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2019年06月09日
第8回 高齢者の運動療法の進め方、工夫のポイント【高齢者糖尿病診療のコツ】
(身体を動かす習慣は、
筋肉量や筋力低下の抑制、
フレイルや認知機能低下の予防、
抑うつ予防、
心肺機能の維持、
ストレス解消など多岐にわたる!)
第8回 高齢者の運動療法の進め方、工夫のポイント【高齢者糖尿病診療のコツ】
公開日:2019/04/16
患者さんごとに「個別の治療」、「個別の管理目標」が求められる高齢者の糖尿病診療。
判断に迷う場面も多いのではないでしょうか。
事前アンケートで寄せられた、高齢者特有の問題に対する診療上の迷いや疑問に、東京都健康長寿医療センター 糖尿病・代謝・内分泌内科の先生方が回答します。
Q1 運動量(負荷)と時間の設定について、基本的な考え方を教えてください
photoBさんによる写真ACからの写真
高齢の糖尿病患者さんでは、運動療法の効果は血糖降下作用のみにとどまりません。
筋肉量や筋力低下の抑制、
フレイルや認知機能低下の予防、
抑うつ予防、
心肺機能の維持、
ストレス解消など多岐にわたります。
また一口に運動療法といっても、
有酸素運動やレジスタンス運動、
柔軟性運動(ストレッチ)、
バランス運動など様々です。
有酸素運動は歩行や水泳などの全身運動を指し、
骨格筋などで酸素を取り入れて糖質や遊離脂肪酸を燃焼させ、エネルギー(ATP)を生成する運動です。
運動開始から10分ほど経過すると糖質が利用されはじめ、
15分ほど経過すると遊離脂肪酸が利用されはじめるので、
糖質と遊離脂肪酸の双方が利用されるには20分以上の運動時間が必要となります。
また運動強度としては、
Borgの自覚的運動強度(rate of perceived exertion;RPE)の
「ややきつい」と感じる程度が適当であり、
心拍数で120拍/分程度、安静時脈拍の1.5〜2倍の拍動数を示すレベルが目安となります。
ジョギングであれば、「隣の人とおしゃべりしながら走れる程度」を目安とすれば良いと思います。
糖尿病患者の糖代謝の改善が持続するのは、
運動後12〜72時間のため、頻度としては週に3〜5回が必要となります。
標準的な考え方としては、
週に150分以上のウォーキングや自転車こぎなどの有酸素運動を行うと、
血糖コントロールの改善や糖尿病合併症の進行予防が期待できます。
ウォーキングであれば、1回につき20〜30分、1日2回ずつ行うのが理想です。
しかし、今まで運動習慣のなかった方がいきなり20分以上の運動量をこなすのは困難です。
そのため、『実践可能な量から開始』していくのが良いでしょう。
まずは『1日に5分程度でも良い』ので、
ペットを連れて散歩する、
ごみを捨てに行く、
買い物に行くなどから始めてもらいます。
できれば毎日行っていただくよう指導しています。
外出することを習慣づけてしまえば、運動量を増やしていくことも容易となるからです。
なお、運動は食後1時間程度から開始すると、食後高血糖の抑制効果が得られます。
高齢の糖尿病患者は食後高血糖を来しやすいため、食後に運動することを推奨しています。
レジスタンス運動とは、
ダンベルを利用した体操や、腹筋や腕立て伏せといった筋力トレーニングなどを指します。
高齢の糖尿病患者が、軽度の負荷であるレジスタンス運動を継続して行うと、
筋肉量が有意に増加したという報告があります。
最近のメタ解析では、2型糖尿病患者がレジスタンス運動を行うと、
筋力だけでなく、血糖コントロールが改善するとも報告されています。
レジスタンス運動は、少なくとも週2回以上行うことが推奨されています。
ただし、フレイルがあってレジスタンス運動が十分施行できない場合には、
柔軟性運動から始めて、軽度の負荷のレジスタンス運動を行い、
有酸素運動やバランス運動を加えて、
さらにレジスタンス運動の負荷を強めていくという流れが良いと思います。
こうした運動を多要素の運動といい、
タンパク質の十分な摂取と組み合わせると、
フレイルや身体機能を改善することが報告されています。
市町村の運動教室(筋力トレーニングを含むもの)やジムに参加したり、
ヨガや太極拳などに参加したりすることも有効です。
筋肉量や筋力低下の抑制、
フレイルや認知機能低下の予防、
抑うつ予防、
心肺機能の維持、
ストレス解消など多岐にわたる!)
第8回 高齢者の運動療法の進め方、工夫のポイント【高齢者糖尿病診療のコツ】
公開日:2019/04/16
患者さんごとに「個別の治療」、「個別の管理目標」が求められる高齢者の糖尿病診療。
判断に迷う場面も多いのではないでしょうか。
事前アンケートで寄せられた、高齢者特有の問題に対する診療上の迷いや疑問に、東京都健康長寿医療センター 糖尿病・代謝・内分泌内科の先生方が回答します。
Q1 運動量(負荷)と時間の設定について、基本的な考え方を教えてください
photoBさんによる写真ACからの写真
高齢の糖尿病患者さんでは、運動療法の効果は血糖降下作用のみにとどまりません。
筋肉量や筋力低下の抑制、
フレイルや認知機能低下の予防、
抑うつ予防、
心肺機能の維持、
ストレス解消など多岐にわたります。
また一口に運動療法といっても、
有酸素運動やレジスタンス運動、
柔軟性運動(ストレッチ)、
バランス運動など様々です。
有酸素運動は歩行や水泳などの全身運動を指し、
骨格筋などで酸素を取り入れて糖質や遊離脂肪酸を燃焼させ、エネルギー(ATP)を生成する運動です。
運動開始から10分ほど経過すると糖質が利用されはじめ、
15分ほど経過すると遊離脂肪酸が利用されはじめるので、
糖質と遊離脂肪酸の双方が利用されるには20分以上の運動時間が必要となります。
また運動強度としては、
Borgの自覚的運動強度(rate of perceived exertion;RPE)の
「ややきつい」と感じる程度が適当であり、
心拍数で120拍/分程度、安静時脈拍の1.5〜2倍の拍動数を示すレベルが目安となります。
ジョギングであれば、「隣の人とおしゃべりしながら走れる程度」を目安とすれば良いと思います。
糖尿病患者の糖代謝の改善が持続するのは、
運動後12〜72時間のため、頻度としては週に3〜5回が必要となります。
標準的な考え方としては、
週に150分以上のウォーキングや自転車こぎなどの有酸素運動を行うと、
血糖コントロールの改善や糖尿病合併症の進行予防が期待できます。
ウォーキングであれば、1回につき20〜30分、1日2回ずつ行うのが理想です。
しかし、今まで運動習慣のなかった方がいきなり20分以上の運動量をこなすのは困難です。
そのため、『実践可能な量から開始』していくのが良いでしょう。
まずは『1日に5分程度でも良い』ので、
ペットを連れて散歩する、
ごみを捨てに行く、
買い物に行くなどから始めてもらいます。
できれば毎日行っていただくよう指導しています。
外出することを習慣づけてしまえば、運動量を増やしていくことも容易となるからです。
なお、運動は食後1時間程度から開始すると、食後高血糖の抑制効果が得られます。
高齢の糖尿病患者は食後高血糖を来しやすいため、食後に運動することを推奨しています。
レジスタンス運動とは、
ダンベルを利用した体操や、腹筋や腕立て伏せといった筋力トレーニングなどを指します。
高齢の糖尿病患者が、軽度の負荷であるレジスタンス運動を継続して行うと、
筋肉量が有意に増加したという報告があります。
最近のメタ解析では、2型糖尿病患者がレジスタンス運動を行うと、
筋力だけでなく、血糖コントロールが改善するとも報告されています。
レジスタンス運動は、少なくとも週2回以上行うことが推奨されています。
ただし、フレイルがあってレジスタンス運動が十分施行できない場合には、
柔軟性運動から始めて、軽度の負荷のレジスタンス運動を行い、
有酸素運動やバランス運動を加えて、
さらにレジスタンス運動の負荷を強めていくという流れが良いと思います。
こうした運動を多要素の運動といい、
タンパク質の十分な摂取と組み合わせると、
フレイルや身体機能を改善することが報告されています。
市町村の運動教室(筋力トレーニングを含むもの)やジムに参加したり、
ヨガや太極拳などに参加したりすることも有効です。
2019年06月08日
抗生物質の販売量減少 適正使用啓発の成果か 「医療新世紀」
(貴重な医療資源ー抗生物質
使用する側も要求する側も知らないから、
食育、家庭科、保健体育、道徳?の時間を使って教えられないか?)
