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2018年03月31日

刑法ポイント

クレカ詐欺
・他人名義のカード使用と自己名義のカード使用で論点が異なる。
(1)他人名義
欺罔行為は名義の偽りかシステムにより決済される状況の偽りか
 クレジットカードは名義人への個別的信用を基礎とした決済の仕組みだから、名義の偽りが欺罔行為に当たると解する。
(2)自己名義
被害者は加盟店かカード会社か
 Xの行為に詐欺罪が成立するか。詐欺罪は個別財産に対する犯罪だから交付自体が財産上の損害となる。そのため、加盟店を被害者とする1項詐欺罪の成否を検討する(246条1項)。

重過失致死罪(211条後段)
・死んでいると誤信して死体遺棄(190条)の故意で殺した場合
※死体遺棄罪の否定(抽象的事実の錯誤)⇒重過失致死罪の成立の流れになる

権利行使と恐喝
・すべての要件の検討が終わった後に違法性阻却(35条)の有無の枠組みで検討する。「恐喝」の要件の問題ではない。
 違法性の本質は社会的相当性を逸脱した法益侵害と考えるから、@権利の範囲内であり、A権利行使方法が社会通念上一般に認容すべきものと認められる程度を超えない場合には、違法性が阻却される。

過失
 過失とは、一般人を基準とした予見可能性・結果回避可能性を前提とした結果回避義務違反であると解する。

逮捕と監禁
 逮捕罪及び監禁罪が成立し、これらは包括して逮捕・監禁罪となる。

間接正犯
・@正犯意思とA道具のように支配利用を認定する。

加害目的略取罪(225条)
・暴行脅迫を手段とするのが略取、欺罔誘惑を手段とするのが誘拐
・「略取」「誘拐」とは、人をその生活環境から離脱させ、自己または第三者の実力支配下に移すこと
・連れ去りなど、逮捕・監禁罪(220条)と同時に行われることが多い。観念的競合にする場合が多い(54条1項前段)。

共同正犯と単独犯が混ざっている場合の書き方
第1 甲の罪責
1 甲及び乙が○○した行為に××罪の共同正犯の成否を検討する。

2 ○○した行為に××罪の成否を検討する。


事後強盗殺人未遂罪(243条、240条後段、238条

強制的に姦通ないしわいせつ行為をして故意で殺した場合
強制わいせつ殺人罪、強姦殺人罪、集団強姦殺人罪は存在しない!
強姦(強制わいせつ)致死罪と殺人(未遂)罪の観念的競合⇦死の二重評価という批判あり

強制的に姦通ないしわいせつ行為をして故意で傷害した場合
強姦(強制わいせつ)致傷罪一罪とすべきである。なぜなら、強姦(強制わいせつ)罪と傷害罪の観念的競合では、法定刑の下限が強姦(強制わいせつ)致傷罪よりも軽くなり妥当でないからである。

中止犯
・実行共同正犯が中止未遂となる場合、中止犯の根拠は責任減少でもあるから、中止犯の効果は共謀共同正犯に及ばない。
・43条但書の趣旨は、未遂の段階まで至った行為者に後戻りの機会を与えることにより結果惹起防止を図ることであり、違法減少と責任減少が必要的減免の根拠である。要件は@「中止」行為、A任意性(「自己の意思により」)である。@は実行中止の場合は結果発生防止に向けた真摯な努力が必要である。
↑これは実際には書けないので以下のようになる。

3 さらに中止未遂(43条但書)が成立し、違法・責任減少のため刑が必要的に減免されるか。
(1)中止行為
 〇〇という行為は結果惹起に向けた真摯な努力といえるから「中止した」といえる。
(2)任意性
 〇〇という事情は経験上一般に犯行の障害とならないから、「自己の意思により」といえる。

共謀共同正犯と実行共同正犯の書き分け
・共謀共同正犯は実行者の犯罪をまず認定して(「甲の罪責 〇〇の行為に〇〇罪の共同正犯(←共同正犯と決め打ちしてよい。)の成否を検討する。」)、共謀者は後から共謀共同正犯の成否のみを論じる(「乙の罪責 前述の行為について〇〇罪の共同正犯の成否を検討する。」)。
・両方実行行為者である実行共同正犯の場合は「甲及び乙の罪責」で論じてもいける。

中立的行為と幇助犯
 幇助犯は、他人の犯罪を容易ならしめる行為を、それと認識認容しつつ行い、実際に正犯行為が行われることによって成立する。
 ソフトの使い道は利用者が決めることであること、及びソフト開発に伴う委縮効果を防ぐべきことから、ソフト提供者に幇助犯が成立するのは、ソフト利用者のうち例外的とは言えない範囲の者が当該ソフトを正犯行為に利用する蓋然性がある場合で、それを認識しつつ提供した場合に限られると解する。

幇助の故意
 幇助とは、正犯に物理的心理的因果性を与えて実行行為遂行と結果惹起を促進することであり、幇助犯が成立するには実行行為遂行のみならず結果惹起の認識認容が必要である。

正当防衛状況
2 正当防衛(36条1項)が成立するか。
(1)「急迫不正の侵害」
(2)「自己または他人の権利」「防衛するため」
(3)「やむを得ずにした」
(4)正当防衛状況の有無
 @先行行為の不正性、A侵害行為の時間的場所的近接性、B侵害行為の程度が先行行為を大きく超えるなどの特段の事情がないことの要件を満たす場合には、法確証の利益があるとはいえないから、正当防衛状況になく正当防衛は成立しないと解する。
 本件では、…

放火罪の建造物、住居
・「建造物」とは、家屋その他これに類似する建築物をいい、屋根があり、壁又は柱で支持されて土地に定着し、少なくともその内部に人が出入りすることができるものをいう。
・「住居」とは、人の起臥寝食の場所として日常使用される建造物をいう。

延焼罪(111条)
・自己所有物に対する放火罪の結果的加重犯だから、認定するときは109条(110条)2項の罪の成立を認定し、そのあとで111条の成否を検討する。そして、延焼罪成立の場合は、延焼罪が結果的加重犯だから、延焼罪のみが成立する。

109条2項
・本人の依頼を受けて放火したなら自己所有(2項)で検討してよい。
1 自己所有非現住建造物放火罪(109条2項)が成立するか。
(1)非現住性、非現在性
(2)「放火」
(3)「焼損」
(4)「自己の所有に係る」
(5)「公共の危険」

放火罪の条文操作
・建造物の一体性が延焼罪の検討の際に問題になることがある。

犯人隠避罪(103条)
・「蔵匿」とは官憲の発見・逮捕を免れるべき蔵匿場を供給して匿うこと
・「隠避」とは、蔵匿以外の方法により官憲の発見・逮捕を免れさせる一切の行為


脅迫罪・強要罪(222、223)
・強要罪の保護法益は意思決定意思活動の自由である。
・脅迫罪の保護法益について、強要罪と同様に意思決定意思活動の自由と解する見解と、私生活の平穏・安全感と解する見解がある。後説は特定の決意・行動を左右することが要件とされていないことから主張される。

名誉棄損罪
・公然とは、不特定又は多数人が認識しうる状態をいう。

財物窃取後の暴行・脅迫 s61.11.18百選U39
暴行脅迫が財物奪取の手段になっていないから「強取」といえず、1項強盗は成立しない。
窃盗罪と2項強盗罪が成立し、両者は包括一罪となり、重い2項強盗罪で処断される。

不法原因給付と詐欺(被害者の交付行為が不法原因給付に当たる場合)
交付する物・利益には何らの不法性も存在しないから、詐欺罪が成立すると解する。(争いは少ない)

不法原因給付と横領
 不法原因給付物は、給付者に民法上の返還請求権がないから、委託物横領罪は成立しない。
 もっとも、不法原因寄託物の場合は、給付者のもとに所有権が残り、給付者は所有権に基づく返還請求ができるから、受寄者が不法に処分する行為には委託物横領罪が成立する。

適正給付と詐欺 百選49
 請負人が本来受領する権利を有する請負代金を欺罔手段を用いて不当に早く受領した場合には、その代金全額について246条1項の詐欺罪が成立することがあるが、本来受領する権利を有する請負代金を不当に早く受領したことをもって詐欺罪が成立するというためには、欺罔手段を用いなかった場合に得られたであろう請負代金の支払とは社会通念上別個の支払に当たると言いうる程度の期間支払時期を早めたものであることを要する

背任共同正犯
 融資担当者による融資が背任罪を構成するとき、借り手はどのような要件があれば共同正犯になるのか。
@融資担当者の任務違背と銀行の財産上の損害について高度の認識を有していること(客観面に対する高度の認識)
A融資担当者が図利加害目的を有していることを認識し、本件融資に応じざるを得ない状況にあることを利用しつつ本件融資の実現に加担していること(主観面の利用)

電子計算機使用詐欺 246条の2
 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する。

前段(作成型)
架空入金データを入力したりプログラムを改変することにより自己の預金口座に不実の入金・債務免脱を行わせる場合(窃取したカードで自己口座に振替=銀行の元帳ファイルに不正な指令→財産上不法の利益)

後段(供用型)
偽造したプリペイドカードを使用して有償のサービスを取得する場合

・財産権の得喪若しくは変更に係る電磁的記録とは、その作出により直接得喪変更が生じるものをいう。ex)銀行の顧客元帳ファイルの預金残高記録、プリペイドカードの残度数
※キャッシュカードの磁気記録は含まない

公務執行妨害罪
公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は...

