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2018年08月13日

高齢者の高血圧診療の目的は健康寿命の延伸である

高齢者高血圧患者に投薬する際、注意していること
高齢者の高血圧診療ガイドライン発表―日常診療の問題に焦点
 日本老年医学会「高齢者高血圧診療ガイドライン(JGS‒HT2017)」2017/7/20から

高度機能障害がなければ年齢にかかわらず降圧治療を実施

 高齢者の高血圧診療の目的は健康寿命の延伸である

高齢者においても降圧治療による
脳卒中や
心筋梗塞、心不全をはじめとする脳血管疾患病や
慢性腎臓病の1次予防、2次予防の有用性は確立しているため、

高度に機能が障害されていない場合は、生命予後を改善するため年齢にかかわらず降圧治療が推奨される。

ただし、病態の多様性や生活環境等に応じて個別判断が求められる、としている。

生活習慣の修正についても、併存疾患等を考慮しつつ、積極的に行うことが推奨されている。

原則、認知機能にかかわらず降圧治療は行うが服薬管理には注意

 高齢者への降圧治療による認知症の発症抑制や、
軽度認知障害(MCI)を含む認知機能障害のある高齢者高血圧への降圧治療が、認知機能悪化を抑制する可能性が強いため、降圧治療を行う。

ただし、認知機能の低下がある場合などにおいては、服薬管理には注意する必要がある。

 一方、過降圧は認知機能障害のある高齢者高血圧において、認知機能を悪化させる可能性があるので注意を要する。

また、フレイルであっても基本的には降圧治療は推奨される。

転倒・骨折リスクが高い患者へはサイアザイド推奨

サイアザイド系利尿薬による骨折リスクの減少は多数の研究において一貫した結果が得られているため、
転倒リスクが高い患者や骨粗鬆症合併患者では積極的にサイアザイド系利尿薬を選択することが推奨される。

しかし、ループ利尿薬については、骨折リスクを増加させる能性があるため、注意が必要である。

Ca拮抗薬・ループ利尿薬は頻尿を助長する可能性

 もっとも使用頻度が高く、有用性の高い降圧薬であるCa拮抗薬は夜間頻尿を助長する可能性が示唆されている。

そのため、頻尿の症状がある患者においては、本剤の影響を評価することが推奨される。

また、腎機能低下時にサイアザイド系利尿薬の代わりに使用されるループ利尿薬も頻尿の原因になり得る。

 一方で、サイアザイド系利尿薬は夜間頻尿を増悪させる可能性が低い。

 しかし、「利尿薬」という名称から、患者が頻尿を懸念して内服をしない・自己調節することが少なくないため、患者に「尿量は増えない」ことを丁寧に説明する必要がある。

個別判断が必要なケースも。

終末期は、降圧薬の中止も積極的に検討

 高齢者高血圧の降圧目標としては、日本高血圧学会によるJSH2014と同様に、

65〜74歳では140/90mmHg未満、
75歳以上では150/90mmHg未満(忍容性があれば140/90mmHg未満)が推奨されている。

また、年齢だけでなく、病態や環境により、有用性と有害性を考慮することが提案されており、
身体機能の低下や認知症を有する患者などでは、
降圧薬治療開始や降圧目標を個別判断するよう求めている。

終末期の高齢者においては、降圧薬の中止も積極的に検討する。

「緩徐な降圧療法」の具体的な方法を記載

 第1選択薬についてはJSH2014の推奨と同様に、
原則、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬となっている。

心不全、頻脈、労作性狭心症、心筋梗塞後の高齢高血圧患者に対しては、β遮断薬を第1選択薬として考慮する。

 また、高齢者の降圧療法の原則の1つである「緩徐な降圧療法」として、
「降圧薬の初期量を常用量の1/2量とし、症状に注意しながら4週間〜3ヵ月の間隔で増量する」などといった、具体的な方法が記載されている。

さらには、降圧薬の調整に際し、留意すべき事項としてポリファーマシー(多剤投与)やアドヒアランス(服薬遵守)の対策などのポイントが挙げられている。
■参考
日本老年医学会「高齢者高血圧診療ガイドライン2017」
(ケアネット 後町 陽子)

