2023年06月19日
文化庁のセミナー「AIと著作権」
文化庁のセミナー「AIと著作権」
「AIと著作権」をテーマにした文化庁のセミナーを受講しました。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/seminar/2023/
画像生成系AI(Stable DiffusionやMidjourney)で生成した創作物の取り扱いについて触れています。
「法律で新しく何かが決められた!」という話ではなく「こういう点に注意してね」という内容です。
私自身も次のような作品を出しているので、自分ごととして関心をもって拝見しました。
ファンタジー世界の歩き方
https://novelgame.jp/games/show/7217
『』はセミナーの資料原文をもとに書き起こしています。
・『AIを利用して画像などを生成した場合でも、著作権侵害となるか否かは、人がAIを利用せず絵を描いた場合などの通常の場合と同様に判断される』
例.人気キャラクターの絵をTシャツにプリントして販売するのはAIが描いた場合でも人が描いた場合でもNG
他者が描いた絵を、AIに読み込ませて(Image to Image)プロンプトで生成して類似の絵を作ることも、NGなわけです。このあたりは風潮的にやってはいけないと認識されていることと思います。
・『AI生成物に既存の著作物との「類似性」または「依拠性」が認められない場合、既存の著作物の著作権侵害とはならない。著作権上は著作権者の許諾なく、利用することが可能』
これは2段階に分かれています。
1段階:「類似性」とは似ているかどうか
AIで生成しても既存の著作物に似ていなければ問題なし。似ている場合は2段階目に進みます。
2段階:「依拠性(いきょせい)」とは、似ているとされる著作物に影響を受けているかどうか。
影響の有無は当事者が知っていた、いないの自己申告ではなく、時系列上、知りえたかどうか、などが争点になるそうです。
たとえば著作物よりも早く作っていれば知りえないので、依拠性はないと言えるわけですね。
・『私的に鑑賞するための画像などを生成する行為は、権利制限規定(私的使用のための複製)に該当。
著作権者の許諾なく行うことが可能(法第30条第1項)』
『権利制限規定に該当する場合は、類似性、依拠性があったとしても著作権侵害にはならない』
例.イラストを練習するために、有名クリエイターの画像の別構図を生成するぶんにはOK
例.著作物の類似性と依拠性が認められる画像投稿や販売は著作権侵害となりNG
『依拠性の有無は裁判所により判断されるが、文化庁としてもAI生成物の場合の考え方を整理し、周知を進めていきます』とのこと。
検討事項の例とは次の通り。
例.AI利用者がImage to Imageで既存著作物を入力した場合は、依拠性が認められるのではないか
例.特定クリエイターの作品を集中的に学習させたAIを用いた場合と、そうでない場合とで依拠性の考え方に違いは生じるのか
2022年のMidjourney初期はプロンプトでMakoto Shinkai(新海誠さん)、Studio ghibli(スタジオジブリ)が多くみられましたが、著作権の観点でも避けた方が良いでしょう。
私も意識してクリエイター名が含まれるプロンプトを使わないようにしています。
・『著作権を持つ側の著作権侵害に対する民事・刑事の制裁』
これは自分が著作権の所有者の場合にとれる行動です。
-侵害者の故意・過失を問わず:差止請求ができる
-侵害者に故意・過失がある場合:損害賠償請求ができる
-新会社に故意がある場合:刑事罰(10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金)
大前提は著作物と知ってアップロード、販売しないことと言えましょう。
たとえるなら「NO MORE 映画泥棒」や「漫画の違法ダウンロード」のようなものですね。
・『AIが自律的に生成したものは著作権に該当しない』
例.人が指示を与えず(または簡単な指示を与えるにとどまり)、Generateボタンを押すだけでAIが生成したもの
・『人が思想感情を創作的に表現するための「道具」としてAIを使用したものと認められれば、著作物に該当し、AI利用者が著作者となると考えられる』
(著作権審議会 第9小委員会(コンピュータ創作物関係)報告書