1 執行官に向かって石を投げつけた行為に公務執行妨害罪が成立するか(95条1項)。
(1)「公務員」
 〇〇は法令により公務に従事する職員(7条1項参照)であるから「公務員」に当たる。
(2)「職務を執行するにあたり」
ア 職務は権力的なものに限らないから〇〇も職務に当たる。
イ 〇〇は職務と時間的に接着しているからなお「執行するに当たり」に該当する。
ウ 明文はないが、公務執行妨害罪の保護法益は公務員の職務であるから、職務の適法性が要件となる。適法といえるためには@抽象的職務権限に属し、A具体的職務権限に属し、B重要な方式を履践していることが必要である。適法か否かは行為時の事情を前提として客観的に判断する。

・Aに関して地方議会議長の議事運営措置が会議規則に違反していても、具体的事実関係の下で刑法上は暴行等による妨害から保護するに値する職務行為と認められるときはこれを満たす。
・Bに関して検査証をたまたま携帯していなくてもこれを満たす。

エ 適法性の錯誤は違法性を基礎づける事実の錯誤と単なる法律の錯誤を区別し、前者の場合のみが事実の錯誤となって故意を阻却する。
(3)暴行・脅迫
 人に対するものである必要はなく、人に向けられた物理力行使で足り、間接暴行も含む。








































































posted by izanagi0420new at 15:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法

2017年04月19日

刑法 平成19年度第2問

第1 甲の罪責
1 Xに対して噓を言って事故現場に急行させた行為に偽計業務妨害罪(233条)の成否を検討する。
(1) Xをその場から移動させるために嘘を言った行為は、Xを欺罔する行為だから「偽
計」に当たる。
(2)「業務」(233条)とは社会生活上の地位に基づき継続して行うものをいうところ、警察官のような公務もこれに当たるかが問題となる。なぜなら、公務執行妨害罪(95条1項)は、公務を暴行・脅迫に対してのみ保護しているとも考えられるからである。この問題については、強制力を行使する権力的公務は偽計や威力に対する自力排除力があるから「業務」として保護する必要はない。したがって、強制力を行使する権力的公務以外が「業務」に当たると解する。
 本件の警察官は強制力を行使する権力的公務に当たるから、「業務」には含まれない。
(3)したがって、偽計業務妨害罪は成立しない。
2 Xの制帽と業務日誌を持ち出した行為に窃盗罪(235条)の成否を検討する。
(1) 制帽も業務日誌もXが所有権を有する有体物だから「他人の財物」に当たる。
(2) 「窃取」とは意思に反する占有の移転を言うところ、Xはその場にいないが、制帽
も業務日誌も交番というXの支配領域内にあるから、Xに占有が認められる。そしてそれらを甲の自宅に持ち帰る行為は占有の移転に当たるから、「窃取」の要件を満たす。
(3) 窃盗罪が成立するためには、以上の故意(犯罪事実の認識・予見、38条1項本文
のほかに不法領得の意思が必要と解する。その内容は、使用窃盗との区別のための所有者として振舞う意思と、毀棄罪との区別のための経済的利用処分意思と解する。
 甲は、翌日まで自宅に隠した後で返還するつもりがあるから、経済的利用処分意思がない。
(4) したがって、不法領得の意思を欠き、窃盗罪は成立しない。
(5) もっとも、制帽を隠す行為は制帽の効用を害する行為だから「損壊」(261条)にあた
り、器物損壊罪が成立する。また、業務日誌は交番という「公務所」(7条)が使用する文書だから「公務所の用に供する文書」(258条)に当たり、隠す行為は効用を害する行為だから「毀棄」(258条)にあたるため、同行為に公用文書毀棄罪が成立する。
3 制帽をXに返すのをやめ、後に売るために保管した行為は、不法領得の意思が発現しているから占有離脱物横領罪(254条)が成立する。
4 罪数
 甲には@制帽の器物損壊罪、A制帽の占有離脱物横領罪、B業務日誌の公用文書毀棄罪が成立し、@Aは併合罪(45条)、@とBは一つの行為として行われたから観念的競合(54条1項前段)である。
第2 乙の罪責
1 甲に対し、制帽を売ることを唆した行為に占有離脱物横領罪の教唆犯が成立する(254条、61条1項)。
2 本件業務日誌を交番まで運んだ行為に盗品運搬罪(256条2項)の成否を検討する。
(1) 本件業務日誌を領得した行為には公文書毀棄罪が成立しているから、本件業務日誌
は「財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」(256条1項)に当たる。
(2) 被害者のもとに運ぶ行為も「運搬」に当たるのかについて、盗品運搬罪の保護法益
は被害者が財物に対して有する追求権であり、犯人の利益のために被害者のもとへ運ぶ行為は被害者の正常な回復を困難にして追求権を侵害しているため、「運搬」に当たると解する。
 本件では、乙は犯人甲に頼まれて運んでいるから、犯人の利益のために被害者のもとへ運んでいると言える。
(3) したがって、「運搬」に当たり、盗品運搬罪が成立する。
3 Xに対し業務日誌と引き換えに10万円を要求して領得できなかった行為に恐喝未遂罪(250条、249条1項)が成立する。
4 罪数
 乙には@占有離脱物横領罪の教唆犯、A盗品運搬罪、B恐喝未遂罪が成立し、それぞれ併合罪である。    以上
posted by izanagi0420new at 20:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法

