令和になっても、この子は元気。
ロシアリクガメ。あまりにも居るのが当然過ぎて、あんまり出番がない。自分が高校生の時に、初めてのアルバイトで稼いだお金で買った個体。飼育を始めて、20年以上になる。当時は町の小さなペットショップで、9800円の扱い。ハムスターを飼う様な設備で、無造作に置かれていたのを覚えている。今では目にする機会も減り、値段も格段に高くなった。現地での個体数が、随分と減ったらしい。いい話ではないけれど、流通する個体数が減って値段が高くなったのは、個人的には良い事だと思っている。貴重で高価な存在になれば、ショップでの扱いも良くなる。ぞんざいな飼い方をする人も減る。高価なものほど、人は大事にするものだから。嫌な事だけど、それが真理。
で、ウチの子の話。我が家では、自分と一番目の弟以外は、基本爬虫類飼育には無関心である。って言うか、両親はヘビが嫌いだし、二番目の弟は両生類全般が苦手と来ている。故に、ケージが置けるのは自室のみ。お陰で、スペースが限られてなかなかに苦慮している。まあ、止めろと言われないだけ良しとすべきなのだけど。
そんな中、この子だけは我が家の爬虫類の中で唯一市民権を得ている存在。ケージも、廊下と言う共有スペースに置く事を許されている。母など、可愛いと言っては餌をくれているし。流石、カメは万人受けが良い。
毎年、冬季には冬眠する彼。保温はしているのだけど、季節が来れば必ず眠りにつく。身体のリズムが、そういう風になっているのだろう。で、この季節は冬眠明けと共に一番活発になる時期。
食べる。
食べる。
ひたすら。
食べる。
普段は小松菜やチンゲン菜を与えているけれど、この季節は野草を多く与える。特に、タンポポの花は大好物。庭に咲くモノを毎日、母が摘んでは入れている。
毎回、結構な量なのだけれど、ペロリと平らげてお代わりを催促する。あいも変わらずの健啖家。ウチに来て20余年。拒食なんてした事もない。
ひとしきり食べると、バスキングスポットで温まりながらうたた寝。目が覚めると、また食べる。これの繰り返し。穏やかと言えば、穏やかな毎日。
実は10年くらい前、彼には伴侶がいた。少し年下のメス。交尾もしたし、孵化はしなかったけれど産卵もした。けれど、彼女はもういない。彼の熱烈な求愛にストレスを感じて、状態を崩してしまった。気付いた時にはもう遅くて。隔離したケージの中で静かに逝ってしまった。
今だに悔やまれる、ミス。もう少し、早く気づいていれば。
以来、彼はずっと独りきり。
元来、爬虫類は孤独に生きるもの。一人である事を、苦にする筈もない。
それでもなぁ、と思う時はある。
彼が生命あるうちにもう一度、と。
まあ、彼がそれを喜ぶかは分からないし。単なる自分の自己満足だろうけど。彼の子供を見てみたい。そんな漠然とした思いは付いて回る。相手の宛もないけどね。
取り留めなくそんな事を思う自分の前で、彼は今日も眠りにつく。
夢に見るのは明日の食事か、それとも宛なき伴侶の事か。
まあ、前者でしょうけど。
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