大分)に4−0と2戦連続で完封勝利を収めると、準々決勝で昨年優勝の山梨学院(山梨)を6−1で破り、2012年以来12年ぶり2度目の4強入りを果たし、準決勝では優勝候補の星稜(石川)との接戦を逆転で制し、春夏通じて初の決勝へ。
31日は勢いそのままに2戦連続の逆転勝利で悲願の初優勝を手にしました。
際立った健大高崎、投打の総合力。
就任22年の青柳監督が「今までで選手の力は一番上」と期待したチームでしたが、始動した当初はバラバラで「みんな能力が高いのに、自分のことしか考えなかった」と箱山主将。
主将として、仲間のために泥臭いプレーを求め、大会前から「日本一」を公言し、大会中に全員で頭を五厘刈りにして一体感を高めました。
低反発バットが採用された今大会、実際に全31試合で飛び出した本塁打は、わずか3本(うち1本はランニングホームラン)。昨年の12本(35試合)から大幅に減少し、外野手の頭を越えていく豪快な打球は少なく、低反発バットの影響は、はっきり見て取れました。
そんな中で初出場の2012年、足で重圧をかける「機動破壊」を武器に4強入り。その後は甲子園の常連となった健大高崎は今大会、投手陣は左の佐藤、右の石垣の将来有望な新2年生2枚看板を軸にして、2回戦は、内野ゴロなどで4点を挙げ、適時打なしで勝利するなど、伝統の機動力の健在ぶりを発揮。
決勝は、機動力に長打力も兼ね備えた「攻撃的機動破壊」が実を結び、昨年初戦で敗れた報徳学園に雪辱し、頂点に立ちました!!
低反発バットによって変っていく高校野球。
◆ 夏の全国高校野球選手権
京都国際が春夏通じて初の全国制覇を果たす!!
"熱闘甲子園" 第106回全国高校野球選手権大会は8月23日決勝戦が行われ、京都国際(京都)が延長10回タイブレークの末に、関東一(東東京)を破って、春夏通じての初優勝を達成。
京都勢としては1956年の平安(現・龍谷大平安)以来、68年ぶりに夏の甲子園制覇となりました!!
誕生から100年の阪神甲子園球場、低反発バットが導入されてから、初めての夏。
導入直後の選抜や春の都道府県大会は、打球が飛ばなくなったことで、「野球がつまらなくなった」との声も聞きました。
しかしながら今大会、手に汗を握るシーンが何度もありました。総本塁打数は金属製バット導入後最少の7本。総得点は昨年より147点減ったものの、1点差の試合は昨夏より10多い19となり、より「1点」が重くなりました。
バットのほかに、タイブレークや投球数制限など、近年の高校野球はめまぐるしく変化しています。それでも選手たちは工夫を凝らし、順応してきました。
初優勝の京都国際は自主練習が中心。送りバントのサインでも自分の判断で強攻に出たり、選手同士で守備位置を確認しあったり。それぞれの考える力を結束し、主体性と勇敢さの先に3441チーム(3715校)の頂点が待っていました。
低半端バットにより、従来は少々の守備や走塁のミスは打撃=得点力でカバーできましたが、今後は"見えないミス"が試合を大きく左右するウェートが高まり、そこを各チームがどのように対応していくのか。
次の100年も、甲子園は進化する球児たちで彩られていくこととおもいます。
◆ プロ野球 “投高打低” の波 加速
日本プロ野球はまれに見る「投高打低」のシーズン。セ・パ両リーグの3割打者は2リーグ制以降で最少の計3人。
逆に投手は規定投球回を満たした防御率1点台が6人。
これらによりチームの得点数も大きく減少しました。
【打撃部門】
セ・リーグ
打率3割を記録したのは、タイラー・オースティン(首位打者・DeNA:打率.316)、ドミンゴ・サンタナ(ヤクルト:打率.315)の2人。3割打者2人は1973年以来リーグ51年ぶりで、日本人野手が1人も打率3割を達成できなかったのは、パ・リーグを含めても史上初。
パ・リーグ
打率3割を記録したのは、近藤健介(首位打者・ソフトバンク:打率.314)。近藤以外に規定打席数到達者で打率.300に達した選手はおらず、3割打者1人のみとなったのはパ・リーグ史上初。
よってセ・パ両リーグの3割打者は2リーグ制以降で最少を記録しました。
【投手部門】
規定投球回を満たした防御率1点台は以下の投手。
