2018年03月01日
「株高の裏で、「金融所得」増税が浮上している」という記事を読みました
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東洋経済オンラインの記事です
金融関係のネタは一通り捕捉しているつもりですが、株などに関しては既に卒業(逃亡?)した身ですので
通り一遍の知識として以外には、今のところそれほど興味がありません。
今のマイブームはもちろんソーシャルレンディング、そして広いくくりクラウドファンディング。
あとは見ていて飽きない仮想通貨と、リタイア後を占う上での国家方針や税制の話題です。
そんな中で一つ、今回は税制の話題。
東洋経済オンラインに金融所得の話題が出ていました。
リタイア後の私の主力所得となるはずの金融所得。その増税の可能性が浮上しているということで、興味を
持って見る事にしました。
・株高の裏で、「金融所得」増税が浮上している (東洋経済オンライン)
まずはいつもの通り、筆者の確認から。
筆者は土居 丈朗氏。慶応大学の経済学部教授です。
これまでの遍歴や著書の内容を拝見するに、政治的な立場については特に表明していないようです。
お考えについてはちょっと悲観側に傾いているような気もしますが、特定の政権を批判するのではなく、
政策を批判しているように見受けられます。
私の見た限りでは、かなりニュートラルな現実主義者ではないでしょうか。
・土居丈朗のサイト (慶応大学Webサイト)
金融所得に関する税制大綱
まずは、平成30年度の税制大綱として、与党大綱に記載された内容です。
金融所得に対する課税のあり方については、家計の安定的な資産形成を支援するとともに税負担の垂直的な公平性等を確保する観点から、関連する各種制度のあり方を含め、諸外国の制度や市場への影響も踏まえつつ、総合的に検討する。
前半部の「家計の安定的な資産形成」とはNISAやiDeCoなどの税制優遇措置を指し、後半部の「税負担の
関連する各種制度のあり方の検討」とは暗に金融所得増税を指している、と筆者はおっしゃっています。
なぜ今、金融所得増税かという疑問に対し、筆者の答えは「それしかない」という明確なもの。
所得格差を是正するための方法は、もはやそれしか残されていないという回答です。
これについて私としては、若干の異論はあるものの、現実的で効果的な方法としては正しいと考えます。
所得格差の是正を行う方法は、大きく分けて3つあると思います。
@高所得層の所得を落とす
A低所得層の所得を増やす
B万人の所得を増やす
このうち、Aはその財源をどこから持って来るんだ、という議論無しには済ませられません。
Bはいわゆるベーシックインカムというもので、これはなおのこと財源の議論が必要になります。
(国民年金と生活保護を全廃して消費税率を上げれば可能かもしれませんが、現実的ではないと思います)
私は個人的にはベーシックインカム賛成派+安楽死施設賛成派ですが、この考えが日本の主流となる日は
私が生きている間には来ないだろう、と予想しています。
となれば、答えは@しかありません。
だったら既に累進課税があるじゃないかとも思いますが、本当の高所得者は金融所得がメインのため、
累進課税による税率上昇を逃れているのが問題なのだそうです。
累進課税税率と、実際の税負担割合
では、本当にそうなのかを見ていきます。
まずは累進課税の税率から。日本の税率は所得により、最大で45%(+住民税10%)となります。
これに対し、実際の所得税負担率は以下の通り。
5,000万〜1億の所得税負担率と、1億円以上の負担率が逆転している事が分かります。
(国税庁「申告所得税標本調査」 平成27年度より抜粋
https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/shinkokuhyohon2015/hyouhon.htm)
これは、高額所得者の大半の収入源が累進課税のある総合課税ではなく、いくら収入があっても20%
(+復興税)となる配当や利息などの金融所得から来ている事によります。
ちなみに課税所得1億円が全て累進課税の所得課税だったとすると、その実効税率は40.2%です。
この事からも、1億円以上の所得源の大半は金融所得であることが分かります。
確かに事実は確認されましたので、税収アップのためにはこの部分に課税強化するというのは妥当な選択で
あると言えるでしょう。
(それ以前に無駄遣いどうにかしろとか人員削減とか業務効率化とか、やるべきことは多々ありますが、
ここではあくまでも税収アップのみを考えます)
金融課税の総合課税は望ましくないと言うけれど
もう一つ引用します。
いっそのこと、金融所得も他の所得と合算(総合課税)して累進課税すればいい、と思うかもしれない。だが、これは他の先進国でも採用しない趨勢にあり、望ましくない。