抗生物質の販売量減少 適正使用啓発の成果か 「医療新世紀」
2019年4月16日 (火)配信共同通信社
細菌による感染症の治療に使われる抗生物質(抗菌薬)の国内販売量が減少傾向にあり、
昨年は5年前と比べ10・7%減ったことが、国立国際医療研究センター(東京)の集計で分かった。
政府は、抗菌薬が効きにくい「薬剤耐性菌」の拡大に歯止めをかけようと、
不必要な抗菌薬使用を減らす啓発などの対策を2016年から進めている。
集計したAMR(薬剤耐性)臨床リファレンスセンターの具芳明(ぐ・よしあき)情報・教育支援室長は、
販売量減少について「本来抗菌薬が不必要な風邪などへの処方が減った結果とみられる」と分析している。
販売量は薬の卸業者の販売データを基に13〜18年について算出した。
医療現場で実際に使われた量と同じではないが、大まかな傾向をつかむことができる。
その結果、16年まで横ばいだった販売量は17年に13年比で7・3%減少。
18年はさらに減った。
抗菌薬の種類別に見ると、
セフェム系の飲み薬が13年比で18・4%減、
マクロライド系が18・0%減、
キノロン系が17・1%減など。
この3種類は、幅広い種類の細菌に効果がある「切り札」的な薬だが、
国内では、ウイルスが原因のため抗菌薬が効かない風邪の患者らにも漫然と処方される例が多い
と指摘されている。
政府は16年策定のAMR対策行動計画で、
20年までにこれら3種の使用を13年比で50%削減するとの目標を掲げている。
具さんは「薬の処方の習慣を変えるには時間が必要なので、減少はまだ続くと期待している。
目標に近づけるよう啓発にさらに力を入れたい」と話している。
使用する側も要求する側も知らないから、
食育、家庭科、保健体育、道徳?の時間を使って教えられないか?)
抗生物質の販売量減少 適正使用啓発の成果か 「医療新世紀」
2019年4月16日 (火)配信共同通信社
細菌による感染症の治療に使われる抗生物質(抗菌薬)の国内販売量が減少傾向にあり、
昨年は5年前と比べ10・7%減ったことが、国立国際医療研究センター(東京)の集計で分かった。
政府は、抗菌薬が効きにくい「薬剤耐性菌」の拡大に歯止めをかけようと、
不必要な抗菌薬使用を減らす啓発などの対策を2016年から進めている。
集計したAMR(薬剤耐性)臨床リファレンスセンターの具芳明(ぐ・よしあき)情報・教育支援室長は、
販売量減少について「本来抗菌薬が不必要な風邪などへの処方が減った結果とみられる」と分析している。
販売量は薬の卸業者の販売データを基に13〜18年について算出した。
医療現場で実際に使われた量と同じではないが、大まかな傾向をつかむことができる。
その結果、16年まで横ばいだった販売量は17年に13年比で7・3%減少。
18年はさらに減った。
抗菌薬の種類別に見ると、
セフェム系の飲み薬が13年比で18・4%減、
マクロライド系が18・0%減、
キノロン系が17・1%減など。
この3種類は、幅広い種類の細菌に効果がある「切り札」的な薬だが、
国内では、ウイルスが原因のため抗菌薬が効かない風邪の患者らにも漫然と処方される例が多い
と指摘されている。
政府は16年策定のAMR対策行動計画で、
20年までにこれら3種の使用を13年比で50%削減するとの目標を掲げている。
具さんは「薬の処方の習慣を変えるには時間が必要なので、減少はまだ続くと期待している。
目標に近づけるよう啓発にさらに力を入れたい」と話している。
2019年06月06日
野菜と果物の摂取量が多いと、2型糖尿病患者さんの脳卒中発症リスクが最大で65%減少したという報告があります!
野菜と果物の摂取量が多いと、2型糖尿病患者さんの脳卒中発症リスクが最大で65%減少したという報告があります!
糖尿病の方だけではなく、健康な方にも、
果物は握りこぶし1個分
フランスのことわざに
朝の果物は”金”
昼の果物は”銀”
夜の果物は”銅”
とあるように
可能ならばお昼までに食べましょう。
ビタミン、ミネラルの摂取だけでなく、豊富な食物繊維が腸内細菌の餌になります。
免疫力の7割を腸が担っています。
腸内細菌が出すシグナルで、ナチュラルキラー細胞、Tレグを活性化させることが知られています。
葉もの野菜は、茹でるとビタミンが多少損なわれますが、
カサが減るので、たくさんの量が食べれるので、
総量で見れば、十分なビタミンが摂取できます。
人参の皮は薄皮で、これをピラーで剥いてしまうと
栄養の4割を捨ててしまうことになるので、
家族で食べる分には、皮を剥かないで料理されることをお勧めします。
ごぼうや芋などの根菜類も、
少し土がついているくらいが、
鉄分を多く取れるので、
皮を向きすぎないように調理してください。
糖尿病の方だけではなく、健康な方にも、
果物は握りこぶし1個分
フランスのことわざに
朝の果物は”金”
昼の果物は”銀”
夜の果物は”銅”
とあるように
可能ならばお昼までに食べましょう。
ビタミン、ミネラルの摂取だけでなく、豊富な食物繊維が腸内細菌の餌になります。
免疫力の7割を腸が担っています。
腸内細菌が出すシグナルで、ナチュラルキラー細胞、Tレグを活性化させることが知られています。
葉もの野菜は、茹でるとビタミンが多少損なわれますが、
カサが減るので、たくさんの量が食べれるので、
総量で見れば、十分なビタミンが摂取できます。
人参の皮は薄皮で、これをピラーで剥いてしまうと
栄養の4割を捨ててしまうことになるので、
家族で食べる分には、皮を剥かないで料理されることをお勧めします。
ごぼうや芋などの根菜類も、
少し土がついているくらいが、
鉄分を多く取れるので、
皮を向きすぎないように調理してください。
2019年06月05日
K(カリウム)ってなあに?
K(カリウム)ってなあに?
K(カリウム)の多いものを食べましょう!
食物繊維の多いものです。
果物、野菜、豆、芋、海藻など
Na(ナトリウム、塩)を尿で排泄して
血圧を下げてくれます
カリウムの摂取制限がある人は、腎臓の悪い人だけです。
カリウムの正常値を
国家試験の際に
カリカリ(K)して
三振(3.4)は
誤算(5.3)
と覚えました。
3.4-5.3
低カリウム血症
通常は嘔吐、下痢、副腎の病気、利尿薬の使用が原因で起こります。
血清カリウム濃度が3mEq/L未満になると一般に筋力低下が生じ,筋肉のけいれんやひきつり、
さらには麻痺が生じるほか、不整脈を起こすことがあります。
診断は、カリウム濃度を測定する血液検査に基づいて下されます。
カリウムは、細胞、神経、筋肉が正常に機能するのに必要な物質です。
典型的な低カリウム血症は、
消化管から大量のカリウムが失われることが原因で起こります。
ときに、過量のカリウムが尿中に排出される場合がありますが、
これは通常、利尿薬(腎臓に働きかけて過剰なナトリウム、水、カリウムを排出させる薬)によるものです。
クッシング症候群( クッシング症候群)など多くの副腎疾患では、
アルドステロンというホルモンが副腎から過剰に分泌され、
これが腎臓に働きかけて大量のカリウムを排出させます。
高カリウム血症血清(カリウムが5.5mEq/Lを超える)
高カリウム血症の一般的な原因には,
カリウム保持性薬剤,
腎機能不全,
副腎機能不全,
および細胞の崩壊を伴う疾患(例,横紋筋融解症,熱傷,軟部組織または消化管への出血)などがあります。
慢性腎臓病では,末期腎不全(GFRが10〜15mL/min未満)にならない限り高カリウム血症はまれです。
症状と徴候
弛緩性麻痺がときに生じるが,高カリウム血症は不整脈が出現するまで通常は無症状。
軽度の高カリウム血症
血清カリウム濃度が6mEq/L未満
中等度から重度の高カリウム血症
血清カリウムが6.5mEq/Lを上回っている場合は,より積極的な治療が必要。
K(カリウム)の多いものを食べましょう!
