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2019年05月20日

脳梗塞に対する血管内治療の現状と課題は?

(脳の栄養動脈にカテーテルを進めて、出来立ての血栓を絡めて根こそぎ取ってくる治療がゴールデンタイム3.5時間を過ぎてtPA投与の適応がなくなった症例でも有効!)

脳梗塞に対する血管内治療の現状と課題は?
兵庫医大・吉村氏がSTROKE2019で報告 2019年03月28日 05:00

日本における急性期脳梗塞に対する血管内治療の現状と課題について、
兵庫医科大学脳神経外科主任教授の吉村紳一氏が
第44回日本脳卒中学会(STROKE2019、3月21〜23日、横浜市)で報告。

急速に普及しつつある血管内治療について、さらなる適応拡大が望まれている点を指摘。
発症6時間以降をはじめ、広範囲脳梗塞、末梢血管閉塞、軽症例への適応拡大に向けた
臨床研究が進んでいることなどを解説した。

治療件数は増加するも地域格差が課題

吉村氏はまず、同氏らが主任研究者を務める超急性期脳梗塞に対する
血管内治療研究会(RESCUE-Japan Study Group)が推進する、
脳梗塞に対する血管内治療の普及に向けたRESCUE-Japan Projectで行った全国調査の最新データを紹介した。

調査は日本脳神経血管内治療学会全会員が対象で、回答率は100%近かった。

脳梗塞に対する血管内治療の施行件数は、2016年の7,702件から2017年には1万360件へと34.5%増加。
2018年については集計中だが、
治療件数は既に1万2,165件に達しており、
人口10万人当たりでは2016年が6.06件、2017年が8.15件、2018年が9.57件と、
着実に増加している。

専門医当たり、また治療施設当たりの治療件数も年々増えており、
吉村氏は「全体的に右肩上がりの状況にある」と述べた(表)。

表. RESCUE-Japan Project 全国調査(2016〜18年)脳梗塞血管内治療全国調査.jpg
(吉村紳一氏提供)

ただし、人口10万人当たりの治療件数を地域ごとに比較すると、
依然として地域格差が認められた。

治療施設当たりの治療件数が多い地域は総治療件数も多いことから、
「脳梗塞に対する血管内治療が可能な施設(脳卒中センター)に患者が搬送されることが、
その地域の治療件数を増やすことにつながる」と、同氏は説明した。

病院到着前に主幹動脈閉塞症(LVO)であることが予測できれば、
脳卒中センターに血管内治療の適応例を効率的に搬送できる。

同氏はLVO予測スコアについて、陽性的中率は最も良いスコアでも32%にとどまっており、
Mimicが多く含まれ、出血性脳卒中が鑑別できない上、
脳卒中の非専門家(救急隊員)が簡便に使用できないなどの問題点を指摘し、
「完全なスコアはまだない」と話した。

同氏が率いる兵庫医大の研究グループは、救急隊員が現場で評価可能な21項目の点数を
スマートフォンやタブレット端末に入力して病型(脳梗塞、脳出血)を判別する
「JUST Score」を開発しており、
「(日本脳神経血管内治療)学会を挙げて標準的な評価スケールをつくる試みがスタートしている」とした。

広範囲脳梗塞も血管内治療で良好な転帰

さらに血管内治療の課題として、吉村氏は地域格差に加え、適応拡大を挙げた。
現在検討されている適応は主に発症6時間以降、広範囲脳梗塞、末梢血管閉塞、軽症例の4つ。
同氏はそれぞれにおける臨床研究の進捗状況を次のようにまとめた。

発症6時間以降への適応拡大に関しては、
最終健常確認時刻から6〜24時間以内の症例を対象としたDAWN Trial、
発症後6〜16時間以内の症例を対象としたDEFUSE 3 Studyが行われ、
血管内治療群で非常に良好な転帰が得られている。

これを受けて2018年には、米国心臓協会(AHA)のガイドラインに
「最終健常確認時刻から6〜16時間以内の急性期LVOで、
DAWNまたはDEFUSE 3の登録基準に合致する患者においては血栓回収療法が勧められる」
と記載された。

一方、日本では日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会、日本脳神経血管内治療学会が
2018年3月に合同策定した『経皮経管的脳血栓回収機器適正使用指針第3版』において、
「最終健常確認時刻から6時間を超えた脳梗塞(詳細条件あり)に対して
最終健常確認時刻から16時間以内の血管内治療開始が強く勧められる(グレードA)」と記された。

こうしたことから、同氏は「発症6時間以降への適応拡大は既に認められたと理解される」との見方を示した。

広範囲脳梗塞に関しては、
RESCUE-Japan Study Groupによるレジストリ研究RESCUE-Japan Registry 2のデータを用いた検討が行われ、
発症90日後のmodified Rankin Scale(mRS)が 0-3または0-2で評価した転帰
血管内治療群で有意に良好だった(順にP<0.001、P=0.017)。

さらに、広範囲脳梗塞を対象としたランダム化比較試験(RCT)RESCUE-Japan LIMITが進行中で、
海外でも複数のRCTが進められているという。

末梢血管閉塞については、RESCUE-Japan Registry 2のデータを用いた検討で、
血管内治療により比較的良好な転帰が得られているが、
中大脳動脈M3領域(脳表面を走る末梢領域)に限ると転帰不良であった。

吉村氏は「現在使用可能なステントでは安易に手を出すのは良くないかもしれない。
ただし、今年(2019年)には従来に比べ小型のステントなど、
新たなデバイスが多く使用できるようになるようだ。
デバイスの改良により克服できる部分があるのではないか」と展望した。

軽症例では、RESCUE-Japan Registry 2のデータ解析において、
血管内治療の有無で転帰に差はなく、
「軽症例全例に血管内治療を行うのは適切ではないだろう」とした。

