2017年08月07日
【推定&計算してみました】ソーシャルレンディングの貸倒率と、案件分散の有効性
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はじめに
ソーシャルレンディング投資初心者向け記事の第五弾です。
ただ今回の記事は、書いているうちに初心者向けなのか何なのか良く分からなくなってきました。
内容としましては、
・ソーシャルレンディングの貸倒率を推定してみる
・推定した貸倒率から統計学的手法を使って、案件分散の有効性を計算してみる
の2本立てです。後半は少し数式を使います。
なお、過去の初心者向け記事は以下の通りです。よろしければ併せてご覧下さい。
・なるべく客観的なまとめ:SL初心者にお勧めの事業者
・SL投資における分散投資のススメ
・ソーシャルレンディング案件の評価ポイント6つ(私の場合)
・ソーシャルレンディング案件における不動産担保の評価ポイント5つ(私の場合)
貸倒率の推定
まず、貸倒率の推定です。
「ソーシャルレンディングはハイリスクとは言うけど、実際にどのくらい貸し倒れが起きているの?」
という疑問は、誰もが抱くものだと思います。
とは言え、ソーシャルレンディングにおいて案件のデフォルトというのは、個人向けP2Pレンディングを
除いてはほとんど起きていません。
(デフォルトしかかっている案件が1つ、吹き飛びかかっている事業者が1つ、あとは
以前に返済遅延がいくつか起きた程度でしょうか)
そのため、一投資家の身で貸倒率を推定するのは難しいものがあります。
であれば、ソーシャルレンディング事業者がどう考えているかを知るのが手っ取り早いです。
実際に、maneoの決算公告を覗いてみる事にしました。
・maneo 財務情報
最新の「2017年maneoマーケット株式会社決算書(連結)」を見ますと、以下のデータがありました。
・匿名組合出資金 15,850,130千円
・貸倒引当金 97,335千円
(maneoの該当ページより一部抜粋)
貸倒引当金は、出資金の約0.6%です。
貸倒が起きても元本が全損するとは限らないので、貸倒率は想定している回収率で割る事になります。
(例:貸倒が起きた時の回収率を50%と想定している→案件のデフォルトは1.2%と見込んでいる)
maneoが想定している回収率までは分かりませんが、この決算書から推定できることは
「maneoは、1年で出資金の約0.6%が回収不可能になる可能性があると判断している」
ということだと思います。
案件分散の有効性
では次に、案件分散の有効性について考えます。
ソーシャルレンディングにおいて一定割合のデフォルトが避けられないのであれば、「投資の成功」は
次のように定義されると思います。
・「投資の利回り>デフォルト率」となる確率が十分に高いこと
この「投資の成功」に、案件分散が有効であることを証明したいと思います。
まず、前提条件は以下の通りです。
ちょっと現実離れしている条件もありますが、計算を簡略にするためですので目をつぶって下さい。
・分散する案件には、全て同じ金額ずつ投資するものとする。
・回収不可能となる可能性は、前述の通り0.6%で計算する。
・投資利回りは税引後5%とする。
この条件から、「投資しているうち何件が回収不能になったら投資失敗になるか」が分かります。
ケーススタディと統計学
投資による利回りは年5%ですので、回収不能となる金額が投資金額の5%を超えれば投資失敗です。
投資する案件の数と、投資の成功/失敗のボーダーラインは次の通りとなります。
@投資している案件が10件の場合
→1件回収不能になるだけで、投資金額の10%が削れるため、投資は失敗。
A投資している案件が20件の場合
→1件回収不能になると、投資金額の5%が損なわれる。
5%の損失は利回り(年利5%)と同じため、投資結果はトントンとなり、失敗。
21件に投資していれば、1件回収不能でも投資成功になる。
B投資している案件が100件の場合
→5件回収不能になると、全案件数(=投資金額)の5%が損なわれるため、投資失敗。
回収不能案件が4件以下なら成功。
C投資している案件が200件の場合
→10件回収不能になると、全案件数(=投資金額)の5%が損なわれるため、投資失敗。
回収不能案件が9件以内なら成功。
ここで統計学の出番です。