食物繊維の多いものです。
果物、野菜、豆、芋、海藻など
Na(ナトリウム、塩)を尿で排泄して
血圧を下げてくれます
カリウムの摂取制限がある人は、腎臓の悪い人だけです。
カリウムの正常値を
国家試験の際に
カリカリ(K)して
三振(3.4)は
誤算(5.3)
と覚えました。
3.4-5.3
低カリウム血症
通常は嘔吐、下痢、副腎の病気、利尿薬の使用が原因で起こります。
血清カリウム濃度が3mEq/L未満になると一般に筋力低下が生じ,筋肉のけいれんやひきつり、
さらには麻痺が生じるほか、不整脈を起こすことがあります。
診断は、カリウム濃度を測定する血液検査に基づいて下されます。
カリウムは、細胞、神経、筋肉が正常に機能するのに必要な物質です。
典型的な低カリウム血症は、
消化管から大量のカリウムが失われることが原因で起こります。
ときに、過量のカリウムが尿中に排出される場合がありますが、
これは通常、利尿薬(腎臓に働きかけて過剰なナトリウム、水、カリウムを排出させる薬)によるものです。
クッシング症候群( クッシング症候群)など多くの副腎疾患では、
アルドステロンというホルモンが副腎から過剰に分泌され、
これが腎臓に働きかけて大量のカリウムを排出させます。
高カリウム血症血清(カリウムが5.5mEq/Lを超える)
高カリウム血症の一般的な原因には,
カリウム保持性薬剤,
腎機能不全,
副腎機能不全,
および細胞の崩壊を伴う疾患(例,横紋筋融解症,熱傷,軟部組織または消化管への出血)などがあります。
慢性腎臓病では,末期腎不全(GFRが10〜15mL/min未満)にならない限り高カリウム血症はまれです。
症状と徴候
弛緩性麻痺がときに生じるが,高カリウム血症は不整脈が出現するまで通常は無症状。
軽度の高カリウム血症
血清カリウム濃度が6mEq/L未満
中等度から重度の高カリウム血症
血清カリウムが6.5mEq/Lを上回っている場合は,より積極的な治療が必要。
追加プレゼント申請
2019年06月04日
ACS二次予防、押さえておきたいGL改訂のポイント ACS新指針ハイライト―Vol. 2
(急性冠症候群(ACS)2次予防GL)
ACS二次予防、押さえておきたいGL改訂のポイント
ACS新指針ハイライト―Vol. 2
m3.com編集部2019年4月12日 (金)配信 一般内科疾患循環器疾患内分泌・代謝疾患救急
第83回日本循環器学会学術集会(JCS 2019、3月29日-31日、横浜市)と同学会公式サイトで7件のガイドライン(GL)の改訂版が同時発表された。
引き続き、「急性冠症候群診療ガイドライン(2018年改訂版)」のハイライトを紹介する。
急性冠症候群(ACS)の患者年齢の高齢化に伴い、
心房細動(AF)や腎機能低下の合併例が増えている。
改訂GLではこうした背景やエビデンスの集積を踏まえた推奨や、
第2世代の薬物溶出ステント(DES)の普及に伴う、
二次予防の抗血栓薬投与の推奨のアップデートが行われた。
GL班長の木村一雄氏(横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター部長)が解説した。
(m3.com編集部・坂口恵/2019年3月29日取材、全2回)
PCI後の抗血小板薬、日本のエビデンス採用
Primary PCI(経皮的冠動脈インターベンション)後の抗血小板薬については、
「禁忌が無い限り、無期限にアスピリン81-162mg/日を経口投与する(推奨クラスI、エビデンスレベルA)」「primary PCI施行前にクロピドグレル300mgを投与し、
その後75mg/日を経口投与する(推奨クラスI、エビデンスレベルA )」などが示された。
この他、primary PCI前の抗血小板薬プラスグレル投与については日本人でのエビデンスが採用され、
欧米の3分の1の用量に相当する20mgの開始用量と
75mg/日の維持用量が推奨クラスI、エビデンスレベルAで推奨された。
退院時の抗血栓療法については
「抗凝固薬の併用が必要なPCI患者に対してアスピリンを併用せず、
抗凝固薬とクロピドグレルの2剤併用療法を退院時に考慮する(推奨クラスIIa、エビデンスレベルB)」
ことが示された。
出血高リスクのAF合併例に3剤併用療法は“harm”
木村氏が「改訂GLの一つのトピック」と紹介したのは、二次予防の抗血栓薬に関する推奨。
1年の2剤併用療法(DAPT)が推奨されていた前GLから、出血・血栓リスクで推奨が分かれた。
「ステント留置後はアスピリンとクロピドグレルまたはプラスグレルを6-12カ月間併用投与する
(推奨クラスI、エビデンスレベルA)」の他、
「DES留置後、出血リスクが高い患者に対して、
3カ月以下へのDAPTの短期化を考慮する(推奨クラスI、エビデンスレベルB)」、
さらに「出血リスクが高い心房細動を合併するPCI施行患者に対して、
抗凝固薬とDAPTの3剤併用療法の『長期継続はすべきではない』
(推奨クラスIII-harm、エビデンスレベルB)」などが追加された。
β遮断薬については入院中、二次予防ともに
「心不全徴候を有する、
または左室駆出率(LVEF) 40%以下の患者」
への投与が推奨された(推奨クラスI、エビデンスレベルA)。
一方、入院中の禁忌のない患者へのβ遮断薬の経口投与については
「推奨クラスI、エビデンスレベルA」から、
「考慮する(推奨クラスIIa、エビデンスレベルA)」と『ダウングレード』した。
脂質低下療法の初期治療は“fire and forget”
二次予防の脂質低下療法に関しては、
2013年のAHA/ACCガイドラインで示された目標値なく
ストロングスタチンを忍容可能な最大用量で投与する
“fire and forget”のコンセプトを採用(推奨クラスI、エビデンスレベルA)。
最大用量のスタチンを用いてもLDLコレステロール(LDL-C)値が
『70mg/dL』に達しない場合の二次選択薬として、
『家族性高コレステロール血症(FH)』には『PCSK9阻害薬(推奨クラスIIa、エビデンスレベルB)』、
それ以外の高リスク例には
『エゼチミブが推奨クラスIIa』、『PCSK9阻害薬が推奨クラスIIb』に位置づけられた。
入院中の糖負荷試験の実施も推奨
糖尿病合併例については、入院中早期に行う検査として
「入院時にHbA1cを用いた糖尿病スクリーニングを行う(推奨クラスI、エビデンスレベルA)」ことが推奨。
二次予防としても
「糖尿病既往のない患者に対して糖負荷試験の施行を考慮する(推奨クラスIIa、エビデンスレベルA)」
も盛り込まれた。
糖尿病における血糖、体重血圧管理、血清脂質などの多因子管理(推奨クラスI、エビデンスレベルA)や
新たに「糖尿病合併患者に対して、心血管イベント抑制が証明されているSGLT2阻害薬の投与を考慮する
(推奨クラスIIa、エビデンスレベルB)」ことが推奨された。
SGLT2阻害薬の推奨について木村氏は、
今後のエビデンス次第で「将来的には推奨クラスがアップグレードする可能性がある」との考えを示した。
木村氏「fire and forgetもtreat to targetもゴールは同じ」
ディスカッションでは、脂質低下療法による二次予防に関して
「fire and forgetを採用した点が、
日本動脈硬化学会の脂質異常症診療GLにおけるコンセプト(treat to target)と異なる点をどう捉えるべきか、
質問が出された。
木村氏は「いずれのコンセプトも目指すところは同じだが、
treat to targetの場合、“発症後のLDL-C値が70mg/dL以下の場合はスタチンを使わなくてよいのでは”という誤解を生じる可能性がある」と説明。
「スタチンは急性期に必ず使う薬と認識している。
したがって、『LDL-C値にかかわらず、ACS後にはまずスタチンを使用』して、
検査値や目標値は後追いに見ていく形がよいと思う」と話した。
ACS二次予防、押さえておきたいGL改訂のポイント
ACS新指針ハイライト―Vol. 2
m3.com編集部2019年4月12日 (金)配信 一般内科疾患循環器疾患内分泌・代謝疾患救急
第83回日本循環器学会学術集会(JCS 2019、3月29日-31日、横浜市)と同学会公式サイトで7件のガイドライン(GL)の改訂版が同時発表された。
引き続き、「急性冠症候群診療ガイドライン(2018年改訂版)」のハイライトを紹介する。
急性冠症候群(ACS)の患者年齢の高齢化に伴い、
心房細動(AF)や腎機能低下の合併例が増えている。
改訂GLではこうした背景やエビデンスの集積を踏まえた推奨や、
第2世代の薬物溶出ステント(DES)の普及に伴う、
二次予防の抗血栓薬投与の推奨のアップデートが行われた。
GL班長の木村一雄氏(横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター部長)が解説した。
(m3.com編集部・坂口恵/2019年3月29日取材、全2回)
PCI後の抗血小板薬、日本のエビデンス採用
Primary PCI(経皮的冠動脈インターベンション)後の抗血小板薬については、
「禁忌が無い限り、無期限にアスピリン81-162mg/日を経口投与する(推奨クラスI、エビデンスレベルA)」「primary PCI施行前にクロピドグレル300mgを投与し、
その後75mg/日を経口投与する(推奨クラスI、エビデンスレベルA )」などが示された。
この他、primary PCI前の抗血小板薬プラスグレル投与については日本人でのエビデンスが採用され、
欧米の3分の1の用量に相当する20mgの開始用量と
75mg/日の維持用量が推奨クラスI、エビデンスレベルAで推奨された。
退院時の抗血栓療法については
「抗凝固薬の併用が必要なPCI患者に対してアスピリンを併用せず、
抗凝固薬とクロピドグレルの2剤併用療法を退院時に考慮する(推奨クラスIIa、エビデンスレベルB)」
ことが示された。
出血高リスクのAF合併例に3剤併用療法は“harm”
木村氏が「改訂GLの一つのトピック」と紹介したのは、二次予防の抗血栓薬に関する推奨。
1年の2剤併用療法(DAPT)が推奨されていた前GLから、出血・血栓リスクで推奨が分かれた。
「ステント留置後はアスピリンとクロピドグレルまたはプラスグレルを6-12カ月間併用投与する
(推奨クラスI、エビデンスレベルA)」の他、
「DES留置後、出血リスクが高い患者に対して、
3カ月以下へのDAPTの短期化を考慮する(推奨クラスI、エビデンスレベルB)」、
さらに「出血リスクが高い心房細動を合併するPCI施行患者に対して、
抗凝固薬とDAPTの3剤併用療法の『長期継続はすべきではない』
(推奨クラスIII-harm、エビデンスレベルB)」などが追加された。
β遮断薬については入院中、二次予防ともに