最後に同氏は、
「レジストリ研究によって血管内治療の限界も明らかになりつつあり、
慎重な適応拡大が望まれる」とした上で、
「脳卒中センターの施設認定により、救急体制の改善と治療の質向上が期待される」と報告を締めくくった。
(STROKE2019 取材班)

2019年05月18日

妊娠中の喫煙で乳児突然死リスクが2倍に

(タバコは血管を締めるので、胎盤の機能不全を誘導し、胎児への酸素供給が不十分で、脳神経細胞の成熟化が十分できずに生まれるためか?
タバコって、ロクでもない!
発がん物質で、肺気腫(肺がタバコの煙で溶けて酸素交換できなくなる病気、桂歌丸さんが、この病気で亡くなった)、血管を締めてしまうので、心筋梗塞、狭心症、脳卒中の原因にもなる。
ヒトに不利益しか与えないのになぜ全面禁止にできないのか?不思議だ!
ータバコから税収入を得ているからだろう)


妊娠中の喫煙で乳児突然死リスクが2倍に

2019年03月30日 06:00

妊娠中の母親の喫煙は、児の予期せぬ乳幼児突然死(SUID)の確立された危険因子である。

米・Seattle Children's Research InstituteのTatiana M. Anderson氏らは、
米国の約2,000万の出生児を解析し、
妊娠中の喫煙がSUIDに及ぼす影響を調べた結果、
母親が妊娠中に喫煙していた場合、SUIDのリスクが2倍以上に増加していたとPediatrics(2019年3月11日オンライン版)に発表した。
〔読み解くためのキーワード:予期せぬ乳幼児突然死(SUID)〕

1日1本でも2倍近いリスク

Anderson氏らは出生および乳児死亡に関連づけられた米疾病対策センター(CDC)の出生コホートデータを用い、母親の喫煙習慣と児のSUIDリスクとの関連を調べた。
解析対象は、2007〜11年の2,068万5,463例の出生と1万9,127例のSUID。
SUIDは特定できない原因、またはベッド内での偶発的な窒息や絞扼による1歳未満の死亡と定義した。

2011年には、母親の11.5%が妊娠3カ月前に喫煙しており、8.9%は妊娠中も喫煙していた。
また、妊娠前に喫煙していた母親のうち24.3%は、第1トリメスター(1〜13週)までに禁煙していた。

検討の結果、母親が妊娠中に1本も喫煙しなかった場合と比べ、
妊娠中に喫煙していた場合、SUIDの調整後オッズ比(aOR)は2.44(95%CI 2.31〜2.57)であった。

1日当たりの喫煙本数が1本でもaORは1.98(同1.73〜2.28)で、さらに1本増えるごとにオッズは0.07増加。
20本を超えるまで直線的な増加を示した。

また、妊娠中に減煙できなかった場合と比べて、
第3トリメスター(27〜40週)までに減煙した場合のaORは0.88(95%CI 0.79〜0.98)、
禁煙した場合のaORは0.77(同0.67〜0.87)に低下した。

なお、妊娠3カ月前に喫煙していて第1トリメスターまでに禁煙した場合でも、
非喫煙者と比べるとリスクは高かった。

妊娠前の禁煙の重要性を強調

Anderson氏らは「米国におけるSUIDの22%は、妊娠中の母親の喫煙が直接的な原因となっている」と指摘。
「妊婦の喫煙がなくなれば、米国で1年間にSUIDで亡くなる乳児約3,700例のうち800例が予防できる」と述べている。

乳児の適切な就寝姿勢について啓発する米国小児科学会(AAP)のキャンペーンによって乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症率が半減したことから、喫煙のリスクについて女性に警告することで、SUIDの減少が期待される。
同氏らは「最も重要なことは、妊娠前の禁煙がSUIDリスク低減に最大の効果をもたらす点である」とし、
妊娠前の禁煙の重要性を強調している。(木下愛美)

2019年05月14日

急性アルコール摂取による負傷リスク、男女で差

(単純にアルコールに対する耐性が男女比2:1によるだけじゃない?)

急性アルコール摂取による負傷リスク、男女で差
提供元:ケアネット 公開日:2019/04/04

飲酒による負傷リスクについて、性別、飲酒頻度、負傷の原因(交通事故、暴力、転倒など)によって違いがあるかを、米国・Alcohol Research GroupのCheryl J. Cherpitel氏らが、分析を行った。Alcohol and Alcoholism誌オンライン版2019年3月11日号の報告。

イベント後6時間以内に救急部(ED)に搬送された負傷患者1万8,627例についてケース・クロスオーバー分析を行った。

主な結果は以下のとおり。

・男女間での飲酒による負傷リスクは、3杯以下では同等であった(男性OR:2.74、女性OR:2.76)。
・大量飲酒における負傷リスクは、女性において男性よりも高く、3.1〜6杯(OR:0.60、CI:0.39〜0.93)および6.1〜10杯(OR:0.50、CI:0.27〜0.93)で、飲酒量の相互作用による性差(gender by volume interaction:GVI)が有意に大きかった。
・5回/月以上飲酒をしていた女性は、飲酒量に関係なく男性よりも負傷リスクが高く、5回/月未満で3杯以下の女性(OR:0.51、CI:0.28〜0.92)および6.1〜10杯の女性(OR:0.39、CI:0.18〜0.82)よりもGVIの強い関連が認められた。
・女性では、6杯未満での交通事故に関連するものを除き、男性よりも負傷リスクが高く、GVIは、3.1〜6杯でほかの原因による負傷についてのみ有意であった(OR:0.23、CI:0.09〜0.87)。

著者らは「大量飲酒の頻度に関係なく、『女性』は男性よりも『飲酒による負傷リスク』(交通事故関連を除く)が『高い』ことが示唆された」としている。(鷹野 敦夫)

原著論文はこちら
Cherpitel CJ, et al. Alcohol Alcohol. 2019 Mar 11. [Epub ahead of print]