2017年04月09日

刑法 予備試験平成28年度

回答
1 保険会社に対して自作自演の放火により保険金請求しようとして請求しなかった点に詐欺未遂罪の共同正犯(60条、250条、246条1項)の成否を検討するに、詐欺罪は保険金の請求の時点で保険会社の財産の詐取に対する現実的危険が生じるため実行の着手時期は保険金請求時と解すべきところ、甲及び乙は請求していないので、未遂にすらならない。したがって、詐欺未遂罪は成立しない。
2 甲宅及び乙宅を放火した点について、放火罪の共同正犯(60条、108条ないし109条)の成否を検討する。
(1) 甲宅内にX発火装置を置き、9月8日午後9時に発火するように設定した行為について
ア 「放火」と言えるか。放火罪の実行着手時点は「放火」したときであるが、実行の着手というのは法益侵害の現実的危険性を惹起した時点で認められるところ、108条の保護法益は公共の危険であり、そうするとX発火装置のような時限装置を一定時間後に発火するようにセットした時点で公共の危険に対する現実的危険性が惹起されたと言えるから、「放火」と言えると解する。
イ 「焼損」と言えるか。放火罪の保護法益は公共の危険であり、火が独立して燃焼するに至れば公共の危険は発生するから、「焼損」すなわち放火罪の既遂時期は火が独立して燃焼するに至った時点と解する。本件では、X発火装置から出た火は甲宅の木製の床板に燃え移ったから、独立燃焼するに至っている。したがって、「焼損」と言える。
ウ 甲と乙は、甲宅内にBがいることに気づいていないから、108条の故意(38条1項、犯罪事実の認識・予見)があるか問題となる。108条が109条よりも重い刑を定めているのは犯人以外の者の生命に対する危険を特に保護しているためと解されるから、「人」とは犯人以外のものを指す。甲宅は甲が一人で住んでいたのだから現住性はない。しかし、放火当時、甲宅にはBがいたのであるから、「現に人がいる」(現在性)と言える。しかし、甲及び乙は、いずれも甲宅には甲しか住んでおらず、放火の際に人はいないと認識していたのだから、現住性・現在性いずれの認識もない。そのため、甲及び乙には108条の故意がない。
 異なる構成要件間の錯誤の場合は、構成要件が実質的に重なり合う範囲で軽い犯罪が成立すると解されている。108条と109条は構成要件が形式的にも実質的にも重なり合っているから、軽い109条の放火罪が成立する。
エ 甲宅は、甲にとっては自己所有物(109条2項)であり、乙にとっては他人所有物(109条1項)であるところ、乙については109条1項の共同正犯が成立する。甲について、共同正犯は二人以上が共同して特定の犯罪を実現する場合に単独犯の構成要件を拡張したものであるところ、構成要件が重なり合う範囲で軽い共同正犯が成立すると解するから、甲には109条2項の共同正犯が成立する。
(2) 乙物置にY発火装置を置き、9月8日午後9時30分に発火するように設定した行為について
ア 乙建物は、たしかに現在Aがいないが、乙の内妻Aが起臥寝食に使用しているので現住性がある。そのため、甲乙両者にとって108条の建造物に当たる。
イ 「放火」と言えるかについて、建造物放火罪の公共の危険は建造物そのものに対して放火されなくても建造物と物理的一体となっている延焼可能性のあるものに放火されれば発生するところ、乙物置は乙宅とは屋根付きの長さ約3メートルの木造の渡り廊下でつながっている木造の小屋だから、乙宅と物理的一体となっている延焼可能性のあるものに当たる。そのため、乙物置に対する放火は建造物放火罪の「放火」に当たる。
ウ 「焼損」と言えるかについて、本件で独立燃焼したのはY発火装置と段ボール箱及び同は庫内の洋服の一部のみであって、乙物置自体は独立燃焼するに至っていないから、「焼損」とは言えず、未遂罪(112条)が成立するにとどまる。
エ 乙は発火時刻頃に翻意して消火活動を行ったから、共犯からの離脱が認められないか。共同正犯を含む共犯の処罰根拠は特定の構成要件的結果に因果性を及ぼすことにあるから、物理的因果性及び心理的因果性の双方を除去した場合に共犯からの離脱が認められると解する。本件では、乙は消火活動をして結果ジャッキの物理的因果性を除去したが、甲に対して何ら連絡を取っておらず心理的因果性を除去していないから、共犯からの離脱は認められない。
オ では、乙の消火活動が中止未遂となって犯罪が必要的に減免されないか(43条但書)。中止未遂の趣旨は未遂の段階にまで至った行為者に刑の必要的減免という特別の効果を与えることによって結果惹起防止を最後まで図ることである。要件は@「自己の意思により」、A「犯罪を中止した」(意識的危険消滅)であり、違法減少を前提とした責任減少が根拠と解する。@は行為者の認識した事情が経験上一般に犯罪の障害となるようなものか否かを基準として判断し、Aは実行中止の場合には危険消滅のための「真摯な努力」をしたか否かを判断すべきと解する。本件では、乙は「Aには迷惑を掛けたくない」こと及び「近所にも迷惑を掛けたくない」ことを認識しており、これは経験上一般に犯罪の障害とはならないから@を満たす。また、消火活動を最期まで遂げて危険を消滅させているので、Aも満たす。したがって、乙には43条但書が適用される。
3 甲宅に侵入した行為について、乙は甲の黙示の同意を得ていると解されるから住居侵入罪(130条)は成立しない。乙宅に侵入した甲は、Aの同意を得ていないから住居侵入罪が成立する(130条)。
4 罪数
 前提として、甲宅と乙宅は直線距離で2キロメートルという遠い距離があるから、それぞれに対する放火は別々の公共の危険を発生させるとみるべきである。そうすると、すでに検討したように、甲には@甲宅の放火について109条2項の共同正犯、A乙宅への侵入について住居侵入罪の単独犯(130条)。B乙宅の放火について115条・108条の共同正犯が成立し、AとBは牽連犯(54条1項後段)となり、@とBは併合罪(45条)となる。乙には、甲宅の放火について109条1項の共同正犯、乙宅の放火について115条・108条の共同正犯が成立し、後者については45条但書が適用されて刑が必要的に減免される。両者は併合罪となる。                              以上

posted by izanagi0420new at 23:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法

2016年02月07日

刑法事実認定

☆不真正不作為犯
 ○○という不作為が「殺した」(199条)すなわち殺人罪の実行行為といえるか。不作為であっても構成要件を実現することはできるから実行行為になるが、処罰範囲の限定のため、作為犯との構成要件的同価値性が必要であり、その要件は@法的作為義務の存在、A作為の可能性・容易性である。@の有無は㋐危険創出、㋑社会継続的保護関係、㋒排他的支配に着目して判断する。
B「㋐は先行行為っていうのが一般的じゃない?」
A「まあここは佐伯説を採用したわ。」
B「案外適当だね。」
A「オリジナリティーを出さないと馬鹿馬鹿しくてやってられないわ。それに先行行為って言おうが危険創出って言おうがそんな変わりないわよ。」

☆因果関係
 「よって」といえるか。因果関係は行為の危険が結果に現実化したかの法的判断であるから、@死因が実行行為から生じた場合には肯定される。A死因が介在事情から生じた場合には、実行行為が介在事情を生じさせる可能性があれば、実行行為の危険性が介在事情を通じて結果に現実化したと評価できるから、因果関係を肯定すべきと解する。
A「危険の現実化説だけど、これを書く前に相当因果関係説を批判するかどうかは時間と相談して決めればいいわ。」
B「新庄さんの本では@Xの行為の危険性、A介在事情の結果発生への寄与度、BXの行為の介在事情への影響(介在事情の異常性、経験的通常性)とあるよ。」
A「よーく見比べてみて。それって危険の現実化説と同じだわ。危険の現実化説は東大の先生たちが判例を分析して作った説だから、実務と一致してるのよきっと。」

☆過失犯
1 ○○によってYを死亡させた行為に業務上過失致死罪(211条)の成否を検討する。
(1)「業務」とは、社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であって、他人の生命身体等に危害を加えるおそれのあるものをいう。××という行為はこれに当たる。
(2)「必要な注意を怠り」とは、過失犯における責任要件であり、構成要件該当事実の認識・予見可能性とする見解(旧過失論)や、違法要素としての基準行為からの逸脱とする見解(新過失論)があるが、端的に注意義務違反と解する。その内容は@過失行為、A結果回避義務、B結果回避可能性、C結果予見可能性である。Cはある程度抽象化された結果の認識と因果関係の基本的部分の予見可能性の有無を一般人の視点から判断する.
A「こんなの出てほしくないわ。難しいもの。」
B「新庄さんの本さまさまだね。『定義・趣旨ハンドブック』ではまとめ方が若干違うけど。」
A「同じ出版社なんだから統一してほしいわね。」

☆被害者の承諾
 身体という法益は放棄可能だから、被害者の承諾が傷害(致死)罪の違法性を阻却する場合がある。そのためには承諾が有効であり、承諾に基づく行為が社会的に相当でなければならない。
 まず、承諾の有効性については、真意に沿わない重大な瑕疵があることが明らかな場合は、無効である。本件では、……。
次に、承諾が社会通念上相当である場合のみ違法性が阻却される。社会的相当性の判断は@承諾を得た動機・目的、A侵害行為の手段・方法、B損傷の部位・程度等を考慮して決める。
B「これは新庄さんの本にはないね。」
A「ないけど、判例がわざわざ考慮要素を言ってくれてるから、試験問題として配点を振らざるを得ないと思うわ。」
B「社会的相当性って嫌いだけどね。生命に危険のある行為は承諾できないと解したほうがいいと思うけど。」

☆防衛の意思
 「防衛するため」の文言から防衛の意思が必要であるが、その内容は急迫不正の侵害を認識しつつこれを避けようとする単純な心理状態で足りると解する。攻撃意思と併存していてもいいが、もっぱら攻撃意思しかない場合は防衛の意思が欠ける、具体的には@行為者と相手方の関係、A侵害の態様・程度、B防衛行為者の選択肢、C防衛行為の態様・強度、D防衛行為者の言動・主観を考慮する。
B「正当防衛は急迫性の認定はとばすのかい?」
A「だってあんまり出そうにないし、覚えるところがないもの。」
B「まあそうかな。」
A「この防衛の意思は今年あたりどうかしらね?あんまり聞かれた記憶がないから。」

☆防衛行為の相当性
 「やむを得ずにした行為」とは防衛行為の相当性を意味し、これは必要性も含んだ概念であるが、補充性は不要である。その判断は@武器の対等性、A身体的条件、B加害行為の態様、C防衛行為の性質、D代替手段の有無、E法益の比較で判断する。
A「これはよく出るわね。飽き飽きだわ。」
B「考慮する事項の幅が広いからね。@〜Eそれぞれのオリジナリティーの強さを見てよ。」
A「最後の法益の比較ってのは気を付けないと採点者に挙げ足を取られるわね。法益の均衡が要件として必要だと思ってるような書き方をすると大原点だわ。」
B「そこは注意しないとね。」