「心不全徴候を有する、
または左室駆出率(LVEF) 40%以下の患者」
への投与が推奨された(推奨クラスI、エビデンスレベルA)。
一方、入院中の禁忌のない患者へのβ遮断薬の経口投与については
「推奨クラスI、エビデンスレベルA」から、
「考慮する(推奨クラスIIa、エビデンスレベルA)」と『ダウングレード』した。
脂質低下療法の初期治療は“fire and forget”
二次予防の脂質低下療法に関しては、
2013年のAHA/ACCガイドラインで示された目標値なく
ストロングスタチンを忍容可能な最大用量で投与する
“fire and forget”のコンセプトを採用(推奨クラスI、エビデンスレベルA)。
最大用量のスタチンを用いてもLDLコレステロール(LDL-C)値が
『70mg/dL』に達しない場合の二次選択薬として、
『家族性高コレステロール血症(FH)』には『PCSK9阻害薬(推奨クラスIIa、エビデンスレベルB)』、
それ以外の高リスク例には
『エゼチミブが推奨クラスIIa』、『PCSK9阻害薬が推奨クラスIIb』に位置づけられた。
入院中の糖負荷試験の実施も推奨
糖尿病合併例については、入院中早期に行う検査として
「入院時にHbA1cを用いた糖尿病スクリーニングを行う(推奨クラスI、エビデンスレベルA)」ことが推奨。
二次予防としても
「糖尿病既往のない患者に対して糖負荷試験の施行を考慮する(推奨クラスIIa、エビデンスレベルA)」
も盛り込まれた。
糖尿病における血糖、体重血圧管理、血清脂質などの多因子管理(推奨クラスI、エビデンスレベルA)や
新たに「糖尿病合併患者に対して、心血管イベント抑制が証明されているSGLT2阻害薬の投与を考慮する
(推奨クラスIIa、エビデンスレベルB)」ことが推奨された。
SGLT2阻害薬の推奨について木村氏は、
今後のエビデンス次第で「将来的には推奨クラスがアップグレードする可能性がある」との考えを示した。
木村氏「fire and forgetもtreat to targetもゴールは同じ」
ディスカッションでは、脂質低下療法による二次予防に関して
「fire and forgetを採用した点が、
日本動脈硬化学会の脂質異常症診療GLにおけるコンセプト(treat to target)と異なる点をどう捉えるべきか、
質問が出された。
木村氏は「いずれのコンセプトも目指すところは同じだが、
treat to targetの場合、“発症後のLDL-C値が70mg/dL以下の場合はスタチンを使わなくてよいのでは”という誤解を生じる可能性がある」と説明。
「スタチンは急性期に必ず使う薬と認識している。
したがって、『LDL-C値にかかわらず、ACS後にはまずスタチンを使用』して、
検査値や目標値は後追いに見ていく形がよいと思う」と話した。
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2019年05月31日
第15回 アナタの心電図は“男女”どっち?【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】
(心電図に性差があることを述べるために、不要と思ったところは割愛していますー悪しからず)
第15回 アナタの心電図は“男女”どっち?【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】
公開日:2019/03/18 企画・制作 ケアネット
杉山 裕章氏(京都府立医科大学)が、
症例に関する問題と解説を通して攻略法をお届けします。
皆さんは心電図に「性差」があるのをご存知ですか?
男性と女性では、波形にいくつかの違いがあるのです。
今回は、それを見極めるために、ST部分の“男女差”についてDr.ヒロが解説します。
はじめに言っておくと、今回の話もあくまでも“雑談”です。
細部まで逐一暗記しようとせず、『ふーん、そうなのかぁ』程度に思ってもらえば大丈夫。
注目するのはV1〜V4(前胸部)誘導のJ点とST角度(ST angle)の2点。
「J点」はQRS波の“おわり”で、
いわゆる“変曲点”です(第14回)。
もう一つの「ST角度」という名前は聞き慣れないかもしれないので、図で説明しましょう。
男女別のST部分の差を3つに分類したSurawicz先生によると、
J点を認識し、そこを通り基線に平行な線Aを引きます。
次に、J点と点B(J点から60ms[1.5mm]先のST部分で“ST60”と称される)を結ぶ線がなす角度(図中のC)を表します。
ST部分の“傾き”と理解すれば良いでしょう。
では、この2つを用いてST部分を
1)女性型(F型)、
2)男性型(M型)、
3)不定型(I型)の3つに分類する方法*2を紹介します。
J点・ST角度によるST型分類
まずは、V1〜V4誘導でJ点レベルが最高となる誘導に注目します。
V1〜V4誘導のいずれでもJ点が「0.1mV」、
つまり、基線からの上昇が1mm未満なのが「F型」
(ST角度は不問)です。
角度が一番キツい(最大となる)誘導で、
その角度が20°以上だったら「M型」、
それ未満なら「I型」とします。
具体的な数値は忘れてかまいませんが、
若年男性ほど角度が急峻、つまり「M型」となる傾向なんです。
ボクの経験上、ST角度はおおむねT波高が一番のところで最大となるため、
ざっと見てJ点が1mm以上であれば、
T波が最も高くツンと立った誘導を使ってST角度を調べるスタンスでOKです。
まず、女性のほうはシンプル。
全年代にわたって8割方がF型です。
残り2割、成人の場合ではM型とI型が半分ずつ占めています。
一方の男性はどうでしょう?
思春期以降、40歳くらいまではM型ないしI型で9割近くを占め、
“若さ”の象徴的な「ST上昇」が目立ちます。
ただ、よーく見ると、成人以降、M型は徐々に減り、
代わりにF型がぐんぐん増えてきます(I型は1〜2割のままほぼ一定)。
50歳前後でF型はM型を凌駕し、
最終的に今回の症例のような高齢男性では、7割がF型となる様子が読み取れます。
心電図が年をとった結果、生物学的には男性でも、心電図は“女性”…そんなことが珍しくないというワケ。
この“理由”はと言えば、皆さんお察しの通り「性ホルモン」の影響が強いようです。
“力こぶ”を連想させるST-T部分はテストステロンの影響を受けるため、
加齢によって“更年期”を迎え、最終的には枯渇してゆく…。
今回は、あまり真面目に語られることのない、性別による心電図波形の違いについて扱いました。
やや雑学的はハナシですが、ボクが医学生の頃、友達と面白いなぁと話した日々を懐かしく思いました。
Take-home Message
J点(STレベル)とST角度には性差が現れやすい(3つの区分あり)
男性に特徴的な加齢に伴うST型の変化を知っておこう
参考文献
1)Bidoggia H, et al. Am Heart J. 2000;140:430–436.
2)Surawicz B, et al. J Am Coll Cardiol. 2002;40:1870–1876.
第15回 アナタの心電図は“男女”どっち?【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】
公開日:2019/03/18 企画・制作 ケアネット
杉山 裕章氏(京都府立医科大学)が、
症例に関する問題と解説を通して攻略法をお届けします。
皆さんは心電図に「性差」があるのをご存知ですか?
男性と女性では、波形にいくつかの違いがあるのです。
今回は、それを見極めるために、ST部分の“男女差”についてDr.ヒロが解説します。
はじめに言っておくと、今回の話もあくまでも“雑談”です。
細部まで逐一暗記しようとせず、『ふーん、そうなのかぁ』程度に思ってもらえば大丈夫。
注目するのはV1〜V4(前胸部)誘導のJ点とST角度(ST angle)の2点。
「J点」はQRS波の“おわり”で、
いわゆる“変曲点”です(第14回)。
もう一つの「ST角度」という名前は聞き慣れないかもしれないので、図で説明しましょう。
男女別のST部分の差を3つに分類したSurawicz先生によると、
J点を認識し、そこを通り基線に平行な線Aを引きます。
次に、J点と点B(J点から60ms[1.5mm]先のST部分で“ST60”と称される)を結ぶ線がなす角度(図中のC)を表します。
ST部分の“傾き”と理解すれば良いでしょう。
では、この2つを用いてST部分を
1)女性型(F型)、
2)男性型(M型)、
3)不定型(I型)の3つに分類する方法*2を紹介します。
J点・ST角度によるST型分類
まずは、V1〜V4誘導でJ点レベルが最高となる誘導に注目します。
V1〜V4誘導のいずれでもJ点が「0.1mV」、
つまり、基線からの上昇が1mm未満なのが「F型」
(ST角度は不問)です。
角度が一番キツい(最大となる)誘導で、
その角度が20°以上だったら「M型」、
それ未満なら「I型」とします。
具体的な数値は忘れてかまいませんが、
若年男性ほど角度が急峻、つまり「M型」となる傾向なんです。
ボクの経験上、ST角度はおおむねT波高が一番のところで最大となるため、
ざっと見てJ点が1mm以上であれば、
T波が最も高くツンと立った誘導を使ってST角度を調べるスタンスでOKです。
まず、女性のほうはシンプル。
全年代にわたって8割方がF型です。
残り2割、成人の場合ではM型とI型が半分ずつ占めています。
一方の男性はどうでしょう?
思春期以降、40歳くらいまではM型ないしI型で9割近くを占め、
“若さ”の象徴的な「ST上昇」が目立ちます。
ただ、よーく見ると、成人以降、M型は徐々に減り、
代わりにF型がぐんぐん増えてきます(I型は1〜2割のままほぼ一定)。
50歳前後でF型はM型を凌駕し、
最終的に今回の症例のような高齢男性では、7割がF型となる様子が読み取れます。
心電図が年をとった結果、生物学的には男性でも、心電図は“女性”…そんなことが珍しくないというワケ。
この“理由”はと言えば、皆さんお察しの通り「性ホルモン」の影響が強いようです。
“力こぶ”を連想させるST-T部分はテストステロンの影響を受けるため、
加齢によって“更年期”を迎え、最終的には枯渇してゆく…。
今回は、あまり真面目に語られることのない、性別による心電図波形の違いについて扱いました。
やや雑学的はハナシですが、ボクが医学生の頃、友達と面白いなぁと話した日々を懐かしく思いました。
Take-home Message
J点(STレベル)とST角度には性差が現れやすい(3つの区分あり)
男性に特徴的な加齢に伴うST型の変化を知っておこう
参考文献
1)Bidoggia H, et al. Am Heart J. 2000;140:430–436.
