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2015年11月23日

TPP対策としてのマルキン

TPPの話題が日本中を駆け巡ってから1ヶ月。
農業への対策案が徐々に出てきました。

そして肉用牛経営への対策にマルキンを
活用するとの報道が。
先日のWBSでも取り上げられました。


マルキンというのは通称で、正式名称は
「肉用牛肥育経営安定特別対策事業」
という、よくこんな名前つけたなと言いたくなる
事業です。

内容としては、平たくいうと肉用牛を肥育
している農家に補助金を渡す事業です。

普段、基金を積み立てておきます。
生産者が1、国が3の比率で、牛
1頭ずつに積み立てます。

例えば、黒毛和牛の積立金が1頭あたり
15,000円と決まっていれば、生産者は
15,000円、国は45,000円を積み立てます。

どのタイミングで積み立てるのか、という
のは月齢で決まっています。


そしてその牛が販売され、と畜された後
補てん金というものが農家に支払われます。
何の補てんかというと、その牛を飼うことで
赤字になった分の補てんです。

その計算としては、その牛が売れた月の
市場取引価格などを参考に収入を設定し、
その牛を買って来た時の牛の価格(和牛なら
20数ヶ月くらい前の素牛取引価格を使います。)
や、その牛にかかったエサ代や労賃、資材費
を支出とし、収入−支出を計算します。

そして、収入−支出が赤字なら、その差額の
8割を、先ほどの積立から補てんしますよ、
というのがこの事業になります。

もちろん、それぞれの牛に実際にかかった
エサ代とかコストなんてわかるわけないので、
農水省がおこなっている統計などの数値を
使います。



今回、このマルキンを対策として使うとのことで、
制度の法制化、および補てん割合を8割から9割に
すると報道されています。

この事業は3年に1度見直しをしていましたが、
法制化するとなれば、法律がある限りは恒久的な
対策となるのでしょう(かな?)

そして9割補てん、というのも農家にとっては
結構大きな対策になるでしょう。


ただ、このマルキン制度には問題があります。
(と私は思っています。)

一つには、牛の購入価格を決定する
タイミングの問題です。

近年の肥育農家はどこも苦しいのが
現状です。
牛の売値は上がっていますが、
仕入れる値段も上がっています。

さきほど、支出の計算の際に、
その牛を買ってきた時点の購入価格を
使う、と書きました。

実はこの仕組みのために、最近は
ほとんど補てん金が出ていないのが
現状なのです。

今の状況で補てん金を計算すると、
交雑種と乳用種ではぎりぎり補てん金が
出るか出ないかになります。

ただし、最近の牛の購入価格は、
計算に使用している金額よりも
かなり高い。

ある1頭の牛に対し儲かったかどうかで
議論するなら、今の計算方式でよいと
思います。
しかし、農家は今牛を売り、今買うんです。

なので、牛が高く売れても、仕入れた牛の
代金の支払に苦しむ農家がたくさん出てくる
ことになります。
今仕入れた牛が売れる頃には補てん金が
出るのかもしれませんが、その10数ヶ月が、
もう資金的に耐えられないのです。


次の問題点としては、その計算方式に
あると思います。

収入として使用する数値は取引価格なので
わかりやすいですが、支出のもととなる
数値は、牛の購入価格以外は統計値を
もとにしているはずです。

となると、統計の取り方により、支出の計算が
変わってくることになります。

例えば、支出の一部は農林水産省の
「畜産物生産費」調査の結果を利用して
います。

この調査は抽出調査です。
農家全件を調査するのではなく、
一部の農家を抽出して調査します。

なので、調査先の影響を強く受けてしまう
数値になる恐れがあります。

あえて「恐れがある」という表現にしたのは、
統計というのは理想上、一部を抽出することで
全体を表現する数値になっているはずだからです。

ただ、実際に調査に行く先は、調査に
快く協力してくれる農家だ、なんて話も
聞いたことがあります(真偽はわかりません)。
調査に協力的な農家というのは、大抵
余裕があり、優秀な方が多いです。