2018年08月12日

私が、高齢者高血圧患者に投薬する際、注意していること 高齢者の高血圧診療の目的は健康寿命の延伸である

私が、高齢者高血圧患者に投薬する際、注意していること
高齢者の高血圧診療の目的は健康寿命の延伸である


高齢者の高血圧診療ガイドライン発表―日常診療の問題に焦点
 日本老年医学会「高齢者高血圧診療ガイドライン(JGS‒HT2017)」2017/7/20から

「高度機能障害がなければ年齢にかかわらず降圧治療を実施」

 高齢者の高血圧診療の目的は健康寿命の延伸である。

高齢者においても降圧治療による
脳卒中や心筋梗塞、心不全をはじめとする脳血管疾患病や
慢性腎臓病の1次予防、2次予防の有用性は確立しているため、

高度に機能が障害されていない場合は、生命予後を改善するため年齢にかかわらず降圧治療が推奨される。

ただし、病態の多様性や生活環境等に応じて個別判断が求められる、としている。

生活習慣の修正についても、併存疾患等を考慮しつつ、積極的に行うことが推奨されている。

原則、認知機能にかかわらず降圧治療は行うが服薬管理には注意

 高齢者への降圧治療による認知症の発症抑制や、
軽度認知障害(MCI)を含む認知機能障害のある高齢者高血圧への降圧治療が、認知機能悪化を抑制する可能性が強いため、降圧治療を行う。

ただし、認知機能の低下がある場合などにおいては、服薬管理には注意する必要がある。

 一方、過降圧は認知機能障害のある高齢者高血圧において、認知機能を悪化させる可能性があるので注意を要する。

また、フレイルであっても基本的には降圧治療は推奨される。

転倒・骨折リスクが高い患者へはサイアザイド推奨

サイアザイド系利尿薬による骨折リスクの減少は多数の研究において一貫した結果が得られているため、
転倒リスクが高い患者や骨粗鬆症合併患者では積極的にサイアザイド系利尿薬を選択することが推奨される。

しかし、ループ利尿薬については、骨折リスクを増加させる能性があるため、注意が必要である。

Ca拮抗薬・ループ利尿薬は頻尿を助長する可能性
 もっとも使用頻度が高く、有用性の高い降圧薬であるCa拮抗薬は夜間頻尿を助長する可能性が示唆されている。

そのため、頻尿の症状がある患者においては、本剤の影響を評価することが推奨される。

また、腎機能低下時にサイアザイド系利尿薬の代わりに使用されるループ利尿薬も頻尿の原因になり得る。

 一方で、サイアザイド系利尿薬は夜間頻尿を増悪させる可能性が低い 
 しかし、「利尿薬」という名称から、患者が頻尿を懸念して内服をしない・自己調節することが少なくないため、患者に「尿量は増えない」ことを丁寧に説明する必要がある。

個別判断が必要なケースも。
「終末期は、降圧薬の中止も積極的に検討」

 高齢者高血圧の降圧目標としては、日本高血圧学会によるJSH2014と同様に、

65〜74歳では140/90mmHg未満、
75歳以上では150/90mmHg未満(忍容性があれば140/90mmHg未満)が推奨されている。

また、年齢だけでなく、病態や環境により、有用性と有害性を考慮することが提案されており、
身体機能の低下や認知症を有する患者などでは、
降圧薬治療開始や降圧目標を個別判断するよう求めている。

終末期の高齢者においては、降圧薬の中止も積極的に検討する。

「緩徐な降圧療法」の具体的な方法を記載

 第1選択薬についてはJSH2014の推奨と同様に、
原則、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬となっている。

心不全、頻脈、労作性狭心症、心筋梗塞後の高齢高血圧患者に対しては、β遮断薬を第1選択薬として考慮する。

 また、高齢者の降圧療法の原則の1つである「緩徐な降圧療法」として、
「降圧薬の初期量を常用量の1/2量とし、症状に注意しながら4週間〜3ヵ月の間隔で増量する」などといった、具体的な方法が記載されている。