1 橋 宏斗 中日 1.38
2 菅野 智之 巨人 1.67
3 才木 浩人 阪神 1.83
4 大瀬良 大地 広島 1.86
5 モイネロ ソフトバンク 1.88
6 戸郷 翔征 巨人 1.95
規定投球回に達した防御率1点台は、直近10年では、両リーグ合わせても3人(2020年、2015年)が最多。「飛ばないボール」だった2011年、2012年は防御率1点台は計6人でしたが、今季はそれに並びました。
また、巨人の戸郷翔征、広島の大瀬良大地は今季ノーヒットノーランも達成しています(画像下)。
このように「投高打低」は明らかであり、データで見ても得点の減少はみてとれます。
◆ 1試合平均得点の推移(1950〜2024年)
2018年には1試合チーム平均4.32得点が記録されていましが、そこから年々下降を続け今季は3.28得点まで低下。
● セ1位:DeNA 522得点 最下位:中日373得点
● パ1位:ソフトバンク 607得点 最下位:西武350得点
● セ・パ合計:5639得点
● 1試合平均得点:3.286得点
これは反発係数が規定を下回る問題となった低反発球が使用された2011年の3.28点、2012年の3.26点とほぼ同等の値。それ以前にこのレベルとなると、3.18得点を記録した1956年、戦後間もない時代にまでさかのぼります。今季の1試合平均得点の少なさはNPBの2リーグ制開始以降歴代4番目であり、歴史的に見ても異常なシーズンとなりました。
◆ 横浜DeNAベイスターズ 史上最大の“下剋上” 完遂 !!
日本プロ野球の年間王者を決める「日本シリーズ2024」は、セ・リーグのDeNAベイスターズが、パ・リーグ覇者のソフトバンクホークスを4勝2敗で下し、26年ぶり3度目の日本一に。
レギュラーシーズンはリーグ3位で貯金わずか2だったDeNAが、貯金42と圧倒的な強さでパを制したソフトバンクに勝利する下剋上を成し遂げました!!
DeNAはセ・リーグのレギュラーシーズン。9月に広島が大失速 (9月1日に「14」もあった貯金は瞬く間に底をつきる)により、激しいAクラス争いが勃発。広島が10月2日のヤクルト戦に敗れたことで、3年連続Aクラスと2年連続3位が確定。
クライマックスシリーズではファーストステージで2位阪神を2連勝で下し、2018年以来6年ぶりのファイナルステージ進出、ファイナルステージで首位巨人を4勝3敗で下し、2017年以来7年ぶりの日本シリーズ出場
となりました。
レギュラーシーズンは71勝69敗3分。勝率・507で優勝した巨人にゲーム差8をつけられての3位。
史上最低勝率の日本一「最高にうれしいです」歓喜の横浜スタジアムで、DeNA・三浦大輔監督が夜空に5度、宙を舞いました。
名将・三原脩監督が率いた1960年、マシンガン打線が売りだった98年に次ぐ3度目の日本一。生え抜き監督の指揮官は、98年の現役時代と合わせ、選手、監督としてチームの日本一を経験しました。
今季の日本シリーズは、第5戦までDeNA、ソフトバンクともに本拠地で勝てない異例の“外弁慶シリーズ”。DeNAは本拠地で2連敗した後、敵地で3連勝。日本一に王手をかけて舞い戻った横浜で、大量11得点を奪って11―2で圧倒。ようやく手にした本拠地での白星で日本一を決めました。
歴代日本一の球団の中では、75年の阪急のシーズン勝率・520を下回る最低勝率からの頂点。07年のCS導入以降、リーグ優勝チーム以外の日本一は5度目。
短期決戦の怖さをまざまざと見せつけた勝負の分かれ目は、「シリーズ男」「指名打者(DH)」「継投策」にありました。
まずは、「シリーズ男」の存在。
ポストシーズンの短期決戦で飛躍する選手の有無は、「水物(みずもの)」といわれる打線において大きな影響を与えますが、今回はシリーズMVPにも選ばれたDeNAの桑原将志選手が、大きな存在感を示しました。
桑原選手は全6試合で1番を託され、27打数12安打で打率4割4分4厘、1本塁打、9打点の大活躍。第2戦からは日本シリーズ新記録となる5試合連続打点をマークし、第6戦は1点リードの2回2死二、三塁から2点適時打を放って、チームに勢いをもたらせました。チャンスメークに、ポイントゲッターにと打線に勢いをもたらしただけでなく、第3、5戦は守備でもダイビングキャッチの好捕で盛り上げる躍動ぶり。