2)Surawicz B, et al. J Am Coll Cardiol. 2002;40:1870–1876.
2019年05月30日
急性大動脈解離、初の「診療の質指標」を開発
(急性動脈解離ー阿藤海さんの亡くなった病気!
タイプA(上行大動脈解離有)対タイプB(同無)
院内死亡率が24.3%と4.5%、
手術施行例の院内死亡率が11.8%と7.2%、
内科的治療施行例の院内死亡率が49.7%と4.2%)
急性大動脈解離、初の「診療の質指標」を開発
2019年04月09日 05:05
院内死亡率が25〜30%と非常に高いことで知られる
急性大動脈解離(acute aortic dissection; AAD)の日本における治療状況を明らかにするため、
武蔵野赤十字病院(東京都)循環器内科の山口徹雄氏らが大規模データベースを解析し、
そのデータを基に診療の質指標(Quality Indicator; QI)を作成、
詳細を第83回日本循環器学会(3月29〜31日)で報告した。
同氏は「本邦においてAADのガイドラインに沿った治療が
十分に行われているかどうかの基礎データが乏しかった。
今回作成したQIの達成率はアウトカムと有意な関連が確認され、
今後の診療の質均てん化や診療ギャップの改善に有用と考えられる」と述べた。
JROAD-DPCデータベースからAADの診療実態を検証
山口氏らは循環器疾患診療実態調査(JROAD-DPC)データベースを活用し、
2012年4月から2015年3月までにAADで入院した患者3万1,905例を同定。
そのうち、検査入院の患者やAADのタイプが不明な患者などを除外した
1万8,348例(タイプA = 1万131例、タイプB = 8,217例)のアウトカムを検討した。
タイプAは上行大動脈から裂けるタイプで、通常、緊急手術が必要。
手術不能で内科的治療のみを行った場合の院内死亡率は50%にもなる。
タイプBでは上行大動脈の解離はなく、下行大動脈から裂けるタイプ。
一般的には内科的治療を行うが、重症例では手術が必要で、その場合の院内死亡率は20〜30%になる。
AADのガイドラインには、
診断(CTでの診断を推奨)、
降圧の仕方(β遮断薬を推奨)、
タイプAや複雑なタイプBに対する手術施行方法など、
エビデンスに基づく記載はあるが、
実際の診療でエビデンス通りの治療が確実に行われているかどうかは確認されていない。
自治体指定の救急救命センターへの搬送は50%強
タイプA群、タイプB群の平均年齢に差はなかった。
タイプA群は男性が46.9%、タイプB群は女性が69.6%、
病院搬送時点でタイプA群の13.4%、タイプB群の0.9%が昏睡状態であった。
自治体が指定する救急救命センターへの搬送割合は
タイプA群57.4%、タイプB群54.3%で、
約半数近くが救急救命センターでない病院へ運ばれている。
運ばれた施設の心臓血管外科医および循環器内科専門医の数は、
タイプA群でそれぞれ5人、11人、タイプB群でそれぞれ4人と10人であった。
造影CTによる診断がなされたのはタイプA群で82.6%、タイプB群で91.8%、
血行動態把握に重要な動脈圧ラインによる血圧測定が実施されていたのは
タイプA群で76.9%、タイプB群で52.8%。
β遮断薬の処方は79.1%と82.8%だった。
タイプA群とB群の治療内容と転帰は、
外科手術が66.0%と2.9%、
TEVAR(ステントグラフト)が0.6%と4.4%、
術中経食道心エコーが76.6%と26.3%、院内死亡率が24.3%と4.5%、
手術施行例の院内死亡率が11.8%と7.2%、
内科的治療施行例の院内死亡率が49.7%と4.2%であった。
また、総医療費はタイプA群が626万円、タイプB群は118万円であった。
QIが治療転帰と相関―AAD診療の評価や改善に向けた活用に期待
次に山口氏らは、デルファイ変法※によるQI(診療の質指標、Quality Indicator)の作成を試みた。
PubMedやMEDLINEの文献検索により最終的に36の文献を選び出し、QIの候補を選定、
専門家会議・デルファイ変法で
構造に関わる指標を5項目
(@救命センター指定の有無
A心臓血管外科医の数
B循環器専門医の数
C年間の大動脈手術件数
D年間の血管内治療件数)、
過程に関わる指標4項目
(E診断のためのCT施行
F術中経食道心エコー検査の施行
G動脈圧ラインによる血圧管理
Hβ遮断薬処方)を設定した。
9つのQI指標が満たされた数が
7〜9個、4〜6個、0〜3個の3群に分け、
7〜9個の死亡オッズ比(OR)を1として解析したところ、
タイプA群、タイプB群のいずれにおいても、
4〜6個、0〜3個とQI達成数が少なくなるほど、死亡ORが高くなっていることが確認された。
さらに、
構造のQI(3〜5個 vs. 1〜2個 vs. 0個)、
過程のQI(3〜4個 vs. 1〜2個 vs. 0個)で分けて調べても、
それぞれのQI達成数が少ないほど死亡のORが高く、
今回作成したQIがアウトカムと関連することが示された。
山口氏は、全国規模のAADデータであり、
症例数が約1万8,000例と多いこと、
臨床試験ではないリアルワールドのデータであることなどを今回の研究の強みとして挙げる一方、
限界は、退院後の長期追跡データがないこと、
観察研究であることから測定できない因子がある、治療選択決定の理由が不明である、
ことなどだと述べた。
最後に同氏は「AADのQIを報告した論文は世界的にもなく、
今後、この指標を用いたAAD診療の評価や改善が期待される」と講演を結んだ。
※ 米・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)およびランド研究所(RAND Corporation)で開発されたQI 作成の国際的な標準方法。RAND/UCLA 適切性評価法とも呼ばれる。
(JCS2019取材班)
タイプA(上行大動脈解離有)対タイプB(同無)
院内死亡率が24.3%と4.5%、
手術施行例の院内死亡率が11.8%と7.2%、
内科的治療施行例の院内死亡率が49.7%と4.2%)
急性大動脈解離、初の「診療の質指標」を開発
2019年04月09日 05:05
院内死亡率が25〜30%と非常に高いことで知られる
急性大動脈解離(acute aortic dissection; AAD)の日本における治療状況を明らかにするため、
武蔵野赤十字病院(東京都)循環器内科の山口徹雄氏らが大規模データベースを解析し、
そのデータを基に診療の質指標(Quality Indicator; QI)を作成、
詳細を第83回日本循環器学会(3月29〜31日)で報告した。
同氏は「本邦においてAADのガイドラインに沿った治療が
十分に行われているかどうかの基礎データが乏しかった。
今回作成したQIの達成率はアウトカムと有意な関連が確認され、
今後の診療の質均てん化や診療ギャップの改善に有用と考えられる」と述べた。
JROAD-DPCデータベースからAADの診療実態を検証
山口氏らは循環器疾患診療実態調査(JROAD-DPC)データベースを活用し、
2012年4月から2015年3月までにAADで入院した患者3万1,905例を同定。
そのうち、検査入院の患者やAADのタイプが不明な患者などを除外した
1万8,348例(タイプA = 1万131例、タイプB = 8,217例)のアウトカムを検討した。
タイプAは上行大動脈から裂けるタイプで、通常、緊急手術が必要。
手術不能で内科的治療のみを行った場合の院内死亡率は50%にもなる。
タイプBでは上行大動脈の解離はなく、下行大動脈から裂けるタイプ。
一般的には内科的治療を行うが、重症例では手術が必要で、その場合の院内死亡率は20〜30%になる。
AADのガイドラインには、
診断(CTでの診断を推奨)、
降圧の仕方(β遮断薬を推奨)、
タイプAや複雑なタイプBに対する手術施行方法など、
エビデンスに基づく記載はあるが、
実際の診療でエビデンス通りの治療が確実に行われているかどうかは確認されていない。
自治体指定の救急救命センターへの搬送は50%強
タイプA群、タイプB群の平均年齢に差はなかった。
タイプA群は男性が46.9%、タイプB群は女性が69.6%、
病院搬送時点でタイプA群の13.4%、タイプB群の0.9%が昏睡状態であった。
自治体が指定する救急救命センターへの搬送割合は
タイプA群57.4%、タイプB群54.3%で、
約半数近くが救急救命センターでない病院へ運ばれている。
運ばれた施設の心臓血管外科医および循環器内科専門医の数は、
タイプA群でそれぞれ5人、11人、タイプB群でそれぞれ4人と10人であった。
造影CTによる診断がなされたのはタイプA群で82.6%、タイプB群で91.8%、
血行動態把握に重要な動脈圧ラインによる血圧測定が実施されていたのは
タイプA群で76.9%、タイプB群で52.8%。
β遮断薬の処方は79.1%と82.8%だった。
タイプA群とB群の治療内容と転帰は、
外科手術が66.0%と2.9%、
TEVAR(ステントグラフト)が0.6%と4.4%、
術中経食道心エコーが76.6%と26.3%、院内死亡率が24.3%と4.5%、
手術施行例の院内死亡率が11.8%と7.2%、
内科的治療施行例の院内死亡率が49.7%と4.2%であった。
また、総医療費はタイプA群が626万円、タイプB群は118万円であった。
QIが治療転帰と相関―AAD診療の評価や改善に向けた活用に期待
次に山口氏らは、デルファイ変法※によるQI(診療の質指標、Quality Indicator)の作成を試みた。
PubMedやMEDLINEの文献検索により最終的に36の文献を選び出し、QIの候補を選定、
専門家会議・デルファイ変法で
構造に関わる指標を5項目
(@救命センター指定の有無
A心臓血管外科医の数
B循環器専門医の数
C年間の大動脈手術件数
D年間の血管内治療件数)、
過程に関わる指標4項目
(E診断のためのCT施行
F術中経食道心エコー検査の施行
G動脈圧ラインによる血圧管理
Hβ遮断薬処方)を設定した。
9つのQI指標が満たされた数が
7〜9個、4〜6個、0〜3個の3群に分け、
7〜9個の死亡オッズ比(OR)を1として解析したところ、
タイプA群、タイプB群のいずれにおいても、
4〜6個、0〜3個とQI達成数が少なくなるほど、死亡ORが高くなっていることが確認された。
さらに、
構造のQI(3〜5個 vs. 1〜2個 vs. 0個)、
過程のQI(3〜4個 vs. 1〜2個 vs. 0個)で分けて調べても、
それぞれのQI達成数が少ないほど死亡のORが高く、
今回作成したQIがアウトカムと関連することが示された。
山口氏は、全国規模のAADデータであり、
症例数が約1万8,000例と多いこと、
臨床試験ではないリアルワールドのデータであることなどを今回の研究の強みとして挙げる一方、
限界は、退院後の長期追跡データがないこと、
観察研究であることから測定できない因子がある、治療選択決定の理由が不明である、
ことなどだと述べた。
最後に同氏は「AADのQIを報告した論文は世界的にもなく、
今後、この指標を用いたAAD診療の評価や改善が期待される」と講演を結んだ。
※ 米・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)およびランド研究所(RAND Corporation)で開発されたQI 作成の国際的な標準方法。RAND/UCLA 適切性評価法とも呼ばれる。
(JCS2019取材班)
2019年05月26日
理解難しい口腔内状態、数値化で分かりやすく
(口腔内は便の菌の数と同じ数の菌が繁殖している!!)