グローバル化がますます進み、デリバティブなど金融技術が高度化する中で、金融所得に対する累進課税は実効性がなくなっている。仮に、高度な金融技術を使うと収入を得るタイミングを自由に変えられる金融所得に対し、累進課税をすれば、高率で課税されないように節税技術ばかりが発達してしまう。
これについては、個人的には賛同は微妙なところです。
確かに他国と比べた場合、利子所得はともかく譲渡所得は分離課税の国が多いようですが、そんなものは
各国のお国事情一つのことですので、特段世界がどうとかを気にすることはないと思います。
正直、私は全ての所得を総合課税にするべき、という意見です。
↓各国の利子所得に対する課税状況
↓各国の譲渡所得に対する課税状況
(出典:財務省 http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/financial_securities/index.htm)
キャピタルゲイン投資を考慮して複数年(できれば10年以上単位)での損益通算は残しておくべきだと
思いますが、基本は「所得の種類によらず同税制」が公平ではないでしょうか。
別に、儲けた金額以上取られるわけではありませんし。
そんなことをすればキャピタルフライトが、という声もありますが、マイナンバーをきっちり運用すれば
出国時に引っかけられるわけで、要はやり方次第だと思います。
感想
金融所得に対する税率を引き上げつつ、NISAやiDeCoを拡充すること。そうすれば、それら上限額の枠内で収まる程度に株式投信などに運用する人にとって、税率引き上げの影響はほとんどなく、上限額を上回るほど多くの額の運用をする人にとっては、税率引き上げの影響が及ぶ結果になることが予想される。上限額を上回るほど多くの額を運用する人は、運用益が得られるときには高所得者になる人だ。
と著者は意見を述べておりますが、これも妥当な意見だと思います。
いずれにせよ、所得税の逆進性がまだ残っている以上、そして国の財源が足りていない以上、金融所得も
早晩なんらかの増税があると考えるのが自然でしょう。
増税などけしからん、まずは支出を抑えろ、という意見はごもっともですが、心情的にはともかく実際は
支出を抑える事と収入を確保する事は独立として議論されています。
支出を抑えろと意見するのは自由ですが、おそらくそれで増税路線が変わる事はないでしょう。
リタイア前はともかく、リタイア後の家計は税制の影響を受けやすいです。
今のところソーシャルレンディングは雑所得ですので直ちに影響はないのですが、色々なパターンを考慮
して、想定外が起きないリタイアスケジュールを組む必要を再確認しました。
最後に、関連記事のご紹介です。
ソーシャルレンディングの税制と節税案につきましては、下記の記事も併せてご覧下さい。
・ソーシャルレンディングの税負担:リタイア後で比較してみた
・世界中の欲しい物やサービスを「3割引」で入手する方法
ランキングに参加しています。
リンク先には同じ話題を取り扱うブログが沢山あります。こちらもいかがでしょうか。
posted by SALLOW at 10:00
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コメントありがとうございます。
そうですね、デフレ下での増税は悪循環というのは同意見です。
ただ日本の場合、財政規律に異常に拘るお役人がいますので、今後の歳出の増加を考えますとおそらく増税は粛々と行われると予想しています。
黒田総裁はなんとかインフレに持っていこうとしているようですが、どうでしょうね。
私の予感では、分の悪い賭けのように思います。
インフレターゲットが成功して国の借金が目減りするならそれはそれでよし、もしインフレにならないなら財産貯めている方が有利なので、それはそれでよし、だと思っています。
問題は、国が最後の手段である財産課税を行うかどうか。ここだけは注視しているところです。
デフレ下の増税は意味が有りません。
なぜなら、国は通貨発行権を持っているから、
お金には永遠に困らないからです。
他の諸外国並みに2%〜3%のインフレを許容するならば、
そうなるまでお金を刷って使っても良い。
増税は消費低迷によるGDPの縮小を招く。
またデフレに逆戻りです。
コメントありがとうございます。
なるほど、勉強になりました。
だとすると、そもそも事業所得や給与所得などの労働所得と、不動産や配当(譲渡)所得などの不労所得の間での損益通算ごと廃止すればいいかもしれませんね。
乱暴な手ではありますが、労働所得と不労所得を分けるというのは、(論理性はさておいて)日本人の感情には刺さりやすい言い方ではないでしょうか。
信用で両建てして、含み損の方だけ決済するとか。
長期的には税収は変わりませんが、短期的には、税収が減るでしょう。