「打線に厚みを出したDH制」
パの本拠地で導入される指名打者(DH)も、DeNAが味方につけ、2連敗で迎えた第3戦からの敵地3連戦は、第1戦で左足を負傷したリーグ首位打者のタイラー・オースティンをDHで起用。3、4戦は一塁に佐野恵太、左翼に筒香嘉智を置いたことで、打線に厚みが出ました。
オースティンは4戦目で先制本塁打を含む3安打、2打点と勝利に貢献。筒香は3戦目にリードを2点に広げる貴重な犠飛、5戦目も先制適時打。5戦目は、代打で好調だったマイク・フォードを「5番・一塁」で起用するなど、強打者がそろうDeNAが、DHで1枚増えた野手を有効的に活用しました。
実は、DHが使えた今季の交流戦でも、パの本拠地で行われた12試合で11勝1敗と圧倒的な強さを発揮しています。
「固定観念を取り払う臨機応変の采配」
ソフトバンク打線を封じたのが、DeNAの強固な中継ぎ陣。
シリーズ6戦の救援陣の防御率は1.29と安定し、3戦目以降は合計11イニングをいずれも無失点に抑える安定感。中川颯投手、坂本裕哉投手、伊勢大夢投手、森原康平投手らが役割をこなしまし、レギュラーシーズンの救援陣の防御率はDeNAが2.81で、ソフトバンクが2.58と大差がなかったものの、シリーズでは、ソフトバンクの救援陣が4連敗した3戦目以降に計20失点したのとは対照的な結果でした。
いずれにしても前評判の戦力差では圧倒的な差があるとされたソフトバンク相手に、臨機応変に采配を
振るう指揮官のタクトもまた、下剋上には欠かせない要因でした!!
以上 今年の日本野球界を5つのニュースで振り返ってみましたが、日本では今年いきなり能登で大震災があり、海外では争いごとによる不安定な状況が続いています。そんな哀しいニュースも流れる2024年はまもなく幕を閉じようとしています。
世界情勢の不安はまだ続きますが、2025年はポジティブなニュースが満載の年であることを真に祈っています!!
◆ 2024年 野球界重大ニュース 〜日本編〜
◆ 低反発バット「元年」となった高校野球
今春から高校野球界では、公式戦で使用する金属バットが、従来よりも飛距離や打球スピードを抑えた「新基準バット」に完全統一されました。
低反発バットとは、最大直径64oでSG基準(実用性を重視した上で安全を作り込んだ基準)でバットの肉厚が約4oを基準とした、より反発性能が抑制された新基準の金属バットを指します。
※旧金属バット:最大直径67o、打球部の肉厚約3o
これによって、より細く、打球部の厚みが増したことで、日本高野連の実験では、打球初速が約3.6%減少し、反発性能も5%から9%落ちたと報告されています。
目的は
@打球による負傷事故の防止(特に投手)
A投手の負担軽減によるケガ防止
ですが、 野球の“華”である本塁打も、飛距離が出づらくなった為に激減しました。
新基準に完全統一されて初めての公式戦となった今春のセンバツは前年の12本から3本塁打に減少。
内1本はランニング本塁打で、柵越えはわずか2本。
第96回選抜高等学校野球大会(センバツ)3月19日、大会2日目、第1試合でライナー性の打球が右翼ポール際へ吸い込まれる
“新基準バット1号” を放った豊川(愛知) のモイセエフ・ニキータ選手。
高校野球は12月から3月初旬まで、対外試合が禁じられており、センバツは実戦再開から間もなく開催されるため、打者の感覚が戻りきらず、例年“投高打低”になりやすいと言われます。
そのため、「夏を見ないことには判断できない」とも言われましたが、この夏の結果はどのようなものだったか。
まず今夏の本塁打は7本にとどまりました。前年の23本から激減しているだけでなく、高校野球に金属バットが導入された1974年以降では最少の本数。
長打全体に目を移しても、同じく48試合が実施された昨年の二塁打が142本だったのに対し、今夏は88本。三塁打は2年連続で19本だったものの、試合を観ていても角度の付いた打球の失速が目立ち、基準変更がもたらした影響を如実に感じさせられました。