☆中止未遂
 中止犯の趣旨は、未遂の段階にまで至った行為者に、刑の必要的減免という特別の法的効果を与えることによって、結果惹起防止を最後まで図ることである。要件は、@「自己の意思により」、A「犯罪を中止した」(意識的危険消滅)であり、違法減少を前提とした責任減少が刑の必要的減免の根拠と解される。@は行為者の認識した事情が経験上一般に犯罪の障害となるようなものか否かを基準とし、具体的には㋐外部的事情、㋑犯行継続の難易、㋒行為者の計画、㋓犯意の強弱、㋔中止行為の態様、㋕反省の情を考慮する。Aは客観的要件として危険消滅と条件関係が必要であり、実行中止の場合は「真摯な努力」をしたか否かが危険消滅の判断を左右する。
A「この論点は最近の判例がないから出題されないと思うわ。」
B「まあなんとなく覚えておこう。今回は山口色が強いね。」

☆間接正犯
 Aに治療薬を投与させXを死亡させた行為に殺人罪の間接正犯の成否を検討する(199条)。
(1)甲には外形的に自手実行がない。自手実行がないものに処罰拡張類型としての共犯でなく正犯が成立するか、成立するとしていかなる場合か、間接正犯の成否と要件が問題となる。
 実行行為を行う被利用者に実行行為をやめる規範的な可能性があった場合には間接正犯は成立せず狭義の共犯となるという見解がある(規範的障害説)。この見解によれば本件はAには自らXの特異体質の有無を確認すべき注意義務という規範的障害があるから、甲が正犯となることはない。
 しかし規範的障害説は純粋惹起説を前提としており、正犯なき共犯を認める結果となる点で判例も採用する因果的共犯論と両立しがたく、妥当でない。間接正犯の成立要件は非利用者の行為を道具のごとく支配していたことと解すべきである。支配性の判断は@人的関係、A働きかけの程度、B指示の内容、C介在者の事情、D利益の帰属を考慮して決める。
B「これは旧試平成18年度第1問かな?規範的障害説なんて書かなくていいよね?」
A「まあ、時間との相談ね。」

☆共謀共同正犯
 甲は実行行為を行っていないから、共謀共同正犯の成否が問題となる。特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、各自位の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よって犯罪を実行した場合には、共謀共同正犯が成立する(練馬事件判決)。要件は@共謀(意思連絡、正犯意思)、A共謀に基づく実行行為である。意思連絡を認定するためには㋐被告人と実行行為者の認識、㋑実行行為者の犯行態様、㋒被告人と実行行為者との関係、㋓経緯、動機を考慮する。正犯意思を認定するためには、㋕動機、㋖人的関係、㋗共謀者の関与態様(意思形成過程における積極性)、㋘共謀者の役割、㋙犯行前後の行為状況、㋚犯罪の性質・内容を考慮する。
B「これもまあ頻出だよね。」
A「意思連絡で考慮する要素と正犯意思で考慮する要素はかぶるわ。どうするのかしら?」
B「愚直に書くんじゃない?」
A「まさか。事実を書いて「これは意思連絡と正犯意思を基礎づける」って書けばいいんじゃないかしら?」

☆共犯からの離脱
A「これは物理的因果性と心理的因果性の両面から検討ね。離脱の意思表明と了承は副次的に考慮されるにすぎません。」
B「まあそういうことでいいだろうね。」

☆殺意
 殺人罪の故意(構成要件的結果発生の認識・予見、38条1項)が認められるか。殺意の有無は@凶器の種類、A凶器の用法、B創傷の部位、C創傷の程度、D動機の有無、E犯行前後の行動を考慮して決める。
B「刃物が何センチですとかいう記述が問題文にあったらこれを書く合図だね。」
A「もはや『合言葉は?』って聞かれてるのと同レベルね。」
B「ひらけごま。」
A「はい違います。」
B「うそぉ。」

☆同時傷害(207)
207条の適用により強盗致死罪の共同正犯としうるか。
 207条は2人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において、それぞれの暴行と傷害結果との因果関係を証明できずに傷害結果を誰にも帰責できない不都合を避けるため、因果関係の立証責任を転換した規定である。この趣旨は致死の結果を帰責できない場合にも当てはまるから、207条は傷害致死罪にも適用されると解する。
 また、承継的共犯を否定した場合になお本条を適用してよいかも問題となる。少なくとも乙が致死の結果に責任を負う以上、適用の必要はないという見解もある。しかし、意思の連絡がない場合には当然207条が適用されることとの均衡上、適用すべきである。
 要件は、@各行為者の暴行が死の結果を生じさせ得ること、Aいずれかの暴行により結果が発生したこと、B暴行が同一機会に行われたことと解する。Bは㋐時間的場所的近接性、㋑暴行の経緯、㋒行為者の人的関係を考慮して決める。

B「これはこのブログの中でもなぜかアクセス数が段違いに多い平成17年度第1問をコピペして、ちょっと付け足したんだね。」
A「特定の人が平成17年度第1問をやたら見てくれてるのよね。そんな面白いかしら?」
B「でもこの論点も今年来年あたりそろそろまた来そうだなあ。」
A「これって来るとしたら事案がかなり絞られちゃうからそんなに頻繁には出せない問題よね。まあ出したいだろうけど。」

☆窃盗罪の占有
ア 「他人の財物」について・・・これを満たす。
イ 「窃取」とは占有を移転させることである。刑法の占有は財物に対する事実的支配であり、「自己のためにする意思」(民180条)は不要である反面、代理占有や間接占有(民181条)は含まない。
占有の有無は占有の事実と補充的に占有の意思から判断する。具体的には@時間的場所的近接性、A置き忘れた場所の見通し状況、B置き忘れた場所の状況、C被害者の認識・行動を考慮する。
本件では、@事故現場は『そこの道』であるから、Xはそれほど遠くに行っておらず、数分で戻ってくると思われる。また、A置き忘れた場所は交番内なので被害者からは見えにくく、この点はXの占有を否定する事実となりうるが、B置き忘れた場所がXの支配領域内である交番内であるし、C被害者は職務遂行のため事故現場とされる場所に急行したにすぎず、制帽と業務日誌の占有を放棄したとは全く思っていないと認められる。
したがって、Xの占有は認められる。

B「これは1月9日に書いた平成19年度第2問だね。書き直してみたのかい?」
A「具体的事例にあてはめたほうが覚えるわね。昨日の総論の記事もおいおいそうやって行くことに決めたわ。」
B「まあただ旧試験っていうのは事実認定されることを予定してないからね。全然事実が書いてなくてあてはめにくい。」
A「この論点は平成27年の司法試験でももろに出てたわね。あと平成23年の予備試験の実務の問題でも。」
B「まあ頻出なんだね。しかし、占有の説明ちょっと長くないかい?」
A「理解するために書いてるっていう側面があるわ。嫌ならマネしなくて結構。」

☆不法領得の意思
ウ 以上の故意(38条1項)のほかに、窃盗罪は財産罪であるから不法領得の意思が書かれざる要件として必要である。その内容は、不可罰的な使用窃盗との区別のための@権利者排除意思と、毀棄罪との区別のためのA経済的利用処分意思である。
本件では、甲は翌日まで自宅に隠しておいたあと返還するつもりで持ち出しているから@を欠くようにも思えるが、制帽と業務日誌は一般人に貸し借りできない性質の物だから、@は認められると考える。しかし、甲はXを困らせるためにそれらを持ち出しているから、Aが欠ける。よって不法領得の意思が認められない。

B「この論点は旧司法試験と何の変化もないね。」
A「そのとおり。それを確認するためにわざわざコピペしたのよ。」

☆強盗罪と恐喝罪の区別
 甲は強盗罪か恐喝罪か。両罪の区別は暴行・脅迫が犯行を抑圧するに足りるものか畏怖させるにとどまるものかを客観的に判断する。具体的には@暴行・脅迫の態様、A被告人側の事情、B被害者側の事情、C犯行の時刻場所、D被害者の対応、E被告人の態度、F被害者の心理状態、G被告人の意図を考慮する。

A「これはこういう論点の提示の仕方はしないわよね普通。強盗罪から検討するわ。」
B「まあそうだね。強盗罪の暴行・脅迫の要件を検討する中で書くことはあるかもしれない。」
A「横領か背任かの論点を提示しないのと同じだわ。普通に横領から検討するもの。」
B「この区別基準に目を移すと、暴行態様と犯行の時刻場所以外は被告人と被害者の外面や内面と覚えておけばいいね。」
A「なかなか冴えてるわね。」

☆強盗の機会
 甲に強盗致傷罪(240条)が成立するか。同罪は強盗の機会に人を死傷させることが刑事学情顕著であることにかんがみ、これを重く処罰することで人の生命・身体を保護する趣旨の規定である。そうすると、強盗と傷害の間には関連性が必要である。
 では、いかなる関連性が必要か。これは強盗の機会に障害が生じることで足りるとされている。強盗の機会といえるか否かの判断は、@犯意の継続性、A強取との時間的場所的接着性を考慮する。

