こんばんは。土斑猫です。
またブログの調子が悪くて非常にイライラしております。
お陰で一回書いた記事消えたし!!
全くどうなっとんねん!!
と言う訳で、「半分の月がのぼる空」2次創作、「想占(おもいうら)」第2話掲載です。
では、その前にコメントレス。
睦月猫八さん
お久しぶりです。
ネームが仕上げ終わりましたので「おくりん坊」にて送信しましたのでチェックをお願いします。
かなりセリフを曲げたり、削ったり、次ページに移動させたりしていますので、短縮版原文と照らし合わせて確認してくださいませ。
それでは、
ネームお疲れ様でした。そしてレス遅れてすいませんでした。
お返事はメールで送ったとおりです。
それでは本描きの方、頑張ってください。
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―2―
そんな事があった次の日―
「「あー。」」
僕と司はお互いの顔を合わせるなり、そう声を上げた。
「やっぱり。」
「来たんだ。」
二人の声が重なり合う。
僕らの傍らでは、それぞれ里香とみゆきが呆れた様な顔をして立っている。
「大丈夫だって言ってるのに。」
里香が溜息をつきながら言う。
「で、でもさ。」
「やっぱり、その・・・」
ばつの悪そうな顔をしながら、僕と司は頭をかく。
そんな僕達の様子を見て、里香がクスリと笑う。
「しょうがないな。じゃあ、皆で行こう。いいよね?みゆきちゃん?」
「え・・あ、うん・・・。」
戸惑いながらも頷くみゆき。
決まりだ。
僕達は連れ立って、目的の場所まで歩き出した。
その途中、里香がそっと身を寄せてきた。
何かと思っていると、僕の事をジト目で睨んできた。
何か、不機嫌そうだ。
「な、何だよ?」
「何で来たの?」
「何でって・・・」
「言ったよね?みゆきちゃんの事頼むって。」
「お、おぅ。」
「信用出来なかったの?あたしの事。」
そう言って、不満そうに口を尖らせる。
「いや・・・そういう訳じゃ・・・」
「じゃ、どういう意味?」
ジッと見つめてくる、黒い瞳。
僕は少しオドオドしながら答える。
「や、やっぱり心配だったから・・・。」
「ほら、やっぱり信用してない。」
ふくれっつらが、ますますむくれる。
「そうじゃねぇよ。」
「じゃ、何?」
「みゆきもだけど・・・その、お前の方も・・・」
「あたし?」
里香が、キョトンとした顔をする。
「裕一、自分で言ったじゃない。あたしはそんなのに引っかからないって。」
「そうは言ったけどさ・・・。」
上手い言葉が見つからない。
僕は頭をガシガシと掻き毟る。
「ほら、もしその占い師に柄の悪い連中とかついてたら・・・」
「はあ?」
そう。
昨夜、家で今日の事を考えているうちに、だんだんと心配になってきたのだ。
もし、件の占い師が里香がいう様な人物だったとしたら、その裏に黒幕がいるかもしれない。
例えば、上に“ヤ”の字がつく人とか。
もしそうだとしたら、流石にヤバイ。
心配し始めたら、もう止まらない。
妄想はドンドン進行した。
目をグルグル回しながら、怪しい笑みを浮かべる占い師が差し出す、これまた怪しげな壺やら石やらに手を伸ばすみゆき。
そんなみゆきの襟首を、引っ掴んで引っ張り出そうとする里香。
それを見た占い師が、指を鳴らす。
すると、後ろの垂れ幕の裏からゾロゾロと出てくる、柄の悪い黒服の男達。
いくら里香でも、その手の連中に力ずくで来られたら敵う筈もない。
男達に捕まる里香。
そして里香みたいな美人を、そういう奴らがそのまま放っとく筈もない。
そいつらは、自分達のボスの所に里香を連れて行く。(ちなみに、そのボスは革張りの豪華な椅子に座って葉巻を燻らせながら、膝に黒猫を乗せていたりする。)
ボスは里香を品定めする様に見つめた後、こう言うのだ。
「上玉だな。よし、外国に売り飛ば・・・