さらには、降圧薬の調整に際し、留意すべき事項としてポリファーマシー(多剤投与)やアドヒアランス(服薬遵守)の対策などのポイントが挙げられている。
■参考 日本老年医学会「高齢者高血圧診療ガイドライン2017」 (ケアネット 後町 陽子)

2018年08月11日

熱中症に関してよくある三つの間違い(1)

熱中症に関してよくある三つの間違い(1)
熱中症と脱水症対策
 外来で熱中症の方を診療した経験が何度もありますが、患者さん、あるいは周囲の人の誤解が症状を悪くしていると感じることがよくあります。
今回は、熱中症に関してよくある間違いを三つ指摘したいと思います。まずは熱中症について、最初にごく簡単に説明します。

 熱中症は、長い時間高温な環境にいることで生じる全身性の障害のことです。

倦怠(けんたい)感やめまい、頭痛、吐き気、筋肉痛、筋肉のけいれんなど、多彩な症状をともないます。
重度になると、意識を失ったり、肝臓や腎臓などの臓器障害が起こったりして、命の危険が生じることもあります。

 一般的に、熱中症が重症化しやすいのは高齢者と子供(乳幼児)です。

高齢の方が重症になる理由は二つあります。

 一つは、体温調節機能が低下していて、うまく体温の調整ができなくなっていること。
もう一つは、持病のために脱水になりやすくなっていることです。

 例えば、糖尿病の方は尿で水分が奪われやすく、脱水になりやすい傾向があります。
また、高血圧や心臓、肝臓などの病気で利尿薬を飲んでいる方も同じく、尿から水分が失われやすくなっています。

 一方、乳幼児は、体温調節機能が未熟であることと、体重あたりの体表面積が大きく、体表から水分が失われやすいことが原因です。

 ◇若い人の対策

 確かに、熱中症は一般には上記のように説明されます。高齢者や乳幼児が、熱中症で救急搬送されたり、命を落としたりするケースも夏場には多く見られます。
しかし、一般的な病院では、熱中症で受診される患者さんの多くは10歳代〜50歳代くらいの比較的若い方です。

 典型的なケースは、暑い環境で長時間スポーツをした中学生・高校生、工事現場など炎天下で肉体労働をされる若い方の軽度の熱中症です。

 周囲の人も、若くて元気な人の熱中症のリスクをそれほど重く考えていません。普段元気なだけに、多少の暑い環境でも無理して作業を続け、あまり水分をとらないのでしょう。

 また、若い方が室内で熱中症になることもあります。炎天下でないから、と油断して対策を怠るためですが、室内でも高温多湿の環境であれば熱中症にかかりやすくなります。

体育館でのバレーの練習中に熱中症の症状を訴えて受診した高校生もいれば、キッチンで火を使って長時間料理をしていて熱中症になった主婦の方もいます。

 よく考えると当たり前なのですが、熱中症は日中の暑い時間帯の活動性が高い若い方にも起こりやすい病気です。

これは環境整備によって容易に予防できます。エアコンや扇風機、保冷剤などの使用、涼しい場所での適度な休憩、適切な水分補給を現場でルール化する必要があります。
タグ:熱中症