A「これは密接関連性説が正しいと思うけど、判例は機会説という理解が一般的らしいわ。」
B「でも新庄さんの本でも密接関連性説に配慮した記述があるから、問題意識を持っていてもいいと思うよ。」
A「密接関連性説が適当な問題なら、『B密接関連性』を加えるわけね。ただねえ、刑法の今の出題形式では、判例を批判する気にはならないわ。判例と違うこと書いてた平成24年度の1位の人は刑事系の順位が悪かったもんね。あれは判例以外を書いたから順位を下げられてるとしか思えないわ。だから上の論証も機会説のみ想定したのよ。」
B「刑法の問題で民訴的なくどい会話の誘導が出てきてくれたら書く気にもなるんだけどね。」
A「民訴とか行政法とか、会話文のあれなんなのかしらね?誰も言わないけど、ぶっちゃけ馬鹿みたいよ。会話文にすれば実務に近づくとでも思ってるのかしらアホ出題者は。地の文なら1行で済むところを会話文で5行くらいかけてメッセージ伝えてるわ。」
D「そのくだりで必ず学生や新米弁護士が『その点は勉強不足でわかりません』とかヒヨるのよね。で、年配者が『いい機会ですから考えてみましょう』的な。別にいい機会だからじゃなくて試験だから聞いてるんでしょって。」
C「Dちゃんはいい機会説ではなくて試験との密接関係性説に立っているわけだね。」
A「あれはね、『【書かれた会話文】に対する適応能力』という能力値を測る効果を有するだけね。実務には不要な能力よ。」
D「社会学的構造主義的見方をすると、副次的に年配者へ敬意を表す人間関係の秩序モデルが再生産されているともいえるわね。」

☆事後強盗罪(238)の窃盗の機会
(2)絵画を手にもって倉庫を出た行為はA会社所有の「他人の財物」の占有を移転させる行為であるから「窃取」に当たり、同行為に窃盗罪(235条)が成立している。
 そしてBに発見され、逃げるためすなわち「逮捕を免れ」(238条)るためにBの腹部を強く蹴り上げるという「暴行」(人の身体に対する物理力の行使)をした行為に事後強盗罪(238条)が成立するか
事後強盗罪の暴行・脅迫は窃盗の機会になされる必要がある。窃盗の機会か否かは@時間的場所的近接性、A逮捕可能性の継続性、B被害者等が身近に存在する状況を考慮して判断する。
 これを本問の甲の暴行について検討する。@甲は倉庫を出たところでBに発見され、その直後に暴行を加えているので、時間的場所的に極めて接着している。そのため、A逮捕可能性は存在した。

B「これは平成17年第1問だけど、この問題は窃盗の機会を検討することを要求してないね。あまりにも当たり前に認定できてしまう。」
A「窃盗の機会が問題になるのは、犯人が屋根裏部屋に隠れていたとか、2時間後に戻ってきたところで逮捕されそうになったとかそういう事例よね。出たことあるっけ?」
B「平成20年がたしか事後強盗だったような気がするね。」

☆背任罪における図利加害目的
 以上の故意のほか、図利加害目的が必要である。これは本人図利目的がないことを裏から規定したものである。具体的には@事務処理者の利益の大きさ、A任務違背の重大性、B手続違背の程度、C本人の利益の大きさを総合的に考慮する。
A「まず、背任罪というのが正面から聞かれるのは想像つきにくいわね。」
B「そうだねぇ。どうしても銀行事例とかそういう特殊事例になるよね。オレオレ詐欺とかと絡ませられるといい問題になりそうだけど。」

☆建造物の一体性
 非現住建造物たるA建物への放火が、現住建造物たるB建物への放火と言えるためには、建造物の一体性が必要である。建造物の一体性の判断は、@物理的・構造的一体性、A接着の程度、B延焼可能性、C連絡・管理方法、D機能的一体性を総合的に考慮して行う。

B「これはまだ出てないんじゃないかな。ねらい目ねらい目。」
A「これって機能的一体性を考慮することにちょっとした批判があったような気がするわね。」

☆公共の危険
 公共の危険とは、108条及び109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく、不特定多数人の生命・身体・財産に対する危険も含まれる。その判断は@人家等との距離、人家等の構造・材質、A火力の程度、B天候・周囲の状況を総合的に考慮する。

B「これは平成24年度の司法試験に出たっけね。」
A「公共の危険について非限定説をとるのであれば、公共の危険の認識は必要と解すべきだわね。」
B「その論点書くとしたらこの事実認定が終わった後だね。」

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posted by izanagi0420new at 06:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法

2016年02月06日

刑法 予備試験平成27年度

1 丙の罪責
(1)丁を通じて甲から50万円を受け取った行為に受託収賄罪の成否を検討する(197条1項後段)。
 賄賂罪の保護法益について、判例は職務行為の公正とこれに対する社会一般の信頼であるとしている(信頼保護説)。この他に職務行為の適正性であるとする見解(純粋性説)や、公務員の職務に関する権限行使が不正な対価によって左右されることとする見解(不可買収性説)がある。信頼保護説を採用するとしても、職務の公正とこれに対する社会一般の信頼が害されるのは、賄賂によって公務員の権限行使が歪曲された場合のことであるから、不可買収性説の要素も加味して考えるべきと解する。
 「公務員」とは7条1項の者を言い、丙はB市職員であるからこれに当たる。
 「賄賂」とは職務行為の対価としての一切の利益を言う。現金はこれに当たるから、50万円はこれに当たる。
 「職務に関し」とは職務行為関連性を意味する。具体的職務権限の範囲内の行為の他、一般的職務権限の範囲内の行為や職務密接関連行為も含む。B市がA社と契約締結することは、公共工事に関して業者を選定し、B市として契約を締結する職務に従事していた丙の具体的職務権限の範囲内であるから、これを満たす。
 「嘱託」とは、公務員に対し、職務に関して一切の行為を行うことを依頼することであり、単に好意ある取り扱いを依頼することでは足りない。甲が丙に依頼したのは、今度発注予定の公共工事についてA社と契約することであり、これは単なる好意ある取り扱いを超えて職務に関する行為を依頼しているから、「嘱託」に当たる。「受けて」というためには承諾したことが必要であるところ、丙は「分かった。何とかしてあげよう。」と言っているから、これを満たす。
 以上により職務行為の公正とこれに対する社会一般の信頼が害されたから、丙の行為に受託収賄罪が成立する。
(2)なお、丙が実際にA社と契約を結んだ行為は法令上何ら問題がないから、加重収賄罪(197条の3第1項)は成立しない。同罪は公務員が受託収賄罪等により「不正な行為」をしたことを処罰するものであるところ、上記行為は「不正」ではないからである。
2 丁の罪責
 丁が甲から50万円を受領した行為に受託収賄罪の幇助犯(62条1項、197条1項後段)の成否を検討する。
(1)問議する犯罪は共同正犯ではないかが問題となる。正犯と共犯の区別は自己の犯罪と評価できるか否かで行うべきところ、丁は本件の犯行の意思形成過程に加わっていないこと、丙から何も聞かされていなかったところ賄賂の金員の受領のみを偶然に担当したに過ぎないことから、自己の犯罪とは評価できず、幇助犯にとどまる。
(2)公務員の身分を有していない丁が受託収賄罪を幇助できるかが問題となる。「身分によって構成すべき」「身分によって特に刑の軽重があるとき」という文言から、65条1項は真正身分犯、2項は不真正身分犯の規定と解する。受託収賄罪は「公務員」であることを要件とする真正身分犯である。したがって、65条1項に基づき、身分のない丁も受託収賄罪の幇助犯となりうる。
(3)丁は甲から現金50万円を受け取るという「収受」(197条1項)を分担することにより、丙の犯罪に物理的因果性を与えた。
(4)幇助犯は、正犯の実行行為及び結果に対し物理的心理的に因果性を及ぼしたことを処罰する処罰拡張類型である。幇助犯を含む狭義の共犯の処罰根拠は正犯を堕落させたことではなく、正犯を通じて間接的に法益侵害結果を惹起したことである。そのため、幇助犯が成立するためには、物理的心理的に正犯の実行行為及び結果に因果性を及ぼしたという客観的要件の他、そのすべてについて故意(38条1項、犯罪事実の認識・予見)が必要である。
 本件で丁は、甲からこれまでの経緯を聞いているから、自己の行為が賄賂の金員の授受に
あたることは認識していたといえる。
 よって、丁に受託収賄罪の幇助犯が成立する。
3 甲の罪責
(1)用度品購入用現金を賄賂に用いた行為にA社に対する業務上横領罪(253条)の成否を検討する。
用度品購入用現金はA社に所有権があるから、「他人の物」である。
 「占有」は窃盗罪との区別のための要件であり、その有無は、所有者と占有者に上下関係がある場合には、原則として所有者に占有があるが、占有者に占有物に関する包括的な権限があった場合には占有者に占有があると解する。本件で甲は、A社の総務部長として、A社から用度品購入用現金を手提げ金庫に入れてその用途に従って支出する権限を有していたから包括的権限があったといえ、甲に「占有」があると言える。
 「横領」とは不法領得の意思の実現行為を言い、横領罪における不法領得の意思とは、横領罪の保護法益が所有権及び委託関係であることから、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに、所有者でなければできないような処分をする意思をいう。用度品購入用現金をその他の用途に使うことは所有者でなければできない処分であるから「横領」に当たる。
 「業務」とは、委託を受けて物を管理することを内容とする事務のことであり、甲の有していた権限はこれに当たる。
 したがって、甲の行為に業務上横領罪が成立する。
(2)丙に対し、丁を通じて50万円を渡した行為は、197条1項の賄賂の「供与」(198条)に当たり、贈賄罪の共同正犯(60条、198条)の成否を検討する。
 甲は乙に頼まれて賄賂を供与したに過ぎないから、同罪の幇助犯ではないか。正犯と共犯の区別が問題となる。
 前述のように正犯と共犯の区別は自己の犯罪といえるか否かにより、その判断には@動機、A人間関係、B意思形成過程の積極性、C犯行に果たした役割、D犯行後の行為状況、E犯罪の性質を考慮する。
 本件でA甲は乙に恩義を感じていたことから、乙に恩返しをするため、自ら犯行を決意し、乙にその旨を告げている。また、C甲は単独で実行行為という重要な役割を分担している。これらのことを考慮すると、@甲の目的が専ら乙を助けることにあり、D行為後に自己に犯罪の利益を帰属する意思がなかったとしても、自己の犯罪と評価すべきである。
 したがって、甲に贈賄罪の共同正犯が成立する。
(3)業務上横領罪と贈賄罪は目的手段の関係があるから牽連犯となる(54条1項後段)。
4 乙の罪責
 甲を通じて、丙に50万円を渡した行為に贈賄罪の共同正犯の成否を検討する。ここでも乙の正犯性が問題となる。
 乙はA社の営業部長に就任したが売り上げが下降し、営業成績が直近1か月で向上しないと降格させられる状況にあった。この状況で降格を回避するため、乙は甲に対して、甲が丙の同級生であり、甲は自己に恩義を感じていることを利用し、B市との契約の受注という賄賂の対価の内容や、対価を用度品購入用現金から支出することなど、詳細に計画して甲に伝えている。このように、@乙に利益が帰属することや、B詳細な犯行計画を立てて犯行に主導的役割を果たしたことに鑑みると、C実行行為自体を分担していなかったとしても、自己の犯罪と評価すべきである。
 したがって、乙に賄賂罪の共同正犯が成立する。  以上

