2020年08月08日
とある科学の超電磁砲T 17話感想 正義の味方・白井黒子を真っ直ぐに描いた英雄譚
第17話「予知」
※原作未読の方はコメントオフでの視聴をオススメします。
あらすじ
美山が予知した惨劇を変えるには黒子の空間移動が必要であり、二人は協力して抑止にあたる。
美山は大規模な火災を予知するが、能力を酷使した影響で倒れてしまう。
黒子たちは風紀委員の協力を得て、火災から市民と美山の友人・野良犬のペロを救出する。
感想
予知の結果は変えられない事を説明する美山。原作では未来の事故を防ぐために奔走する美山の姿が描かれるのだが、おそらく尺の都合でカット。予知改変を試みる姿は後に同級生を救おうとするシーンで見られるのでカットするところとしては妥当か。その描写があれば美山の善性を示し視聴者に信頼させることができるのだが、ない場合はミステリアスな印象を保持したままになるので結果的に面白い改変になったのでは。
「白井さんの空間移動は確か十一次元演算…!三次元的に逃げ場のない結末に干渉できるということですか?」
なるほどわからん。(15週ぶり2回目)テレポートの原理は少なくとも超電磁砲では詳しく説明されていないので「そういうもんなんだな」という認識でいいと思う。箱に閉じ込められた猫(二次元)も蓋が開けば上方向(三次元)に逃げられるとかそういう話なのだろう。(予知なら時間軸も関係しているので四次元のような気もするが。)テレポートであれば未来を変えられる、というストーリー上の都合に説得力を付与するための一種のフレーバー(風味づけ)である。
第二段階の念写で空間が歪むのは黒子と初春の反応を見る限り実際に知覚できる現象のようだ。美山の身体に負担がかかっていることが布石として置かれている。
「風紀委員なら、被害者を事前に助けられるというのは悪い話じゃないでしょ?」
「……そうですわね。」
このシーン、原作では黒子が美山に対して思うところがある様子(おそらく若干の不信感や、能力の傾向に対する感傷など)を絶妙なコマ割りで表現しているのだが、その繊細な表現をアニメでもBGMやCV新井さんの声色できっちり再現しているところが素晴らしい。
予知を元に人的被害を防いでいく黒子たち。包丁をブロックで止めたシーンは原作では包丁がブロックにめり込んでいたのだが、テレポートの原則的におかしい(そこにあった物体を押しのけて出現するので包丁が欠けるのが正しいらしい)とツッコミが入ったのか修正されたようだ。細かい。どうでもいいがこの破局カップルがEDでちゃんと「マキ」「たっくん」とクレジットされていてちょっと面白かった。
「それがたとえ黒子だとしてもね」「一言多いですわよ」
初対面時から一週間も経っていないはずだが名前呼びで軽口を叩かれるようになっているのが面白い。黒子の日頃の態度の気安さが想像できる。ここは短い会話だが黒子に風紀委員になった動機を聞いてみたり、危険感知しても意味がないと言ったり、美山のパーソナリティが推察できる濃いやりとりになっている。ちなみにこの集団昏睡のニュースはそろそろ察しのいい方ならピンとくると思うが、禁書での出来事を報じたものである。
公園での火災を予知する美山。二つの予知の座標がなぜか原作と違ってかなり近くなっている。改変の意図はわからないがセリフはそのままなので「相当広い範囲」と言われても若干の違和感がある。
火災に備える黒子たちと風紀委員たち。予知だけでなく空間移動との関係も伏せて説明・打ち合わせするのは相当無理がありそうなので、固法先輩らの懐の深さと黒子の扱い方への慣れを感じる。先輩と話しているのは【柳迫碧美】でおそらくS最終回以来の登場。固法先輩のルームメイトである。
美山が倒れ、夢という形で過去が明かされる。同級生・大河内に心無い言葉を受けるが、それでも助けようとして失敗し、なじられるという小学生には重すぎる過去。彼の言葉の端々から見られる無力感もここで醸成されたと思われる。しかしあまり表情に出ていないので無感情なのは元々のようだ。この大河内が最終的にペロの引き取り手になるところが美山編の完全なハッピーエンドを志向した感があって印象的。ちなみに原作だとこの事件のせいか転校しているのだがアニメだとそうでもないっぽい。
黒子が入場者を助けてまわる一枚絵がどれもひたすらカッコいい。どれも原作にない構図なので作画スタッフの高い技量を感じる。
初春の「それが1つ目の予知だったんですね」は原作だと内心の声なのだが口に出すセリフに改変されている。固法先輩に秘すためのモノローグだったわけだが、ここで一緒に火の中に飛び込んでもらうのに理由を秘めておくのも不義理な話なので、セリフにしたのも悪くない改変ではないだろうか。
黒子の「その犬の特徴は?」からBGMが流れる演出が震えるほどアツい。勝利確定。野良犬は助けてもらえないと思っている美山の感覚はたしかに子供っぽいのだが、それでも彼が実のところはずっと孤独な戦いをしていたことの象徴でもあるので、少年の孤独感をぶち壊す黒子に英雄性を感じずにはいられない。
「そのワガママと呼ばれるものが、わたくしたちにとっての正義なのです」
ああ〜〜〜〜黒子さんカッコいいいい〜〜〜〜(語彙消失)。爆発が起こって絶望する美山に対し、初春はまったく心配していないのがよい対比になっている。これくらいの無茶は日常茶飯事という二人の長い信頼関係が見える。涙する美山にかける黒子の優しい声色がよい。先週「身も心もお姉さまにササゲマスノォー!」とか言ってた人と同一人物とはとても思えない。このギャップが魅力ではあるのだが。
「貴方の能力がなければ救うことはできませんでしたわ」
美山の孤独を取り除いただけでなく、彼が感じていた無力感も察してフォローする黒子。美山も大人びているが黒子もとても13歳とは思えない。このシーンは原作では美山をからかった黒子が「うるさいぞ変態のくせに!」と初春がチクった情報で逆襲されるくだりがあるのだが、尺の都合かカットされてしまった。つまりアニメの世界線の美山くんは黒子を変態だと知らず完全無欠のヒーローだと思っている可能性が出てきた。それはそれで面白いが。
「わたくしも憧れていたクチですのよ、正義の味方ってやつに」
素晴らしい表情。原作も良かったが勝るとも劣らないクオリティ。7話の美琴の笑顔と同等の破壊力を感じる。美琴・初春・佐天さんとの絡みではなかなか見られない表情に思える。美山の「うん、考えとく」も無表情だった彼が初めて見せる笑顔なのでこれもよい。声色も優しくなっているように思う。美山のCVは峯田茉優さんでアイドルマスターシャイニーカラーズの八宮めぐる役でおなじみ。めぐるは元気系の美少女ボイスなので無感情な少年の美山とは真逆と言える差があり同じ人と気づかないレベル。演技の幅を感じる。
超電磁砲は少年漫画的な作品と言えるが比較的暗めでヒネったエピソードが多い中、美山編は黒子の「正義」をどストレートに描いた異色譚と言えるかもしれない。黒子と美山の、性格の違いは大きいが根底に通う正義感が似ているところや、お互いにとっての相方の強い必要性など、バディものとしても完成度が高いので好きなエピソードである。電撃大王さん、3年後に風紀委員として活躍する美山&黒子バディのスピンオフ、待ってます。
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