2019年05月10日

トクホ製品ー飲んでる時には効果があるが、すでに服薬している人には効果が限られている、効能が重複して、副作用のほうが勝る場合も想定されます

トクホ製品ー飲んでる時には効果があるが、すでに服薬している人には効果が限られている、効能が重複して、副作用のほうが勝る場合も想定されます
トクホ製品摂取.jpg

飲んだ、食べた直後は、効果があっても、長期間でみると、効能がないー薬ではありません。
服薬している人にとっては、却って有害に働く場合があるので、服薬されている場合は、トクホ製品をむしろ避けられた方が安全だと思います。

医師をしていて、一番困るのは、漢方薬を薬ではないと勘違いされている方がおいでます。
生薬を使っているだけで、薬には違いありません。

健康保険(国民・社会)で認められている製剤の多くは、西洋薬に端を発し、ほとんどが単剤です。
効能、副作用 つまり両刃の剣の両面が明らかです。

漢方は、ブレンドしている薬なので、効能、副作用が、わかりづらい点が多いです。
漢方で薬疹も発生します。

服薬されている場合は、主治医の先生に、漢方はもちろんのことトクホ製品も重複して摂取して問題がないかを確認してください。

2019年05月09日

こんなにある子供の便秘サイン

(5人に1人が慢性便秘症ー意外と多い?少ない?
ストレス過敏、食生活や排便習慣まで気が回らない親の問題?社会の問題?)


こんなにある子供の便秘サイン
提供元:ケアネット 公開日:2019/04/02

2018年3月18日、EAファーマ株式会社は、
「大人が知らない『子供の慢性便秘症』の実態と世界標準へと歩み出した最新治療〜便秘難民ゼロを目指して〜」をテーマに、都内でプレスセミナーを開催した。

セミナーでは、子供が抱える「言うに言えない便秘の悩み」に大人がどう気付き、診療へ導くのか解説された。

子供の5人に1人は便秘

セミナーでは、十河 剛氏(済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科)を講師に迎え、小児の便秘症について詳しくレクチャーを行った。

はじめに横浜市鶴見区で行われた調査報告を紹介。
『3〜8歳の子供3,595人』に食事と排便に関するアンケート調査を行ったところ、『718人(約20%』)に慢性便秘症(ROMEIII診断基準による)がみられたという(全国平均では約15%)。
とくに『便秘の子供』では、
「便を我慢する姿勢や過度の自発的便の貯留の既往」
「痛みを伴う便通の既往」
「少なくとも週1回の便失禁」が散見されると報告した1)。

子供の便秘に関しては保護者の関心も高い一方で、しつけや教育の問題とされたり、周囲に相談できる人がいなかったり、かかりつけの医師に相談しても対症的な治療だけだったりと不安を訴える。
また、子供たちは、友達から「臭い」と言われたり、恥ずかしくて言えなかったりと自尊心が傷つき行き場のない子供を診療で救う必要性があると同氏は問題を指摘する。

気付きたい「便秘症」の症状

「便秘」について、その定義、診療はどのようにされるべきか。

「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」(2014年)によれば、
「便秘とは、便が滞った、または便がでにくい状態」と定義され、
とくに小児では、排便時に肛門が痛く泣いたり、いきんでも排便ができない状態がみられる
ただ注意すべきは、「便秘」の認識は、個々人で異なるため排便の回数などで判断せず、同時に家族の状況も確認した方がよいと語る。

そして、便秘の症状として「腹痛、裂肛、直腸脱、便失禁、肛門周囲の付着便や皮膚びらん、嘔吐・嘔気、胃食道逆流・げっぷ・口臭、集中力低下、夜尿・遺尿」があり、いかに医療者が気付き、診療介入できるかが重要だと指摘する。

具体的に10歳・女児の症例を紹介。
この症例では、「口臭、げっぷ、嘔吐、排便時間30分超」の症状がみられ、他科診療の折に同氏の診療科を受診、便秘症の診療にいたったという。
X線検査では、直腸に便塞栓が観察され、大腸に大量の便が貯留していた。
慢性便秘症と胃食道逆流症の診断後、プロトンポンプ阻害薬とポリエチレングリコール(PEG)製剤で治療を開始。
19日後には、排便時間が10分以内になり、当初の症状も消失したという。

小児の便秘症を疑うポイントとして、前記便秘症状の中でも触れているが、溜まった便で膀胱が圧迫されることによる夜尿やおもらしが多く、便塞栓のために液便による便漏れやこれらに伴う肛門部のびらんなどがみられ、診断の手助けになると語った。

小児にも適用できるようになったPEG製剤

小児が便秘症を発症しやすい時期として、
「食事の移行期(離乳食から普通食など)」
「トイレットトレーニング」
「通学の開始」の3期があり、
排便への恐れが子供にできないように、環境を整えることも重要と指摘する。

また、便秘症の「便塞栓」について詳説し、本症を疑うポイントとして、
「少量の硬い便」
「肛門周囲や下着への便の付着」
「便がでにくいのに下痢便」
「1週間近く排便がない」
などが見られたら治療介入し、便秘症の悪循環を断ち切る必要があると強調する。

便秘症治療の三大原則としては、
「便塞栓があればその除去の後で、薬剤、食事、生活習慣改善などの治療を行う」
「外したフタ(便塞栓)は外したままにする」
「便を我慢せず出しきる習慣を身に付ける」ことを説明。
とくに排便習慣については、直腸の排便へのセンサーを正常化させることが大事で、
また、『排便の姿勢』についても、自然に排便できるように『洋式便座では踏み台などの設置』も効果的という(ロダンの『考える人』のような前傾姿勢が腹圧がかかりやすい、力みやすい姿勢です)