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posted by izanagi0420new at 17:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法

刑法 予備試験平成26年度

1 甲の罪責
(1)Vに仏像を交付させた行為に詐欺罪(246条1項)の成否を検討する。
ア 代金を支払う意思がないのに鑑定が必要であると嘘をついて仏像の引渡しを求めた行為は、人の錯誤を惹起する行為であり、財物の交付に向けられており、交付の基礎となる重要な事項を偽るものであるため「欺いて」の要件を満たす。
 Vは代金を受け取り損ねることはないだろうと、甲の支払意思について錯誤に陥っている。
イ では、錯誤に基づく処分行為が認められるか。窃盗罪との区別のため、「交付」といえるためには占有の弛緩の認識では足りず、占有の移転の認識が必要と解するところ、Vは、仏像を近くの喫茶店で鑑定させる認識でいるのだから、他人の支配下に移す認識即ち占有の移転の認識があると認められ、「交付」の要件も満たす。
ウ 詐欺罪も財産罪であるから財産上の損害も書かれざる要件として必要と解するが、詐欺罪は個別財産に対する犯罪であり、財産とともに交付目的も保護法益と解されるから、交付目的に錯誤がある限り交付自体が財産上の損害に当たると解する。
 Vは、逃走しようとする甲の意図を見破り、同人の逃走を妨害して代金を支払わせる可能性を残したが、鑑定させるという交付目的には錯誤があり、すでに仏像は交付済であるため、交付自体が財産上の損害となる。
エ 以上より、甲の行為に詐欺罪が成立する。
(2)仏像の返還や代金の支払いを免れる意図で、Vの腹部を殺意をもってナイフで一回突き刺し重傷を負わせた行為に強盗殺人未遂罪(243条、240条)の成否を検討する。
ア 前提として、240条は「死亡させたとき」と結果的加重犯のような規定ぶりになっているが、同条は強盗の際に殺人が行われることが刑事学上顕著であることに鑑み特に構成要件化したもと解されるから、殺人の故意ある場合も当然に含むと解する。
イ 刃体の長さ訳15センチメートルという長いナイフという凶器で、腹部という身体の枢要部を突き刺す行為は殺人の実行行為というに十分であり、甲には代金の支払いを免れる目的即ち「財産上不法の利益を得」(236条2項)る目的があるので、強盗殺人罪の構成要件に該当する。
ウ もっとも、甲はVにナイフを突きつけられたことに対して上記の行為をしたから、正当防衛の成否が問われる。
(ア) ナイフを突きつけられて、仏像の代金を支払うよう脅されている甲には、自らの生命及び財産に対する急迫不正の侵害がある。ここで、Vが代金を支払うよう申し向けているのは権利行使であるが、行使態様が社会通常の相当性を欠くため恐喝罪を構成しており、「不正」(違法を意味する)の侵害である。
(イ) 「防衛するため」という文言から防衛の意思が必要と解するが、甲は自分の生命と財産を守る意思があると言える。
(ウ) 「やむを得ずにした」とは防衛行為の相当性を意味する。本問では、甲はVよりも若く体格も優っているから、Vからの侵害に対してはナイフを奪う時点で十分であり、その後ナイフを取り返そうとして甲につかみかかってきたVに対しては、素手で応戦するのが相当であったところ、甲は前述のように殺人の実行行為をもって応戦しているのだから、相当とは言えない。
(エ) したがって、甲には強盗殺人未遂罪が成立するが、正当防衛は成立せず、過剰防衛(36条2項)として刑が任意的に減免されるにとどまる。
(3)甲には@詐欺罪、A強盗殺人未遂罪が成立し、両者は併合罪(45条)となる。
2 乙の罪責
(1)仏像をホテルから持ち帰った行為は詐欺罪の幇助犯(62条1項、246条1項)の客観的構成要件に該当するが、乙には故意(犯罪事実の認識・予見、38条1項)がないため、同罪は成立しない。
(2)仏像をホテルから持ち帰り、自宅に保管中に盗品であることを知り、その後もなお保管をつづけた行為に盗品保管罪(256条2項)が成立する。成立の時点は盗品であることを知った時点である。
(3)甲に無断で仏像を500万円で第三者に売却し、その代金を費消した行為に委託物横領罪(252条1項)は成立しない。なぜなら、同罪の保護法益は所有権及び委託関係と解されるところ、甲には所有権がなく、また、甲乙間の委託関係は保護に値しないからである。
 しかし、乙の行為は「占有を離れた他人の物」を、不法領得の意思をもって領得する行為だから、占有離脱物横領罪(254条)が成立する。
(4)乙には@盗品保管罪とA占有離脱物横領罪が成立し、@とAは併合罪(45条)となる。 以上

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posted by izanagi0420new at 16:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法