これは以前から争点になっていた点ですが、プロンプト自体に創作性が認められるような複雑なものは、AIを使ったとしても著作権が生じうるという点だと思います。
一方でどんなに独創的なイラストをAIに描かせても、Image to Imageで他者に模倣される可能性はあります。
そうなったときに著作権を主張できる、ということかと思いますが、現実的かなあと懐疑的です。
自分が著作権を持つことにこだわるよりも、他者の権利を侵害しないように意識を割いたほうが良いと思います。
・『人がAIを「道具」として使用したといえるか否かは、人の「創作意図」があるか、および、人が「創作的寄与」と認められる行為を行ったか、によって判断されます』
・『「創作意図」とは、思想または感情を、ある結果物として表現しようとする意図を指します』
・『どのような行為が「創作的寄与」と認められるかについては、個々の事例に応じて判断することが必要ですが、生成のためにAIを使用する一連の過程を総合的に評価する必要があると考えられます』
よく拝見するAIに関する意見であり、大事だなあと思う点です。
クリエイティブな用途でAIを活用して、新しいものを作ろうよということだと解釈しています。
そもそもITやAIを活用して国の生産性を高めることは、2001年の国のIT戦略で決まったことなので、AIの利活用は既定路線なのですよね。
・その他、私の感想
著作権を侵害しないAI作品の販売はNGではありませんが、AIにより低コストで絵を描いて人の商業活動を圧迫するという弊害があります。
この点については触れられず、販売プラットフォーム側が個別に慎重な対応(規制)をしています。
※DLsiteもBOOTHも、2023年6月執筆現在、画像生成AIによる画像だけを販売することは制限しています
AIを利用して得られる著作権は簡単に模倣される面もあるため(Image to Imageで利用されてしまう、プロンプトを知ればいい、など)、自分のアイディアと組み合わせて面白さを作り出したり、AIで得られた時間で本来自分のしたいことをする、といった使い方が良いのではないかなと思う次第です。
「AIと著作権」をテーマにした文化庁のセミナーを受講しました。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/seminar/2023/
画像生成系AI(Stable DiffusionやMidjourney)で生成した創作物の取り扱いについて触れています。
「法律で新しく何かが決められた!」という話ではなく「こういう点に注意してね」という内容です。
私自身も次のような作品を出しているので、自分ごととして関心をもって拝見しました。
ファンタジー世界の歩き方
https://novelgame.jp/games/show/7217
『』はセミナーの資料原文をもとに書き起こしています。
・『AIを利用して画像などを生成した場合でも、著作権侵害となるか否かは、人がAIを利用せず絵を描いた場合などの通常の場合と同様に判断される』
例.人気キャラクターの絵をTシャツにプリントして販売するのはAIが描いた場合でも人が描いた場合でもNG
他者が描いた絵を、AIに読み込ませて(Image to Image)プロンプトで生成して類似の絵を作ることも、NGなわけです。このあたりは風潮的にやってはいけないと認識されていることと思います。
・『AI生成物に既存の著作物との「類似性」または「依拠性」が認められない場合、既存の著作物の著作権侵害とはならない。著作権上は著作権者の許諾なく、利用することが可能』
これは2段階に分かれています。
1段階:「類似性」とは似ているかどうか
AIで生成しても既存の著作物に似ていなければ問題なし。似ている場合は2段階目に進みます。
2段階:「依拠性(いきょせい)」とは、似ているとされる著作物に影響を受けているかどうか。
影響の有無は当事者が知っていた、いないの自己申告ではなく、時系列上、知りえたかどうか、などが争点になるそうです。
たとえば著作物よりも早く作っていれば知りえないので、依拠性はないと言えるわけですね。
・『私的に鑑賞するための画像などを生成する行為は、権利制限規定(私的使用のための複製)に該当。
著作権者の許諾なく行うことが可能(法第30条第1項)』
『権利制限規定に該当する場合は、類似性、依拠性があったとしても著作権侵害にはならない』