そして、これら治療を補助するために治療薬があり、「浣腸だけでなく新しい経口治療薬も小児には適用できるようになった」と説明する。
現在、わが国では、乳児・幼児に対してラクツロース、酸化マグネシウムなどの浸透圧性下剤、グリセリン、ビサコジルなどの刺激性下剤が便秘に多用されている。
また、2018年11月からようやくわが国でもPEG製剤(商品名:モビコール)が、2歳以上の小児に使用できるようになったこともあり、便秘薬の選択肢は増えつつあるという(参考までに、海外では便塞栓除去に浣腸だけでなく経口治療薬も選択肢に入っており、イギリスではPEG製剤が第一選択薬となっている2))。

臨床上、成人の便秘症は治療に難渋することがあるが、子供の便秘症では薬剤療法が奏功することもあり、早く介入することが重要と語る。
治療の目標は、便秘ではない状態の維持であり、そのためには3〜4年近く必要という。

最後に同氏は、子供のトイレ指導のコツについて、
「25%できたら褒める」
「小さいことから少しずつ」
「できた行動に着目する」
「具体的な指示をする」
「一度に一つだけ指示をする」
などを挙げ、
「便秘難民がゼロ」になることを期待すると講演を締めた。

■参考文献
1)Fujitani A,et al. Gastroenterol Res Pract. 2018;2018:3108021.
2)Tabbers MM,et al. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2014;58:258-274.

■参考
EAファーマ株式会社 イーベンnavi

■参考記事
第18回 国内初の慢性便秘症PEG製剤
慢性便秘症特集
(ケアネット 稲川 進)

2019年05月08日

「膀胱炎治療にクラビット」は時代遅れ

(ニューキノロン系は結核の治療にとっておきたいし、細菌培養に出した腸内細菌の多くがニューキノロン系に耐性を持っていることが多い!)

「膀胱炎治療にクラビット」は時代遅れ
2019/3/26 岡 秀昭(埼玉医科大学総合医療センター)

前回は単純性膀胱炎の診断について紹介しました。今回は治療について考えていきます。単純性膀胱炎の治療のスタンダードは、現在は抗菌薬の投与です。

「現在は」と強調したのは、近年、膀胱炎の治療に対し、抗菌薬と消炎鎮痛薬(NSAIDs)の治療効果を比較した臨床試験が海外で立て続けに報告されているからです1、2)。
また経験的に、水分を摂取してしっかりと尿を出すだけでも膀胱炎の治療効果は上がります。
昨年、水を飲むことで膀胱炎の再発予防になるという報告がなされていますし3)、後述するように膀胱炎へ処方できる抗菌薬の選択肢が少なくなっている中、今後は抗菌薬の投与なしに治療する方向に向かうのかもしれません。

さて、膀胱炎患者に抗菌薬を処方する際に、どの薬剤を選択しますか? 
「尿路感染、膀胱炎にはクラビットだろ!」という先生がおられましたら、それは残念ながら現在では大きな間違いです。

感染症治療のために抗菌薬処方を考える場合、
(1)病気を引き起こす微生物に有効、
(2)できるだけ狭域、
(3)低コストで副作用が少ない――を考えるのが鉄則です。

では単純性膀胱炎の原因菌は何でしょうか?
「それは簡単だ、大腸菌だろう!」。

正解です。

単純性膀胱炎の75〜95%が大腸菌で生じると報告されています。
つまり、「単純性膀胱炎はほぼ大腸菌の感染症」と断言してもよいのです。

大腸菌に有効な抗菌薬は、かつてはクラビット(レボフロキサシン)のようなニューキノロン系抗菌薬やST合剤といわれていました。
経口のセフェム系抗菌薬も有効ですが、効果がやや落ちるためかあまり人気がないようです。
ニューキノロン系抗菌薬は3日の服用でよいのに対して、セフェム系抗菌薬では3日より長い期間服用させる必要があるからでしょうか。

ところが、我が国の大腸菌の薬剤感受性(JANIS)を見ると、クラビットの耐性菌が非常に増えています。
最近ではニューキノロン系抗菌薬にだけ耐性があるという結果も珍しくありません。

ニューキノロン系抗菌薬は、院内で問題となる緑膿菌にも唯一処方できる内服薬です。
またレジオネラ肺炎のような重症化する特殊な肺炎にも有効です。
更には抗結核作用もあります。

このような貴重な抗菌薬を、膀胱炎のようなNSAIDsでも治療できる可能性のある感染症に使用するのはとてももったいないと思いませんか?

また、ニューキノロン系は意外と『副作用が多い』薬でもあります。

血糖の異常、
QT延長のような不整脈、
アキレス腱断裂が知られていますし、
最近では大動脈解離のリスクとなることも指摘されています。

以上から、米国食品医薬品局(FDA)は、
ニューキノロン系抗菌薬を細菌性副鼻腔炎、慢性気道感染症の急性増悪、そして合併症のない尿路感染症(膀胱炎)に極力使用しないよう警鐘を鳴らしています。

ですから、『膀胱炎はもちろん、くれぐれもかぜや咽頭炎、そしてウイルス性腸炎にも処方しない』ようにお願いします。

膀胱炎治療に必要な薬の「最新」の正解は?
 それでは、単純性膀胱炎へ処方する抗菌薬は何がよいでしょうか?