「裕一、漫画の見過ぎ・・・。」
里香が、半眼で僕を見ながら心底呆れた様に溜息をついた。
「だ、だってさ。分かんないだろ!?世の中何が起こるか・・・」
「そこまで行くと、ただの馬鹿だよ。」
見も蓋もない言われようだ。
「・・・とにかくさ、心配だったんだよ・・・。」
些かシュンとしながらそう言うと、不意に里香がクスリと笑った。
「な、何だよ・・・?」
「ホント、裕一は馬鹿だなぁ。」
クスクス笑いながら、里香は「馬鹿だ。馬鹿だ。」と繰り返す。
そんなに連呼する事もないだろう。
流石に僕がムッとしていると、右手にスルリと柔らかい感触が絡まってきた。
ドキリとして見ると、里香の左手が僕の右手を握っていた。
「そうか。裕一はあたしが心配か。」
里香はそう言うと、僕の顔を見た。
その顔からは先刻までの不機嫌さはきれいさっぱり消えていて、代わりに上機嫌を絵に描いた様な微笑みが浮かんでいた。
「じゃあ、しょうがないね。」
ニコニコと微笑みながら、里香が言う。
「お、おう。」
里香の機嫌が直って安心する気持ちと、やっぱり女はよく分からんという思いをごちゃ混ぜに感じつつも、僕もそう言って微笑み返した。
ふと前を見れば、司とみゆきが僕達と同じ様に手をつないで歩いている。
何か安心した様に身をゆだねているみゆきを見て、僕はホッと息をついた。
「うわ・・・。何だよ、これ?」
「すごいね・・・。」
目の前に広がる光景に、僕と司はそろって声を上げた。
件の占いの舘は、ビルの隙間にスッポリと納まる様にして立っていた。黒い外装に中世の洋館を思わせる作りで、「いかにも」な雰囲気を湛えている。
入り口の上には、こじゃれたデザインで「Fortune Silhouette」の文字。
正直言って、周りの風景からは浮いている感を拭えない。
だけど、僕達が驚いたのはそんな所ではない。
僕達が驚いたのは、その入り口から伸びる人の群。
なんじゃ、こりゃ。
延々と伸びるそれは、端っこが視界の遥か先。
休日とは言え、これじゃまるで、朔日餅販売日の赤福みたいだ。
しかも、並んでいるのがほぼ女ばっかり。
みゆきが、付添い人に里香を選んだ理由が分かる様な気がする。
確かに、この中に司みたいなゴツイ男が入っていたら目立つ事この上もないだろう。
実際、その群から一歩離れて見ている僕らも、何か落ち着かない様な居心地の悪さを感じていた。
ここは正しく、女の聖域なのだ。
それにしても見れば見るほど、列が長い。
これ、並んだとして順番が回ってくるのにどれだけ時間がかかるのだろうか。
僕は半ばうんざりしながら、里香に問いかける。
「なぁ。」
「何?」
「これ、並ぶのか?」
「並ばなきゃ、しょうがないじゃない。」
里香は何を当たり前の事を、と言う様な顔で答える。
「でもさ、これ、いつ順番が回ってくるか分からないぞ。」
「並ばなきゃ、永遠に順番は廻ってこない。」
「そりゃ、そうだけどさ・・・。」
ブツクサ言う僕を、里香は肘で突く。
「今更、『やめよう』なんて言えると思う?」
言われて見ると、みゆきがジッと人の列を見つめていた。
いや、正確にはその列の行きつく先。「Fortune Silhouette」の扉の奥を見つめているのだ。
その顔は酷く真剣で、何処か鬼気迫る雰囲気すらある。
もう、最後の望みはここにしかないとでも言いたそうな気配だ。
「・・・無理だな・・・。」
「でしょ。」
溜息をつきながら頷く僕に、里香が言う。
「とりあえず、あたしとみゆきちゃんだけで行ってくるから、裕一達はそこらへんで時間潰してて。」
「ああ。」
そして里香はみゆきの手を取ると、列の端っこへ向かう。
「おい、並んでる途中で具合悪くなったりしたら、すぐ連絡よこせよ!?」
「うん。分かってる。」
「中に入って、何かやばそうな雰囲気になったら、すぐ呼ぶんだぞ!?」
「うるさいなぁ。分かってるってば。」
