2019年05月07日
漢方外来、女性患者が多いのには理由がある
(固形がんの化学療法をしていて、漢方は重宝した。
末期患者に対しての緩和療法でも威力を発揮する
ただし、漢方も薬なので、副作用があるし、内服薬の確認の際には漢方の服用についても申告してほしい)
漢方外来、女性患者が多いのには理由がある
2019年03月29日 05:05
漢方外来は、特に疾患を限定しておらず、対象となる患者の疾患や愁訴は多岐にわたる。
男女とも受診するが、実際の外来患者は『圧倒的に女性』が多く、明確な性差が見られる。
埼玉医科大学東洋医学科診療部長の磯部秀之氏は「漢方外来受診者に女性が多い理由は、
女性はホルモンの変動が激しいため症状や愁訴も多彩で、漢方の特徴とその適応病態が適しているためと思われる」と第12回日本性差医学・医療学会(1月19〜20日)で述べた。
漢方は人間本来の自然治癒力を引き出す
磯部氏によると、同大学病院や同大学かわごえクリニックの漢方外来の受診者は、
70〜80%が女性であるという。
同クリニックにおける2014年と15年の患者数は、両年ともに女性が約80%、男性が約20%であった。
漢方治療は漢方医学的な診断や考え方に基づいて漢方薬を投与する。
漢方薬は生薬(植物、動物、鉱物)を丸ごと使用し、基本的には複数の生薬を組み合わせて使用する。
複数の生薬を組み合わせる理由は、作用が不十分なため高めたい、不都合な症状の発現を軽減するなどだが、最も大きな理由は多彩な症状・体質への対処であるという。
同氏は「漢方医学の基本方針は、人間本来の自然治癒力を引き出すこと。
自然治癒力が衰えているときには賦活する、過剰なときには適度に弱めるなど、漢方薬によって自然治癒力を調整する。
ヒトは生体のバランスの崩れを回復する恒常性(ホメオスタシス)を有するが、それを後押しするのが漢方治療である」と説明。
「西洋医学ではどこに異常があるのかを細分化していく(細かく見る)、漢方医学では病人を総合的に見るというのが両者の視点の違い。漢方では、疾患を持った患者全体をいかに治療するかという視点に立っている」と述べた。
女性は自律神経が乱れやすい
漢方治療が考慮される病態としては
@可逆的変化を主とする疾患
A機能性疾患
B虚弱体質(体質改善)
C心身症的傾向が強い
D検査で症状を説明できるような異常がない
E西洋医学的には治療が困難
F西洋医学的な治療が副作用のために継続できない
G西洋医学的な治療だけでは効果が不十分
−などが挙げられる。
女性の場合、生理周期に伴う急激なホルモンの変動により自律神経系のバランスを崩しやすく、
自律神経失調症につながることも少なくない。
漢方薬は、ホルモンの変動や自律神経機能を調節し、そのバランスの乱れを修正する方向に作用する。
また女性は、生理周期に伴ういらいらや落ち込み、不安など精神面での愁訴に悩まされることが多い。
漢方医学では心と体を切り離さず、常に精神と身体相互の関連を重視している。
精神面での愁訴を重要視し、心身症的傾向が強い場合には、漢方治療の有用性は高いという。
さらに女性は生理前、生理中だけでなく、さまざまな愁訴があり、更年期症状も非常に多彩である。
個体差の重視は、漢方治療の大きな特徴の1つであり、疾患よりも、その疾患を持った病人に対する治療を行うものである。
女性に多い主訴は頭痛、不眠、腰痛、肩凝りなど
磯部氏は同クリニックにおける2015年の新規受診患者74例(女性56例、男性18例)を対象として、初診時の問診票を解析した。
男女比は患者全体と同様の傾向で、
問診票でチェックされた症状の数は男性の6.8に対し、女性では10.5と明らかに多かった。
睡眠に関する症状は男性の55.6%に対し、女性では87.5%と大部分で見られた。
気分の項目(いらいらなどの症状)では、男性1.3に対し女性は2.6と2倍であった。
女性で最も多かった主訴は頭痛、次いで不眠、腰痛、肩凝り、倦怠感、冷え、めまいなどの順であった。
また、主訴に限らず問診票に記入された症状では、肩凝りと冷えが30例超と非常に多く、疲れやすい、腰痛、不安感、夜中に目が覚めるなども多かった。
同氏は「精神と身体を切り離さない漢方治療の有用性が示唆される」と述べた。
冷えは万病のもと
冷えも漢方外来を受診する女性に多く見られる症状の1つである。
磯部氏は「冷えが主訴の男性がいないわけではないが、女性の方が圧倒的に多く、主訴が冷えでなくても冷えの症状を訴える女性は大変多い。
冷えには血流や新陳代謝などが関与し、自律神経の乱れや機能低下が原因となる。