もしそうだとすると、統計調査より算出された
コストは、全農家の平均よりも低くなる
恐れもある、と考えています。


もう一つ問題点としては、所得補償に
なっている点です。

これにはいろんな議論があると思います。
所得を補償されることで農家の自助努力の
意識が生まれない、とする意見。
あるいは、8割しか補てんされないって
ことは生活できないってことじゃないか、
という意見。

これらに対して、簡潔な答えはできませんが、
私なりに回答するとこうなります。

まず、補てん金の計算は、あくまで全体の
数値を使うということです。個別の数値を
使うわけではありません。

ですから、自分の生産した牛肉を
ブランド化して、市場取引価格より
高く売っている人は、儲かっているのに
補てん金が出る、という状況もあり得ます。

また自分の農場で母牛を持ち、子牛を産ませ、
それを肥育して売っている人は、子牛を
市場で買ってくる人よりも安く子牛を
用意できるでしょう。

なので、補てん金の計算に個別の数値を
使わない以上、実は努力次第で儲かる
仕組みになっている、とも言えます。

一方で、みんなが努力して生産効率を
上げてしまうと、またしても補てん金が
出なくなります。

このあたり、所得補償制度のジレンマ、
と言えるかと思います。
この問題は、肉用牛に限らず、様々な
農産物で言えることかな、と思います。
補助金が有効に活用されているのか、
という問題にもつながると思います。


生産性を上げることを狙うなら、所得の
計算によらず1頭いくら、という補助金の
付け方が良いのでしょう。

ただしこうすると、生産効率の悪い
農家は潰れます。
これをよしとするかどうか、となります。



今回のTPPによって、一番打撃を受けるのは
牛肉生産者だと思います。

その対策としてマルキンを使うのは良いと思います。
というより、マルキンしか使いようはないでしょう。

マルキン制度は肥育農家のほぼ全てが加入
していますので、補助金を渡す仕組みが
確立しています。
これを使わない手はありません。

ただ、補てん金は増えるのに対し、その積立金の
国の財源である関税収入は減るでしょうから、
それをどう補うかは大変重要な課題になります。


そして、このような制度を国民がどう考えるのか。
これまでもこの仕組みはあったとはいえ、
国民の大半は知らなかったはずです。

こうしてニュースになり大きく取り上げられて、
国民はどのように考えるのか。
今後の動きがとても気になっています。


本来の理想としては、高くても国産牛を選んで
買ってもらえること。
それに尽きますし、国産牛の方が輸入牛肉より
旨いものが多いと確信していますが、
ただこの価格差を埋められるほど買いたいという
人がどれくらい出てきてくれるのか。

正直なところ、牛肉に差別化を図る、というのは
結構難しいです。牛にこういうものを食べさせて
います、だから美味しいですよ、と言われても、
買う時点で消費者はその判断ができません。

一度食べてみてファンになってもらえればいい
でしょうが、その一歩がなかなか難しい。

大手スーパーと組んでブランド化すれば、
消費者の目にもつくでしょうが、それが
必ずしも生産者にプラスになるとは限りません。
大手ほど安定した仕入れを求めてきますから、
その頭数の牛を確保するということは
意外と大変です。
そして、スーパーの方が価格交渉力が
強いために買いたたきが起こるリスクもある。

国産は安全安心とウリにするのもいいが、
輸入肉が危険だというものでもないし、
消費者がその安全性を判断するのはほぼ不可能。

となると差別化が図れるポイントは味と価格ぐらいに
なってしまいますが、味より価格の方が購入への
影響度は大きいでしょう。

もっと安く牛肉が作れるといいんですけどね。
そもそもなぜ輸入肉があの値段で作れるのかが
私には不思議です。
日本で物を作るとどうしてこんなに高くなって
しまうんですかね。
そんなに無駄があるわけでもないんだけど…。
posted by とば吉 at 00:50 | TrackBack(0) | 農業の話題
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