2019年11月07日
生活保護開始決定通知書 〜生活保護を受けることになって〜。
生活保護の申請を終えて2週間が経った。
僕は穏やかで、落ち着かない日々を過ごしていた。
”穏やかで落ち着かない”
そんな矛盾を作り出していたのは郵便受けだった。
なにしろ、
生活保護課からのお知らせが入っているかもしれないからだ。
そんな日々の末に、僕はついに生活保護の受給が認められた。
ー目次ー
平日の13時。
11月の曇り空は、今にも初雪をこぼしそうだった。
就労移行支援事業所では午後の作業が始まった。
書類を封筒に入れる音、荷造りをする音、
いつも通りの作業風景が流れていった。
僕もその風景の一部になりたかった。
何も考えなくていい単純作業に救われていた。
ふと、スタッフさんから声をかけられた。
「生活保護課からお電話ですよ」
僕は作業から抜け出し、電話に出た。
明瞭な男性の声が、こう言った。
「生活保護の支給が決定しました」
僕は作業を中抜けし、区役所へ向かった。
生活保護課へ着くと、
職員さんが諸注意や支給日、収入の届出方法などを説明してくれた。
そして最後に、生活保護費を受け取った。
手続きが終わり、事業所へ戻った。
僕は残りの作業を終えて帰路についた。
とたんに、涙があふれた。
肩へのしかかっていた重いものが、
どこかへ消えたようだった。
ふいに「よかった…。」とつぶやいた。
区役所で説明を受けたとき、
僕はずっと気になっていた質問をした。
「(関係が破綻している)親はなにか言っていましたか?」
代理の方はこう答えてくれた。
「正確にはわかりませんが、まだ親御さんには連絡していないそうです。」
生活保護を申請したとき、僕の両親も同席した。
その席で、自閉症スペクトラム(ASD)障害、
とりわけアスペルガー症候群の特徴が強い父親が暴れた経緯があった。
”暴れた”というのはもちろん暴力ではない。
「延々と持論を語る」「息子の心配をよそおった人格攻撃」だ。
母親はいつも、そんな父親を止めるフリをする。
が、本気でやめさせることは一度もない。
誰だって我が身がいちばん大事だし、
父親を怒らせて収入の基盤を失いたくはないだろう。
それは理解しても、子どもの立場ではつらかった。
「母親は助けてくれない」と思い知らされることが。
そんな経緯があったので、
僕はまだ、親が何をしでかすかを恐れていた。
父親には「空気を読む」能力も、
延々と話す自分を客観視する能力もない。
だから今回も、父親の暴走が怖かった。
「息子が生活保護を受けた」
この現実を、また僕への攻撃という形で否定してくるのではと恐れた。
そして、「助けない母親」を見るのが悲しかった。
また、あの”見捨てられたような孤独感”を味わうことを恐れた。
家に帰り、今日のできごとを振り返った。
就労移行支援事業所のスタッフさんから「痩せましたね」と言われた。
そういえばベルトの穴が1つ、縮んでいた。
身体と心は無意識に、ストレスに耐えていた。
僕はふたたび外へ出た。
そういえば、近所にトライアル(大型スーパー)ができたっけ。
寒空の下、自転車を走らせた。
真新しい店内を歩き回り、
いつもより少し高級な食材を買いこんだ。
帰り道、自転車をこぎながら、また泣いた。
僕は無事に生活保護を受けられた。
ほっとした気持ちと同時に、自分への疑問が生まれた。
「僕はどうして、ほっとしているのか?」
僕は「生」にそこまで執着がないつもりでいた。
「生き続けるなら生きるけど、死ぬならそれでいい」
心は冷めているのに、身体は生き延びるために必死で動いていた。
自分の体内で、こんな矛盾が渦巻いていることが釈然としなかった。
「自分は何をもって自分なのか」「自分の意志なんてあるのか」
そんなことを、繰り返し考えた。
なのに、僕は泣いた。
それはきっと、
心の底では、まだ生きたいと願っているのかも知れない
からだった。
そして、
僕の「生」への執着を冷めさせていたのは、
きっと僕自身の無意識だった。
「今の状況では、このまま生きたいと願うことに心が耐えられないだろう」
そう判断がくだり、生きる欲求を封印させた。
「生きていたくない」「まだ生きたい」
涙はきっと、そんな心のせめぎ合いからこぼれ落ちた。
※生活保護の申請・三部作
生活保護の申請。(1) -生活保護課への書類提出-
生活保護の申請。(2) -ケースワーカーによる家庭訪問-
生活保護の申請。(3) -民生委員による家庭訪問-
僕は穏やかで、落ち着かない日々を過ごしていた。
”穏やかで落ち着かない”
そんな矛盾を作り出していたのは郵便受けだった。
なにしろ、
生活保護課からのお知らせが入っているかもしれないからだ。
そんな日々の末に、僕はついに生活保護の受給が認められた。
ー目次ー