このように基準変更の煽りを真っ向から受ける形となりましたが、長打は激減も、エキサイティングな試合は多数あり、来年以降の低反発バット対応に注目が集まります。
◆ 球史に名を刻む選手の現役引退
● ヤクルトの青木宣親外野手(42歳) が日米通算21年間の現役生活に別れを告げる決断を下しました(画像は引退会見時のもの)。
メジャー6年間を含む21年間のプロ生活で積み上げた通算2723安打(日1949、米774)は歴代5位。
今季は代打での出場が中心で、8月5日に出場選手登録を抹消された後もチームの精神的支柱として1軍に同行してチームを鼓舞。
1メートル75センチという決して大きくない体で、数々の記録を残し、日本では史上唯一の2度のシーズン200安打、3度の首位打者。12年にメジャーに挑戦し、17年には日米通算2000安打を記録。18年1月に古巣ヤクルトに復帰。21年に自身初の日本一に輝くと「このために自分は帰ってきたんだ」と人目をはばからずに涙。
日本球界の歴史に名を残す安打製造機。NPBではヤクルト一筋、ファンから愛された「ミスタースワローズ」でした。
● ソフトバンクの和田毅投手(43歳)が今季限りで現役を引退する決断を下しました(画像は引退会見時のもの)。
並み外れた練習量を誇り、40歳を超えても活躍を続け、22年のプロ生活で日米通算165勝をマーク。
2002年のドラフト自由枠でダイエーホークスに入団。ルーキーイヤーに8完投・2完封を含む14勝を挙げ新人王に輝くと、2007年まで5年連続で2桁勝利を記録。
2011年オフに海外FA権を行使し、オリオールズへの移籍後2年間はマイナーリーグで過ごしたものの、2014年にカブスでMLBデビューを果たしました。
2016年にNPBに復帰すると、15勝(5敗)、勝率.750で最多勝利と最高勝率のタイトルを獲得。その後も先発ローテーションの一角を担い、2022年9月30日にNPB通算150勝、2023年5月24日にはNPB通算2000投球回を達成。
「松坂世代」と呼ばれた1980年度生まれ、前身のダイエー時代を知る最後の現役選手でした。
このほかにもプロ野球で実績を残した選手が今年現役引退を決めています。
●オリックス<投手>比嘉幹貴(41歳)
【通算】418登板 26勝11敗 防御率2.65 93ホールド 3セーブ
<内野手>安達了一(36歳)
【通算】1176試合 打率.245(3704−906) 36本塁打 325打点
<外野手>小田裕也(34歳)
【通算】681試合 打率.239(683−163) 10本塁打 62打点
T-岡田(36歳)
【通算】1363試合 打率.257(4651−1193) 204本塁打 715打点
●西武<投手>増田達至(36歳)
【通算】560登板 31勝40敗 防御率3.03 109ホールド 194セーブ
<捕手>岡田雅利(35歳)
【通算】326試合 打率.219(544−119) 6本塁打 40打点
<外野手>金子侑司(34歳)
【通算】1020試合 打率.241(3023−729) 21本塁打 223打点 225盗塁
●日本ハム<投手>鍵谷陽平(34歳)
【通算】420登板 25勝15敗 防御率3.45 84ホールド 7セーブ
●阪神<投手>秋山拓巳(33歳)
【通算】134登板 49勝44敗 防御率3.66 0ホールド 0セーブ
●広島<投手>野村祐輔(35歳)
【通算】210登板 80勝64敗 防御率3.53 0ホールド 0セーブ
●ヤクルト<外野手>山崎晃大朗(31歳)
【通算】595試合 打率.245(1444−354) 7本塁打 97打点
●中日<投手>田島慎二(34歳)
【通算】461登板 防御率3.62 116ホールド 75セーブ
砂田毅樹(29歳)
【通算】287登板 防御率3.71 73ホールド 0セーブ
<外野手>加藤翔平(33歳)
【通算】671試合 打率.242(1408−341) 16本塁打 94打点
◆ 高校野球 甲子園大会
春 夏ともに 躍進・新鋭校が大旗を掴む !!
◇ 春のセンバツ甲子園
健大高崎(群馬)が春夏通じて初の全国制覇を果たす!!