刑法 予備試験平成25年度

第1 Vに現金50万円を振り込ませた行為
1 甲の罪責
 甲に詐欺罪(246条1項)の成否を検討する。
(1)Vの息子を装い、交通事故を起こしたと嘘を言い、50万円を要求する行為は「欺いて」に当たり、Vはそれにより錯誤に陥り、錯誤に基づく処分行為として50万円をA名義の預金口座に振り込んでいる。
(2)もっとも、引き出される前に預金口座の取引停止措置が講じられたから、財産的損害が生じておらず、詐欺罪は成立しないのではないか。詐欺罪も財産罪である以上、財産的損害が書かれざる要件になると解するが、詐欺罪は個別財産に対する罪であり、同罪は交付目的も保護法益としていると解されるから、交付目的が異なる限り、交付自体が財産的損害を構成すると解する。
 本問では、Vは交通事故の示談金として50万円を振り込むという交付目的であるから、交付目的が異なる。そのため交付自体が財産的損害となる。
(3)以上より、甲に詐欺罪が成立する。
2 乙の罪責
 乙に詐欺罪の幇助犯(62条1項、246条1項)の成否を検討する。
(1)前提として問議する犯罪は共同正犯なのか幇助犯なのかが問題となるが、乙は本件のVに対する犯罪について全く意図しておらず、本件は甲が乙に黙って行ったものであるから、乙には明らかに正犯意思がない。そこで幇助犯を検討する。
(2)幇助とは、正犯に物理的心理的因果性を及ぼすことによって正犯の実行行為及び結果惹起を促進することを言う。正犯である甲は犯行の際に乙の準備した部屋から、乙の準備した携帯電話を用いて、乙に誘われて常習的に行っている手口を用いて上記犯罪を実行し、既遂結果を惹起したのであるから、乙は甲が今回行った犯罪の実行行為及び結果に物理的因果性を及ぼしている。
(3)故意(38条1項)がないのではないかが問題となるが、故意とは犯罪事実の認識・予見である以上、だれの法益を侵害するかまでの認識の齟齬は故意を阻却しないと解する。つまり、概括的故意も認められる。
 本件では、乙は甲を誘って、今回甲が行ったのと同様の手口の詐欺罪を繰り返していた以上、Vの法益を侵害する認識がなかったとしても、甲が今回の手口で何者かの財産を侵害する認識を有していたといえるから、故意に欠けることはない。
(4)したがって、乙に詐欺罪の幇助犯が成立する。
3 丙の罪責
 丙は何ら物理的心理的因果性を及ぼしていないから、犯罪は成立しない。
第2 現金自動支払機から現金50万円を引き出そうとした行為
1 甲の罪責
 窃盗未遂罪(243条、235条)の成否を検討する。
(1)自ら準備したA名義の銀行口座に振り込みをさせた時点で預金の占有は甲にあり、占有を移転させるという「窃取」の要件を満たさないのではないか。または、金銭に関しては民法上占有の所在と所有権の所在が一致すると解されていることから、「他人の財物」に当たらないのではないか。いずれにしても本件預金の占有が誰にあるかが問題となるが、この点は金融機関は約款等において預金口座の譲渡を禁止し、これを預金口座の取引停止事由としているから、預金口座の譲渡がなされた時点以降は、当該預金口座に記入された額面の預金の占有は銀行にあると解される。
 したがって、甲が丙を介して引き出し、もって預金の占有を移転させようとして遂げなかった行為に窃盗未遂罪が成立する。
(2)そして、下記の通り、丙とは共同正犯となる(60条、243条、235条)。
2 丙の罪責
 丙を正犯とすべきか従犯とすべきかが問題となるが、正犯か否かは自己の犯罪と言えるか否かで判断すべきであり、事故の犯罪といえるか否かは@動機、A人間関係、B意思形成過程の積極性、C犯行に果たした役割、D犯行後の行為状況、E犯罪の性質を考慮して決めるべきと解する。
 丙は@自らの金欲しさという利己的な動機から甲の要請を受け、C預金を引き出すという実行行為のすべてを単独で担当しているので犯行に果たした役割は大きい。そのため、自己の犯罪と評価すべきである。
 したがって、丙に窃盗未遂罪の共同正犯が成立する。
3 乙の罪責
 乙はこの実行行為については何らの因果性をも及ぼしていないから、犯罪は成立しない。
第3 甲には@詐欺罪、A窃盗未遂罪が成立しているが、これらは別個の主体に対する犯罪だから併合罪(45条)となる。  以上

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posted by izanagi0420new at 15:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法

刑法 予備試験平成24年度

1 甲及び乙が、甲がX車を運転して乙の乗るY車に衝突させ、よって乙に頸部捻挫の怪我を押させた行為に傷害罪の共同正犯(60条、235条)の成否を検討する。
(1)車同士を衝突させる行為は人の身体に向けられた物理力の行使ではないから「暴行」(208条)には当たらない。しかし、同行為は乙の生理的機能を害しているから「傷害」(204条)に当たる。
(2)しかし、身体という保護法益は放棄可能だから、「人」とは他人を意味し、傷害の被害者を含まないと解すべきであるから、被害者乙は傷害罪の構成要件に該当しない。そのため、以降は甲の傷害罪の単独犯として検討する。
(3)甲及び乙は保険金をだまし取ることを謀議して上記行為に及んだのであるから、乙には傷害を受けることの同意があると言える。この同意が傷害罪の違法性を阻却するかが問題となる。
 被害者の承諾が違法性を阻却するためには、単に承諾があるという事実だけではなく、承諾を得た動機、・目的、傷害の手段・方法、損傷の部位・程度など諸般の事情に照らし、承諾が社会観念上是認されることが要件となると解する。
 本件のように、過失による自動車衝突事故であるかのように装い保険金を詐取する目的をもって、被害者の承諾を得てそのものに故意に自己の運転する自動車を衝突させて傷害を負わせた場合には、その承諾は保険金を詐取するという違法な目的に利用するために得られた違法なものであって、これによって当該傷害行為の違法性は阻却されない。
 したがって、乙の同意は違法性を阻却しない。
(4)以上より、甲に傷害罪が成立する。
2 甲がX車をY車に衝突させ、Y車が前方に押し出した結果、Aを転倒させてけがを負わせた行為に傷害罪(204条)の成否を検討する。
(1)乙も問題文1の謀議行為に加わっている以上、甲を実行行為者とするAに対する傷害罪の共謀共同正犯となり得るとも思える。しかし、「人の」(204条)を「他人の」と解した以上、甲及び乙はおよそ傷害罪の謀議をしていないと解すべきである。したがって、以下では甲の傷害罪の単独犯の成否を問題にする。
(2)前述のように甲は傷害罪の実行行為を行い、結果も発生している。因果関係があるかが問題となり得るも、Y車に接触して転倒することで生じた傷害結果は凍結した路上で甲車を乙車に衝突させる行為の危険が現実化したものと言えるから、因果関係は認められる。
(3)しかし、甲及び乙は、乙以外の者に傷害結果を生じさせる認識がなく、故意(38条1項、犯罪事実の認識・予見)が阻却されないか問題となる。
 甲には、乙に傷害結果を生じさせる故意はあるのであるから、Aに傷害結果を生じさせた点は事実の錯誤のうち方法の錯誤の事例ととらえることができる。
 方法の錯誤が故意を阻却するかについて、故意責任の本質は犯罪事実を認識して規範に直面し、反対動機の形成が可能であるのにあえて実行行為に出た点への非難である。そして、規範は構成要件として与えられているから、同一の構成要件該当事実を認識・予見している限り故意は阻却されないと解すべきである。
 そして、故意の内容を上記のように抽象化する以上、故意の個数は問題とならず、一人に対する傷害の認識しかなくても複数の故意犯は成立しうると解する。このように解しても罪数処理で観念的競合(54条1項前段)とすればよいから刑が重すぎることにはならない
 そうすると、本件では甲にはAに対する傷害罪の故意も認められるという結論になる。この点、甲側は、大阪高裁の裁判例に倣って、後述のように保険金詐欺を共謀し傷害について同意のあるいわば味方である乙と見ず知らずのAとでは「人」(204条)として同価値とは言えず、故意の付合を認める根拠に欠けると主張しうるが、故意を構成要件レベルで抽象化する以上、人としての同価値性は故意の付合を認める要件ではないと解する。
(4)したがって、甲にAに対する傷害罪が成立する。
3 甲、乙及び丙が、共謀の上、保険会社の担当者Bに対し、保険金をだまし取ろうとした行為に詐欺未遂罪の共同正犯(60条、250条、246条1項)の成否を検討する。
(1)甲、乙及び丙は、問題文1のように、詐欺罪を共謀している(前述のように、傷害罪の共謀はしていない。)。
(2)甲及び乙が保険金支払いを請求した行為が詐欺罪の実行行為たる「欺いて」に当たるが、Bは錯誤に陥らなかったのであるから既遂にならない。
(3)丙は自動車同士を衝突させる以前から「俺は抜ける。」と申し向けて以後の犯行に関与していないから、丙は「共同して」(60条)とはいえないのではないか。丙に共犯からの離脱が認められるか問題となる。
 60条が実行行為者以外も正犯とする根拠は、結果に対する因果性を及ぼした点にある。そのため、因果性を除去したことが離脱の要件であり、具体的には物理的因果性と心理的因果性の双方を除去することが必要であって、心理的因果性の有無の判断には離脱の意思表明と了承の事実や離脱者と共犯者の関係等を考慮すべきと解する。
 本件では、丙は犯行時刻に犯行現場に現れず、「俺は抜ける。」と離脱の意思を表明している。甲と乙からの明示の了承はないものの、甲及び乙は、丙が離脱したものとして丙抜きで当初の計画を実行しているから、黙示の了承があったと認められる。また、本件の犯罪の主謀者は甲である。これらの事情から、心理的因果性は除去されているといえる。また、丙はX車を運転するという役割を担う予定だったものの、それは甲が代替できるものであったし実際に甲が代替している。そして、それ以外に丙が犯行の道具を供給していた事情もない。そうすると、物理的因果性も除去されていたといえる。
 したがって、丙は犯罪を「共同して」行ったとはいえず、共犯からの離脱が認められる。
(4)したがって、甲及び乙に詐欺未遂罪の共同正犯が成立する。  以上