- ”生活保護課からお電話ですよ”
- 父親の暴走への恐れ、助けない母親への悲しみ
- まだ、生きたいと願っていたのかもしれない
1.”生活保護課からお電話ですよ”
平日の13時。
11月の曇り空は、今にも初雪をこぼしそうだった。
就労移行支援事業所では午後の作業が始まった。
書類を封筒に入れる音、荷造りをする音、
いつも通りの作業風景が流れていった。
僕もその風景の一部になりたかった。
何も考えなくていい単純作業に救われていた。
ふと、スタッフさんから声をかけられた。
「生活保護課からお電話ですよ」
僕は作業から抜け出し、電話に出た。
明瞭な男性の声が、こう言った。
「生活保護の支給が決定しました」
僕は作業を中抜けし、区役所へ向かった。
生活保護課へ着くと、
職員さんが諸注意や支給日、収入の届出方法などを説明してくれた。
そして最後に、生活保護費を受け取った。
手続きが終わり、事業所へ戻った。
僕は残りの作業を終えて帰路についた。
とたんに、涙があふれた。
肩へのしかかっていた重いものが、
どこかへ消えたようだった。
ふいに「よかった…。」とつぶやいた。
2.父親の暴走への恐れ、助けない母親への悲しみ
区役所で説明を受けたとき、
僕はずっと気になっていた質問をした。
「(関係が破綻している)親はなにか言っていましたか?」
代理の方はこう答えてくれた。
「正確にはわかりませんが、まだ親御さんには連絡していないそうです。」
生活保護を申請したとき、僕の両親も同席した。
その席で、自閉症スペクトラム(ASD)障害、
とりわけアスペルガー症候群の特徴が強い父親が暴れた経緯があった。
”暴れた”というのはもちろん暴力ではない。
「延々と持論を語る」「息子の心配をよそおった人格攻撃」だ。
母親はいつも、そんな父親を止めるフリをする。
が、本気でやめさせることは一度もない。
誰だって我が身がいちばん大事だし、
父親を怒らせて収入の基盤を失いたくはないだろう。
それは理解しても、子どもの立場ではつらかった。
「母親は助けてくれない」と思い知らされることが。
そんな経緯があったので、
僕はまだ、親が何をしでかすかを恐れていた。
父親には「空気を読む」能力も、
延々と話す自分を客観視する能力もない。
だから今回も、父親の暴走が怖かった。
「息子が生活保護を受けた」
この現実を、また僕への攻撃という形で否定してくるのではと恐れた。
そして、「助けない母親」を見るのが悲しかった。
また、あの”見捨てられたような孤独感”を味わうことを恐れた。
3.まだ、生きたいと願っていたのかもしれない
家に帰り、今日のできごとを振り返った。
就労移行支援事業所のスタッフさんから「痩せましたね」と言われた。
そういえばベルトの穴が1つ、縮んでいた。
身体と心は無意識に、ストレスに耐えていた。
僕はふたたび外へ出た。
そういえば、近所にトライアル(大型スーパー)ができたっけ。
寒空の下、自転車を走らせた。
真新しい店内を歩き回り、
いつもより少し高級な食材を買いこんだ。
帰り道、自転車をこぎながら、また泣いた。
僕は無事に生活保護を受けられた。
ほっとした気持ちと同時に、自分への疑問が生まれた。
「僕はどうして、ほっとしているのか?」
僕は「生」にそこまで執着がないつもりでいた。
「生き続けるなら生きるけど、死ぬならそれでいい」
心は冷めているのに、身体は生き延びるために必死で動いていた。
自分の体内で、こんな矛盾が渦巻いていることが釈然としなかった。
「自分は何をもって自分なのか」「自分の意志なんてあるのか」
そんなことを、繰り返し考えた。
なのに、僕は泣いた。
それはきっと、
心の底では、まだ生きたいと願っているのかも知れない
からだった。
そして、
僕の「生」への執着を冷めさせていたのは、
きっと僕自身の無意識だった。
「今の状況では、このまま生きたいと願うことに心が耐えられないだろう」
そう判断がくだり、生きる欲求を封印させた。
「生きていたくない」「まだ生きたい」
涙はきっと、そんな心のせめぎ合いからこぼれ落ちた。
リンク
リンク
※生活保護の申請・三部作
生活保護の申請。(1) -生活保護課への書類提出-
生活保護の申請。(2) -ケースワーカーによる家庭訪問-
生活保護の申請。(3) -民生委員による家庭訪問-
タグ:孤独 生活保護 すべてを失った 生きる 不安 恐れ 貧困 延命 命 悲しみ 恐怖 アスペルガー症候群 アダルトチルドレン 助けて 否定 寂しさ 就労移行支援 居場所 希死念慮 心の傷 無気力 生きていたくない 死にたい 消えたい 毒親 発達障害 自閉症スペクトラム
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