米国感染症学会のガイドラインは、Nitrofurantoin(国内未承認)、ST合剤、ホスホマイシン、Pivmecillinam(国内未承認)の中から選択するように推奨しています。

これらが使用できない場合には、経口βラクタム薬(セフェム系、『ペニシリン系抗菌薬』)を、それらも使えない場合のみニューキノロン系抗菌薬の使用を推奨しています。

(アモキシシリンが推奨され、頻用しています。キレもいいです。ただし、尿量を増やして膀胱内を尿で洗い流さないと効果は限られるので、普段より500〜1000mLは余計に水ないし茶を飲むように促しています)

この推奨のうち、我が国で使用可能な薬剤はST合剤とホスホマイシンになります。
ただ、ホスホマイシンは海外ではホスホマイシントロメタロール、
日本ではホスホマイシンカルシウムと、化合物が異なります。

そのため、日本のホスホマイシン錠は海外のものよりバイオアベイラビリティーが不良で効果が落ちる懸念があり、積極的には推奨できません。
(ホスホマイシンは全く効かない薬なので薦めません)
ST合剤は、女性に使用する場合には妊娠やピルなどとの薬物相互作用に注意する必要がありますが、よい選択です。
またST合剤は我が国では単純性膀胱炎への適応はありませんが、大腸菌感染症に対する適応があり薬価も安いため、レセプトが査定されにくいと思われます。

ついでガイドラインに従うと、セフェム系かペニシリン系抗菌薬の使用を考慮することになりますが、ペニシリン系抗菌薬の経口薬であるアモキシシリンでは大腸菌の耐性化が深刻です。
そのため、感受性が保たれているセフェム系抗菌薬がよいでしょう。
(入院患者では、尿培養検査を取って治療を始めます。培養結果では多剤耐性大腸菌が検出されても、セファレキシン内服、セファゾリン点滴静注でほとんどが治癒します。輸液を負荷して尿量を十分に出させるためと、培養結果が必ずしも起炎菌を正しく反映しているわけではないからです。見込みで始めた抗菌剤選択が効かなかかった場合の備えとして採取するのと、病院内の細菌流行を把握するため、スーパー緑膿菌、スーパーMRSAなどが発生していないかを確認するためです)


セフェム系抗菌薬の中では第3世代セフェム系の薬剤はバイオアベイラビリティーが極めて不良で、
10数%から、多くても50%程度しか消化管から吸収されません(ほとんどがうんこになって出てくるのと、腸内細菌に薬剤耐性菌を増やすだけだということが知られています)

第1世代のセファレキシン(ケフレックス)のようなセフェム系の使用をお勧めします。
また緑膿菌に無効な第1世代のセフェム系抗菌薬としてセファクロルを思い浮かべる方もおられるかもしれませんが、セファクロルは第2世代で、皮疹などの血清反応の副作用が多く推奨しにくいです。

ということで、膀胱炎と診断したら、レボフロキサシンではなく、ケフレックス250mg6カプセル 分3を5〜7日間か、ST合剤4錠分2を3日間処方しましょう。

ST合剤の投薬を怖いと感じる先生も多いかもしれません。
確かに高カリウム血症、クレアチニン上昇、骨髄抑制、発疹などの副作用があり、添付文書上も「他剤が無効あるいは使用できない場合に投与を考慮する」と警告されています。
一方で、ST合剤をHIV患者などに生じるニューモシスチス肺炎の治療薬として用いる場合は、より高用量かつ長期間服用させます。
疾患の重篤度に違いがあるとはいえ、膀胱炎の投薬はわずか3日間。
処方で重篤な副作用が生じる可能性は極めて低いのです。

現在の大腸菌の耐性傾向を考慮すると、膀胱炎に対して国内で処方できる薬剤は限られます。
まずはST合剤、ST合剤は使いたくないという先生はせめてセファレキシンで治療をお願いいたします。
 
明日から膀胱炎の治療は楽勝ですね!
【参考文献】
1)Andreas K,et al. BMJ.2017;359:j4784.
2)Ingvild Vi,et.al.PLOS Medicine.2018;May15.
3)Thomas H,et al. JAMA Intern Med. 2018;178(11):1509-15.

著者プロフィール

岡秀昭(埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科・感染症科准教授)
●おかひであき氏。
2000年日本大学卒。日本大学第一内科で研修後、横浜市立大学、神戸大学、東京高輪病院などを経て、2017年より現職。

2019年05月07日

漢方外来、女性患者が多いのには理由がある

(固形がんの化学療法をしていて、漢方は重宝した。
末期患者に対しての緩和療法でも威力を発揮する
ただし、漢方も薬なので、副作用があるし、内服薬の確認の際には漢方の服用についても申告してほしい


漢方外来、女性患者が多いのには理由がある
2019年03月29日 05:05

漢方外来は、特に疾患を限定しておらず、対象となる患者の疾患や愁訴は多岐にわたる。
男女とも受診するが、実際の外来患者は『圧倒的に女性』が多く、明確な性差が見られる。
埼玉医科大学東洋医学科診療部長の磯部秀之氏は「漢方外来受診者に女性が多い理由は、
女性はホルモンの変動が激しいため症状や愁訴も多彩で、漢方の特徴とその適応病態が適しているためと思われる」と第12回日本性差医学・医療学会(1月19〜20日)で述べた。

漢方は人間本来の自然治癒力を引き出す

磯部氏によると、同大学病院や同大学かわごえクリニックの漢方外来の受診者は、
70〜80%が女性であるという。
同クリニックにおける2014年と15年の患者数は、両年ともに女性が約80%、男性が約20%であった。

漢方治療は漢方医学的な診断や考え方に基づいて漢方薬を投与する。
漢方薬は生薬(植物、動物、鉱物)を丸ごと使用し、基本的には複数の生薬を組み合わせて使用する。
複数の生薬を組み合わせる理由は、作用が不十分なため高めたい、不都合な症状の発現を軽減するなどだが、最も大きな理由は多彩な症状・体質への対処であるという。

同氏は「漢方医学の基本方針は、人間本来の自然治癒力を引き出すこと。
自然治癒力が衰えているときには賦活する、過剰なときには適度に弱めるなど、漢方薬によって自然治癒力を調整する。
ヒトは生体のバランスの崩れを回復する恒常性(ホメオスタシス)を有するが、それを後押しするのが漢方治療である」と説明。
「西洋医学ではどこに異常があるのかを細分化していく(細かく見る)、漢方医学では病人を総合的に見るというのが両者の視点の違い。漢方では、疾患を持った患者全体をいかに治療するかという視点に立っている」と述べた。