理解難しい口腔内状態、数値化で分かりやすく
多職種連携推進の一助に
2019年03月19日 17:52
近年、口腔細菌が誤嚥性肺炎や感染性心内膜炎などの全身疾患に関与することが報告され、
医科における口腔ケアの重要性が強調されてきている。
しかし歯科以外の職種にとって、口腔内の状態を理解するのは難しいのが実情である。
そこで広島大学病院では、患者の口腔内状態を数値化し、
歯科と医科での情報共有を促進する取り組みを行っている。
同院診療支援部歯科衛生部門歯科衛生士の倉本祐里氏が、
第34回日本環境感染学会(2月22〜23日)でその概要を紹介した。
口腔内の細菌数は便中とほぼ同じ
最初に倉本氏は、感染予防における口腔ケアの有効性について説明した。
口腔内は体内で最も細菌が多い場所だということは、意外と知られていない。
皮膚の菌数は103〜106/cm2なのに対し、
歯垢では1011/gに上る。それは便中の菌数とほぼ同じといわれている。
そして、細菌は歯垢だけでなく舌表面にも多く存在している。
舌は舌乳頭と呼ばれる凹凸のある組織で覆われているため細菌が停滞しやすい上、
食渣や剝離上皮など細菌の栄養が豊富にある。
また、湿潤で37℃程度という口腔内環境も、細菌が育つのに適している。
口腔内二大感染症である齲蝕と歯周病は、いずれも口腔内細菌が原因で生じる。
さらに、院内肺炎の原因菌の8割以上が、
嫌気性菌や肺炎球菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌など、口腔内にも生息している細菌で占められている。
こうしたことから、同氏は「適切な口腔ケアを行い、口腔内の細菌数を減らすことが感染予防につながる」と強調した。
"広大式評価シート"で医科歯科の情報共有を目指す
口腔ケアを効果的に行うためには、まず患者の口腔内状態を把握する必要がある。
広島大学病院では、こうした情報を多職種間で共有するための方策として、
独自に作成した評価シートを用いて、口腔内状態の数値化に取り組んでいる。
その1つが口腔内感染源リスク評価シートである。
倉本氏ら歯科衛生士が歯科医師とともに行う検査の際に使用するもので、
齲蝕、歯周病、粘膜炎、舌苔、乾燥度、口腔内細菌数などについてそれぞれの程度に応じた点数を定め、
合計点によりリスク分類をしている。
また、看護師との情報共有のために作成したのが口腔内環境評価シートである。
4段階評価となっている点が特徴であり、
中間の「どちらでもない」が選択されがちな3段階評価と異なり、
少しの異常でも早期の発見が期待できる。
これにより歯科が速やかに介入することが可能となり、
専門的な口腔ケアを強化できる仕かけになっている(図)。
(広島大学病院連携口腔ケアサポートチーム提供)
例えば、歯肉は
「ピンク色で引き締まっている(リスク評価点0、以下同)」
「浮腫があり発赤を伴うこともある(1)」
「ブラッシングなどの刺激による出血(2)」
「わずかな刺激で出血/自然出血(3)」
のいずれに該当するかをチェックする。
(2)(3)は歯石除去や抜歯などの歯科治療を要する状態のため、
歯科に紹介するようシート上に明記されている。
さらに、
歯周炎評価指標PISA(periodontal inflamed surface area)を取り入れ、
歯周病の影響を数値化する試みも行っている。
PISAは歯周ポケットの深さと、ポケット測定時の出血から算出する、歯周組織の炎症表面積を表す。
歯を1本ずつ評価するのではなく、
歯周全体の炎症を数値化して評価することができるため、
炎症の程度が理解しやすいという。
同氏は「数値など他職種にも理解しやすい指標を日常診療に取り入れて口腔内を評価し、
臨床研究でエビデンスを構築していくことが、質の高い口腔ケアの実現につながると考える」と展望した。
(長谷部弥生)
理解難しい口腔内状態、数値化で分かりやすく
多職種連携推進の一助に
2019年03月19日 17:52
近年、口腔細菌が誤嚥性肺炎や感染性心内膜炎などの全身疾患に関与することが報告され、
医科における口腔ケアの重要性が強調されてきている。
しかし歯科以外の職種にとって、口腔内の状態を理解するのは難しいのが実情である。
そこで広島大学病院では、患者の口腔内状態を数値化し、
歯科と医科での情報共有を促進する取り組みを行っている。
同院診療支援部歯科衛生部門歯科衛生士の倉本祐里氏が、
第34回日本環境感染学会(2月22〜23日)でその概要を紹介した。
口腔内の細菌数は便中とほぼ同じ
最初に倉本氏は、感染予防における口腔ケアの有効性について説明した。
口腔内は体内で最も細菌が多い場所だということは、意外と知られていない。
皮膚の菌数は103〜106/cm2なのに対し、
歯垢では1011/gに上る。それは便中の菌数とほぼ同じといわれている。
そして、細菌は歯垢だけでなく舌表面にも多く存在している。
舌は舌乳頭と呼ばれる凹凸のある組織で覆われているため細菌が停滞しやすい上、
食渣や剝離上皮など細菌の栄養が豊富にある。
また、湿潤で37℃程度という口腔内環境も、細菌が育つのに適している。
口腔内二大感染症である齲蝕と歯周病は、いずれも口腔内細菌が原因で生じる。
さらに、院内肺炎の原因菌の8割以上が、
嫌気性菌や肺炎球菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌など、口腔内にも生息している細菌で占められている。
こうしたことから、同氏は「適切な口腔ケアを行い、口腔内の細菌数を減らすことが感染予防につながる」と強調した。
"広大式評価シート"で医科歯科の情報共有を目指す
口腔ケアを効果的に行うためには、まず患者の口腔内状態を把握する必要がある。
広島大学病院では、こうした情報を多職種間で共有するための方策として、
独自に作成した評価シートを用いて、口腔内状態の数値化に取り組んでいる。
その1つが口腔内感染源リスク評価シートである。
倉本氏ら歯科衛生士が歯科医師とともに行う検査の際に使用するもので、
齲蝕、歯周病、粘膜炎、舌苔、乾燥度、口腔内細菌数などについてそれぞれの程度に応じた点数を定め、
合計点によりリスク分類をしている。
また、看護師との情報共有のために作成したのが口腔内環境評価シートである。
4段階評価となっている点が特徴であり、
中間の「どちらでもない」が選択されがちな3段階評価と異なり、
少しの異常でも早期の発見が期待できる。
これにより歯科が速やかに介入することが可能となり、
専門的な口腔ケアを強化できる仕かけになっている(図)。
(広島大学病院連携口腔ケアサポートチーム提供)
例えば、歯肉は
「ピンク色で引き締まっている(リスク評価点0、以下同)」
「浮腫があり発赤を伴うこともある(1)」
「ブラッシングなどの刺激による出血(2)」
「わずかな刺激で出血/自然出血(3)」
のいずれに該当するかをチェックする。
(2)(3)は歯石除去や抜歯などの歯科治療を要する状態のため、
歯科に紹介するようシート上に明記されている。
さらに、
歯周炎評価指標PISA(periodontal inflamed surface area)を取り入れ、
歯周病の影響を数値化する試みも行っている。
PISAは歯周ポケットの深さと、ポケット測定時の出血から算出する、歯周組織の炎症表面積を表す。
歯を1本ずつ評価するのではなく、
歯周全体の炎症を数値化して評価することができるため、
炎症の程度が理解しやすいという。
同氏は「数値など他職種にも理解しやすい指標を日常診療に取り入れて口腔内を評価し、
臨床研究でエビデンスを構築していくことが、質の高い口腔ケアの実現につながると考える」と展望した。
(長谷部弥生)
2019年05月22日
糖尿病の患者教育に家族参加で不安が軽減
(糖尿病患者への説明だけではなく、家族全員に説明し、理解してもらうことは糖尿病に対する偏見をなくすためにも必要!)