また、筋肉の緊張を高め、血流をさらに低下させるという悪循環につながる」と指摘した。
冷えは多くの症状や疾患と関連性があり、肩凝り、頭痛、腰痛、痺れ、腹痛や便通異常(便秘や下痢)、生理不順や不妊などの原因の1つとなる。
さらに、冷えがあるとかぜをひきやすくなったり不眠症になることもまれではない。
西洋医学的には冷えの治療は難しいが、漢方には体を温める効果のある生薬が多く、冷えに有効な処方は多数あるという。
全身状態の改善
漢方治療は生体のゆがみを是正し、生体をより良い方向へ導くことを主眼とするため、全身状態を改善し、種々の好ましい作用をもたらす。
かぜをひかなくなった、体が温まる、便通がよくなった、熟睡できる、疲れにくくなったなど、さまざまな改善が見られる。また、漢方治療は体力を補い、患者に活力を与える。そのため、主訴の改善が難しい場合でも、患者の闘病力を高め、QOLの向上が期待できる。
以前は、西洋医学的治療を受けても治らず最後の手段として漢方外来を受診する人が多かったが、近年は他の医療機関を受診せずにいきなり漢方外来を受診する人が増えたという。
受診理由は、西洋医学的治療に不安が大きい(西洋薬の副作用などを心配)、体質改善など漢方治療が適切と判断などであるという。
磯部氏は「ただし、安易に初めから漢方外来を受診しても、持病(糖尿病など)が重症の場合には西洋医学の治療を併用することや他科に紹介することも少なくない」と述べている。
漢方と西洋医学の併用で治療の幅が広がる
漢方は、西洋医学だけでは不十分なところをある程度補うことが可能で、西洋医学との併用により西洋薬の減量や副作用の軽減、相乗効果などが期待できる。
さらに難治性疾患患者の闘病力の向上、QOLの改善などに寄与できる。
医療費もそれほど高くないため、医療経済に対する貢献が可能と思われ、普段から漢方薬を服用することが体質改善につながり予防医学への有用性が高いと考えられる。
磯部氏は「これらのことから、漢方薬は現代医療における"有用な治療戦略の1つ"といえる」と強調。
「現在、漢方外来を受診する男性患者が増加している。西洋医学は日々大きく進歩しているが、それでも説明のつかない病態に対しては漢方が有用な可能性がある。
西洋医学と漢方医学の両方をうまく使うことで治療の幅が広がると思われる」と結んだ。(慶野 永)
末期患者に対しての緩和療法でも威力を発揮する
ただし、漢方も薬なので、副作用があるし、内服薬の確認の際には漢方の服用についても申告してほしい)
漢方外来、女性患者が多いのには理由がある
2019年03月29日 05:05
漢方外来は、特に疾患を限定しておらず、対象となる患者の疾患や愁訴は多岐にわたる。
男女とも受診するが、実際の外来患者は『圧倒的に女性』が多く、明確な性差が見られる。
埼玉医科大学東洋医学科診療部長の磯部秀之氏は「漢方外来受診者に女性が多い理由は、
女性はホルモンの変動が激しいため症状や愁訴も多彩で、漢方の特徴とその適応病態が適しているためと思われる」と第12回日本性差医学・医療学会(1月19〜20日)で述べた。
漢方は人間本来の自然治癒力を引き出す
磯部氏によると、同大学病院や同大学かわごえクリニックの漢方外来の受診者は、
70〜80%が女性であるという。
同クリニックにおける2014年と15年の患者数は、両年ともに女性が約80%、男性が約20%であった。
漢方治療は漢方医学的な診断や考え方に基づいて漢方薬を投与する。
漢方薬は生薬(植物、動物、鉱物)を丸ごと使用し、基本的には複数の生薬を組み合わせて使用する。
複数の生薬を組み合わせる理由は、作用が不十分なため高めたい、不都合な症状の発現を軽減するなどだが、最も大きな理由は多彩な症状・体質への対処であるという。
同氏は「漢方医学の基本方針は、人間本来の自然治癒力を引き出すこと。
自然治癒力が衰えているときには賦活する、過剰なときには適度に弱めるなど、漢方薬によって自然治癒力を調整する。
ヒトは生体のバランスの崩れを回復する恒常性(ホメオスタシス)を有するが、それを後押しするのが漢方治療である」と説明。
「西洋医学ではどこに異常があるのかを細分化していく(細かく見る)、漢方医学では病人を総合的に見るというのが両者の視点の違い。漢方では、疾患を持った患者全体をいかに治療するかという視点に立っている」と述べた。
女性は自律神経が乱れやすい
漢方治療が考慮される病態としては
@可逆的変化を主とする疾患
A機能性疾患
B虚弱体質(体質改善)
C心身症的傾向が強い
D検査で症状を説明できるような異常がない
E西洋医学的には治療が困難
F西洋医学的な治療が副作用のために継続できない
