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2013年06月06日

―想占(おもいうら)1-2― (半分の月がのぼる空・二次創作作品)







 こちらが今回の後編になります。
 話の都合上、非常に短いですが・・・(汗)



半分の月がのぼる空〈8〉another side of the moon-last quarter (電撃文庫)

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 その日の帰り道、僕は自転車を押しながら里香と話していた。
 「で?結局行く事にしたのか?」
 「うん。何だか、一人で行くのは不安なんだって。」
 「不安?」
 その言葉に、僕は首を傾げる。
 「いろいろ言われて、変な宗教に勧誘されたり、高い開運グッズ買わせられたり・・・。」
 「おいおい!!そんなヤバイ奴の所なのかよ!?」
 慌てる僕に向かって、里香はやんわりと首を振る。
 「ううん。クラスに何人か行った娘がいて、その娘達に一応訊いてみたりはしたみたい。」
 「・・・で?」
 「そんな事は、なかったって。」
 何だ。
 ホッと胸を撫で下ろすと、今度は逆に疑問が湧いてくる。
 「そこまで調べてんなら、何でそんな心配してんだよ?」
 僕の問いに、里香は人差し指を唇に当てて考える素振りをする。
 「う〜ん。多分、理由付けなんじゃないかな?」
 「理由付け?」
 何の事だ?
 僕はまた首を傾げる。
 「ほら、みゆきちゃんって、今までそういう事に興味持たなかったでしょ。」
 そんな僕の疑念を察する様に、里香は話し出す。
 「それが、急に占いの舘(そんな所)に行くって決めて、何かこう、漠然とした不安が出てきちゃったんじゃないかな。」
 ああ、なるほど。
 未知に対する恐怖というやつか。
 それなら、分からなくもない。
 「だから、誰かに一緒にいてもらいたいんだけど、そんな不安説明のしようがないから、あんな分かりやすい理由付けをしたんだと思う。」
 なるほど。筋は通っている。
 恐らく、その通りなんだろう。
 それにしても・・・
 「そんなに不安なら、はなっから行かなきゃ良いのにな。」
 そんな言葉が、口をついて出る。
 だけど、それにも里香は首を振る。
 「駄目。もう“行かない”って選択肢が頭に浮かばないみたい。どう話しても、結局「行ってみてから・・・」って話に戻っちゃう。」
 ・・・まぁ、予測出来てた答えだ。
 そんな簡単に思い止まる程度なら、はなっからこんな選択選びはしないだろう。
 「・・・大分、煮詰まってんな。」
 「うん。」
 「・・・重症だな。」
 「うん。」 
 溜息をつく僕に倣う様に、里香も溜息をつきながら頷く。
 「だから、行く事にしたの。」
 「どういう事だ?」
 「言ったでしょ?みゆきちゃん、大分追い詰められてる。」
 「だな。」
 「今の精神状態じゃ、一人で行かせたら、そっちの方が危ないと思うの。」
 「何がだよ。その占い師、変な事はしてこないんだろ?」
 「それはその娘達から聞いた範囲内での話でしょ?もし、そいつが人を選んでたとしたら?」
 「あー。」
 里香の言わんとしている事が、ようやく分かった。
 里香は、件の占い師が猫を被っている可能性を危惧しているのだ。 
 もし件の占い師が訪れる客を見て、対応を変えているとしたら?
 遊び半分や、しっかりした意思をもった人間が相手の時には普通に応対して、これはと思った人物には掌を返した真似をしてくる事は充分に考えられる。
 占い師なんてものを商売にしているくらいだ。人の心理を読むのは得手だろう。
 大体、そういう霊感商法に引っかかるのは心身不安定な人間と相場が決まっている。
 今のみゆきなら、格好のカモだ。
 「だからね、行く事にしたの。」
 僕が事の次第を理解したのを察した様に、里香は改めてそう言った。
 「大丈夫か?」
 そんな話を聞くと、今更の様に不安になってくる。
 心配そうな顔でそう訊くと、里香はニコリと微笑む。
 「大丈夫。なんかやばくなったら、襟首掴んで引っ張り出してくるから。」
 「いや、それもだけど・・・それだけじゃなくてさ・・・」
 「何?」
 「お前まで、巻き込まれたりしないか?」
 その言葉に里香は少しキョトンとして、そして不敵な笑みを浮かべる。
 「裕一、あたしがそんなのに引っかかると思うの?」
 「・・・思わない。」
 考える前に、口が動いた。
 それを聞いた里香が、「でしょ?」と言ってアハハと笑う。
 僕も「だな。」と言って、ウハハと笑った。
 「わりぃな。」
 僕がそう言うと、里香が「何が?」と訊ねてくる。
 「みゆきの事。頼むよ。」
 僕の言葉に、里香はうんと言って頷いた。


                                             続く
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