糖尿病の患者教育に家族参加で不安が軽減
提供元:HealthDay News 公開日:2019/04/08
糖尿病患者は、自分の将来や合併症への大きな不安を抱えているが、その家族も例外ではない。
米ニューヨーク州立アップステート医科大学の精神医学・行動科学教授のPaula Trief氏らは、
糖尿病の患者教育にパートナーが参加すると、
糖尿病に対する不安が軽減し、患者と家族の関係性も良好になるという研究結果を「Diabetic Medicine」4月号に発表した。
Trief氏らは今回、糖尿病の患者教育にパートナーが参加することで、
パートナーの精神面や身体面、生活習慣にどのような影響が出るのかを調べるため、
ランダム化比較試験を実施した。
研究には糖尿病患者のパートナー268人(平均年齢55.8歳、女性64.6%)が参加した。
その結果、糖尿病の患者教育をパートナーと一緒に受けると、
パートナーの糖尿病に対する不安が軽減し、配偶者への満足度が増加したほか、拡張期血圧が改善したことが分かった。
Trief氏は、糖尿病患者とそのパートナーには、「私たちは共にある」という姿勢や態度が、自分たちの救いになるかもしれないと述べている。
糖尿病患者にとっても、パートナーにとっても、互いに協力することで、糖尿病に対する不安が軽減する可能性がある。
さらに、同氏によれば、診療に家族が同席しても費用はかからず、この方法は費用対効果も高いという。
糖尿病患者と暮らす生活がどのようなものか、家族でも理解するのは容易なことではない。
Giuseppina Miller氏は、8歳の息子、Peter君が1型糖尿病と診断された当時を、
「真夜中に血糖値を測定するために寝不足となり、常に不安だった。
妹たちはストレスを感じ、何となく無視されていると感じるようになった」と振り返る。
当時5歳と7歳だった幼い妹たちは、
なぜ、兄に突然両親の関心が注がれるようになったのか理解できず、
兄の糖尿病をからかうこともあったという。
Miller氏は、幼い妹たちにも兄と同じような生活をさせれば、
彼が抱えている病気について理解できるのではないかと考えた。
当時、兄は使用しているインスリンの影響で非常に厳格な食事を取っていたが、
妹たちにも同じ食事を取らせて、兄を同じ暮らしを体験させた。
兄が血糖測定するときは、妹たちの指にも針を刺した。
妹たちは実際にはインスリン注射はできないが、
1日を兄と同じように生活することで彼が対処しなければならないことを理解できたようだったという。
この事例のように、多くの人は1型糖尿病や2型糖尿病と共に生きる人生がどのようなものであるかを理解するのに困難さを感じている。
米Behavioral Diabetes Institute会長のWilliam Polonsky氏は
「糖尿病には目に見えない形の非難や恥がまとわりつく」と指摘する。
糖尿病と診断されると、多くの人が、知能が低下したかのような扱いを受けることがあると語る。
ゆっくり大きな声で話しかけたり、何をすべきか説教したりする人もいる。
糖尿病になったのはその人の責任だと勝手に思う人さえいるという。
また、家族や友人が助言をしてくるのは、心配で力になろうとしているためだが、
一番助けになることは何かを尋ねるのではなく、推測でものをいうことも多い。
「血糖値を測った?」
「なぜ血糖値がこんなに高いの?」
「本当にこれを食べていいの?」
「インターネットで見たこの最新治療を試してみた?」
といった具合に干渉してくる人もいる。
Polonsky氏は、患者に声をかけるときは「どうやったら彼らの力になれるのかをシンプルに尋ねてみる方が良い」と助言する。
「糖尿病を患う愛する人が健康的な生活習慣に変えたいと思っていたら、
どうすべきかをアドバイスするのではなく、一緒に運動に誘ってみるのが良いだろう」
と同氏は付け加えている。
さらに、Miller氏は、糖尿病は兄弟姉妹、配偶者、祖父母、友人などすべての人間関係に影響を与えると指摘する。
「糖尿病にどのように対処するかは人それぞれで異なる。互いの長所と短所を尊重してほしい」と述べている。
[2019年3月1日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.
原著論文はこちら
Trief PM, et al. Diabet Med. 2019; 36: 473-481.
糖尿病の患者教育に家族参加で不安が軽減
提供元:HealthDay News 公開日:2019/04/08
糖尿病患者は、自分の将来や合併症への大きな不安を抱えているが、その家族も例外ではない。
米ニューヨーク州立アップステート医科大学の精神医学・行動科学教授のPaula Trief氏らは、
糖尿病の患者教育にパートナーが参加すると、
糖尿病に対する不安が軽減し、患者と家族の関係性も良好になるという研究結果を「Diabetic Medicine」4月号に発表した。
Trief氏らは今回、糖尿病の患者教育にパートナーが参加することで、
パートナーの精神面や身体面、生活習慣にどのような影響が出るのかを調べるため、
ランダム化比較試験を実施した。
研究には糖尿病患者のパートナー268人(平均年齢55.8歳、女性64.6%)が参加した。
その結果、糖尿病の患者教育をパートナーと一緒に受けると、
パートナーの糖尿病に対する不安が軽減し、配偶者への満足度が増加したほか、拡張期血圧が改善したことが分かった。
Trief氏は、糖尿病患者とそのパートナーには、「私たちは共にある」という姿勢や態度が、自分たちの救いになるかもしれないと述べている。
糖尿病患者にとっても、パートナーにとっても、互いに協力することで、糖尿病に対する不安が軽減する可能性がある。
さらに、同氏によれば、診療に家族が同席しても費用はかからず、この方法は費用対効果も高いという。
糖尿病患者と暮らす生活がどのようなものか、家族でも理解するのは容易なことではない。
Giuseppina Miller氏は、8歳の息子、Peter君が1型糖尿病と診断された当時を、
「真夜中に血糖値を測定するために寝不足となり、常に不安だった。
妹たちはストレスを感じ、何となく無視されていると感じるようになった」と振り返る。
当時5歳と7歳だった幼い妹たちは、
なぜ、兄に突然両親の関心が注がれるようになったのか理解できず、
兄の糖尿病をからかうこともあったという。
Miller氏は、幼い妹たちにも兄と同じような生活をさせれば、
彼が抱えている病気について理解できるのではないかと考えた。
当時、兄は使用しているインスリンの影響で非常に厳格な食事を取っていたが、
妹たちにも同じ食事を取らせて、兄を同じ暮らしを体験させた。
兄が血糖測定するときは、妹たちの指にも針を刺した。
妹たちは実際にはインスリン注射はできないが、
1日を兄と同じように生活することで彼が対処しなければならないことを理解できたようだったという。
この事例のように、多くの人は1型糖尿病や2型糖尿病と共に生きる人生がどのようなものであるかを理解するのに困難さを感じている。
米Behavioral Diabetes Institute会長のWilliam Polonsky氏は
「糖尿病には目に見えない形の非難や恥がまとわりつく」と指摘する。
糖尿病と診断されると、多くの人が、知能が低下したかのような扱いを受けることがあると語る。
ゆっくり大きな声で話しかけたり、何をすべきか説教したりする人もいる。
糖尿病になったのはその人の責任だと勝手に思う人さえいるという。
また、家族や友人が助言をしてくるのは、心配で力になろうとしているためだが、
一番助けになることは何かを尋ねるのではなく、推測でものをいうことも多い。
「血糖値を測った?」
「なぜ血糖値がこんなに高いの?」
「本当にこれを食べていいの?」
「インターネットで見たこの最新治療を試してみた?」
といった具合に干渉してくる人もいる。
Polonsky氏は、患者に声をかけるときは「どうやったら彼らの力になれるのかをシンプルに尋ねてみる方が良い」と助言する。
「糖尿病を患う愛する人が健康的な生活習慣に変えたいと思っていたら、
どうすべきかをアドバイスするのではなく、一緒に運動に誘ってみるのが良いだろう」
と同氏は付け加えている。
さらに、Miller氏は、糖尿病は兄弟姉妹、配偶者、祖父母、友人などすべての人間関係に影響を与えると指摘する。
「糖尿病にどのように対処するかは人それぞれで異なる。互いの長所と短所を尊重してほしい」と述べている。
[2019年3月1日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.