女性は自律神経が乱れやすい

漢方治療が考慮される病態としては
@可逆的変化を主とする疾患
A機能性疾患
B虚弱体質(体質改善)
C心身症的傾向が強い
D検査で症状を説明できるような異常がない
E西洋医学的には治療が困難
F西洋医学的な治療が副作用のために継続できない
G西洋医学的な治療だけでは効果が不十分
−などが挙げられる。

女性の場合、生理周期に伴う急激なホルモンの変動により自律神経系のバランスを崩しやすく、
自律神経失調症につながることも少なくない。
漢方薬は、ホルモンの変動や自律神経機能を調節し、そのバランスの乱れを修正する方向に作用する。

また女性は、生理周期に伴ういらいらや落ち込み、不安など精神面での愁訴に悩まされることが多い。
漢方医学では心と体を切り離さず、常に精神と身体相互の関連を重視している。
精神面での愁訴を重要視し、心身症的傾向が強い場合には、漢方治療の有用性は高いという。
さらに女性は生理前、生理中だけでなく、さまざまな愁訴があり、更年期症状も非常に多彩である。
個体差の重視は、漢方治療の大きな特徴の1つであり、疾患よりも、その疾患を持った病人に対する治療を行うものである。

女性に多い主訴は頭痛、不眠、腰痛、肩凝りなど

磯部氏は同クリニックにおける2015年の新規受診患者74例(女性56例、男性18例)を対象として、初診時の問診票を解析した。
男女比は患者全体と同様の傾向で、
問診票でチェックされた症状の数は男性の6.8に対し、女性では10.5と明らかに多かった。
睡眠に関する症状は男性の55.6%に対し、女性では87.5%と大部分で見られた。
気分の項目(いらいらなどの症状)では、男性1.3に対し女性は2.6と2倍であった。

女性で最も多かった主訴は頭痛、次いで不眠、腰痛、肩凝り、倦怠感、冷え、めまいなどの順であった。
また、主訴に限らず問診票に記入された症状では、肩凝りと冷えが30例超と非常に多く、疲れやすい、腰痛、不安感、夜中に目が覚めるなども多かった。
同氏は「精神と身体を切り離さない漢方治療の有用性が示唆される」と述べた。

冷えは万病のもと

冷えも漢方外来を受診する女性に多く見られる症状の1つである。
磯部氏は「冷えが主訴の男性がいないわけではないが、女性の方が圧倒的に多く、主訴が冷えでなくても冷えの症状を訴える女性は大変多い。
冷えには血流や新陳代謝などが関与し、自律神経の乱れや機能低下が原因となる。
また、筋肉の緊張を高め、血流をさらに低下させるという悪循環につながる」と指摘した。

冷えは多くの症状や疾患と関連性があり、肩凝り、頭痛、腰痛、痺れ、腹痛や便通異常(便秘や下痢)、生理不順や不妊などの原因の1つとなる。
さらに、冷えがあるとかぜをひきやすくなったり不眠症になることもまれではない。
西洋医学的には冷えの治療は難しいが、漢方には体を温める効果のある生薬が多く、冷えに有効な処方は多数あるという。

全身状態の改善

漢方治療は生体のゆがみを是正し、生体をより良い方向へ導くことを主眼とするため、全身状態を改善し、種々の好ましい作用をもたらす。
かぜをひかなくなった、体が温まる、便通がよくなった、熟睡できる、疲れにくくなったなど、さまざまな改善が見られる。また、漢方治療は体力を補い、患者に活力を与える。そのため、主訴の改善が難しい場合でも、患者の闘病力を高め、QOLの向上が期待できる。

以前は、西洋医学的治療を受けても治らず最後の手段として漢方外来を受診する人が多かったが、近年は他の医療機関を受診せずにいきなり漢方外来を受診する人が増えたという。
受診理由は、西洋医学的治療に不安が大きい(西洋薬の副作用などを心配)、体質改善など漢方治療が適切と判断などであるという。
磯部氏は「ただし、安易に初めから漢方外来を受診しても、持病(糖尿病など)が重症の場合には西洋医学の治療を併用することや他科に紹介することも少なくない」と述べている。

漢方と西洋医学の併用で治療の幅が広がる

漢方は、西洋医学だけでは不十分なところをある程度補うことが可能で、西洋医学との併用により西洋薬の減量や副作用の軽減、相乗効果などが期待できる。
さらに難治性疾患患者の闘病力の向上、QOLの改善などに寄与できる。
医療費もそれほど高くないため、医療経済に対する貢献が可能と思われ、普段から漢方薬を服用することが体質改善につながり予防医学への有用性が高いと考えられる。

磯部氏は「これらのことから、漢方薬は現代医療における"有用な治療戦略の1つ"といえる」と強調。
「現在、漢方外来を受診する男性患者が増加している。西洋医学は日々大きく進歩しているが、それでも説明のつかない病態に対しては漢方が有用な可能性がある。
西洋医学と漢方医学の両方をうまく使うことで治療の幅が広がると思われる」と結んだ。(慶野 永)

2019年05月04日

成人の失明で一番多い原因が緑内障です(約1/4)

成人の失明で一番多い原因が緑内障です(約1/4)

そのうち眼痛の症状がでない正常圧緑内障が半分を占めます。
気づいたときには、視野異常は元に戻りません!


眼科を定期的に受診しましょう!!