第96回選抜高校野球大会(春のセンバツ)の決勝戦が3月31日行われ、健大高崎(群馬)が強豪・報徳学園(兵庫)との接戦を 3 対 2 で制し、春夏通じて初の全国制覇を果たしました。
さらに群馬県勢としてはセンバツ初Vの快挙で、甲子園制覇は1999年夏の甲子園の桐生第一、2013年の前橋育英に続く3度目。
昨年準優勝の報徳学園は1点差で及ばず2年連続の準V、22年ぶりの優勝には惜しくも届きませんでした。
2年連続7回目出場の健大高崎は、1回戦で学法石川(福島)に4−0、2回戦で明豊(大分)に4−0と2戦連続で完封勝利を収めると、準々決勝で昨年優勝の山梨学院(山梨)を6−1で破り、2012年以来12年ぶり2度目の4強入りを果たし、準決勝では優勝候補の星稜(石川)との接戦を逆転で制し、春夏通じて初の決勝へ。
31日は勢いそのままに2戦連続の逆転勝利で悲願の初優勝を手にしました。
際立った健大高崎、投打の総合力。
就任22年の青柳監督が「今までで選手の力は一番上」と期待したチームでしたが、始動した当初はバラバラで「みんな能力が高いのに、自分のことしか考えなかった」と箱山主将。
主将として、仲間のために泥臭いプレーを求め、大会前から「日本一」を公言し、大会中に全員で頭を五厘刈りにして一体感を高めました。
低反発バットが採用された今大会、実際に全31試合で飛び出した本塁打は、わずか3本(うち1本はランニングホームラン)。昨年の12本(35試合)から大幅に減少し、外野手の頭を越えていく豪快な打球は少なく、低反発バットの影響は、はっきり見て取れました。
そんな中で初出場の2012年、足で重圧をかける「機動破壊」を武器に4強入り。その後は甲子園の常連となった健大高崎は今大会、投手陣は左の佐藤、右の石垣の将来有望な新2年生2枚看板を軸にして、2回戦は、内野ゴロなどで4点を挙げ、適時打なしで勝利するなど、伝統の機動力の健在ぶりを発揮。
決勝は、機動力に長打力も兼ね備えた「攻撃的機動破壊」が実を結び、昨年初戦で敗れた報徳学園に雪辱し、頂点に立ちました!!
低反発バットによって変っていく高校野球。
◆ 夏の全国高校野球選手権
京都国際が春夏通じて初の全国制覇を果たす!!
"熱闘甲子園" 第106回全国高校野球選手権大会は8月23日決勝戦が行われ、京都国際(京都)が延長10回タイブレークの末に、関東一(東東京)を破って、春夏通じての初優勝を達成。
京都勢としては1956年の平安(現・龍谷大平安)以来、68年ぶりに夏の甲子園制覇となりました!!
誕生から100年の阪神甲子園球場、低反発バットが導入されてから、初めての夏。
導入直後の選抜や春の都道府県大会は、打球が飛ばなくなったことで、「野球がつまらなくなった」との声も聞きました。
しかしながら今大会、手に汗を握るシーンが何度もありました。総本塁打数は金属製バット導入後最少の7本。総得点は昨年より147点減ったものの、1点差の試合は昨夏より10多い19となり、より「1点」が重くなりました。
バットのほかに、タイブレークや投球数制限など、近年の高校野球はめまぐるしく変化しています。それでも選手たちは工夫を凝らし、順応してきました。
初優勝の京都国際は自主練習が中心。送りバントのサインでも自分の判断で強攻に出たり、選手同士で守備位置を確認しあったり。それぞれの考える力を結束し、主体性と勇敢さの先に3441チーム(3715校)の頂点が待っていました。
低半端バットにより、従来は少々の守備や走塁のミスは打撃=得点力でカバーできましたが、今後は"見えないミス"が試合を大きく左右するウェートが高まり、そこを各チームがどのように対応していくのか。
次の100年も、甲子園は進化する球児たちで彩られていくこととおもいます。
◆ プロ野球 “投高打低” の波 加速
日本プロ野球はまれに見る「投高打低」のシーズン。セ・パ両リーグの3割打者は2リーグ制以降で最少の計3人。
逆に投手は規定投球回を満たした防御率1点台が6人。
これらによりチームの得点数も大きく減少しました。
【打撃部門】
セ・リーグ