原著論文はこちら
Trief PM, et al. Diabet Med. 2019; 36: 473-481.
2019年05月21日
歯を抜かずに症状悪化 誤解が多い矯正治療
(下顎発育不全、硬いものを噛まなくて良くなった分、顎が小さくなった。
しかし、生えてくる歯の数は同じ。ガタガタになるのは道理!
狭いところに綺麗に並べるためには途中間引きしないといけないのは素人にも分かる!)
歯を抜かずに症状悪化
誤解が多い矯正治療
歯並びや歯のかみ合わせに悩む人は多い。
しかし、歯の矯正に関しては誤解が付きまとう。
矯正というと、歯を抜かない治療だと思い込んでいるケースが多いからだ。
抜歯しないと症状が改善しないだけでなく、かえって悪化することもある。
歯科専門開業医でつくる日本臨床矯正歯科医会は、
永久歯を含めた抜歯が必要なケースがあることを分かってほしいと啓発活動に力を入れている。
◇知らない非抜歯デメリット
「歯を抜かないと、歯並びや歯のかみ合わせが治らないことがある」。
同医師会の稲毛滋自会長は、こう強調する。
2019年3月にインターネットを使って1500人の一般市民を対象にした調査によると、
稲毛会長の指摘した問題については56・3%の人が「知っている」と回答した。
ただ、「無理に歯を抜かずに並べることで、歯の寿命が短く場合があることを知っているか」
「歯を抜かないがために無理に顎を広げて歯を並べると、治療後の歯並びが安定しないことを知っているか」
という質問では、
「知っている」が前者で15・7%、
後者では20・7%にとどまった。
非抜歯矯正に伴うデメリットに関する周知度は低い。
◇小臼歯が壊死
歯の矯正に関するトラブルは決して少なくはない。
30歳の女性は以前受けた治療を大変後悔している。
非抜歯での治療をしていたが、
装置を外した後、歯並びがしっくりなじまず、
しゃべったり、笑ったりすると、
上の前歯が下唇に引っ掛かるような感じがしてとても不快だったという。
「気にし過ぎだ」。
通っていた医院側の反応は冷淡だった。
その後、右下第1小臼歯からうみのようなものが出ているのに気付き、レントゲン写真を撮った。
その結果、この歯と左下第2小臼歯の骨髄が壊死(えし)していたことが分かり、大きなショックを受けた。
◇一方的に治療終了
こんなケースもある。
歯並びを気にして悩んだ末に大学2年生の時に非抜歯の矯正医を受診。
「簡単な症例だ」と言われ、2年間治療を続けたが、
下顎の歯の歯根の露出が激しくなってきたことについて質問すると、
一方的に治療終了を告げられたという。結局、症状は改善されなかった。
この女性の場合は、歯根が骨にくっつき吸収されてしまう症状だ。
適切な治療のためには抜歯が必要だったが、
担当医師から非抜歯治療に関するリスクの説明はなかった。
割り切れない思いとともに、自分のような患者を増やしたくないという思いから、
歯科大学に編入し、歯科医師への道を目指しているという。
◇矯正への後悔
矯正歯科医会の会員アンケートに寄ると、患者らからの相談件数が増加している。
10代の男性「前歯が出っ歯ぎみだったため小学生の時に顎を広げる装置をつけ、
高校生になりワイヤによる矯正を1年9カ月行った。
しかし、口元が前に出てしまい、「矯正したことをとても後悔している。
再矯正するとしたら、小臼歯の抜歯しかないのか」と強い不満を示した。
◇歯並びを諦める
30代の女性は非抜歯で矯正を始めて2年ほどたった頃。
医師から治療の終了を告げられた。
かなりの出っ歯だったため、仕上がりには満足できなかった。
しかし、「これ以上治すなら、歯をもっと削らないといけない」と言われ、歯並びについては諦めた。
ただ、かみ合わせが合っていないことは諦められない。
下顎を少し前に出してかまなければならないからだ。医師との間でこんなやりとりがあった。
「顎の筋肉トレーニングをして下顎を前に出してかむのを当たり前にするのです」
「私は一生、普通にかむことはできないのですか」
「下顎を出しながらかむのが普通になります」
このような治療は当たり前なのだろうか? 女性は大きな疑問を感じた。
◇専門医でなくても看板に掲げる
稲毛会長は「まず抜かない、という手段ありきが最初にきていることがおかしい。
第3大臼歯(親知らず)以外の永久歯の抜歯も必要なことがあることを知ってほしい」と力を込める。
問題は、専門的なトレーニングを受けていない歯科医師に当たるケースが少なくないことだ。
なぜか。
歯科医師であれば誰でも、医院の看板に「矯正歯科」と記載し標榜できる。
しかし、矯正歯科医会のアンケート調査によると、このことを知っている人は12・3%にすぎなかった。
同医師会も、さらに周知への努力が求められている。(鈴木豊)
しかし、生えてくる歯の数は同じ。ガタガタになるのは道理!
狭いところに綺麗に並べるためには途中間引きしないといけないのは素人にも分かる!)
歯を抜かずに症状悪化
誤解が多い矯正治療
歯並びや歯のかみ合わせに悩む人は多い。
しかし、歯の矯正に関しては誤解が付きまとう。
矯正というと、歯を抜かない治療だと思い込んでいるケースが多いからだ。
抜歯しないと症状が改善しないだけでなく、かえって悪化することもある。
歯科専門開業医でつくる日本臨床矯正歯科医会は、
永久歯を含めた抜歯が必要なケースがあることを分かってほしいと啓発活動に力を入れている。
◇知らない非抜歯デメリット
「歯を抜かないと、歯並びや歯のかみ合わせが治らないことがある」。
同医師会の稲毛滋自会長は、こう強調する。
2019年3月にインターネットを使って1500人の一般市民を対象にした調査によると、
稲毛会長の指摘した問題については56・3%の人が「知っている」と回答した。
ただ、「無理に歯を抜かずに並べることで、歯の寿命が短く場合があることを知っているか」
「歯を抜かないがために無理に顎を広げて歯を並べると、治療後の歯並びが安定しないことを知っているか」
という質問では、
「知っている」が前者で15・7%、
後者では20・7%にとどまった。
非抜歯矯正に伴うデメリットに関する周知度は低い。
◇小臼歯が壊死
歯の矯正に関するトラブルは決して少なくはない。
30歳の女性は以前受けた治療を大変後悔している。
非抜歯での治療をしていたが、
装置を外した後、歯並びがしっくりなじまず、
しゃべったり、笑ったりすると、
上の前歯が下唇に引っ掛かるような感じがしてとても不快だったという。
「気にし過ぎだ」。
通っていた医院側の反応は冷淡だった。
その後、右下第1小臼歯からうみのようなものが出ているのに気付き、レントゲン写真を撮った。
その結果、この歯と左下第2小臼歯の骨髄が壊死(えし)していたことが分かり、大きなショックを受けた。
◇一方的に治療終了
こんなケースもある。
歯並びを気にして悩んだ末に大学2年生の時に非抜歯の矯正医を受診。
「簡単な症例だ」と言われ、2年間治療を続けたが、
下顎の歯の歯根の露出が激しくなってきたことについて質問すると、
一方的に治療終了を告げられたという。結局、症状は改善されなかった。
この女性の場合は、歯根が骨にくっつき吸収されてしまう症状だ。
適切な治療のためには抜歯が必要だったが、
担当医師から非抜歯治療に関するリスクの説明はなかった。
割り切れない思いとともに、自分のような患者を増やしたくないという思いから、
歯科大学に編入し、歯科医師への道を目指しているという。
◇矯正への後悔
矯正歯科医会の会員アンケートに寄ると、患者らからの相談件数が増加している。
10代の男性「前歯が出っ歯ぎみだったため小学生の時に顎を広げる装置をつけ、
高校生になりワイヤによる矯正を1年9カ月行った。
しかし、口元が前に出てしまい、「矯正したことをとても後悔している。
再矯正するとしたら、小臼歯の抜歯しかないのか」と強い不満を示した。
◇歯並びを諦める
30代の女性は非抜歯で矯正を始めて2年ほどたった頃。
医師から治療の終了を告げられた。
かなりの出っ歯だったため、仕上がりには満足できなかった。
しかし、「これ以上治すなら、歯をもっと削らないといけない」と言われ、歯並びについては諦めた。
ただ、かみ合わせが合っていないことは諦められない。
下顎を少し前に出してかまなければならないからだ。医師との間でこんなやりとりがあった。
「顎の筋肉トレーニングをして下顎を前に出してかむのを当たり前にするのです」
「私は一生、普通にかむことはできないのですか」
「下顎を出しながらかむのが普通になります」
このような治療は当たり前なのだろうか? 女性は大きな疑問を感じた。
◇専門医でなくても看板に掲げる
稲毛会長は「まず抜かない、という手段ありきが最初にきていることがおかしい。
第3大臼歯(親知らず)以外の永久歯の抜歯も必要なことがあることを知ってほしい」と力を込める。
問題は、専門的なトレーニングを受けていない歯科医師に当たるケースが少なくないことだ。
なぜか。
歯科医師であれば誰でも、医院の看板に「矯正歯科」と記載し標榜できる。
しかし、矯正歯科医会のアンケート調査によると、このことを知っている人は12・3%にすぎなかった。
同医師会も、さらに周知への努力が求められている。(鈴木豊)