40歳超えたら検診を−緑内障
=視野異常の自覚で事故防止

目の病気の中で、日本人の成人失明原因トップの緑内障。
視野に異常が出ても、初期は自覚症状がほとんどないため、病気に気付きにくい。
視野の異常を自覚しないまま車の運転を続けると、交通事故につながりかねない。
しかし、東京大学医学部付属病院(東京都文京区)眼科の朝岡亮特任講師らの研究では、
多くの患者は視野異常を自覚することで事故の発生が抑止されていることが分かった。


視野異常と交通事故との関係

▽気付かず手遅れになることも

緑内障は、40代以降の約20人に1人が発症する

何らかの原因で視神経に障害が起こり、目で捉えた映像がうまく脳に伝わらず、徐々に視野が狭くなる。
左右の目で欠損部分が異なり、視野を補い合うため、初期には自覚しにくく、気付いた時には手遅れというケースも多いという。

緑内障で視野が狭まると、交差点を渡る人が見えない、対向車が見えにくい、左右から進入してくる車が見えないなど、運転に支障が出る可能性がある。

そこで朝岡特任講師は慶応義塾大学医学部眼科の結城賢弥専任講師と共同で、
緑内障患者約200人を3年間追跡し、交通事故との関係を調査した。
視野異常と交通事故との関係.jpg

その結果、事故を起こした人が4.9%いたが、視野欠損の度合い(重症度)との直接の相関は見られず、視野異常が重症な人ほど車の運転が慎重になる傾向が強かった。
「緑内障の患者さんは、視野が欠けていることを理解しているため、多くの人が慎重に運転します。
事故は視野の問題だけでなく、さまざまな因子が絡み合って起きていると推測され、視野欠損と事故リスクの増加との関係は単純ではありません」と朝岡特任講師。

▽40歳を超えたら検診を

この数年、高齢者が加害者となる交通事故が目立ち、社会問題となる中で、高齢者の運転免許の是非は、社会全体で議論すべき重大なテーマとなっている。
だが、車がないと生活できない地域が存在し、特に高齢者にとっては重要な移動手段の一つである。

朝岡特任講師は「視野が欠ける範囲が2倍になったからといって、交通事故が2倍に増えるという決め付けは危険です。
過疎地に住む高齢者や職業運転者の運転免許を取り上げてしまったら、移動や仕事に困ることになります。
むしろ緑内障患者の多くが、未治療であることの方が問題です」と指摘する。

視野異常がある場合、患者本人が自覚しているか否かによって、日常生活への影響は大きく異なる。
そのため、朝岡特任講師は「緑内障は薬物治療や手術により進行を抑えられるので、
早期発見、早期治療が重要です。

40歳を超えたら、年に1度は検診を受けてください」と訴える。(メディカルトリビューン=時事)
(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです。2019/03/30 11:00)

2019年05月02日

認知症の周辺症状への対応 周囲が気遣い、人間関係の調整を

BPSD(周辺症状)がなければ、認知症には特に投薬の必要性はないと考えている。

認知症の周辺症状への対応
周囲が気遣い、人間関係の調整を


認知症は、物忘れや判断力の低下などの中核症状に加えて、頻度は高くないが、幻覚や妄想、徘徊(はいかい)、暴言、暴力などの行動・心理症状(BPSD)が出現することがある。
東京慈恵会医科大学(東京都港区)精神医学講座の繁田雅弘教授は、「家族や介護者の大きな負担になる徘徊、暴言、暴力といった行動の障害には、環境や人間関係が特に大きく影響します。
患者の話をよく聴き、共感することで症状が表れなくなったり、軽くなったりします」と指摘する。

認知症の行動・心理症状(BPSD)
認知症の行動・心理症状.jpg

▽改善可能なBPSD

認知症のBPSDは周辺症状とも呼ばれ、中核症状が原因となった行動や心理面の症状として表れる。
具体的には
〔1〕幻覚、錯覚
〔2〕思考の障害(妄想、疑心、嫉妬)
〔3〕感情の障害(抑うつ、不安)
〔4〕行動の障害(徘徊、暴言、暴力)
〔5〕衝動性の高進(異性に触れたり、万引きしたりする)
〔6〕意欲や自発性の低下(無関心、無気力)―などがある。

認知症の中核症状は脳の障害が直接の原因であるため改善は難しいが、BPSDは安心できる環境の中で信頼できる人がそばについているなど適切な対応を取ることで良くなることがある。

比較的軽度であれば、体を軽く動かす運動療法、音楽療法、懐かしい写真や物を眺めて昔のことを語り合う回想法などが効果を期待できる。
これらで改善しない場合、抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬などをやむを得ず用いた薬物療法が行われることもある。

▽改善は周囲の理解から

BPSDの症状で、特に患者の生活の質(QOL)を低下させ、介護者のストレスを増大させるのは、徘徊、暴言、暴力といった行動障害だ。
繁田教授は、環境や人間関係が大きく影響するため、他のBPSDとは区別する必要があるとする。
「何よりも大切なのは、本人が安心できるように、周囲の環境や人間関係を調整することです」

暴言を吐いたり、暴力を振るう患者に接する際には、非難したり、無視したりしてはならない。
また、徘徊を起こす人は、何らかの目的があって外出するが、時間と場所の感覚を失い、道に迷うケースが多い。
外出を禁ずるのではなく、理由を聞き、失敗を責めずに、共感を示すこと、同行し、あるいは見守ることが改善の近道となる。

繁田教授は「今までできていたことができない自分に、患者本人が一番傷つき、不安で混乱しています。
患者の声に耳を傾け、安心できる生活の場を作ってあげることでBPSDは改善します」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/03/30 07:00)

2019年04月29日

迅速診断登場で「検査を信じるか、医師を信じるか」の時代に?