確率xで起こる事象が、n回試行する間にy回起こる確率Pyは、次の式で求められます。
(今回、xは貸倒率なので0.6%、つまり x = 0.006です)
Py = nCy * x^y * ( 1 - x )^( n - y )
高等数学を修めている方には釈迦に説法ですが、CはCombinationの略で、nCyはn通りからy通りを選ぶ
選択肢の数のことです。
数式としては、nCy=( n*( n - 1 )*( n - 2 )・・・( n - y + 1 )) / ( y*( y - 1 )*( y - 2 )・・・* 1)
で求められます。
実際の計算と、分散の有効性の証明
@の場合は1件回収不能で即失敗なので無視するとして、Aの投資案件数が21件の場合を考えます。
案件数21件の場合、投資が成功するのは回収不能が0件か1件の場合ですので、その確率は次の通りです。
P0 = ( 1 - 0.006 )^21 = 0.8813 ← 回収不能が0件になる確率
P1 = 21C1 * 0.006^1 * ( 1 - 0.006 )^( 21 - 1 ) = 0.1117 ← 回収不能が1件になる確率
P0 + P1 = 0.9930 成功確率:99.3%
投資成功確率は99.3%という値が出ました。
高いように思えますが、これは利回りがプラスになる確率であって、0.1%でも利益が出ればOKという
条件です。当初の期待通りの利回りが出る確率ではない事にご注意下さい。
当たり前の事ですが、案件数を増やせばその分だけ回収不能のリスクは増えます。
数件が回収不能になるリスクを冒しても、全体として利回りをプラスにするのが、分散投資の本義です。
では次に、Bの場合、案件数100件を見てみましょう。
この場合は5件以上の回収不能で投資失敗となるので、回収不能が0〜4件であれば投資成功です。
P0 = ( 1 - 0.006 )^100 = 0.5478 ← 回収不能が0件になる確率
P1 = 100C1 * 0.006^1 * ( 1 - 0.006 )^( 100 - 1 ) = 0.3307 ← 回収不能が1件になる確率
P2 = 100C2 * 0.006^2 * ( 1 - 0.006 )^( 100 - 2 ) = 0.0988 ← 回収不能が2件になる確率
P3 = 100C3 * 0.006^3 * ( 1 - 0.006 )^( 100 - 3 ) = 0.0195 ← 回収不能が3件になる確率
P4 = 100C4 * 0.006^4 * ( 1 - 0.006 )^( 100 - 4 ) = 0.0029 ← 回収不能が4件になる確率
P0 + P1 + P2+ P3 + P4 = 0.9996 成功確率:99.96%
同様に計算をすると、案件数200件(私と同じくらいです)の場合、成功確率は99.9999%になります。
ここでは、投資成功を利回りがプラスであると定義しました。
仮に、投資成功を利回りが当初予定(5%)の半分以上と定義した場合、成功確率は
100件分散で97.73%、200件分散で99.24%となります。
まとめ
以上、長い上に数式まで使った記事になりましたが、言いたい事は二つです。
一つは、「ソーシャルレンディングにおける案件分散は非常に有効である」ということ。
匿名性のために案件のリスクを正確に評価できないのであれば、貸倒率を統計的に見ることができるまで
徹底的に分散投資してしまえばいい、ということです。
もう一つは、この計算で無視していた重要な要因。
それは、「事業者の吹き飛ぶリスクだけは、分散しきれない」ということです。
現在、ソーシャルレンディング業者は約20。全事業者に均等分散しても、一つの事業者で5%の損失です。
このリスクをどう判断して、どう軽減するかが肝となってくるでしょう。
あくまでも個人の判断ですが、「おそらく安全性が高い業者」については以下の記事で紹介しています。
よろしければ、併せてご覧下さい。
・なるべく客観的なまとめ:SL初心者にお勧めの事業者
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リンク先には同じ話題を取り扱うブログが沢山あります。こちらもいかがでしょうか。
posted by SALLOW at 09:20
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