2018年07月07日

“排泄”はデジタルヘルスの新鉱脈となるか(上) 漏れた尿で発電し、無線通信に利用しておむつ交換のタイミングを介護者に通知

もう「お漏らし」は怖くない
“排泄”はデジタルヘルスの新鉱脈となるか(上)
2017/03/03 17:45 大下 淳一=日経デジタルヘルス

漏れた尿で発電するおむつ
 おむつに漏れた尿で発電し、その電力を無線通信に利用しておむつ交換のタイミングを介護者に通知する。

立命館大学 理工学部 電子情報工学科教授の道関隆国氏は、そんな技術を開発しプロトタイプを2016年12月に発表した(関連記事)。

 「ワイヤレス尿失禁センサシステム」と呼ぶこのシステムは、紙おむつの肌に当たらない箇所(吸収剤と防水シートの間)に

アルミニウムと活性炭の電極を挟み込み、無線通信回路などを含む電子回路(センサー部)を外付けしたもの。

この紙おむつを装着した高齢者が尿を漏らすと電力が発生し、尿の量に応じてその発電量が増える仕組みだ。

 発生した電力はセンサー部のコンデンサーにため、一定量に達すると無線信号を発信する。

パソコンなどで受信する信号の間隔が漏れた尿の量に応じて短くなる性質を利用し、尿漏れの回数と量を推定。

紙おむつがぐっしょり濡れたような“換え時”になると、おむつ交換のアラートを出す。高齢者が少しくらい尿を漏らしても、交換の必要がなければ放置し、無駄なおむつ交換を防ぐシステムでもある。

 コストの大半を占めるのはセンサー部だが、数百円と安価に製造でき、電極付き紙おむつを交換する際にもセンサー部は繰り返して使える。実用化に向けて「協力が得られるおむつメーカーを探している」(道関氏)という。
タグ:IT 介護

2018年07月05日

「トラブルは 人を集めて 鎮静化」 スキンヘッド脳外科医 Dr. 中島の 新・徒然草(225)

「トラブルは 人を集めて 鎮静化」
スキンヘッド脳外科医 Dr. 中島の 新・徒然草(225)

公開日:2018/06/14 企画・制作 ケアネット

二百二十五の段 コードホワイト
今週の月曜日の朝、看護師さんたちとの間で出た話題は、あの悲惨な新幹線殺傷事件のニュースです。この事件が他人事と思えないのは、我々の働く病院の中でも起こり得ることであり、実際、酔っ払った患者さんに胸ぐらをつかまれるくらいのことは時々あるからです。

我々の病院では、ERで何かあったらボタンを押せと言われています。そうすると警備員さんが駆けつけてくることになっていますが、その効果の程度は不明です。

ある病院ではコードブルーならぬコードホワイトというのがあると聞きました。つまり、職員が危害を加えられそうになった場合に、応援を求めてコールするというものです。

院内放送で「コードホワイト、コードホワイト、ER」というアナウンスがあると、その時点で手を空けることのできる者は一斉にERに集合します。あっという間に15人程度は集まるので、その人数に圧倒されて暴言暴力の主は戦意喪失してしまうのだそうです。

時には逆効果になってしまい、「なんでこんなに大勢集まってくるんや! 俺が何したっちゅうねん!」と余計に激高する人もいるのだとか。

ですから、このシステムにはまだまだ改良の余地がありますが、コードホワイトという手段があると分かっていれば、暴力的なトラブルに巻き込まれても職員が落ち着いて対応することができます。

もちろんコードホワイトに関わるのは怖いし勘弁して欲しい、という人も少なくありません。そんなこともあってか、現場に1番乗りした人は周囲から称賛の目で見られるのだそうです。

かつては、この病院、乱暴者が数多くやってきたので、コードホワイトも月に数件あったそうです。

でも現在は落ち着いてきて、月に1件あるか無いかに減りました。

トラブル発生時にいきなり110番するのも心理的ハードルが高いので、まずはコードホワイトで対応するというのも悪くはありません。

もし事態がエスカレートするようなら、その時こそ警察に連絡すべきですね。

職員の安心感につながるコードホワイトのようなシステムは、それぞれの病院でも持っておいても悪くないと思います。

最後に1句

トラブルは 人を集めて 鎮静化

中島 伸 ( なかじま しん ) 氏
独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 脳神経外科、総合診療科

[略歴]

昭和34年神戸市生まれ。昭和59年大阪大学医学部卒業。麻酔科、脳神経外科、放射線科、救急などで研修する。平成6年〜9年の間、米国ボストンのハーバード大学およびブリガム・アンド・ウイミンズ病院に留学した。
タグ:臨床 現場 知恵
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田中松平
元消化器外科医で,頭からつま先まで診れる総合診療科医です. 医学博士 元日本外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器内視鏡学会専門医, 日本医師会認定産業医, 日本病理学会認定剖検医,
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