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posted by izanagi0420new at 15:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法

刑法 予備試験平成23年度

1 腹部に果物ナイフが刺さった乙に「早く楽にして」と言われ、殺意をもって乙の首を両手で絞めつけて意識を喪失させ、家を燃やして乙を一酸化炭素中毒死させた行為に嘱託殺人罪の成否を検討する(202条後段)。
(1)首という身体の枢要部を両手で絞めつける行為は殺人の現実的危険を伴うから嘱託殺人罪の実行行為に当たる。
(2)死の結果との間に因果関係があるか問題となる。
 因果関係は法的評価の問題だから自然的な条件関係のみを判断する条件説は妥当でない。相当因果関係説のうち折衷説は客観的構成要件である因果関係に行為者の主観を持ち込む点で妥当でなく、客観説は事後的に検証して因果経過の通常性が認められない場合が想定できず妥当でない。因果関係の判断は行為の危険が現実化したかを基準に行うべきであり、介在事情が結果の主因になった場合には、介在事情が起こる蓋然性が要件に加わると考える。
 本件は、介在事情である甲の放火行為によって生じた煙による一酸化炭素中毒が死因であるから、介在事情が結果の主因になった場合である。嘱託殺人の実行行為者が証拠を消すために建物の放火行為に及ぶことはありえないことではないから、介在事情が起こる蓋然性は認められる。そして。実行行為により意識喪失状態にならなければ木造2階建て家屋である甲宅から脱出することは可能かつ容易であったといえるから、実行行為の危険は現実化したと言える。
 したがって、因果関係はある。
(3)もっとも、甲は首を絞める行為により既に乙が死亡していると認識して放火行為に及んでいるから、因果関係の錯誤が故意(38条1項)を阻却しないか問題となる。
ア 因果関係が故意の対象か
 故意とは犯罪事実の認識・予見であり、犯罪事実は構成要件として示されている。そして因果関係は構成要件要素である。したがって、因果関係も故意の対象である。
イ 因果関係の錯誤の有無
 因果関係はあるかないかが重要で、因果経過の錯誤は故意を阻却しないという解釈もあるが、それだと因果関係を故意の対象とする意味がないから妥当でない。行為者の認識した因果経過と実際の因果経過の齟齬が相当因果関係の範囲内か否かを基準にする解釈もあるが、相当性の判断基底をどうするかの問題があることに加え、因果関係の判断で相当因果関係説を採らない自説からは採用できない。
 因果関係の錯誤は故意という主観的構成要件要素の問題であるから、行為者の認識を基準として、行為者の認識した因果経過と実際の因果経過との齟齬が結果発生態様のバリエーションの問題と言えるか否かを判断すべきと考える。
 本件は、甲は実行行為の当時に甲宅に放火する計画はなかったのであるから、そのような甲の認識を基準とすると、首を絞める行為からではなく、放火した後の一酸化炭素中毒で死亡するという結果はまったくの偶然であり、結果発生態様のバリエーションの問題とは言えない。
 したがって、甲の因果関係の錯誤は故意を阻却し、嘱託殺人既遂罪は成立しない。
(4)同行為に嘱託殺人未遂罪(203条、202条後段)および乙が生きているということを確認しなかった注意義務違反に「過失」(210条)が認められるため、過失致死罪が成立する。
2 乙がいる甲宅に放火した行為に現住建造物放火罪(108条)の成否を検討する。
(1)灯油をまきライターで点火する行為は放火により公共の危険を生じさせる現実的危険を有する行為だから108条の実行行為たる「放火」に当たる。
(2)甲宅は全焼し、効用を喪失しているから「焼損」に当たる。
(3)甲宅には乙がいたから「現に人がいる建造物」(現住性)を満たす。
(4)もっとも、甲は乙が死亡していると認識しているから現住性に錯誤があり、109条の故意しかない。このような異なる構成要件間の錯誤(抽象的事実の錯誤)が故意を阻却するかが問題となる。
 故意責任の本質は構成要件該当事実を認識しつつあえて実行行為に及んだことに対する非難であるから、構成要件が重なり合う範囲で軽い罪が成立すると解する。
 本件は、109条の故意は108条の故意と重なり合う関係にあるから、甲には軽い109条の故意が認められる。そして、甲建物は自己所有であるが抵当権の実行を通告されており、甲はそれを認識しているから、109条1項の故意が認められる(115条)。
(5)したがって、甲の行為に他人所有非現住建造物放火罪(109条1項)が成立する。
3 乙の殺人罪の証拠である丙の死体を燃やした行為に証拠隠滅罪(104条)が成立する。
4 丙の死体を燃やした行為に死体損壊罪(190条)が成立する。
5 罪数
 甲には@嘱託殺人未遂罪、A過失致死罪、B他人所有非現住建造物放火罪、C証拠隠滅罪、D死体損壊罪が成立する。ABCDは1個の行為によるが、すべて保護法益が異なるから併合罪(45条)となる。@とも併合罪である。  以上

posted by izanagi0420new at 14:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法

刑法 平成22年度第2問

1 Bに対して、オーダースーツを製作するように装い、内金として現金7万円を交付させた行為に詐欺罪(246条1項)の成否を検討する。
(1)「欺いて」とは、人の錯誤を惹起する行為である。詐欺罪の保護法益は財産及びその交付目的と解されるから、「欺いて」といえるためには交付の基礎となる重要な事実を偽ることが必要である。甲は、実際には製作するつもりがないにもかかわらず、「オーダースーツをお作りいたします。」と申し出、さらにBの身体の寸法を測るなどしているから、甲B間では外形的にオーダースーツを製作して供給する契約が成立している。そのため、Bの主観に関わらず、既製品でなくオーダースーツであることが交付の基礎となる重要な事実に当たる。したがって甲の上記行為は「欺いて」に当たる。
(2)Bはそれにより錯誤に陥り、錯誤に基づく処分行為として現金7万円を交付している。
(3)問題は財産的損害およびその額である。詐欺罪も財産罪であるから財産上の損害は書かれざる構成要件として必要と解するが、詐欺罪は個別財産に対する罪であり、同罪の保護法益は財物の交付目的でもあるから、交付目的に錯誤がある交付は、その交付自体が財産的損害を構成すると解する。本問ではBはオーダースーツ政策供給契約の内金として7万円を交付しているから、Bに7万円の財産的損害がある。交付自体が損害である以上、内金であって変換の可能性があることは要件の充足に影響しない。また、残りの13万円に対してはまだ交付がないから、この時点では損害に含まれない。
(4)したがって、甲の行為に7万円の詐欺罪が成立する。
2 A社の倉庫から既製品のスーツ1着を持ち出した行為に窃盗罪(235条1項)の成否を検討する。
(1)問擬する犯罪について、委託物横領罪(252条1項)ではないかとも思えるが、甲はA社の営業担当者であり、倉庫内のスーツの管理責任者ではないため、「占有」の要件を満たさない。
(2)詐欺罪(246条1項)を検討すべきとも思えるが、窃盗罪との区別のために交付行為の要件は意思に基づく占有移転が必要と解されるところ、甲はチラシの写真撮影用と申し出ていること、Cはすぐ返してくださいと言っていること、甲とCは同じA社の社員であることから、Cには占有弛緩の認識しかないため、交付行為を欠き、詐欺罪は成立しない。
(3)甲の行為はA社の20万円のスーツという「他人の財物」の占有を自ら自分に移した行為すなわち「窃取」した行為であり、窃盗罪が成立する。
3 Bに対し、既製品のスーツと引き換えに現金13万円を支払わせた行為に詐欺罪の成否を検討する。
(1)甲は販売価格20万円のスーツを提供しているため、価格相当物を提供しており財産上の損害の要件を満たさないとも思える。しかし、前述のように詐欺罪の保護法益は交付目的でもあるところ、Bはオーダースーツを購入する目的で13万円を支払ったのであるから、交付目的が害されている。そして、オーダースーか既製品のスーツかは、甲B間にオーダースーツの供給契約が成立していた本件では、客観的に交付の基礎となる重要な事実であるから、このような交付目的によって交付された財産は、交付自体が財産上の損害を構成する。
(2)したがって、甲の行為に詐欺罪が成立する。
4 甲には、@7万円の詐欺罪、A20万円相当のスーツの窃盗罪、B13万円の詐欺罪が成立し、それぞれ別個の行為によるものだから併合罪(45条)となる。  以上

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posted by izanagi0420new at 14:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法
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