打率3割を記録したのは、タイラー・オースティン(首位打者・DeNA:打率.316)、ドミンゴ・サンタナ(ヤクルト:打率.315)の2人。3割打者2人は1973年以来リーグ51年ぶりで、日本人野手が1人も打率3割を達成できなかったのは、パ・リーグを含めても史上初。
パ・リーグ
打率3割を記録したのは、近藤健介(首位打者・ソフトバンク:打率.314)。近藤以外に規定打席数到達者で打率.300に達した選手はおらず、3割打者1人のみとなったのはパ・リーグ史上初。
よってセ・パ両リーグの3割打者は2リーグ制以降で最少を記録しました。
【投手部門】
規定投球回を満たした防御率1点台は以下の投手。
1 橋 宏斗 中日 1.38
2 菅野 智之 巨人 1.67
3 才木 浩人 阪神 1.83
4 大瀬良 大地 広島 1.86
5 モイネロ ソフトバンク 1.88
6 戸郷 翔征 巨人 1.95
規定投球回に達した防御率1点台は、直近10年では、両リーグ合わせても3人(2020年、2015年)が最多。「飛ばないボール」だった2011年、2012年は防御率1点台は計6人でしたが、今季はそれに並びました。
また、巨人の戸郷翔征、広島の大瀬良大地は今季ノーヒットノーランも達成しています(画像下)。
このように「投高打低」は明らかであり、データで見ても得点の減少はみてとれます。
◆ 1試合平均得点の推移(1950〜2024年)
2018年には1試合チーム平均4.32得点が記録されていましが、そこから年々下降を続け今季は3.28得点まで低下。
● セ1位:DeNA 522得点 最下位:中日373得点
● パ1位:ソフトバンク 607得点 最下位:西武350得点
● セ・パ合計:5639得点
● 1試合平均得点:3.286得点
これは反発係数が規定を下回る問題となった低反発球が使用された2011年の3.28点、2012年の3.26点とほぼ同等の値。それ以前にこのレベルとなると、3.18得点を記録した1956年、戦後間もない時代にまでさかのぼります。今季の1試合平均得点の少なさはNPBの2リーグ制開始以降歴代4番目であり、歴史的に見ても異常なシーズンとなりました。
◆ 横浜DeNAベイスターズ 史上最大の“下剋上” 完遂 !!
日本プロ野球の年間王者を決める「日本シリーズ2024」は、セ・リーグのDeNAベイスターズが、パ・リーグ覇者のソフトバンクホークスを4勝2敗で下し、26年ぶり3度目の日本一に。
レギュラーシーズンはリーグ3位で貯金わずか2だったDeNAが、貯金42と圧倒的な強さでパを制したソフトバンクに勝利する下剋上を成し遂げました!!
DeNAはセ・リーグのレギュラーシーズン。9月に広島が大失速 (9月1日に「14」もあった貯金は瞬く間に底をつきる)により、激しいAクラス争いが勃発。広島が10月2日のヤクルト戦に敗れたことで、3年連続Aクラスと2年連続3位が確定。
クライマックスシリーズではファーストステージで2位阪神を2連勝で下し、2018年以来6年ぶりのファイナルステージ進出、ファイナルステージで首位巨人を4勝3敗で下し、2017年以来7年ぶりの日本シリーズ出場
となりました。
◇ 日本シリーズ結果
■10月26日(土) 第1戦 DeNA 3 - 5 SB 横浜スタジアム
■10月27日(日) 第2戦 DeNA 3 - 6 SB 横浜スタジアム
■10月29日(火) 第3戦 DeNA 4 - 1 SB PayPay
■10月30日(水) 第4戦 DeNA 5 - 0 SB PayPay
■10月31日(木) 第5戦 DeNA 7 - 0 SB PayPay
■11月3日(日) 第6戦 DeNA 11 - 2 SB 横浜スタジアム
通算4勝2敗でDeNAが勝利。
■10月26日(土) 第1戦 DeNA 3 - 5 SB 横浜スタジアム
■10月27日(日) 第2戦 DeNA 3 - 6 SB 横浜スタジアム
■10月29日(火) 第3戦 DeNA 4 - 1 SB PayPay
■10月30日(水) 第4戦 DeNA 5 - 0 SB PayPay
■10月31日(木) 第5戦 DeNA 7 - 0 SB PayPay
■11月3日(日) 第6戦 DeNA 11 - 2 SB 横浜スタジアム
