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2019年08月09日

酒臭い寝室からの脱出。

高校卒業まで過ごした実家では、
リビングルームの他にいくつか部屋はあったが、

なぜか6畳くらいの1部屋で
家族5人で布団を並べて寝ていた。

部屋の一番奥の布団が僕で、
母、妹、弟の順番は忘れてしまったが、
部屋の一番手前、出入り口の戸の近くは父だった。



朝方、僕は大きないびきと
部屋中に充満するアルコールの匂いで目が覚める。

寝相悪く布団を剥ぎ取った父が、
出入口の戸にしがみつき
大きないびきをかいて寝ている。

まだ明け方だが、耳を突くいびきの声と
ひどいアルコールの匂いから脱出したいので
寝ているみんなをそっと跨ぎながら戸を目指す。

父の戸へのしがみつき方によっては
起こさずに戸を開けることが難しいが、
僕は何とか音を立てずに戸を開けようと
おそるおそる引っ張ってみる。



「んー!んんんーー!!」



突然の唸り声とともに、戸を掴まれる。
驚いて心臓の拍動が一気に上がる。

怒らせてしまったか、それとも寝言か。
それとも抱き枕を取られた感覚だろうか。

そんな緊張感と闘いながらも、
再び戸の開放に挑戦し続け、何とか部屋を脱出。

だいたいその頃には日が昇りかけているが、
時刻はまだ5時半くらい。

リビングルームへ脱出した僕は
その辺に転がっている座布団やタオルケットを集めて
即席の寝床を作り、もうひと眠りにつく。

これが僕の、高校卒業までの明け方の過ごし方だった。



飲んで暴れる、暴力を振るう、絡み酒、各種上戸、
いわゆるアルコール依存症が進んだ時に
見られるような行動は、父はたぶんしなかった。

酔って誰かに絡みつくどころか、
いつも通り家では誰にも話しかけず、
どっしり腰掛けている姿が印象的だった。

※父に話しかける者も誰もいない。
 母でさえも無言でお酒や肴を出し、
 給仕する時以外はキッチンでの作業に没頭していた。



だけど、毎朝あれだけアルコールの匂いを
寝室中に充満させていたことを考えると、
毎晩かなりの深酒をしていたことは事実だろう。

だから僕は当時、21時までに布団に入ることへの
プレッシャーと闘いながら、

明け方にアルコールの匂いで目覚めるのも嫌で、
安心して寝られるとはどういうことかがわからなくなっていた。

→「懲罰教育、ルールが支配する家。
https://fanblogs.jp/yaritaikotohanokosazuyaru/archive/155/0



テストの採点や授業の準備といって
父のデスクがある部屋で徹夜で仕事をする時は

僕はアルコールの匂いが充満する部屋から
脱出しなくてもよかった。

この時は一応、ホッとするのだが、
逆に父の仕事部屋にはずっと灯りが点いていて、
リビングにいるといつ部屋から父が出てくるか
気が気ではなかった。

たとえ父が、机に突っ伏して寝ていると
わかっていても。

明け方にリビングに脱出して二度寝するのが
半ば習慣になっていたので、そういう時は
アルコールの匂いのしない寝室から勉強部屋の様子を伺い、
ここの方が安全と確かめてから二度寝していた。



直接危害を加えるでも、暴れるでもない、
酩酊状態かと言うとそうでもないし
仕事や生活に支障をきたす様子もない。

だから僕は、父がアルコール依存症だったのかは
正直言ってわからない。

母はお酒を一切飲まない人で、晩酌するでもなく、
「お酒は控えめにしなさい」みたいなことを言う者も
家には誰一人いなかった。

誰もがただ無言。
一人で煙草を吸い、一人で飲む父。

これが「あたたかい家庭」なのか、「普通の家族」なのか、
僕にはさっぱりわからなかった。

それよりも、明日の明け方どうやって寝室から脱出するか、
そちらの方が僕にとっては差し迫っていた。
”アルコール中毒の親”

自分たちを”ノーマルな家”のように見せかけようとする家族の態度は、
とりわけ子供の心を歪めてしまう。

なぜなら、子供は生まれつき自然なので、
家のことについては当然疑問がわくが、
そういう自分の感覚を無理やり否定しなければならないからだ。

自分が感じたり考えたりしていることと違うことを
絶えず自分や他人にいっていなくてはならない状態では、
自分に対する信頼感を育て、自信ある人間となることは不可能である。


『毒になる親』第四章 より



ただ1つ、僕の人生に役立ったことといえば、
アルコールの匂いを充満させながら
寝室の戸を抱え込む父の寝姿を見て、

僕はお酒に呑まれるようなことは
絶対にしないと誓えたこと。

そのおかげか、僕はお酒の席以外では
基本的にアルコールは摂取せず、自宅にもお酒がない。

お酒、煙草、ギャンブルのいずれにも
手を出さなかったことは大きなプラスになっている。

※アルコールの味と匂いが苦手で
 自分から進んで飲むことをしないのは
 子どもの頃に毎朝嗅ぎ続けて嫌だったからかも知れない。



ストレス、不安、恐怖、思い通りにならない子ども、
何かに逃げたくなる気持ちはわかる。

だけど、どうにかならなかったんだろうか。

あの無言家庭で、もし何かに救いを求めるとしたら
一体どうすればよかったんだろうか。

あの異常な集団を抜け出して
やり直すしか方法はなかったんだろうか。

僕を含め、勇気ある一言を誰も言わなかったのは
僕ら子どもにも責任があるのか、

それともアルコールは親の問題だからと
僕ら子どもは責任を感じなくてもよかったのだろうか。

繰り返すが、僕にはさっぱりわからない。

今言えるのは、あの空間、あの家庭、
あの集団は病的だったということ。


posted by 理琉(ワタル) at 17:54 | TrackBack(0) | 家族

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自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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