例.イラストを練習するために、有名クリエイターの画像の別構図を生成するぶんにはOK
例.著作物の類似性と依拠性が認められる画像投稿や販売は著作権侵害となりNG
『依拠性の有無は裁判所により判断されるが、文化庁としてもAI生成物の場合の考え方を整理し、周知を進めていきます』とのこと。
検討事項の例とは次の通り。
例.AI利用者がImage to Imageで既存著作物を入力した場合は、依拠性が認められるのではないか
例.特定クリエイターの作品を集中的に学習させたAIを用いた場合と、そうでない場合とで依拠性の考え方に違いは生じるのか
2022年のMidjourney初期はプロンプトでMakoto Shinkai(新海誠さん)、Studio ghibli(スタジオジブリ)が多くみられましたが、著作権の観点でも避けた方が良いでしょう。
私も意識してクリエイター名が含まれるプロンプトを使わないようにしています。
・『著作権を持つ側の著作権侵害に対する民事・刑事の制裁』
これは自分が著作権の所有者の場合にとれる行動です。
-侵害者の故意・過失を問わず:差止請求ができる
-侵害者に故意・過失がある場合:損害賠償請求ができる
-新会社に故意がある場合:刑事罰(10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金)
大前提は著作物と知ってアップロード、販売しないことと言えましょう。
たとえるなら「NO MORE 映画泥棒」や「漫画の違法ダウンロード」のようなものですね。
・『AIが自律的に生成したものは著作権に該当しない』
例.人が指示を与えず(または簡単な指示を与えるにとどまり)、Generateボタンを押すだけでAIが生成したもの
・『人が思想感情を創作的に表現するための「道具」としてAIを使用したものと認められれば、著作物に該当し、AI利用者が著作者となると考えられる』
(著作権審議会 第9小委員会(コンピュータ創作物関係)報告書
これは以前から争点になっていた点ですが、プロンプト自体に創作性が認められるような複雑なものは、AIを使ったとしても著作権が生じうるという点だと思います。
一方でどんなに独創的なイラストをAIに描かせても、Image to Imageで他者に模倣される可能性はあります。
そうなったときに著作権を主張できる、ということかと思いますが、現実的かなあと懐疑的です。
自分が著作権を持つことにこだわるよりも、他者の権利を侵害しないように意識を割いたほうが良いと思います。
・『人がAIを「道具」として使用したといえるか否かは、人の「創作意図」があるか、および、人が「創作的寄与」と認められる行為を行ったか、によって判断されます』
・『「創作意図」とは、思想または感情を、ある結果物として表現しようとする意図を指します』
・『どのような行為が「創作的寄与」と認められるかについては、個々の事例に応じて判断することが必要ですが、生成のためにAIを使用する一連の過程を総合的に評価する必要があると考えられます』
よく拝見するAIに関する意見であり、大事だなあと思う点です。
クリエイティブな用途でAIを活用して、新しいものを作ろうよということだと解釈しています。
そもそもITやAIを活用して国の生産性を高めることは、2001年の国のIT戦略で決まったことなので、AIの利活用は既定路線なのですよね。
・その他、私の感想
著作権を侵害しないAI作品の販売はNGではありませんが、AIにより低コストで絵を描いて人の商業活動を圧迫するという弊害があります。
この点については触れられず、販売プラットフォーム側が個別に慎重な対応(規制)をしています。
※DLsiteもBOOTHも、2023年6月執筆現在、画像生成AIによる画像だけを販売することは制限しています
AIを利用して得られる著作権は簡単に模倣される面もあるため(Image to Imageで利用されてしまう、プロンプトを知ればいい、など)、自分のアイディアと組み合わせて面白さを作り出したり、AIで得られた時間で本来自分のしたいことをする、といった使い方が良いのではないかなと思う次第です。
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posted by tabirpglab at 20:35
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