通算4勝2敗でDeNAが勝利。
レギュラーシーズンは71勝69敗3分。勝率・507で優勝した巨人にゲーム差8をつけられての3位。
史上最低勝率の日本一「最高にうれしいです」歓喜の横浜スタジアムで、DeNA・三浦大輔監督が夜空に5度、宙を舞いました。
名将・三原脩監督が率いた1960年、マシンガン打線が売りだった98年に次ぐ3度目の日本一。生え抜き監督の指揮官は、98年の現役時代と合わせ、選手、監督としてチームの日本一を経験しました。
今季の日本シリーズは、第5戦までDeNA、ソフトバンクともに本拠地で勝てない異例の“外弁慶シリーズ”。DeNAは本拠地で2連敗した後、敵地で3連勝。日本一に王手をかけて舞い戻った横浜で、大量11得点を奪って11―2で圧倒。ようやく手にした本拠地での白星で日本一を決めました。
歴代日本一の球団の中では、75年の阪急のシーズン勝率・520を下回る最低勝率からの頂点。07年のCS導入以降、リーグ優勝チーム以外の日本一は5度目。
短期決戦の怖さをまざまざと見せつけた勝負の分かれ目は、「シリーズ男」「指名打者(DH)」「継投策」にありました。
まずは、「シリーズ男」の存在。
ポストシーズンの短期決戦で飛躍する選手の有無は、「水物(みずもの)」といわれる打線において大きな影響を与えますが、今回はシリーズMVPにも選ばれたDeNAの桑原将志選手が、大きな存在感を示しました。
桑原選手は全6試合で1番を託され、27打数12安打で打率4割4分4厘、1本塁打、9打点の大活躍。第2戦からは日本シリーズ新記録となる5試合連続打点をマークし、第6戦は1点リードの2回2死二、三塁から2点適時打を放って、チームに勢いをもたらせました。チャンスメークに、ポイントゲッターにと打線に勢いをもたらしただけでなく、第3、5戦は守備でもダイビングキャッチの好捕で盛り上げる躍動ぶり。
「打線に厚みを出したDH制」
パの本拠地で導入される指名打者(DH)も、DeNAが味方につけ、2連敗で迎えた第3戦からの敵地3連戦は、第1戦で左足を負傷したリーグ首位打者のタイラー・オースティンをDHで起用。3、4戦は一塁に佐野恵太、左翼に筒香嘉智を置いたことで、打線に厚みが出ました。
オースティンは4戦目で先制本塁打を含む3安打、2打点と勝利に貢献。筒香は3戦目にリードを2点に広げる貴重な犠飛、5戦目も先制適時打。5戦目は、代打で好調だったマイク・フォードを「5番・一塁」で起用するなど、強打者がそろうDeNAが、DHで1枚増えた野手を有効的に活用しました。
実は、DHが使えた今季の交流戦でも、パの本拠地で行われた12試合で11勝1敗と圧倒的な強さを発揮しています。
「固定観念を取り払う臨機応変の采配」
ソフトバンク打線を封じたのが、DeNAの強固な中継ぎ陣。
シリーズ6戦の救援陣の防御率は1.29と安定し、3戦目以降は合計11イニングをいずれも無失点に抑える安定感。中川颯投手、坂本裕哉投手、伊勢大夢投手、森原康平投手らが役割をこなしまし、レギュラーシーズンの救援陣の防御率はDeNAが2.81で、ソフトバンクが2.58と大差がなかったものの、シリーズでは、ソフトバンクの救援陣が4連敗した3戦目以降に計20失点したのとは対照的な結果でした。
いずれにしても前評判の戦力差では圧倒的な差があるとされたソフトバンク相手に、臨機応変に采配を
振るう指揮官のタクトもまた、下剋上には欠かせない要因でした!!
以上 今年の日本野球界を5つのニュースで振り返ってみましたが、日本では今年いきなり能登で大震災があり、海外では争いごとによる不安定な状況が続いています。そんな哀しいニュースも流れる2024年はまもなく幕を閉じようとしています。
世界情勢の不安はまだ続きますが、2025年はポジティブなニュースが満載の年であることを真に祈っています!!
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投稿者:toocheebase|05:42|年別 総集編〜
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