その通りだな、と納得されましたー小児科に進まれた先生方は偉いなといつも感じてます!(6ヶ月小児外科をかじった一般消化器外科医談)
迅速診断登場で「検査を信じるか、医師を信じるか」の時代に?【平成の医療史30年◆小児科編】
日本外来小児科学会会長・横田俊一郎氏―Vol. 3

平成の医療史30年2019年3月26日 (火)配信 一般内科疾患小児科疾患一般外科疾患

日本外来小児科学会会長の横田俊一郎氏による、外来小児科の平成30年間の振り返り。
小児科外来ではこの30年にワクチン以外にも、大きく変わった2つの診療として「迅速診断キット」「抗菌薬処方」を挙げる。

「“検査を信じるか、医師を信じるか”みたいに、みんなが迅速診断に振り回される時代になっている気がする」と苦笑する。(聞き手・まとめ:m3.com編集部・坂口恵/2019年1月取材、全4回連載)

発熱患者の診察前に検査が完了?!
――「ワクチン以外にも、外来小児科で大きく変わった診療が2つある」と横田氏。その一つが「迅速検査キット」だそうだ。

迅速検査キットの皮切りは溶連菌でした。
一番、大きな変化をもたらしたのは、やはりインフルエンザの迅速診断キットでしょうね。
最初は保険適用がなかったので、自分で買ってやっていました。初めは「これでインフルエンザ陽性が分かるのか」なんてびっくりしていました(笑)。

もちろん、疾患が早く見つかることは悪いことではないし、日本式に早く診断して薬を使っているから重症例や死亡例が少ないという意見も間違っていないのかな、とは思います。
でも、最近はあまりにも検査に偏り過ぎているというのかな……。

「患者が熱が出て、診療所に来たら、医師の診察前に看護師がもう検査を済ませていた」なんて話も聞いたりします(苦笑)

――自身は臨床診断と迅速検査をどう使い分けているのだろうか。

臨床診断はもちろん行いますが、中には、ニュースなどの影響か「検査さえすれば、すぐに分かるでしょう」みたいなことを言う方もいます。
例えば家族が既にかかっていて、患者に症状がある場合は「これはインフルエンザということにしましょう。
迅速検査では陰性と出ることもありますし、それはそれで混乱するでしょう?」というふうに、検査の限界を説明して納得してもらうこともあります。
やはり、医師の技量というか、それをきちんと使えるようになることが重要で、臨床診断があってこその迅速検査だと思います
『みんなが迅速検査に振り回され過ぎている時代に』なっているような気がします。
「検査を信じるか、医師の診断を信じるか」みたいなね(笑)。

抗菌薬の処方様式が変わりにくい理由
――外来小児科で大きく変わった診療の3つ目は「抗菌薬」だそうだ。

日本外来小児科学会でも、感染症や公衆衛生の専門家の話を聞くなど、抗菌薬適正使用の動きは随分盛んにはなっていると思います。
ただ、全国に行き届いているかというと、まだ課題はあるかもしれません。
ちなみに、私の研修医時代は「ペリアクチン、アスベリン、ビソルボン」とか、「喉が赤かったり、熱があったりしたらケフレックス」などと習っていました。
『今の若い医師は、もう教育が変わっているので抗菌薬を全然使わない』ですよね。
『逆に』言うと、私たちくらいの年の、『長くやっている医師がなかなか変わらない』というのがあると思います。

――医師の抗菌薬の処方行動が変わりにくい要因を、横田氏は次のように分析する。

医師は自分で診療を始めてしまうと、大きな間違いがあったり、困ったりしたことがない限り、自分の診療スタイルを変えにくい性質があるのだと思います。
いろいろな研究から、抗菌薬によって腸内細菌の種類や数が大きく変わっていろいろな疾患につながる可能性が指摘されています。
一方、抗菌薬を使ったから平均寿命が短くなったというわけでもなく、多くの人が長生きするようになりました。

とはいえ、抗菌薬の適正使用も考えていかないと、
『耐性菌が増えてはいざというときに抗菌薬が使えなくなります』

こうしたことも、私自身は日本外来小児科学会の活動を介して教わりました。

例えば、武内一先生(現 佛教大学教授)が香川県の小豆島中央病院に勤務していた当時、上気道炎への全てのセフェム系抗菌薬の使用を中止し、『ペニシリン系抗菌薬を厳格な適応の上でのみ使用』したところ、『5年で耐性菌がほぼゼロ』になったと報告しました(外来小児科1999; 2: 51-56)

薬局で自分の抗菌薬処方量を確認

――草刈章氏(埼玉県・くさかり小児科)ら5人の小児科医は、小児科での抗菌薬使用がまだ一般的だった2005年に「小児上気道炎および関連疾患に対する抗菌薬使用ガイドライン−私たちの提案−」と題するGood Practice Guideを発表(外来小児科 2005; 8:146-173)。当時、小児科医の間で大きな反響を呼んだ。

この研究が基になって、西村龍夫先生(大阪府・にしむら小児科)や深澤満先生(福岡県・ふかざわ小児科)らも、髄膜炎や抗菌薬の適正使用に関する研究を報告するようになりました。

とても面白い先生方で、いつも良い刺激を受けています。私自身も「抗菌薬の不適切な使用は耐性菌出現の観点から良くない」とは分かっていました。
最初は普通の風邪には出さなくなっていたのですが、
徐々に「中耳炎も出さなくてもほとんどは自然経過で治る」と自分で確認して、処方がだんだん変わってきたというのが本当のところです。

以前は「出さなかったら、患者の状態が悪くなるのではないか……」と懸念していたのですが、やっぱり自分で「抗菌薬を処方しなくてもきちんと治る、大丈夫」と分かってくると出さなくなる。

自院近くの薬局、この地域(神奈川県小田原市)だと当院の患者の大部分は決まった薬局に取りに行くのですが、そこに頼んで自分の抗菌薬の処方量を確認してもらい、随分減っていることがあらためて分かりました。

――「抗菌薬を使わないで様子を見る」ことが可能なのは、かかりつけ医ならではだろうか。

かかりつけ医だから「念のため」と不要かもしれない抗菌薬を使わずに、その後の様子までを確認しやすいのは大きいかもしれません。近くに市立病院があって常勤の小児科医が10人くらいいるので、かかりつけの患者に何かあれば、いつでも引き受けてもらえる安心感もありますね。
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田中松平
元消化器外科医で,頭からつま先まで診れる総合診療科医です. 医学博士 元日本外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器内視鏡学会専門医, 日本医師会認定産業医, 日本病理学会認定剖検医,
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