そう言って、里香とみゆきは人の群の中へ加わっていった。
「やれやれ・・・。」
「裕一、ごめんね。」
司が申し訳なさそうに言う。
「お前が謝る事じゃないだろ。」
僕は列に並ぶ里香達を遠目に見ながら、頭をかいた。
その後、僕と司は舘の周辺の本屋やゲームセンターなんかをブラブラしながら時間を潰した。
「久しぶりだね。」
不意に司が言った。
「何が?」
クレーンゲームで中の景品とにらめっこをしていた僕は、振り向きもせずに言った。
もう少しで、クレーンの爪が狙っている景品に引っかかりそうなのだ。
景品はWWEの大スター、レイ・ミステリオの覆面だ。
当然、レプリカだけど、なかなか良く出来ている。
さっきから何度か挑戦して、ようやく爪がかかりそうな位置まで引っ張り出したのだ。
「こうやって、二人で遊び歩くの。」
司も、じっとクレーンの爪先を見つめながら続ける。
「そう言えば、そうだな。」
以前は休日になると、よく司や山西とつるんでこうやってダラダラと町中を遊び歩いた。
だけど、今は違う。
僕には里香が出来て、司にはみゆきがいる。
お互いがお互いに大切なものが出来て、時間の多くを彼女達と過ごす様になった。
それに加えて受験の時期が近づいて来るにつれ、僕たちが共にいる時間はますます少なくなった。
大学を受験するみゆきはもちろん、東京の料亭へ修行に出る司も、その準備で忙しくなったからだ。
身の回りの整理、引越しの準備、修行先への下見や挨拶、住む所の確保。
やらなければならない事は、いくらでもある。
生きる場所を変えるという事は、そういう事だ。
「・・・ねえ、裕一。」
クレーンの行き先を見守りながら、司が呟く。
僕はクレーンを操りながら、「ん?」と気のない返事をする。
5度目の挑戦。
操作に合わせて、クレーンがケージの右へと進んでいく。
「僕さ、大丈夫なのかな・・・。」
司の声が、不安そうな言葉を紡ぐ。
僕は、慎重にクレーンを動かすボタンを押す。
ここだろうか。
いや、もう少し右だな。
「こんな時、どうすればいいか、分からないんだ。」
僕はクレーンを横に動かすボタンから指を離すと、今度は縦に動かすボタンに指を乗せる。
「僕は、向こうに行った時、ちゃんと水谷さんを支えてあげられるのかな・・・?」
ボタンに乗せた指に、力を込める。
ウィーンという音を立てて、クレーンがゆっくりと奥にスライドを始める。
「ちゃんと、守ってあげられるのかな・・・。」
クレーンが動く。
奥へ。奥へ。
もう少し。もう少し。
「分からないんだ・・・。」
よし、ここだ。
僕は指を離すと、「つかむ」のボタンを押した。
クレーンが開き、ゆっくりと下に降り始める。
「何で・・・」
開いた爪が、マスクの上に被さる。
よし。いいぞ。いいぞ。
僕は、クレーンの先を注視する。
「何で僕は・・・」
爪が閉まる。
マスクの端を掴んだ。
下がる時と同じ様に、クレーンがゆっくりと上がり始める。
掴まれたマスクが、一緒に持ち上がる。
僕は、息をつめる。
爪の先に、プラプラとぶら下がるレイ・ミステリオ。
頬に付いた銀の鷹のマークが、照明の光を浴びてキラキラと光る。
持ち上がったクレーンが、動き出す。
ゆっくりと。ゆっくりと。
取り出し口に向かって、クレーンは進む。
もう10cm。もう5cm。
キラキラと光りながら進む、レイ・ミステリオ。
後、1cm。
「水谷さんの隣に、いるのかな・・・?」
ポトリ
マスクが、爪から外れた。
落ちたマスクは、取り出し口の筒にちょっとだけ引っかかると、そのままパサリと景品の群の中へ帰っていった。
「あ、惜しい。」
司がそう言って、アハハ、と笑った。
僕も、「ああ、ちくしょう。」と言って、ウハハ、と笑った。
アハハ、ウハハ、と僕達は笑い合った。
馬鹿みたいに、笑い合った。
♪♪♪♪♪〜♪♪♪〜♪♪♪〜
胸ポケットの中の携帯が声を上げたのは、その時だった。
続く