最近、生き餌として「クロコオロギ」なるモノを使用している。
最初、charmさんのサイトでコレを見た時「フタホシコオロギ」じゃないの? と思った。調べてみると、このクロコオロギとやら、フタホシの中から特に大型になる個体を選別して増やし、差別化したものらしい。確かに確かに。最近ショップで飼うフタホシコオロギはみんな、一律に茶色で小振りなものばかり。
一昔前は、フタホシを買うと大体二種類が混じっていた。茶色で小振りなモノ。そして、黒くて大ぶりなモノ。あからさまに、見た目が違った。けれど、最近のフタホシには後者が混じっていない。なるほど。前々から「この二つ、別物じゃないの?」と思っていたのだが、業界でもそう思う方々がいた訳だ。
つまり、このクロコオロギとやらは、あの頃フタホシとして売られていた二種(どのくらいのレベルで違うのか分からないけれど)の内のクロデカの方という訳か。納得。
で、実際どんなものかと思って購入してみた。持った感想が、コレ↓
【良いところ】
・身が多い
多分、一番の長所がこれ。見てくれの通り、図体がデカイ。普通のフタホシと比べても一回りくらい大きいし、イエコと比べれば2倍くらいの大きさがある。多分、肉の厚みを考えたらオスのデュビア(成虫)と良い勝負なんじゃなかろうか。かなりのボリューム。一匹食べさせれば、かなりの量のエサを摂取させられる。レオパくらいの大きさのトカゲだったら毎日一匹食べさせれば十分な様な気がするし、一回の給餌で一回しか口を開けたがらない偏屈にも有効だと思う。
・水分が多い
これもかなりのもの。取り出して給餌のための下ごしらえ(後ろ脚取ったり)をしてると、結構な量の体液を吐き出して、指がベトベトに濡れてくる。不快な事この上もないが、それだけ水分が多いという事。あのムチムチの腹部、いっぱいに水が詰まってるんじゃないかと言う気がしてくる。つまり、こいつを食べればそれなりの量の水分が取れる。普通に水分補給の助けになるし、直接水を飲まずに餌から水分を摂取するタイプの生体には特に有効かもしれない。
・カロリーが高い(多分)
あくまで個人的な感想だが、他の二種のコオロギに比べてカロリーが高いと思う。産卵後のレオパや導入したばかりのトッケイに与えると、結構早く立ち直った。何か、地味に栄養つけたいけどピンクマウスは消化悪いし、ハニーワームは最後の手段としてとっておきたい。何て思っている人は使ってみるといいかも。
・扱いやすい
重量級。とにかく重量級。故に、動作が鈍い。とても、鈍い。イエコや普通のフタホシとは比べ物にならないし、下手すりゃデュビアよりとろい。買ってきてケージに移す時も、まず跳ねたりしないし、走って逃げようともしない。例え逃げたとしても、余裕で捕まえられる。これがイエコやレッドローチだと、地獄絵図になるところなのだが。故に、とても扱いやすい。感動する程に、扱いやすい。イエコに泣かされそうになった人にはオススメである。サイズが違うだろ? Mサイズ買っとけ(それでもきっと、肉は多い)。
【良くないところ】
・何か汚い
うん。何て言うかその、汚い。色々と、汚い。多分、身体に水分が満ち満ちているのが原因だと思う。掴むと、とにかく色んなものが溢れ出す。口からは濁った液体がポタポタと垂れるし、尻からはネットリとした糞が溢れ出る。排泄物も水分が多いので、場合によってはキープケージがメチャクチャ汚れる。死んだ場合の腐敗も早い上に凄まじいので、気が抜けない。清潔感で言ったらイエコの方がずっと上だし、デュビアやレッドローチに至っては神の創造物の様にすら思えてくる。
・やたらと凶悪
最大の問題点。
凶悪である。凶暴じゃなくて、凶悪。とにかく、気が荒い。と言うか、貪欲。普通のフタホシやイエコに比べて、明らかに肉に対する嗜好性が強い。従って、煮干しや乾燥イトミミズといった動物質のエサを与えると非常に喜ぶ。それだけならいい。それだけなら。問題は、その食欲の矛先が仲間や下手すりゃ飼育動物にまで及ぶところである。それなりに強健で、ちゃんとしたところで飼って、普通に管理していれば死なない。けれど、キープ時の死亡率は低くない。自分は、これを使用し始めてから半年。自然死(?)した個体はあまり見ていない。じゃあ、何で死ぬのか。話は簡単。共食いである。特に、脱皮中の個体が狙われる。毎朝、と言うか、毎回見に行く度に、ケージの中にこんなモノが転がっている。あ、グロ注意ね。
脱皮中を襲われた個体の成れの果て。胸部の筋肉部分を食われて、半死状態。美味い所を知っているらしい。憎々しい事、この上ない。中途半端に残すあたり、尚更イラつく。とりあえず、まだ生きてるし無駄にしたくないので、拾ってエサにしていくのだが、与えられる連中も複雑そうな顔をする。食い残しだと言う事が分かるのだろうか。
最悪なのは、その飢欲が飼育生体に向けられた時である。前々から、コオロギは生体を齧るのでバラ撒き給餌に使うべきではないと言われているが、そもそもその”コオロギ”というのは、最も古の餌虫。フタホシの事である。というか、その悪評も、当時フタホシに混じっていたコイツによるものじゃないかと言う気がしてくる。
襲う。ガチで襲う。特に、生体の調子が悪くて活性が鈍いとマズイ。ウチでは立ち上げ前のトッケイがやられた。件のトッケイ、壁に貼り付けずに床に這っていたのだが、目の前のコオロギを襲う素振りを見せた。当時、クロコの特性を把握していなかった自分は、「それなら、気の向いた時に捕食出来る様に」とフタホシと同じ感覚で後ろ脚をもいだクロコを三匹ほど放っておいた。そして、所用のために席を立ち、一時間程して帰ってくると……。
やられていた。トッケイの右後ろ足の指が、骨が出る程に齧られていた。慌ててコオロギを取り出したが、時すでに遅し。そのトッケイは、そのまま落ちてしまった。
悪いのは自分なのだが、正直この時はクロコに恐怖した。ここまで凶悪な餌虫は、野放しになったジャイアントミルワームくらいしか知らない。いや、機動力がある分、よりタチが悪いかも知れない。
クロコのこの性質、どうやっても緩和されない。満腹にしておいても、乾燥イトミミズみたいな動物質の塊を与えても駄目。どうあっても、彼らの生肉への渇望は収まらない。あな、恐ろしや。
・臭い
コオロギの宿命である。どうにもならない。
以上が、クロコオロギを使用した際に感じた事。
取り敢えず、野放しにさえしなければいい餌なので使用を続けている。食いつきもいいし。
ただ、油断は禁物である。この餌虫を使う場合、絶対に自由を与えてはいけない。必ずピンセットで与えるか、後ろ足を折って深い容器に入れる事。
面倒くさくても、努々忘れないでいただきたい。
自由を得た瞬間、奴らは凶鬼へと変わるのだから。
……まあ、素直にデュビアやレッドローチを使った方が精神衛生上良いと言えば良いのかもしれない。
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