G西洋医学的な治療だけでは効果が不十分
−などが挙げられる。
女性の場合、生理周期に伴う急激なホルモンの変動により自律神経系のバランスを崩しやすく、
自律神経失調症につながることも少なくない。
漢方薬は、ホルモンの変動や自律神経機能を調節し、そのバランスの乱れを修正する方向に作用する。
また女性は、生理周期に伴ういらいらや落ち込み、不安など精神面での愁訴に悩まされることが多い。
漢方医学では心と体を切り離さず、常に精神と身体相互の関連を重視している。
精神面での愁訴を重要視し、心身症的傾向が強い場合には、漢方治療の有用性は高いという。
さらに女性は生理前、生理中だけでなく、さまざまな愁訴があり、更年期症状も非常に多彩である。
個体差の重視は、漢方治療の大きな特徴の1つであり、疾患よりも、その疾患を持った病人に対する治療を行うものである。
女性に多い主訴は頭痛、不眠、腰痛、肩凝りなど
磯部氏は同クリニックにおける2015年の新規受診患者74例(女性56例、男性18例)を対象として、初診時の問診票を解析した。
男女比は患者全体と同様の傾向で、
問診票でチェックされた症状の数は男性の6.8に対し、女性では10.5と明らかに多かった。
睡眠に関する症状は男性の55.6%に対し、女性では87.5%と大部分で見られた。
気分の項目(いらいらなどの症状)では、男性1.3に対し女性は2.6と2倍であった。
女性で最も多かった主訴は頭痛、次いで不眠、腰痛、肩凝り、倦怠感、冷え、めまいなどの順であった。
また、主訴に限らず問診票に記入された症状では、肩凝りと冷えが30例超と非常に多く、疲れやすい、腰痛、不安感、夜中に目が覚めるなども多かった。
同氏は「精神と身体を切り離さない漢方治療の有用性が示唆される」と述べた。
冷えは万病のもと
冷えも漢方外来を受診する女性に多く見られる症状の1つである。
磯部氏は「冷えが主訴の男性がいないわけではないが、女性の方が圧倒的に多く、主訴が冷えでなくても冷えの症状を訴える女性は大変多い。
冷えには血流や新陳代謝などが関与し、自律神経の乱れや機能低下が原因となる。
また、筋肉の緊張を高め、血流をさらに低下させるという悪循環につながる」と指摘した。
冷えは多くの症状や疾患と関連性があり、肩凝り、頭痛、腰痛、痺れ、腹痛や便通異常(便秘や下痢)、生理不順や不妊などの原因の1つとなる。
さらに、冷えがあるとかぜをひきやすくなったり不眠症になることもまれではない。
西洋医学的には冷えの治療は難しいが、漢方には体を温める効果のある生薬が多く、冷えに有効な処方は多数あるという。
全身状態の改善
漢方治療は生体のゆがみを是正し、生体をより良い方向へ導くことを主眼とするため、全身状態を改善し、種々の好ましい作用をもたらす。
かぜをひかなくなった、体が温まる、便通がよくなった、熟睡できる、疲れにくくなったなど、さまざまな改善が見られる。また、漢方治療は体力を補い、患者に活力を与える。そのため、主訴の改善が難しい場合でも、患者の闘病力を高め、QOLの向上が期待できる。
以前は、西洋医学的治療を受けても治らず最後の手段として漢方外来を受診する人が多かったが、近年は他の医療機関を受診せずにいきなり漢方外来を受診する人が増えたという。
受診理由は、西洋医学的治療に不安が大きい(西洋薬の副作用などを心配)、体質改善など漢方治療が適切と判断などであるという。
磯部氏は「ただし、安易に初めから漢方外来を受診しても、持病(糖尿病など)が重症の場合には西洋医学の治療を併用することや他科に紹介することも少なくない」と述べている。
漢方と西洋医学の併用で治療の幅が広がる
漢方は、西洋医学だけでは不十分なところをある程度補うことが可能で、西洋医学との併用により西洋薬の減量や副作用の軽減、相乗効果などが期待できる。
さらに難治性疾患患者の闘病力の向上、QOLの改善などに寄与できる。
医療費もそれほど高くないため、医療経済に対する貢献が可能と思われ、普段から漢方薬を服用することが体質改善につながり予防医学への有用性が高いと考えられる。
磯部氏は「これらのことから、漢方薬は現代医療における"有用な治療戦略の1つ"といえる」と強調。
「現在、漢方外来を受診する男性患者が増加している。西洋医学は日々大きく進歩しているが、それでも説明のつかない病態に対しては漢方が有用な可能性がある。
西洋医学と漢方医学の両方をうまく使うことで治療の幅が広がると思われる」と結んだ。(慶野 永)
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