2019年07月21日
手を出さない勇気が効率経営には必要だ!
経営者の我欲が強いと、消費者のあらゆるニーズに応えようと、あれもこれもの足し算経営になり、固定費が膨らみ損益分岐点の高い経営を強いられることになる。「組織は戦略に従う」だから、組織も肥大化し、業務や意思決定システムのも複雑になり停滞する。このような何でもあるは、顧客にとって中途半端に映るもの。何の会社と問われて即答できない会社は社員も困るはずだ。
日本の家電業界などは最初に「技術ありき」で、新商品の開発、新機能や機能の多さを競っており、「技術が市場を制する」という意識で技術戦略を展開していた。日本製品の国際競争力の低下は、機能や商品ラインナップを足すことで付加価値を生み出そうという、「足し算的な発想」がひとつの要因だとも言われている。
時代は、「量」から「質」へ、「機能」から「情緒」へ、「もの」から「こと(体験)」へ動いている。にも関わらず、未だに日本企業の多くは、何かを足し算することで付加価値を創出しようとしている。
「生産量を増やそう。品ぞろえを拡大しよう。機能を追加しよう。事業領域を拡大しよう。商品が増えたからターゲットを拡大しよう」と増やす発想ばかりだ。
増やすことで失うことがあることを認識せねばならない。
売上を増やそうと、商品や機能などを「これでもか」と足し算し続けて、買手が必要としてない過度なハイスペックと高単価商品で、汎用性が失われ、日本国内でしか通用しないといったガラパゴス化になってしまう。
一つのことを極めれば、強固な経営体質になるが調子に乗って、あれもこれもと手を広げれば経営資源が分散し、各分野では競争力に劣り、結局は負け犬事業の寄せ集めになるだろう。
「二兎を追う者は一兎をも得ず」で、欲を出して同時に二つのことをうまくやろうとすると、結局はどちらも失敗することになってしまう。また、一つの物事に集中せずあちらこちらに気を取られることによる経営の失敗を招くことになる。
経済が成熟化し人々のニーズが個性化・多様化・高度化・複雑化する中で、あらゆるニーズにこたえようと思ったら、あれもこれもと商品のラインナップが増えてくる。
新しいものを創造するには足し算が必要だと思っがちだが、足していくほどに無駄が増えていき、本質を見失ってしまうもの。
「シンプル・イズ・ベスト」で経営は引き算が最適な場合が多い。何でも足して組織が肥大化すると、上層部に人が増えすぎると話が複雑化してしまい、仕事の流れが停滞してしまう。環境変化が激しい中で迅速な意思決定ができない組織は致命傷だ。
本来なら単純な話も上層部の人が多く関わると複雑になり、スムーズにいかなくなる。スピード経営を実現するならこういう無駄は徹底排除せねばならない。足し算で行き詰まったら、引き算していくのも経営のやり方で、引き算して残ったものが重要なカギを握っていると捉えることができる。
飲食店で例えれば、何でもあるは中途半端な店で店の個性や特徴が発揮しにくい。メニューが豊富でおすすめメニューがたくさんある飲食店は、一見喜ばれるが、かえってメニューを選ぶのに迷ってしまい、お店の魅力が薄れてしまうものだ。
高度経済成長の時代に豊富なメニューのファミリーレストランの人気が高かったが、成熟経済の中では専門化志向が強く、豊富な標準商品では消費者のニーズには合致しないであろう。あれもこれもの品揃えでは管理も難しく、且つ、味のこだわりなど専門化の追求はできず、総てが中途半端な商品の寄せ集めで商品力全体が脆弱になる。
それならばメニューを絞り込み、専門店にして究極の商品に経営資源を集中配分した方が商品力も強化できて、お客さんに何が売り物の店なのかを伝えやすいだろうし、常連客の固定客化も容易だ。
他の店が流行っているから自店でもメニューに採用しようと増やすと、既存食材を活用できるのならいいが、新たな食材を仕入れるとなると在庫の負荷がかかり、また新たに調理方法を習得しなければならず、ある程度習熟度合いが高まらなければお客さんには提供できないだろうし、他調理人もできるようにするには調理マニュアルも必要、加えて新たに什器備品が必要となれば資産の増加になる、といったように店の負担が大きくなるものだ。
何でもあるは一見お客さんにとって選択肢が豊富で、幅広い顧客層にアプローチできると考えがちだが、ターゲットが絞られず中途半端になってしまうことを再認識しなければいけない。
引き算で絞り込みターゲットを明確にしたブランディングも重要である。何でも付加する事が付加価値経営ではない。そこを誤り経営判断してはいけない。
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