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2014年05月28日

ウクライナ 東西分裂の回避なるか

ことし2月の政変以来、緊張が続くウクライナで、5月25日に大統領選挙が行われました。
しかし親ロシア派の強い東部では、投票の妨害が相次ぐなかでの異例の選挙となりました。
大統領選挙で国の分裂は回避されたのでしょうか。
モスクワ支局の岡田記者の報告です。
異例づくしの大統領選
たたき壊される投票箱に、鍵のかかった投票所。
ウクライナの大統領選挙は、国の東部で投票の妨害や、親ロシア派との戦闘が続く異例の雰囲気のなかで行われました。
親欧米の西部、親ロシアの東部の対立が続き、これまで国を東西に2分した激しい選挙戦が行われてきたウクライナ。
ところが今回、東西すべての州でポロシェンコ候補が最も多くの票を獲得し、地滑り的な勝利を収めるという異例の展開となりました。

新大統領は「チョコレート王」
ポロシェンコ氏は、ウクライナの代表的なチョコレート会社を経営する大富豪で、「チョコレート王」とも呼ばれています。
去年、ウクライナとロシアとの関係が悪化した際には、ロシアがポロシェンコ氏のチョコレートを禁輸措置の対象にし、2国間の対立は「チョコレート戦争」とも言われました。
ポロシェンコ氏は、ことし2月の政変まで首都キエフで数か月にわたって抗議行動を続けたデモ隊を資金面でサポートしたと言われる存在で、明確に親欧米路線を掲げてきました。

1つのウクライナ
しかし今回の選挙戦で、ポロシェンコが演説の中で繰り返し使ったのは「1つのウクライナ」というキーワードです。
国が東西に引き裂かれるかもしれないという危機に、国家統一の重要性を各地で精力的に訴えたのです。
実はポロシェンコ氏は、新欧米のユーシェンコ政権だけでなく、ロシア寄りとされたヤヌコービッチ政権でも閣僚を務めた経験があります。
訪問先でたびたび開いた記者会見でも、ウクライナ語やロシア語のほか、流ちょうな英語を駆使し、欧米ともロシアともうまくやっていける政治家は、自分しかいないとアピールしていました。

東西融和は可能なのか
「大統領になれば最初に東部を訪問する」と話し、親ロシア派にも耳を傾ける姿勢を示しているポロシェンコ氏。
しかし東西の融和は可能なのでしょうか。
今回の大統領選挙でウクライナ東部では、投票率がルガンスク州でおよそ39%、ドネツク州ではおよそ15%にとどまり、全国平均のおよそ60%を大きく下回りました。
原因はウクライナ東部の分離独立を求める親ロシア派の武装集団による妨害です。
地元の政府庁舎や治安機関などは次々と襲撃・占拠され、市内ではマスクをかぶり銃を手にした男たちが目を光らせていました。
候補者は襲撃されることを恐れて、街頭演説はおろか現地入りすることもままならない状況でした。
また声を上げようとした少数派の市民も沈黙を余儀なくされました。
ルガンスク市内では、大統領選挙を前に東西の融和を訴える集会が開かれましたが、青と黄色のウクライナの国旗を掲げ、団結の必要性を訴えた主催者の男性の職場には、集会のあと武装した男たちが押しかけてきたと言います。
ほかの参加者も脅迫電話をうけ、中には故郷を離れキエフに逃れた人もいます。
東西の融和は、残念ながら容易ではないと言わざるをえません。

東部の住民の本音は
しかし親ロシア派の住民の多くが、必ずしも武装集団を支持しているわけではありません。
ルガンスク州で最大の製鉄所の社長は製品の90%をロシアに輸出していて、ロシアとの関係なしでは仕事が成り立ちません。
典型的な親ロシア派かと思いきや、話しを聞いてみると、混乱を拡大させるだけの武装勢力には批判的で東部地域の分離独立にも反対でした。
製鉄所が武装集団に攻撃されたら困るということで、カメラの前では口を閉ざしていましたが、「武装集団の主張は間違っている。早く安定を取り戻し、ロシアともヨーロッパともよい関係を築きたい」と本音を吐露し、混乱が収束すればロシアだけでなくヨーロッパ市場も開拓したいと意欲を見せていました。

危機の根本にある汚職
また忘れてはならないのは、ウクライナが抱える危機の本質は、世界最悪レベルの汚職体質だということです。
ウクライナでは、一部の政治家と実業家が利権を独占する構造が続き、国家財政は破綻寸前。
GDPも、ソビエト末期と比べて、およそ30%も落ち込んでいます。
今でこそ親ロシアの東部と親欧米の西部が対立し、東西分裂の危機が叫ばれていますが、そもそも2月の政変の根底には、こうした現状への不満がありました。
私たちは、2月の政変から今回の大統領選挙にかけて、多くの市民に話を聞きましたが、その中で最も多かったのが「汚職をなくしてほしい」という声でした。
そして「欧米かロシアかどちらかを選んで支援に頼るのではなく、しっかりと自立した国になってほしい」と話す人たちに、東西の別はありませんでした。
新大統領が汚職体質から脱却に努めれば、東西の対立を乗り越えて国民の信頼を勝ち取ることができるかもしれません。

事態打開への第一歩となるか
大統領選挙を経て、ウクライナでは暫定政権が終わり、民意を背景にした本格的な政権が成立することになります。
ことし2月の政変の末に誕生した暫定政権は、瞬く間にクリミアをロシアに編入され、東部では軍を投入したものの、親ロシア派の武装集団を制圧できていません。
そしておひざ元の西部でも、過激なウクライナの民族主義グループを抑えることができず、統治能力を発揮できませんでした。
ウクライナ情勢がここまで混乱した責任は、親ロシア派の武装勢力だけでなく、暫定政権にもあったと言わざるをえません。
それだけに選挙戦で大勝したポロシェンコ氏が、東西の融和に努め、ロシアとの関係改善の糸口を見いだすことができるのかどうか、ウクライナ国民は、期待と不安を持って見守っています。

http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2014_0527.html

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